心身医学
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62 巻, 2 号
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巻頭言
第62回日本心身医学会総会ならびに学術講演会
会長講演
  • 岡田 宏基
    2022 年 62 巻 2 号 p. 119-125
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー

    卒前卒後の医学教育での種々の修得目標から心身医学教育に関係したものを抜粋し,それらと実際の教育の現状について紹介した.また,内科学教科書での心身医学に関係した記載を比較した.卒前教育では,医学教育モデル・コア・カリキュラム,共用試験学修・評価項目,医学教育分野別評価,および医師国家試験出題基準から心身医学教育に関連した事項を抜粋した.これらの中では,医師国家試験出題基準で最も多くの項目が含まれていた.心身医学教育の実際では,心身医学講座がない大学では,一コマか二コマ程度の教育に留まっていた.内科学教科書では,総論部分に心身医学に関する記載が増えてきているが,疾患各論には心身医学に関する記載はみられなかった.卒後教育では,初期臨床研修の到達目標と,後期研修での総合診療研修における到達目標から心身医学関連の項目を抜粋した.最後に,香川大学医学部における心身医学関連の授業について紹介した.

シンポジウム 気管支喘息の心身医学
  • 古川 智一, 松田 能宣
    2022 年 62 巻 2 号 p. 126
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー
  • 須賀 俊介, 竹内 武昭, 橋本 和明, 中村 祐三, 都田 淳, 小山 明子, 柊 未聖, 村崎 舞耶, 端詰 勝敬
    2022 年 62 巻 2 号 p. 127-131
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー

    喫煙は性格特徴の影響を受ける行動様式の1つであり,喘息死の要因でもある.したがって,喫煙に関連する性格特徴に焦点を当てた禁煙介入は,気管支喘息の死亡リスクの減少に寄与するといえる.しかし,喫煙に関連する性格特徴の先行研究では,統一された結果が得られていない.

    抑うつは,喫煙行動と相互に増強し合う関係にあり,気管支喘息の増悪因子でもある.さらに,抑うつはその病態の形成に性格特徴が影響する.そこで,今回は抑うつ状態の喫煙者と非喫煙者の性格特徴を調査比較し,結果から喫煙気管支喘息患者の性格特徴と,それに焦点を当てた禁煙介入を考察した.

    抑うつ状態の喫煙者は,非喫煙者よりも問題に対して閉鎖的な姿勢が強く,解決に至らない傾向があり,抑うつが持続することで喫煙が助長されると考えた.喫煙気管支喘息患者においても同様の傾向が想定され,積極的な問題解決への姿勢の強化が,抑うつの持続を防ぎ,禁煙の一助となると考えた.

  • 灰田 美知子
    2022 年 62 巻 2 号 p. 132-138
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー

    気管支喘息(以下,喘息)は心理社会的要因の影響が多い疾患であるが,そのさまざまな不定愁訴は心理社会的要因のみならず背景に存在する副腎機能低下症(adrenal insufficiency:AI)の関与も否定できない.本来の喘息の重症度に加え,過去の副腎皮質ホルモン使用による続発性のAIがあれば,それは不定愁訴の関与因子として疑う必要がある.AIは個人差も大きく実臨床での確定診断は困難である.今回,128例の喘息患者の副腎機能検査として①コルチゾールの日内変動,②24時間尿中コルチゾール,③ACTH負荷試験を実施し,その解析を行った.喘息患者の約15.6%にきわめて重症な副腎機能低下を認めたほか,CMI,YG性格検査,TEGなどを実施したところ,AIの重症度に応じて身体的自覚症状,疾病頻度などが高く,AIが,このような不定愁訴の背景にある可能性も考慮する必要があると考えられた.

  • 奈良本 駿, 小屋 俊之, 長谷川 隆志, 木村 陽介, 島 賢治郎, 青木 亜美, 林 正周, 酒井 菜摘, 田中 健太郎, 坪川 史人, ...
    2022 年 62 巻 2 号 p. 139-145
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー

    気管支喘息および慢性副鼻腔炎におけるうつ症状の合併は知られている.しかしながら治療に伴う精神症状の改善についての報告は少ない.今回は,抗IL-4受容体抗体であるdupilumabを導入した好酸球性副鼻腔炎(eosinophilic chronic rhino-sinusitis:ECRS)合併喘息症例に対して,導入前後のうつ症状の変化を解析した.ECRS合併喘息患者にdupilumabを導入した31例を解析した.導入前と導入後4カ月において,喘息コントロールテスト(ACT),喘息QOL質問表(AQLQ),Sino-Nasal Outcome Test(SNOT-22)およびうつ症状の評価として,Patient Health Questionnaire(PHQ)-9を用いて評価した.治療前のPHQ-9の値は,SNOT-22スコアに相関を認めた.Dupilumab使用4カ月後のPHQ-9スコアは有意に低下した.特にACTスコアの3点以上改善群およびSNOT-22スコアが明らかに減少した症例にPHQ-9の改善を認めた.現病の治療介入によって,うつ症状の改善を認めた報告は少なく,今回の結果は生物学的製剤の臨床的効果が高いことを示す傍証と考えられる.

  • 久徳 重和
    2022 年 62 巻 2 号 p. 146-150
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー

    気管支喘息に心理的要因が関与することは古くから知られている.小児重症難治性喘息の領域においては,よく計画された心理療法が優れた対症療法として機能するとの報告は数多くなされているが,現在においてもEBMに基づいた心理療法の確立には至っていないのが現状である.

    筆者は小児喘息患児の性格特性と呼気一酸化窒素濃度(FeNO)の関連について簡便な方法による横断的な調査を行い,概略下記のような結果を得ている.①小児喘息において「神経質・依存性・情緒不安」な性格特性とFeNOとの間に相関が認められた.②「神経質でなく,自立的で,情緒の安定した」患児ほどFeNOが低値である確率が高く,これらの性格特性を改善させることによりFeNOが改善する可能性が認められた.

    この結果は,小児喘息の養育者に対する生活指導(育児指導)が有用な心理療法になりうる可能性を示唆しているので,今回若干の考察を加えて報告する.

  • 丸岡 秀一郎
    2022 年 62 巻 2 号 p. 151-155
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー

    Dysfunctional breathing(DB)は,呼吸困難感,胸部圧迫感などを呈する呼吸パターン異常の病態である.喘息に併存し,quality of lifeの低下,重症化に関与していることから,DBを早期診断し,治療介入することは,喘息マネジメントにおいて非常に重要である.DBをスクリーニングするナイメーヘン質問票(Nijmegen Questionnaire:NQ)は,さまざまな言語に翻訳され,世界的に活用されているが,日本語版ナイメーヘン質問票(JNQ)はなく,本邦の喘息患者におけるDBの臨床的検証がなされていない.そこで,原著者の承諾を得て,JNQを作成し,喘息診療に活用しうる信頼性,妥当性の有無を検証した.喘息患者68人(平均年齢52.04±12.43歳)からJNQおよびACT(喘息コントロールテスト),ACQ(喘息のコントロール状態評価尺度),mini AQLQ(喘息患者のQOL評価尺度),PHQ-9(うつの評価尺度)などの質問票に対する回答を得た.JNQとmini AQLQとの相関解析では有意な負の相関を,PHQ-9とは正の相関を認めた.また,DB群(JNQ 23点以上),非DB群(JNQ 23点未満)における比較検定では,mini AQLQ,PHQ-9での有意差が認められた.JNQは本邦喘息患者におけるDBの評価に有用であることが証明された.

資料論文
  • ―質的分析による検討―
    三村 千春
    2022 年 62 巻 2 号 p. 156-166
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー

    本研究では神経性やせ症(AN)の自己物語に着目しながら発症から寛解までの心理的プロセスについて検討することを目的とし,寛解に至った4名のAN患者にインタビューを行った.質的研究法であるグラウンデッド・セオリー・アプローチ(Grounded Theory Approach:GTA)を参考とした分析を行い,発症から悪化までと,悪化から軽快,寛解までの心理的プロセスについて理論的モデル図を作成した.患者本人の食べられない背景には自己概念や他者との関係性の問題が複雑に絡み合っており,「食べることへの恐怖感」と「身体に対する危機感」との間で身動きが取れない可能性がある.本人が自己物語の中で「食べることの意味づけ」を行い少量でも食べたタイミングが治療において重要なポイントとなることが推測され,本人の主観的な物語に沿う形での心理的支援が重要である可能性が示唆された.

症例研究
  • 塚野 佳世子, 山﨑 千佳, 津久井 要, 佐貫 一成
    2022 年 62 巻 2 号 p. 167-175
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー

    長期間社会との関係をもたない「ひきこもり」は,現在大きな問題となっている.医療におけるその支援過程に関する報告はいくつかあるが,親と死別している症例で,生物心理社会的アプローチを統合的に論じた報告は,われわれの知る限りない.今回,35年間自宅にひきこもっていた49歳女性が,母親の死後,極度の低体重をきたし心療内科を受診し,入院治療の後,地域生活につながった症例を経験した.背景には自閉スペクトラム症が疑われた.安心感を促すために,簡潔に穏やかに話しかけ,メッセージを視覚化した.食事療法による身体的治療のみならず,生活技能の習得と喪の作業,そして地域での生活環境の調整が有用であった.ひきこもりへの支援は,身体的治療に加えて,心理社会的な支援が必要である.そして患者が安心できる環境を提供することがきわめて重要である.

地方会抄録
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