心身医学
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63 巻, 6 号
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巻頭言
第63回日本心身医学会総会ならびに学術講演会
特別講演
  • 村上 正人
    2023 年 63 巻 6 号 p. 497-498
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー
  • 鴨下 一郎
    2023 年 63 巻 6 号 p. 499-506
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー

    医療現場での実践と政治家としての経験から,心身医学が政策・行政に何を働きかけて,何ができたのかを紹介した.具体例として,心療内科が標榜科目になったこと,過労死や児童虐待への対策,公認心理師の国家資格化などを取り上げた.今日的な問題としては,ルッキズムと摂食障害,働き方改革,テレワークについて言及した.続いて,心身医学のデジタル化を取り上げ,デジタル化が進むことによる治療の可能性を紹介した.例えば,アプリなどが充実することで,患者自身のモニタリングが容易となり,行動変容が促される.また,デジタル化が加速することが,実は,孤立・孤独対策にも好影響を与える可能性を述べた.

    最後に,心身医学の立場から人が暮らしやすい環境として「コンパクトシティ」の実現を提案した.ほどよい規模の都市で,テレワークを活用しながら,自己実現を図る.そのような町づくりに,心身医学の知見を反映させるのが重要であると結論づけた.

教育講演
  • ―分類と考え方―
    牛田 享宏
    2023 年 63 巻 6 号 p. 507-511
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー

    痛みは誰しもが経験するものであるが,病気やけがが治っても痛みが残るなどすると非常に苦しい経験が続いてしまうことになる.国際疼痛学会(IASP)は3~6カ月続く痛みを慢性疼痛と定義しているが,長引いているケースにおいては器質的な要因だけでなく心理社会的な要因も関与して持続することも多い.そのため世界保健機関(WHO)とIASPでは国際疾病分類(ICD-11)の中でその分類を定めており,骨関節あるいは神経系の問題に直接的に起因するタイプを慢性二次性疼痛症候群とし,器質的な要因があってもそれだけで説明が困難なものを慢性一次性疼痛と分類している.慢性二次性疼痛症候群のメカニズムについては神経障害性疼痛や侵害受容性疼痛などのモデル動物実験などを通じて明らかにされてきている.一方で慢性一次性疼痛は臨床的には線維筋痛症,慢性腰痛,過敏性腸症候群,舌痛症などがカテゴリされるが,これらについては多彩な養育経験や環境因子などが関与しており少なからず器質的な要因もかかわって,神経系の感作が引き起こされる痛覚変調性疼痛の病態を形成していることも多い.現在,痛覚変調性疼痛についても基礎医学的なメカニズムの解明が進んできているところであり,それらを包括した形での治療の方向性の模索が必要と考えられる.

シンポジウム:身体疾患にともなう抑うつ,不安
  • 深尾 篤嗣, 岡田 宏基
    2023 年 63 巻 6 号 p. 512
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー
  • 奥見 裕邦
    2023 年 63 巻 6 号 p. 513-519
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー

    消化器疾患は,「脳腸相関」という言葉に代表されるように,精神症状との関連が強いとされる疾患群の1つである.古くは消化性潰瘍や潰瘍性大腸炎においても抑うつ,不安の合併は,しばしば指摘されていた.一方Rome Ⅳを中心に定義された機能性消化管疾患(FGIDs)は,現代心身医学の要の疾患であるが,その主たる病態として,心理社会的要因が消化器系の運動や内臓知覚に影響することが解明されつつある.実にFGIDs患者の2/3が主要な精神疾患を経験するとの報告もあり,心身相関の理解は治療的指針において,重要な要素となっている.

    本稿ではFGIDsと抑うつ,不安との関係性や,病態因子,臨床特性などを検討した報告を紹介し総括したうえで,抑うつ,不安と消化器疾患の心身相関のメカニズムに焦点を当てる.

  • 松田 能宣
    2023 年 63 巻 6 号 p. 520-524
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー

    呼吸器疾患患者において抑うつ,不安の頻度は高い.しかし,呼吸器疾患患者の抑うつ,不安に対する薬物療法は未確立である.また,慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者に対する高用量のベンゾジアゼピン系薬の使用は死亡との関連が報告されている.そのため非薬物療法が優先される.特に,COPDに対する標準治療である呼吸リハビリテーションは抑うつに対する効果も認められている.また,認知行動療法がCOPD患者の心理的苦痛を軽減させることが報告されており,日常臨床ではリハビリテーション部門,看護師,心理職と連携して多職種でアプローチすることでCOPD患者の悪循環認知モデルを改善しうる.このように,今後呼吸器疾患患者の緩和ケアにおける心理職の役割が期待される.呼吸器内科医を対象にアンケート調査を行ったところ,呼吸器内科医は心理職に「患者・家族の苦痛を早期に引き出し,心理的サポートを行うことで,心理的苦痛を軽減すること」を期待していることが明らかになった.

  • 豊田 英嗣
    2023 年 63 巻 6 号 p. 525-531
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー

    循環器疾患は心理的ディストレスを高率に誘発する.心理的ディストレスとはうつと不安を含む個人が経験する不快な主観的状態である.ディストレス,とりわけうつは心血管疾患の罹患と死亡率にも関連する.心血管疾患とうつの間には生物学的メカニズム,行動学的メカニズム,そして喪失体験などの要因が介在することが知られており,両者はお互い持続的に影響し絡み合う病態である.さらに,心血管疾患とトラウマとの間にも潜在的な増幅効果が示唆されている.トラウマは当然ながらディストレスをもたらしうる.すなわち,心疾患とディストレスを抱える人の深淵にトラウマの存在を洞察することが大切であろう.医療者はトラウマケアの視点をもつことにより,安心安全を与えることの意義を深く理解してより適切な態度でその人に寄り添うことができるであろう.

  • 浅野 麻衣
    2023 年 63 巻 6 号 p. 532-537
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー

    抑うつ・不安と内分泌・代謝疾患の関連は数多く指摘されている.甲状腺機能亢進症は古典的心身症の1つで,ストレスがバセドウ病の治療経過に影響することは広く知られるようになった.抑うつや不安もバセドウ病の治療経過に影響し,寛解率の低下と関連していることが示されている.糖尿病と抑うつは密接に関連し,糖尿病患者におけるうつ病の合併は多い.抑うつは,生理学的機序と行動医学的機序の両者を介して糖尿病患者の血糖コントロール悪化に影響する.また,diabetes distressやセルフスティグマが抑うつを介して血糖コントロールを悪化させる可能性も示唆されている.糖尿病と不安に関する研究はまだ少なく,不安がHbA1c高値やセルフケア行動の不足と関連するという報告がある一方,適度な不安が糖尿病合併症の進行に対してむしろよい影響を与える可能性も示唆されている.

  • ―リウマチ膠原病にともなう抑うつ,不安―
    三輪 裕介, 富岡 大, 三輪 (三田村) 裕子, 穂坂 路男
    2023 年 63 巻 6 号 p. 538-542
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー

    関節リウマチには一定の割合でうつ病を合併することが報告され,7~75%とばらつきが多い.その大半はSDS,CES-D,HADS,BDI,PHQ-9,HAM-Dなどの質問紙による調査であり,統一されていない.どの質問紙が最適か,cut off値をどこに設定するのが適切か,精神科医師による構造化面接との比較による質問紙法による妥当性はどの程度あるのか不明である.研究対象の背景の違い(時代,国,年齢,性別,人種,罹病期間など)によっても異なる.一方,関節リウマチの治療方法は時代とともに大きく進歩し,疾患活動性の改善とともに合併する抑うつ状態も改善することが予想されるものの明確ではない.また,他の膠原病疾患(シェーグレン症候群,線維筋痛症など)の合併は抑うつをさらに悪化させる.不安については,関節リウマチで増加する報告と変化はない報告とが混在し,使用する評価方法によっても結果が異なる.本稿ではこれらの問題点を整理し,今後の課題について考察する.

原著
  • 増田 彰則, 山下 協子, 松本 宏明, 平川 忠敏, 胸元 孝夫
    2023 年 63 巻 6 号 p. 543-556
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/01
    [早期公開] 公開日: 2023/09/29
    ジャーナル フリー

    小学生のインターネットゲームと睡眠,生活習慣,学業,気分の関連について横断的研究を行った.インターネットゲーム障害(internet gaming disorder:IGD)はDSM-5の診断基準を用いた.1~3年生の低学年男子19.4%,女子10.6%,4~6年生の高学年男子15.1%,女子7.6%がIGDに該当した.ゲーム時間が2時間を超えると入眠困難,起床困難,熟睡困難,昼間の眠気,悪夢をみる,朝食をとらない,勉強と運動が嫌い,やる気がない,イライラすることと有意な関連がみられた.IGD該当に低学年,男子,ベッドでのゲーム機使用,メディア機器の所有,使用ルールがない,遅い就寝時間がそれぞれ独立して関連していた.IGD該当になるオッズ比の上昇は,就寝時間が遅くなると高学年よりも低学年が,ベッドでゲームをする場合は男子よりも女子で大きかった.ゲーム機使用に関する指導指針を策定することが望まれる.

連載 心身医療の伝承―若手治療者へのメッセージ
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