日本小児腎臓病学会雑誌
Online ISSN : 1881-3933
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10 巻, 2 号
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原著
  • 平岡 政弘
    1997 年 10 巻 2 号 p. 113-115
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2009/06/15
    ジャーナル フリー
     尿路感染症は有意な腎障害を生じることがあり,この尿路感染症を予防するためにはそのリスクファクターをよく知ることが大切である。これには膀胱尿管逆流現象 (VUR) が最もよく知られているが,VUR以外にもいくつかの重要なリスクファクターが知られており,これらの因子をすべて考慮に入れる必要がある。
     男児ではVURと低形成腎,強度の生理的な包茎が多く,女児ではVURと膀胱の機能異常が多い。臨床的によく問題になるリスクファクターの診断法と対処法について述べた。
  • 柴田 佐和子, 長田 道夫, 重田 みどり, 日下部 守昭, 渡辺 照男
    1997 年 10 巻 2 号 p. 117-121
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2009/06/15
    ジャーナル フリー
     異形成腎と診断された胎児剖検例11例19腎 (在胎18週~35週) を用いて異形成腎の発症と瘢痕化に関する病理組織学的検討を行った。異形成腎発症早期に顕著な所見は被膜下にみられる多数の嚢胞形成であり,これら嚢胞の一部には分化した糸球体の痕跡を認め,糸球体由来と考えられた。さらに在胎25週未満の早期症例程, 嚢胞の占める割合が大きく,同一切片内において嚢胞面積と正常ネフロン面積は反比例する傾向がみられることから,胎生早期の嚢胞形成が異形成腎の形態を規定する要因と考えられた。すなわち異形成腎は,初めからネフロン誘導が障害されているのではなく,一度誘導されたネフロンが嚢胞化することにより,それ以降の間葉細胞増殖や尿管芽分岐を妨げ,新たなネフロン形成を阻害する機序が考えられた。また原始尿管の増生に伴って間質が増加し,原始尿管や嚢胞周囲の間質には細胞外基質テネイシンの発現を認め,テネイシンが腎瘢痕化に関与する可能性が示唆された。
  • 武田 修明, 西田 吉伸, 河村 一郎, 佐々木 博, 田中 陸男
    1997 年 10 巻 2 号 p. 123-127
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2009/06/15
    ジャーナル フリー
     小児期急性糸球体腎炎の大半を占める溶連菌感染後急性糸球体腎炎 (PSAGN) は,典型例以外に,さまざまな非典型例が存在し,多くの不全例や無症候例も認められる。過去21年間に当科で経験したPSAGN94例のうち,偶然の機会に尿異常が発見され腎生検などで本症と診断した6例について検討した。このような症例では,溶連菌感染の証拠と一過性の低補体血症の証明が診断上重要であり,従ってASOや血清C3の測定が大切である。さらに,IgA腎症や膜性増殖性腎炎などとの鑑別診断のために,腎生検を必要とすることがある。PSAGNでは,特に治療することなく大半が予後良好のため,これらの疾患との鑑別は重要である。なお,急性糸球体腎炎でみられるhumpsは,発症6カ月頃でも存在する可能性が考えられた。自験例の検討からも,偶然の機会に発見されるPSAGNは,必ずしもまれではないことを銘記すべきである。
  • 安岡 健二, 鈴木 隆, 西宮 藤彦, 山添 文, 原田 健二, 高田 五郎, 榎 正行
    1997 年 10 巻 2 号 p. 129-132
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2009/06/15
    ジャーナル フリー
     血栓性血小板減少性紫斑病 (TTP) は成人に多く,小児科領域では比較的まれな疾患である。TTPが心臓へ及ぼす障害としては微小血栓形成による梗塞と伝導障害が知られているが,心室壁の肥厚を合併したという報告は極めてまれである。今回我々は発熱,意識障害で発症し,心エコー上心室壁の肥厚を認めた小児例を経験したので報告する。
     症例は12歳女児,発熱で発症し,その後意識障害が出現,近医へ入院したが,症状増悪してきたため当科へ救急搬送された。入院時溶血性貧血,急性腎不全を認めTTPと診断,新鮮凍結血漿 (FFP) を置換液とした血漿交換療法を開始した。また,入院時に施行した心エコーで心室壁の肥厚を認めた。5日間連続で血漿交換施行したところ,血液生化学検査上改善を認め,隔日施行へ変更したが再び症状増悪し連日施行へ再変更した。発症後約3週間で症状は安定し,血小板も増加,発熱も軽度となり,心室壁の肥厚も改善した。
  • 宮澤 廣文, 渡部 めぐみ, 大川 雅子, 青塚 新一
    1997 年 10 巻 2 号 p. 133-138
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2009/06/15
    ジャーナル フリー
     腎疾患について尿中TNF-αおよび末梢血中単核細胞培養上清中TNF-αと腎症,特にネフローゼ症候群の経過及び治療との関連を検討した。単核細胞培養上清中TFN-αは活動期に高値で,非活動期には低下する傾向が見られた。尿中TFN-αは活動期,非活動期の差が認められず,単核細胞培養上清中のTFN-αとの関連も認められなかった。治療後の単核細胞培養上清中TFN-αと尿タンパク濃度は,治療前のそれに比較して,連動して低下する傾向が認められた。タンパク尿の再発時には単核細胞培養中TFN-αは高値で,ステロイドと免疫抑制剤にてコントロールされると低下する傾向にあった。単核細胞培養上清中TFN-αと尿タンパク濃度が,治療による動きと平行することから,TNF-αが腎における病態と関連している可能性が示唆された。以上のことから単核細胞培養上清中TFN-αの測定は腎疾患の治療の指標になると考えられる。
  • 東野 博彦, 木野 稔, 安原 昭博, 卯西 元, 小野 厚, 河野 修造, 海老名 亮二, 小林 陽之助, 松尾 信昭
    1997 年 10 巻 2 号 p. 139-143
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2009/06/15
    ジャーナル フリー
     下痢原性溶血性尿毒症症候群の腎外症状につ いて分析・検討した。
     (1) 肝臓 (28例): 腎不全の程度が強い程肝障害の程度も強かった。(2) 消化管 (1例): 大腸粘膜は肉眼的には浮腫状に肥厚・発赤し,組織学的には粘膜表層への小円形細胞の浸潤がみられた。発病初期には炎症性腸疾患との鑑別が重要である。(3) 中枢神経系 (7例): 重篤な症状として,全身けいれん,片麻痺,視野狭窄,失読・失書など多彩な症状がみられた。5例で発症1週間以内にけいれんが出現した。原因として,低Na血症・高窒素血症,vero毒素,医原性が考えられた。(4) 循環器 (1例): 左室機能低下がみられた。(5) 呼吸器 (2例): 透析の除水不良・成分輸血時の水分管理不良により肺水腫が発生した。
     D+HUSは病初期から厳重な水分管理 (特に血液製剤の投与は最小限にする) を行い,脳浮腫・肺水腫の発症を予防すべきである。
総説
  • 宮田 曠
    1997 年 10 巻 2 号 p. 145-158
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2009/06/15
    ジャーナル フリー
     尿路感染症はごく限られた「腎盂腎炎惹起性大腸菌」と呼ばれる菌株の感染により発症する。これらの菌株ではpathogenicity islandと呼ばれる複数の毒素遺伝子群をコードする染色体領域が存在する。なかでも,腎尿路粘膜細胞に特異レセプターを持つP-線毛とRTX toxin familyに属するα-ヘモリジンは尿路感染症の発症因子として重要である。腸管内に常在する非病原性大腸菌が病原性を獲得したり・消失して,腎盂腎炎惹起性大腸菌や腸管病原性大腸菌と変化するのはphageあるいはそれと同等の蛋白質の関与が想定される。
     小児の初回尿路感染症は基礎疾患の合併を認めない限り抗生剤の治療に比較的良好に反応する。しかし,若年者では反復し易く,治癒後も十分な経過観察が必要である。尿路感染症は基礎疾患の合併症と考えるべきもので,抗生剤の予防投与は発症原因を十分に解析して実施すべきものと推察された。
  • 成瀬 桂史, 中山 宏文, 清久 泰司, 弘井 誠, 藤枝 幹也, 倉繁 隆信, 円山 英昭
    1997 年 10 巻 2 号 p. 159-166
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2009/06/15
    ジャーナル フリー
     腎臓の複雑な器官形成機序の解明に,従来の形態学的観察に加え,免疫組織化学的観察法や分子生物学的技法が導入され,機能蛋白や産生細胞の同定や局在,およびその蛋白やmRNAの発現の調節機序など新しい知見が数多く得られてい る。本稿では腎臓の発生・分化に関する最近の免疫組織学的および分子生物学的研究のうち,特に細胞内骨格,細胞外マトリックス,接着分子,サイトカインに関するものを自験例を含め,文献的に整理した。その結果,腎臓の正常発生における細胞内骨格,細胞外マトリックス,接着分子とそれぞれの調節にあずかるサイトカインの役割,機能的意義や相互関係の重要性があきらかになり,さらに各種腎疾患の病態の解明にも,腎臓の発生のメカニズムが重要な手がかりとなることが期待される。
  • 香美 祥二, 近藤 秀治, 久原 孝, 安友 康二, 漆原 真樹, 北村 明子, 森本 雄次, 黒田 泰弘
    1997 年 10 巻 2 号 p. 167-171
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2009/06/15
    ジャーナル フリー
     糸球体腎炎におけるメサンギウム細胞 (MC) が発現するラミニン (LM)/コラーゲン (COL) レセプター,α1β1-インテグリンの役割を明らかにするために,培養MCやATS腎炎モデルを用いて検討した。インテグリン機能阻害実験により,MCのα1β1-インテグリンは細胞のラミニン,コラーゲンヘの接着や遊走とコラーゲン基質再編成に必須の接着分子であった。ATS腎炎では,MCのα1β1-インテグリンの発現推移はMCの形質変化や遊走活性の推移と一致して変化 した。ATS腎炎ラットヘの機能阻害抗α1-インテグリン抗体投与により,細胞増殖やメサンギウム基質蓄積を特徴とするmesangial remodelingが抑制された。以上より,形質変化MCが発現するα1β1-インテグリンは,メサンギウム増殖性腎炎の病理像形成に重要な役割を果たしている接着分子であり,この分子の発現制御が糸球体硬化に進行する異常なmesangial remodelingを抑制する新たな治療法の開発につながる可能性がある。
  • 綾 邦彦, 田中 弘之, 清野 佳紀
    1997 年 10 巻 2 号 p. 173-177
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2009/06/15
    ジャーナル フリー
     腎臓における副甲状腺ホルモン関連ペプチド (PTHrP) mRNAの発現量をRT-PCRにより,局在をin situ hybridizationにより検討した。マウス腎の発達段階における検討では,PTHrPmRNAは0日齢,1週齢で最も強く発現しており,腎におけるネフロン形成の終了する2週齢以降明らかに発現量は減少した。また,胎齢16日の腎では,S-shaped bodyやureteric budを含む未熟な腎皮質領域 (nephrogenic zone) をはじめ,腎盂上皮,集合管,尿細管,糸球体に強いシグナルを認めた。また,出生直後においても腎盂上皮,集合管,nephrogenic zoneに強いシグナルを認めた。これらから,PTHrPは腎の発達に関与していると考えられる。
  • —発足の経緯, 経過, 研究成果の報告—
    原 正則, 柳原 俊雄, 木原 達
    1997 年 10 巻 2 号 p. 179-184
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2009/06/15
    ジャーナル フリー
     近年,糸球体上皮細胞,Podocyteへの関心が高まりつつある。これはPodocyteが糸球体濾過機能に重要な役割を演じていることや糸球体障害の発症,進展機序にも深く関わっていることが明らかになりつつあることによる。我々もこれらの流れの中でPodocyte障害を臨床病理学的に評価したいと考え,一連の研究 を進めてきた1)~9)。そしてPodocyte障害の結果として,尿中にPodocyteが細胞としてあるいは細胞破片として出現することを見い出した。その際,尿中のPodocyteを検出するには尿沈渣の蛍光抗体法という極めて簡便な方法を用いた。我々の施設での尿中Podocyte検査は最初,一人の医師によってなされた。従って,検査結果の評価はバイアスがかかる可能性が十分にあった。そこで検査手技が簡便であることから,検査を病院の複数の検査技師にお願いし,同一の評価基準となるよう指導し,尿中Podocyte検査を依頼した。彼等は臨床データを知らされていないので,よりバイアスのかからない状況で検査が可能となった。そしてこのデータを解析してみると,驚いたことに彼等によって検査されても,一人の医師によって出された結果となんら変わるところがなかった。我々はこの結果に自信を得,これならば尿中Podocyte検査の評価基準を一定にすれば,どこの施設でも,誰が検査を行っても一定の結果が出せる,すなわち客観的な検査法となりうる可能性があると考えた。そこで,この考えを大手検査センターに話してみたところ,協力してもよいとの御返事をいただいた。そして全国いずれの施設からも同一の方法で検体を提出し,一カ所の検査センターで検査を行うという構想ができ上がった。そのためには研究会を設立し,全国多施設に協力をお願いして,この検査の有用性を検討するのが最善と考え,糸球体上皮細胞研究会が発足することになった。
  • 渡辺 徹
    1997 年 10 巻 2 号 p. 185-187
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2009/06/15
    ジャーナル フリー
     ヒトパルボウイルスB19 (B19) は,伝染性紅斑,溶血性貧血患者における無形性発作の原因ウイルスとして知られていたが,近年,多様な臨床像を示すことが明らかとなった。一方,以前よりB19によるアレルギー性紫斑病 (HSP) の報告が散見されていたが,HSPにおけるB19の陽性頻度の検討は少なく,その臨床像は不明であった。そこで当科入院のHSPにおけるB19の陽性頻度および臨床・検査所見について検討した。HSPにおけるB19陽性率は20%で,陽性例は陰性例に比し臨床症状が軽度で,血清LDHが高値であった。B19はHSP発症の重要な一因と思われた。
  • 服部 元史, David J Nikolic-Paterson, Robert C Atkins, 甲能 深雪, 川口 洋, 伊藤 克己
    1997 年 10 巻 2 号 p. 189-194
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2009/06/15
    ジャーナル フリー
     高脂血症 (脂質代謝異常) は腎障害惹起・進展因子の一つとして位置づけられ,その治療上の意義が認識されつつある。最近の多くの基礎的研究により,高脂血症 (脂質代謝異常) による腎障害惹起・進展過程では単球・マクロファージが中心的な役割を果たしていること,またその浸潤機序として,酸化リポ蛋白,接着分子,MCP-1,M-CSFなどが関与していること,さらに浸潤マクロファージによる糸球体障害機序についても部分的ではあるが明らかにされた。高脂血症 (脂質代謝異常) と腎障害との関連性については,未だ不明な点や検討しなければならない事項も多いため,今後とも精力的な研究が必要な分野である。
原著
  • 佐藤 忠司, 本浄 謹士, 太田 光博, 宮崎 澄雄, 内山 倫子, 杉森 甫
    1997 年 10 巻 2 号 p. 197-202
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2009/06/15
    ジャーナル フリー
     腎の形態・機能障害と先天性半身肥大を伴う腹部腫瘍の2例を報告した。1例目は10歳女子で左側先天性半身肥大と両側性海綿腎を有す。小さい右腎は高度の機能不全をきたし,大きい左腎は軽度の機能障害がみられた。超音波検査により右副腎腫瘍が発見され摘出した。病理診断は良性腺腫。現在22歳で腹部腫瘍の発現は以後にはない。2例目は11歳女子で主訴は潜血尿で,左側先天性半身肥大および皮膚所見等よりProteus症候群が疑われた。腎形態に著しい左右差があり,右腎は過成長,左腎は低形成と考えられた。6カ月毎の腹部超音波検査で15歳のとき固形腫瘤様の右卵巣腫瘍 (長径6cm) を発見した。18カ月後に腫瘍は直径13cmの多房性嚢腫に増大したため摘出した。(病理診断: 顆粒膜細胞腫,若年型,低悪性度)。
  • 笠原 多加幸, 奥川 敬祥, 早川 広史, 小野塚 淳哉, 樋浦 誠, 星 牧恵, 冠木 直之, 内山 聖, 小川 直子, 田中 泰樹
    1997 年 10 巻 2 号 p. 203-208
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2009/06/15
    ジャーナル フリー
     Munchausen syndrome by proxy (以下MSBPと略す) とは,養育者が健康な子どもを病人に仕立て病院を訪れ,不必要な検査や治療を繰返す状態であり,児童虐待の一種と考えられている。本症例では,発作性高血圧・顔面紅潮・血尿という主訴から褐色細胞腫や腎疾患を疑い,その検索目的に種々の検査を行ったが腫瘍の発見はできなかった。母子を注意深く観察したところ,母親が患児に市販の感冒薬を故意に服用させることで高血圧を出現させ,母親が自分の血液を患児の尿に混入して,血尿を出現させていたことが判明した。当科に入院後約4カ月でMSBPと診断できた。本症ではあらゆる訴えも起こし得るので,鑑別疾患の一つとして,常に念頭におく必要があると考えられた。本症では患児の家族自体が様々な問題を抱えていることが多く,母子分離をするだけでは問題は不十分で,精神科医の協力を得て母親自身ヘアプローチすることが大切である。また,その際に児の安全を守ることが最も重要であると考えられた。
  • 八木 和郎, 村上 佳津美, 日野 聡, 宮里 裕典, 高丘 将, 月山 啓, 福島 強次, 柳田 英彦, 村田 由佳, 桑島 宏彰, 林 ...
    1997 年 10 巻 2 号 p. 209-213
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2009/06/15
    ジャーナル フリー
     平成8年6月に河内長野市で,翌7月に堺市で腸管出血性大腸菌O-157による多数の出血性腸炎患者が発生し,それに合併した溶血性尿毒症症候群 (HUS) 計16例を我々は今回経験した。その内訳は,男児8例,女児8例で,年齢は1歳から10歳で,HUSの完全型 (溶血性貧血,血小板減少,急性腎機能障害の3主徴がそろっているもの) 9症例と不完全型 (3主徴の1つ,ないし2つを欠くもの) 7症例であった。治療として,10例にγ-グロブリン製剤を投与した。5例 (男児2例,女児3例でいずれも完全型) に血液透析を行い,そのうちの3例には血漿交換を併用した。いずれも15病日までには透析から離脱した。HUSのその他の随伴症状として膵炎,中枢神経症状,眼底出血,トランスアミナーゼの上昇を認めた例があったがいずれも軽快している。透析を施行した症例の中で2例に持続する蛋白尿を認め,腎生検を施行し,糸球体,間質に変化を認めた。今後も長期間の経過観察が必要と思われた。
  • 岡田 晋一, 佐々木 佳裕, 林 篤, 深沢 哲, 中川 孝子, 宇都宮 靖, 浦島 裕史, 花木 啓一, 白木 和夫, 笠置 綱清
    1997 年 10 巻 2 号 p. 215-219
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2009/06/15
    ジャーナル フリー
     高Ca尿症を合併し尿路結石を反復した偽性低アルドステロン症II型の1例を経験した。症例は14歳女性。5歳,14歳時に尿路結石をきたした。平成7年7月高血圧,高K血症,高Cl性代謝性アシドーシスを指摘され,精査により,本症と診断された。また高Ca尿症を合併しており,尿路結石との関連が疑われた。サイアザイド系利尿剤投与により,代謝性アシドーシス,高K血症は改善した。高Ca尿症と反復した尿路結石を合併した症例は過去に報告がなく貴重な症例と考えられるので報告する。
  • 朝長 香, 飯高 喜久雄, 石館 武夫, 西川 隆
    1997 年 10 巻 2 号 p. 221-224
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2009/06/15
    ジャーナル フリー
     特発性尿細管性蛋白尿症の母子例を含め3症例を報告した。小児の2例共男児で偶然の機会に尿検査にて異常が発見された。いずれもβ2ミクログロブリンおよび分子量約2.8万の尿中低分子蛋白が増加していた。全例糸球体濾過機能は正常で,発育障害は見られなかった。腎生検を施行した1例において,メサンギウム細胞の増殖はみられず,基質の増加が軽度見られ,またメサンギウム基質の硬化を認めた。
  • 辻 祐一郎, 高柳 隆章, 近岡 弘, 瀧田 誠司, 飯倉 洋治, 酒井 糾
    1997 年 10 巻 2 号 p. 225-229
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2009/06/15
    ジャーナル フリー
     膀胱尿管逆流現象 (以下VUR) 患児における腎血流速度の検討をおこなった。その結果,収縮期最高血流速度 (以下Vmax) において,腎内に瘢痕,萎縮を認める腎では対側腎と比較して有意の血流速度の低下を認めた。また,瘢痕,萎縮を認めない症例においてVURを認める腎と対側腎 (両側VUR症例では,gradeの高い腎と低い腎) でのVmaxの比較では,有意差を認めなかった。以上の結果より,瘢痕,萎縮をきたしたVUR患児では,血流速度の計測が有用な補助診断法となると考えられた。
  • 宇都宮 靖, 鞁嶋 有紀, 塩崎 由美子, 岡田 晋一, 佐々木 佳裕, 林 篤, 中川 孝子, 白木 和夫, 笠置 綱清
    1997 年 10 巻 2 号 p. 231-236
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2009/06/15
    ジャーナル フリー
     非IgA型びまん性メサンギウム増殖を伴うネフローゼ症候群の4例を経験し,臨床病理像とステロイド治療に対する反応性を検討した。全例幼児期発症で,全例血尿,変形赤血球,赤血球円柱,硝子円柱を,2例に明らかな肉眼的血尿を認めた。4例中3例はメサンギウム細胞の増殖が中等度以上であったがステロイドに対し良好な反応性を示した。残りの1例は,メサンギウム細胞の増殖の程度が軽度にもかかわらずステロイドに対する反応性は不良であり,プレドニン投与4週の時点で寛解が得られないためエンドキサンを併用した。全例寛解後のプレドニン減量,あるいは中止によって蛋白尿の増悪やネフローゼの再発を認めなかった。非IgA型メサンギウム増殖を伴うネフローゼ症候群に対するステロイドに対する反応性は必ずしも肉眼的血尿やメサンギウム増殖の程度には関係せず,免疫抑制剤の併用を必要とする症例は存在するもののおおむね良好と思われた。
総説
  • 吉矢 邦彦, 飯島 一誠, 野口 茎子, 井上 祐司, 中村 肇, 吉川 徳茂
    1997 年 10 巻 2 号 p. 237-239
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2009/06/15
    ジャーナル フリー
     小児期の急性腎不全症例90例を臨床病理学的に検討しその管理対策を考察した。91%は腎機能正常で予後良好であった。9%は予後不良であった。予後は原疾患とその治療に対する反応性に依存していた。病理組織学的には血管病変の強い症例や半月体形成例が予後不良であった。
     小児期の急性腎不全症例を管理する上で,腎生検は治療法や予後を決定する不可欠な検査と考えられた。腎生検の適応は,臨床的に診断の決定できない症例や治療方針の決定できない症例に対して早期に施行することが必要であると考えられた。
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