日本小児腎臓病学会雑誌
Online ISSN : 1881-3933
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13 巻, 2 号
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原著
  • 富沢 修一, 早川 広史, 福島 愛, 星名 哲, 藤中 秀彦, 大久保 総一朗, 内山 聖, 乾 拓郎, 井口 光正, 神谷 齊, 岡部 ...
    2000 年 13 巻 2 号 p. 85-92
    発行日: 2000/12/10
    公開日: 2008/08/27
    ジャーナル フリー
     16歳以上の小児慢性特定疾患に含まれる慢性腎疾患患児を対象に,学校生活や社会生活についてのアンケート調査を行った。
     学校生活の悩みについて,教師の無理解に苦しんだことがある例は10.9%,学校と医療機関との連携が悪く嫌な思いをしたことがある例は6.5%,無理解・いじめなどに苦しんだことがある例は16.8%,部活動などに著しい制約や支障を生じたことがある例は32.1%であった。こころの問題に直面した経験があった例は37.4%であった。
     学校や社会に対する情報発信,運動制限の見直し,こころの問題に対する主治医の対応は慢性腎疾患患児を長期に治療していく上で重要な課題と考えられた。
総説
  • 舘山 尚, 和賀 忍, 中畑 徹, 田中 完
    2000 年 13 巻 2 号 p. 95-102
    発行日: 2000/12/10
    公開日: 2008/08/27
    ジャーナル フリー
     IgA腎症における糸球体メサンギウム基質へのIgA沈着機序は不明である。我々はこれまで,IgA結合性のフィブロネクチン (FN) 断片化物を含むFNのカテプシンD処理物とIgAの混合物を,FNの細胞外基質への取り込みを検討する条件下で処理すると,IgAが細胞外基質に沈着することを報告した。今回,10例の患者由来IgAを同様の条件で処理し培養ヒト線維芽細胞細胞外基質に沈着するか,この沈着にはFNがかかわっているかを検討した。患者検体全例で小塊状,線維状のIgA沈着を認めた。添加検体を抗ヒトフィブロネクチン抗体で前処理するとIgA沈着は減弱あるいは消失した。FN断片化物を加えると患者においてIgA小塊物の増多,拡大,新規線維状沈着物の形成が見られた。血清IgA添加を2回繰り返すと患者においてのみ沈着物の増多が見られた。以上から,IgA腎症患者に見られるIgAはFNを介した細胞外基質沈着性を有することが示唆された。
  • 飯島 一誠, 浜平 陽史, 小林 明子, 中村 肇, 吉川 徳茂
    2000 年 13 巻 2 号 p. 103-106
    発行日: 2000/12/10
    公開日: 2008/08/27
    ジャーナル フリー
    【目的】 近年,ラットのシクロスポリン (CyA) 慢性腎障害モデルが確立され,少なくとも動物モデルでは,CyAにより腎内renin-angiotensin system (RAS) が活性化され,細動脈病変 (CAA) や間質の線維化などの尿細管間質病変が形成されると考えられている。本研究の目的は,ヒトのCyA慢性腎障害におけるintrarenal RAS活性化の役割を明らかにすることにある。
    【方法】 頻回再発型あるいはステロイド抵抗性ネフローゼ症候群でCyA投与後完全寛解となった患者で,CyAを2年間以上服用し,CyA投与前後で腎生検を施行しえた26症例を対象とし,CyA投与前後の腎生検組織パラフィン切片を用いて,レニンの免疫染色を行い,レニン陽性細胞数とCyA慢性腎障害,特にCAAおよび間質の線維化との関連について検討した。
    【結果】 (1)CAAは26例中11例 (42%) に,間質の線維化も26例中11例 (42%) に認められた。(2)レニン陽性細胞は,CyA投与前は主として解剖学的に明らかなJGA内に認められたが,CyA投与後にはJGAより距離のはなれた細動脈内にも認められ,レニン陽性細胞のdistributionの変化が認められた。(3)CyA投与後は投与前に比して,糸球体あたりのレニン陽性細胞数は有意に増加した (1.26±0.24 vs. 4.30±0.40,p<0.0001)。(4)CAAが認められる症例は,CAAのない症例に比して,レニン陽性細胞数は有意に多かった (5.16±0.59 vs. 3.67±0.48,p=0.031)。(5)CyA慢性腎障害のためCyAを中止した後,レニン染色も含めたCyA慢性腎障害の再評価をしえた7症例では,CyA中止により,レニン陽性細胞数は有意に減少し (4.18±0.69 vs. 2.10±0.25,p=0.018),CAAも改善した。(6)一方,間質の線維化の有無とレニン陽性細胞数との間には有意な関連はなく,CyA投与中に長期間高度蛋白尿を呈した症例に,有意に間質の線維化を認める頻度が高く (64% vs. 17%,p=0.021),その程度も高度であった (fibrosis score: 0.71±0.16 vs. 0.17±0.11,p=0.015)。
    【結論】 小児のネフローゼ症候群に対するCyA長期投与は,ラットモデルと同様に,腎内RASを活性化し,CAAの発症に関与している可能性があるが,間質の線維化と腎内RAS活性化の関連は明らかではなく,CyA投与中の長期間の高度蛋白尿がその発症のリスクファクターのひとつであると考えられた。
  • 石原 令子
    2000 年 13 巻 2 号 p. 107-112
    発行日: 2000/12/10
    公開日: 2008/08/27
    ジャーナル フリー
     トレハラーゼはトレハロースをグルコースに分解する酵素で,ヒトでは小腸・腎臓の刷子縁膜に局在し,腎尿細管障害により尿中に排泄される。これまで尿中活性のみでその病態的意義が推察されてきたが,酵素活性は失活する可能性があり,測定法も煩雑という問題があった。そこで本酵素のモノクローナル抗体を作成しELISAによる定量法を確立した。また健常児と腎疾患患児とを対象として,ELISAによる酵素量と比色法による活性とを測定した。酵素活性はネフローゼ症候群や慢性糸球体腎炎の蛋白尿を有する時期と尿細管障害群とで正常群に比較して有意に高く,酵素量では6.2倍から260倍とさらに高値であった。急性腎不全症例では活性が正常範囲内でも定量値は正常群の27倍で,酵素活性と定量値とは必ずしも相関せず,活性では推察できない尿細管障害が明らかとなった。ELISAによる酵素定量は,簡便で感度の高い腎尿細管障害マーカーと考えられた。
  • 宇田川 淳子, 倉山 英昭, 松村 千恵子, 秋草 文四郎
    2000 年 13 巻 2 号 p. 113-117
    発行日: 2000/12/10
    公開日: 2008/08/27
    ジャーナル フリー
     学校検尿の腎不全予防の意義を確認する目的で,千葉市学校検尿で発見された腎疾患の治療予後を1975~1985年・A群と1985~1994年・B群にわけ検討した。A群に比べ,B群では慢性腎炎 (特にIgA腎症) に対し積極的に治療を行った。
     慢性腎炎の発症率は優位差を認めなかったが,同じ経過観察期間でA群に10例 (慢性腎炎8例,腎低形成1例,原疾患不明1例) B群に2例 (腎低形成2例) の腎不全例を認めた。積極的に治療を行ったB群には慢性腎炎での腎不全例を認めなかったことは,小児期に潜在する慢性腎疾患の早期発見・治療が腎不全防止に役立っていることを示すものである。学校検尿は健康教育の一貫であると同時に,腎不全防止効果として有用であることが示唆された。
原著
  • 松永 明, 早坂 清
    2000 年 13 巻 2 号 p. 119-124
    発行日: 2000/12/10
    公開日: 2008/08/27
    ジャーナル フリー
     急性発症の非典型的なIgA腎症は,高度な尿蛋白,肉眼的血尿を伴うて急性に発症し,糸球体基底膜の融解像やメサンギウム領域や糸球体末梢血管係蹄壁へのIgAの沈着を認める。重篤な臨床症状と強い組織病変を呈するにもかかわらず,必ずしも予後不良な疾患ではない。今回我々は,肉眼的血尿を伴うネフローゼ症候群で急性発症したIgA腎症の1女児例を経験した。抗凝固・線溶療法,ステロイド療法,抗血小板療法に加え,アンギオテンシン変換酵素阻害剤 (ACEI: angiotensin converting enzyme inhibitor) を投与した結果,治療開始後4カ月で尿蛋白は消失し臨床症状の改善を認めた。急性期の腎生検では,基底膜の二重化や網状化,菲薄化,不規則化などの基底膜融解像やメサンギウム領域および糸球体末梢血管係蹄壁にIgAの沈着が認められたが,1年後の追跡腎生検では組織学的な改善が確認された。ACEIの効果は,腎糸球体内血行動態を改善することで腎糸球体基底膜のsize selectivity障害を緩和し,さらに腎糸球体基底膜のcharge barrierの修復にも関与すると言われている。したがって,本症例の様な腎糸球体基底膜病変を特徴とする急性発症型のIgA腎症にACEIは有効であると考えられる。
  • 佐藤 忠司, 田代 克弥, 在津 正文, 宮崎 澄雄, 徳田 雄治, 真崎 善二郎
    2000 年 13 巻 2 号 p. 125-130
    発行日: 2000/12/10
    公開日: 2008/08/27
    ジャーナル フリー
     PAX2遺伝子異常は腎と眼の発生学的異常 (形成障害) をきたすことが近年明らかにされた (Renal-coloboma syndromeまたはHuman PAX2 mutation syndrome)。私たちは停留精巣を伴う腎低形成と視神経乳頭形成障害の症例の遺伝子解析を行い,PAX2遺伝子異常 (Exon2: G619 insertion) を同定し,RCS (Renal-coloboma syndrome) の孤発例と診断した。症例は初診時7歳男子。主訴は停留精巣で,精巣固定の術前に偶然腎機能低下が発見された。また視力低下の訴えはなかったが網膜剥離を伴う視神経乳頭形成不全がみられた。以後,腎機能低下が進行し,15歳の現在,末期腎不全に至った。
  • 齊川 節子, 河野 智康, 仲里 仁史, 遠藤 文夫, 辛島 眞如, 樋口 洋一, 田口 尚, 服部 新三郎
    2000 年 13 巻 2 号 p. 131-136
    発行日: 2000/12/10
    公開日: 2008/08/27
    ジャーナル フリー
     4歳時に全身性エリテマトーデス (以下SLEと略す) を発症し,その後まもなくループス腎炎を合併した10歳の難治性ループス腎炎の女児に対し,Mycophenolate Mofetil (以下MMFと略す) の投与を行った。投与前の尿蛋白11.6g/日,血清アルブミン2.4g/dl,血清C3c37.4mg/dl,抗dsDNA抗体38IU/mlと活動性が高かったが,MMF投与開始後3週後から尿蛋白が減少し始め,10週後には著明に減少し1g/日以下となった。C3cの正常化と,抗dsDNA抗体も陰性化しループス腎炎を始めとするSLEの血清学的活動性に対しても良好なコントロールを得るに至った。本例のような難治性ループス腎炎に対してMMFは今後考慮すべき薬剤の一つと考えられる。
  • 里村 憲一, 山本 勝輔, 道上 敏美, 毛利 育子, 細川 尚三
    2000 年 13 巻 2 号 p. 139-144
    発行日: 2000/12/10
    公開日: 2008/08/27
    ジャーナル フリー
     先天性ネフローゼ症候群 (CNS) を4例経験した。中心静脈カテーテル (CVC) からアルブミン補給を行いながら3~4カ月で片腎摘出を行い,離乳が完了する1歳頃に残腎を摘出して腹膜透析 (PD) に移行し,5歳頃に腎移植を行う方針で治療を行った。1例は感染症で死亡したが,他の3例は予定通り腎移植を行うことができた。CVC留置ののべ総日数は1,782日間で,カテーテル感染症を計10回認めた。PDののべ総日数は4,927日間で腹膜炎を計4回認めた。カテーテル留置にともなう血栓形成による中・大血管の閉塞は認めなかった。現在では発達の遅れはなく,身長もやや小柄であるが全員-2SD以内である。従来は,予後不良とされていたCNS患児でも,精神や身体発育に大きな遅れもなく治療し得たので報告する。
  • 奥村 謙一, 吉川 賢二, 長谷川 昌史, 吉川 聡介, 原 啓太, 河上 千尋, 小川 哲, 田辺 卓也, 小國 龍也, 山城 国暉, 余 ...
    2000 年 13 巻 2 号 p. 145-149
    発行日: 2000/12/10
    公開日: 2008/08/27
    ジャーナル フリー
     (1)当院において経験した急性巣状性細菌性腎炎 (acute focal bacterial nephritis以下AFBN) を発症した患児8例を報告した。
     (2)AFBNは比較的新しい概念の疾患であり,診断には超音波検査,造影CT,99mTc-DMSAレノシンチ等の画像所見が有用であった。
     (3)小児のAFBNの原因として膀胱尿管逆流症 (VUR) は重視されてきたが,今回の検討ではVURは8例中1例しか見られなかった。
     (4)AFBNは抗生剤投与にて症状改善していく予後良好な内科的な疾患であるが,早期診断,早期治療が重要と考えられた。
     (5) 原因不明の重症細菌感染症の場合,検尿一般,尿培養陰性例においてもAFBNを念頭におき超音波検査,置影CT,99mTc-DMSAレノシンチなどの画像診断の重要性が示唆された。
  • 神田 貴行, 山藤 加奈, 常井 幹生, 星加 忠孝, 大谷 恭一, 中村 勇夫, 古川 丈文, 岩倉 秀雅, 越智 英明, 芦原 勝之
    2000 年 13 巻 2 号 p. 151-156
    発行日: 2000/12/10
    公開日: 2008/08/27
    ジャーナル フリー
     今回私達はサルモネラ感染症による急性腎不全の1例を経験したので報告した。症例は7歳女児。平成11年9月14日から高熱,頻回の水様性下痢,嘔吐があり同日近医を受診,急性胃腸炎と診断され投薬を受けた。9月16日上記の症状が続き,全身状態不良のため当科に紹介され入院となった。患児は入院時顔色不良で血圧が低値でありショック状態であった。乏尿,筋原性酵素ならびに尿素窒素,クレアチニンの上昇から横紋筋融解症,急性腎不全と診断した。血液透析を2回施行したのち腎機能は徐々に軽快した。経過中播種性血管内凝固症候群 (DIC) を合併したが,軽快し第32病日に退院した。便培養でSalmonella typhimuriumが検出された。本症例ではDICや横紋筋融解症や高度の脱水などの様々な要因が重なって急性腎不全が発症したと考えられる。本症のような例はまれであり,若干の文献的考察を加えて報告した。
  • 辻 祐一郎, 阿部 祥英, 久野 正貴, 高柳 隆章, 近岡 弘, 山口 公美, 飯倉 洋治, 岡部 均, 野末 富男, 小林 昭夫, 酒井 ...
    2000 年 13 巻 2 号 p. 157-162
    発行日: 2000/12/10
    公開日: 2008/08/27
    ジャーナル フリー
     シェーグレン症候群の姉妹例にプレドニソロンを用いたステロイド療法を施行し良好な経過を得た。シェーグレン症候群の治療法はいまだに確立されたものがなく,特に小児において,またsubclinicalな症例ではどのように治療するかは問題となる。我々はそのような1姉妹例に対して,組織学的な結果をふまえ,ステロイド療法を行った。その経過とあわせ,本症候群における治療法の選択について考察を加え報告する。
  • 金子 一成, 榊原 オト, 田原 加奈子, 山岸 由佳, 長岡 理恵子, 大友 義之, 山城 雄一郎
    2000 年 13 巻 2 号 p. 163-166
    発行日: 2000/12/10
    公開日: 2008/08/27
    ジャーナル フリー
     小児の膀胱尿管逆流現象 (以下,VURと略) における99mTc-DMSA腎シンチグラフィー (以下,本法と略) の必要性を検討した。
     対象はVUR患児26名 (男児22名,女児4名,平均月齢; 67ヵ月) の61腎で,本法による分腎摂取率を測定し以下の結果を得た。(1)VURの程度と腎摂取率には有意な負の相関関係がある,(2)腎摂取率低下例の頻度はVURが軽度 (I-II度) の場合,約15%,VURが高度 (III-V度) の場合,約34%になる,(3)しかし腎摂取率低下が認められても逆流防止術によって改善が期待できる。
     以上より,本法は軽度VURにおいて全例に行う必要はないが,高度VURでは逆流腎症の評価や術前・術後の腎機能評価として積極的に施行されるべきであると思われた。
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