日本小児腎臓病学会雑誌
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15 巻, 2 号
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原著
  • 中林 佳信, 清水 次子
    2002 年 15 巻 2 号 p. 83-87
    発行日: 2002/11/30
    公開日: 2008/02/29
    ジャーナル フリー
     1980年1月から1996年12月までの17年間に,当科に入院した川崎病180例を入院時血清ナトリウム (Na) 値によって,Na正常群 (Na≥135mEq/l) 102例とNa低下群 (Na<135mEq/l) 78例に分け,その臨床像,検査値,心合併症について検討した。両群で年齢,性別,発熱期間に有意差は認めなかったが,Na低下群で有意に下痢の合併例,ガンマグロブリンの投与例が多かった。検査値では入院時好中球数,ヘモグロビン,総蛋白,CRPで有意差が見られた。冠動脈病変の合併は,Na低下群で21例 (26.9%),Na正常群で14例 (13.7%) と有意にNa低下群で多かった。またNa低下群の1例にSIADHの合併を証明した。川崎病に合併する低Na血症は決して稀なものではなく,臨床的には炎症反応の強いものに多く,冠動脈病変を早期に予測する指標になり得ると考えられた。
  • 近藤 秀治, 香美 祥二, 漆原 真樹, 北村 明子, 佐竹 宣法, 泉 啓介, 黒田 泰弘
    2002 年 15 巻 2 号 p. 89-92
    発行日: 2002/11/30
    公開日: 2008/02/29
    ジャーナル フリー
     ステロイド治療により臨床症状と検査所見の改善がみられたぶどう膜炎を伴う間質性腎炎症候群 (TINU) の1女児例を経験した。本症例の生検腎組織について免疫染色法で肥満細胞を同定し,間質病変におけるその役割を検討した。肥満細胞は,腎間質線維化部位に浸潤し,治療後の組織所見の改善とともに浸潤肥満細胞数は減少した。この結果からTINUの間質障害に肥満細胞が関与する可能性が示唆された。
  • 松永 明, 椎原 隆, 木村 敏之, 早坂 清
    2002 年 15 巻 2 号 p. 95-98
    発行日: 2002/11/30
    公開日: 2008/02/29
    ジャーナル フリー
     近年シクロスポリン (CyA) は,難治性ネフローゼ症候群へ広く用いられているが,一方でさまざまな副作用が報告されており,Posterior reversibel encephalopathy syndrome (PRES) は,CyAの注目すべき副作用のうちの一つである。
     今回,我々はCyAの投与によりPRESを発症したネフローゼ症候群の一男児例を経験した。症例は9歳5ヵ月の頻回再発型ネフローゼ症候群の男児で,6回目の再発に際し経口ステロイドにCyAを併用した。CyA投与後11日目に頭痛,嘔吐,痙攣発作を来たし,当科に入院したが臨床症状は発症当日のうちに無治療で消失した。CyAによる神経障害を考え,同薬剤を中止した。入院翌日に施行した頭部MRIで右頭頂葉から後頭葉に異常所見を認めたが21日後には消失し,PRESと診断した。本症例では,拡張期の高血圧と血清マグネシウムの低下が確認され,PRES発症への関与が考えられた。
  • 村上 智彦, 上辻 秀和, 中野 智巳, 金 一, 山口 旭, 三馬 省二, 本田 雅敬, 宍戸 清一郎, 平 康二, 下山 弘展, 中島 ...
    2002 年 15 巻 2 号 p. 99-104
    発行日: 2002/11/30
    公開日: 2008/02/29
    ジャーナル フリー
     症例は2歳7ヵ月,男児。生下時から尿道下裂,停留睾丸を指摘されていた。1歳4ヵ月,腸重積で他院入院の際に,蛋白尿,低蛋白血症を指摘され,ネフローゼ症候群と診断。ステロイド,シクロスポリンにより加療されたが薬剤抵抗性を示し,経過中腎機能低下をみたため,当科転院となった。1歳6ヵ月,開放腎生検とともに腹膜透析を開始した。生検での組織像はdiffuse mesangial sclerosisを呈し,また遺伝子解析でWT1遺伝子exon9にheteromutationを認め,Denys-Drash症候群と確定診断した。腹膜透析導入後もCre.値は高値で推移し,体重増加も不良であった。2歳6ヵ月,都立清瀬小児病院にて両側腎摘出術を,2歳7ヵ月,母方祖父をdonorとした生体腎移植を施行した。術後すみやかにCre.値の低下をみ,その後はm-PSL,タクロリムス,ミゾリビンの3剤による免疫抑制療法を施行し,拒絶反応なく良好に経過している。今後とも拒絶反応や精巣腫瘍の発生に注意し経過観察を行っていく。
  • 木村 佳代, 川村 智行, 瀬戸 真澄, 藤丸 季可, 村上 城子, 山田 浩, 山野 恒一
    2002 年 15 巻 2 号 p. 107-113
    発行日: 2002/11/30
    公開日: 2008/02/29
    ジャーナル フリー
     小児ネフローゼ症候群の予後は一般に悪くないものととらえられているが,治療の副作用や再発への不安は常に大きく存在する。我々はこれらのストレスに良好に対応できるよう患者会「そらまめの会」を設立した。今回その活動報告とそこでの患者家族の介護負担に注目したアンケート結果を検討した。患者および家族の総合的な現状は比較的良好と判断されていたが,患者の現状は27%が大きな負担であると考え,8.1%は家族自身にも大きな負担であると感じていた。家族の総ストレス度は(1)患者が低年齢,(2)短い罹病期間,(3)最終再発から半年以内,(4)再発回数5~9回の各群で高い傾向があった。家族は将来の不安を大きく抱えており,日常管理の方法や治療法選択などにも充分な理解が得られるような説明を行う必要が感じられた。また,これらの対応には患者間での相互援助も必要であり,「そらまめの会」がその働きかけに対して活用されることを期待する。
  • 洪 真紀, 芦田 明, 永井 章, 小田 昌良, 吉川 賢二, 中倉 兵庫, 玉井 浩
    2002 年 15 巻 2 号 p. 115-120
    発行日: 2002/11/30
    公開日: 2008/02/29
    ジャーナル フリー
     腎挫傷後に尿管内血腫嵌屯による水腎症の急性憎悪をきたした4歳男児例を経験した。患児は4ヵ月時に右水腎症に対し右腎盂尿管形成術をうけた既往をもち,右側腹部打撲後に肉眼的血尿を呈し入院した。血液検査異常なく,腹部エコーで軽度右水腎症を認めるのみであったことから腎挫傷 (Ia) と診断しトラネキサム酸1000mg/日を含む止血剤の投与を開始した。第3病日血尿は消失し輸液を中止した後で腹痛,嘔吐の症状が出現し,エコー,排泄性腎盂造影で著明な腎盂拡大を認め水腎症の急性憎悪と診断した。尿中への血腫排泄直後から腹部症状は消失し水腎症の憎悪原因は尿路内血腫であった。この原因として,腎挫傷が水腎症側であり尿流の鬱滞を認めたこと,治療に用いたトラネキサム酸の抗線溶作用により血腫形成が助長されたことが考えられ,腎出血治療に際し尿路内血腫の形成を阻止するためには十分な利尿と慎重な止血剤の投与が必要と考えられた。
  • 中畑 徹, 鈴木 康一, 田中 完, 上田 知実, 佐藤 啓, 佐藤 工, 高橋 徹, 伊藤 悦朗, 米坂 勧
    2002 年 15 巻 2 号 p. 123-127
    発行日: 2002/11/30
    公開日: 2008/02/29
    ジャーナル フリー
     乳児期に末期腎不全に至った若年性ネフロン癆 (JN) の1男児例を経験した。症例は3ヵ月の男児で,哺乳力不良,呼吸困難が出現し心エコー検査で肥大型心筋症と診断された。抗心不全療法により全身状態は改善したが腎機能障害が進行し,生後7ヵ月の時点で腹膜透析が導入され,開放腎生検の所見から乳児型JNと診断された。JNは予後不良の遺伝性腎疾患であるが,一般に末期腎不全への進行は思春期前後とされる。一方,乳児期に短期間で末期腎不全へ進行する症例も報告されており乳児型ネフロン癆: infantile nephronophthisis (IN) と呼称されているが本邦での報告は極めて少なく,本症例は第4例目である。INではさまざまな全身合併症が報告されているが,肥大型心筋症の報告は検索した範囲では1例のみであった。本症例では腎不全よりも肥大型心筋症による心不全が先行発症していることから,肥大型心筋症もINに伴う合併症の一つである可能性が示された。
  • 月舘 千寿子, 日高 啓量, 加藤 剛二
    2002 年 15 巻 2 号 p. 129-133
    発行日: 2002/11/30
    公開日: 2008/02/29
    ジャーナル フリー
     2回目の同種骨髄移植 (allogenic BMT) の7ヵ月後,ネフローゼ症候郡を発症したムコ多糖症I型 (Hurler症候郡) を経験した。BMT 5ヵ月後から自己免疫性溶血性貧血と血小板減少性紫斑病を発症しており,ステロイド減量過程で急激な低蛋白血症と乏尿をきたした。臨床所見と検査所見からは病因の特定は困難であったが,腎生検にて骨髄移植後の血栓性微小血管症 (thrombotic microangiopathy, TMA) と診断した。細動脈の中膜変性は主にタクロリムスの細胞毒性によると考え,同薬を中止した。メチルプレドニゾロンのパルス療法とステロイド経口が著効し2週間で蛋白尿は消失し,6ヵ月後ステロイドを離脱できた。糸球体病変については全身放射線照射や,慢性移植片対宿主病 (chronic graft-versus-host disease, chronic GVHD) も関与していると思われる。
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