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坂野 堯, 大田 敏之, 笠置 綱清
2003 年 16 巻 2 号 p.
75-81
発行日: 2003/11/30
公開日: 2007/10/31
ジャーナル
フリー
中国四国小児腎臓病学会幹事にて1998年12月31日の時点で15歳以下の小児慢性腎不全患児の治療,生活管理,社会生活を検討した。対象症例は46例で保存期症例は16例,透析症例は22例,腎移植例8例であった。保存期症例では食事制限や運動制限に関して医師による差異が推察された。透析は腹膜透析がほとんどであり,一部に著明なiPTH高値や透析不足がみられたが、概ね良好に管理されていた。KT/Vureaは症例の半数のみに測定されていたが,今後,指標となる値を設定する必要がある。3年後には保存期16例中6例が透析,2例が腎移植を受けており,透析22症例の中8例が腎移植を受けていた。積極的に腎移植がおこなわれていると推察されるが,10例中2例に腎機能低下がみられた。透析22例中2例が死亡していた。慢性腎不全患児の社会生活は概ね良好であったが,心理的な問題点に関しては今後の詳細な検討が必要である。
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木原 裕貴, 石川 暢恒, 古江 健樹, 大西 博之
2003 年 16 巻 2 号 p.
83-87
発行日: 2003/11/30
公開日: 2007/10/31
ジャーナル
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症例は9歳の女児。発熱,左側腹部痛,肉眼的血尿にて発症し,サルモネラO9群による左腎盂腎炎と診断した。発症初期,ジクロフェナクを使用していた。BUN60mg/dl,Cr2.3mg/dlと急性腎不全を来したが,乏尿はなく,保存的療法にて改善した。左の膀胱尿管逆流,外尿道口狭窄があったが,外科的に外尿道口狭窄を解除した後,膀胱尿管逆流は消失した。経過中,尿蛋白が約10日間持続し,FENaの上昇もあったことから,腎前性腎不全とともに腎性腎不全の要素も考えられた。重症の下痢を伴うサルモネラ腸炎の急性腎不全症例はよく見られるが,下痢のないサルモネラ感染症において急性腎不全を来した症例はまれである。また,急性腎盂腎炎に急性腎不全を合併することもまれであり,ジクロフェナクを使用したこと,炎症反応が強かったこと,起炎菌がサルモネラであったことなどが急性腎不全発症の一因として推察された。
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平賀 健太郎, 坂野 堯, 吉光 千記, 和合 正邦, 小林 正夫
2003 年 16 巻 2 号 p.
88-94
発行日: 2003/11/30
公開日: 2007/10/31
ジャーナル
フリー
慢性腎疾患患児のストレッサーとストレス反応の関連性を検討した。中学生以上の59名を対象とし,疾患とその重症度より,ネフローゼ症候群(頻回再発群,非頻回再発群),慢性腎炎(ステロイド剤使用群,ステロイド剤非使用群)の4群に分類して解析した。慢性腎炎のステロイド剤非使用群のストレッサー,ストレス反応得点は,他の3疾患群より低く,ストレスは少ないと考えられた。ストレッサーとストレス反応の関連では,日常生活における不便さ,将来への不安,家族との関係のストレッサーが抑うつ・不安のストレス反応を高めることが示された。疾患群別のストレッサーとストレス反応の関連より,ネフローゼ症候群ではストレッサーが種々のストレス反応を高めるが,慢性腎炎では関連性は示されなかった。以上より,患児の心理的ストレス低減には,疾患別にストレス反応を高めるストレッサーへの対処法などの指導,援助を検討する必要があると考えられる。
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吉野 篤範, 本田 雅敬, 幡谷 浩史, 坂爪 悟, 小幡 一夫, 田中 百合子, 川村 研, 上山 泰淳, 中井 秀郎, 宍戸 清一郎
2003 年 16 巻 2 号 p.
97-102
発行日: 2003/11/30
公開日: 2007/10/31
ジャーナル
フリー
カフ出し術は侵襲が少なく,入院期間も短く,カテーテル入れ換えの回数を少なくできるという点で入れ換え術に比べ優れていると考えられる。しかし,カフ出し術に関してはその効果においてまだ確立した知見は得られていない。
カフ出し術の有効性を評価するために,トンネル感染に対して入れ換え術を行った入れ換え群,カフ出し術を行ったカフ出し群の2群に分け,術後の次のトンネル感染までの期間を全体,および起因菌別に生存曲線を用いて比較検討した。また,両群の術後のトンネル感染が原因の腹膜炎罹患率に関しても検討を加えた。
結果は,入れ換え群とカフ出し群では有意な差は認められず(p=0.1464),グラム陰性桿菌についても成績は悪くなかった。カフ出し群の再発率も低く,術後の腹膜炎罹患率も有意差はなかった。
以上より、カフ出し術はトンネル感染に対して有効な治療法であり,トンネル感染の際にまず検討すべき治療法であると考えた。
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原 聡, 染谷 朋之介, 大瀧 理佐子, 金子 一成, 山城 雄一郎
2003 年 16 巻 2 号 p.
103-106
発行日: 2003/11/30
公開日: 2007/10/31
ジャーナル
フリー
今回我々は,尿路結石による肉眼的血尿で発症した高Ca尿症の乳児例を経験した。本症例においては,尿検査で血尿および高Ca尿症を認めたものの,腎泌尿器系の超音波検査,腹部単純レントゲン検査では尿路結石を確認できなかった。このため腫瘍性病変を除外する目的で腹部単純CT検査を施行したところ,右腎盂内に微小結石を認め,特発性高Ca尿症に起因する尿路結石と診断した。発見動機となった肉眼的血尿は尿路結石によるものと考えた。
しかし本症例のような経過を考慮すると,今後は肉眼的血尿を呈する乳児においても特発性高Ca尿症による尿路結石を鑑別疾患の一つとすべきであると思われた。そして確定診断のためには超音波検査,腹部単純レントゲン検査のみならず,腹部単純CT検査が有用である。
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芦田 明, 松村 英樹, 七里 元督, 中倉 兵庫, 吉川 賢二, 水沢 慵一, 玉井 浩
2003 年 16 巻 2 号 p.
109-114
発行日: 2003/11/30
公開日: 2007/10/31
ジャーナル
フリー
症例は2歳,男児。6カ月時,先天性白内障と診断され手術治療をうけた。精神運動発達遅滞精査で入院時,血清ALP,CKの上昇,代謝性アシドーシス,高Ca尿症,汎アミノ酸尿,低分子蛋白尿,尺骨遠位端にくる病変化を認めた。加えて
99mTcDMSA腎シンチでは腎へのRIの集積は低下した。これら検査所見からLowe症候群と診断し,原因遺伝子であるOCRL-1の検索とphosphatidylinositol 4,5-bisphosphate 5-phosphatase (PIP 2 5-phosphatase) 活性を測定した。結果培養皮膚線維芽細胞での本酵素活性は感度以下でOCRL-1遺伝子のexon 15内にAからCへの1塩基置換を認め,セリンからアルギニンへのアミノ酸置換が推定された。この置換は基質結合やリン酸の加水分解に重要な役割と果たすmotif内にあり、酵素活性に大きな影響を与えると思われた。
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佐竹 明, 内田 麻子, 佐藤 亜矢子, 三野 絵美, 小西 貴幸, 長野 奈緒子, 栃丸 博幸
2003 年 16 巻 2 号 p.
115-119
発行日: 2003/11/30
公開日: 2007/10/31
ジャーナル
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3歳時健診の際,尿蛋白陽性に気づかれ,3歳4カ月時に当科初診した女児。尿蛋白・尿潜血3+で,低補体血症,ANA陽性,抗dsDNA抗体高値,ASO陰性などから,ループス腎炎と診断した。治療前に腎生検を予定したが,発熱などの症状が出現したため施行できず,ステロイドパルス療法を開始した。パルス3クール後に補体値が正常化した。4クール終了後の腎生検では軽度のメサンギウム変化を伴う膜性腎炎(WHO分類クラスVb)に該当した。約4カ月後に尿蛋白が陰性となり,3年が経過したが寛解を維持している。しかし,ステロイド減量に伴って補体値の低下が見られ,治療は継続中である。
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松永 明, 林 長青, 早坂 清
2003 年 16 巻 2 号 p.
121-125
発行日: 2003/11/30
公開日: 2007/10/31
ジャーナル
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近年,在日外国人は増多の一途をたどっており,特に東北地方においては中国からの移住者が増加している。日常診療において生活習慣や社会背景などの違いから様々な問題が生じている。急性疾患の治療,管理においてでさえ外国人の患者との意志の疎通は困難である。まして慢性疾患の管理となると問題は大きく複雑になるため医師一人の対応には限界がある。
今回我々は,移住前からネフローゼ症候群を発症し,寛解を得ぬまま移住してきた中国人の1男児を経験した。患児は検査,入院,治療を拒否し,漢方薬を個人輸入して内服を続け,最終的には末期腎不全に陥った。この経験から管理上の問題点として,(1)患者側の問題点,(2)医療側の問題点,(3)制度の問題点を考察するとともに,(4)病理組織所見,診断に関する疑問点についても考察する。
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田村 典子, 近藤 秀治, 清水 真樹, 北村 明子, 香美 祥二, 黒田 泰弘
2003 年 16 巻 2 号 p.
127-131
発行日: 2003/11/30
公開日: 2007/10/31
ジャーナル
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半月体形成性IgA腎症の8歳女児例を経験した。患児は,学校検尿で尿蛋白3+,尿潜血3+を初めて指摘され,近医での検査でも尿蛋白,肉眼的血尿,低蛋白血症を認めたため当科に紹介された。入院後腎生検を施行し組織所見で67%の糸球体に半月体形成が認められた。IF所見で,IgAの沈着がメサンギウム領域に認められたことより半月体形成性IgA腎症と診断した。診断後すみやかにステロイドパルス療法やカクテル療法などの積極的治療を行った。経過中腎機能低下をきたすことなく尿蛋白は治療開始3カ月で減少し,治療7カ月後に陰性化した。治療3カ月時に施行した再腎生検組織所見では細胞性半月体やメサンギウム細胞増殖の消失がみられ劇的な組織の改善が認められた。発症早期の積極的治療が重要だと考えられた。
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石川 健, 相馬 洋紀, 高田 彰, 斉藤 雅彦, 千田 勝一
2003 年 16 巻 2 号 p.
133-136
発行日: 2003/11/30
公開日: 2007/10/31
ジャーナル
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慢性腹膜透析中にカンジダ腹膜炎を合併し,治療に難渋した小児例を経験した。症例はcerebro-oculo-hepato-renal症候群の16歳男子。12歳から腹膜透析中であったが,接続チューブの破損が見つかり,カンジダ腹膜炎に罹患した。これに対して,透析カテーテルのさしかえや抗真菌薬の腹腔内投与を行ったが,改善と再発を2度繰り返した。症例は発達遅滞があり安静保持ができないため,カテーテル抜去と血液透析への移行を躊躇していたが,結局この方法をとることで治癒に至った。その後,カテーテルを留置して腹膜透析を再開でき,腹膜炎の再発もない。
本症例を経験して,抗真菌薬の予防投与や,カテーテル早期抜去の有効性を明らかにすることが今後の課題と考えられた。
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後藤 芳充, 永井 琢人, 幅 俊人, 打田 和治, 上村 治
2003 年 16 巻 2 号 p.
137-141
発行日: 2003/11/30
公開日: 2007/10/31
ジャーナル
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腎移植患者における免疫抑制剤のTherapeutic drug monitoring (TDM) として,Area under the curve (AUC) の有用性がいわれているが,今回は小児腎移植患者に対して3回の採血ですむ推定AUC
0-4の有用性を検討した。推定AUC
0-4はAUC
0-4とよく相関し,C
2よりもAUC
0-4との相関が強かった。また,AUC
0-4のデータを元にした免疫抑制剤の初期投与量の検討も同時に行ったが,CyAは体重に関係なく,11mg/kgで目標AUC
0-4が5000ng.hr/mlとなった。一方FKはAUC
0-4を150ng.hr/mlにするのに,20kg以下が0.75mg/kg,20~30kgが0.45mg/kg,30~40kgが0.4mg/kg,40~50kgが0.3mg/kgと体重により初期投与量を変える必要があった。ただ,初期投与量はあくまで目安とすべきと考えられた。
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塚原 宏一, 畑 郁江, 巨田 尚子, 佐藤 周子, 轟 夕起子, 平岡 政弘, 眞弓 光文, 内山 真由美, 川上 寿子, 関根 恭一, ...
2003 年 16 巻 2 号 p.
143-150
発行日: 2003/11/30
公開日: 2007/10/31
ジャーナル
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糖尿病合併症の成因としてカルボニル/酸化ストレスの関与がおもに成人領域で注目されている。われわれは,1型糖尿病若年患者が受けるカルボニル/酸化ストレスについて検討した。1型糖尿病患者38名(男/女:17/21,年齢12.8±4.5歳,罹病期間:5.7±4.3年[平均±SD]),正常対照60名(男/女:28/32,年齢:11.4±4.5歳)の早朝尿中のpentosidine, pyrraline(カルボニルストレスマーカー),8-OHdG,acrolein-lysine(酸化ストレスマーカー)濃度を計測した。1型糖尿病患者では尿pentosidine,8-OHdG,acrolein-lysineは正常対照よりも有意に高かった。pentosidine はpyrraline,8-OHdG,acrolein-lysineと,pyrralineはacrolein-lysineと有意に正相関した。pentosidine,8-OHdG,acrolein-lysineは尿中アルブミンと有意に正相関した。微小アルブミン尿陽性患者(≥15mg/g Cr; 11名)では,すべてのマーカーが微小アルブミン尿陰性患者および正常対照よりも有意に高かった。今回の研究により,1型糖尿病若年患者では酸化ストレスとそれに連動したカルボニルストレスが亢進していることが示された。
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