日本小児腎臓病学会雑誌
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18 巻, 2 号
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総説
  • 大友 義之, 服部 元史, 藤永 周一郎, 高田 大, 赤司 俊二, 清水 俊明, 山城 雄一郎
    2005 年 18 巻 2 号 p. 81-84
    発行日: 2005/11/15
    公開日: 2007/11/06
    ジャーナル フリー
    小児の微小変化型ネフローゼ症候群の病因としてT細胞を巡る免疫異常が想定されている。また,本症患児においてアレルギー性疾患の合併がしばしば経験され,治療のオプションとして抗アレルギー薬の使用が行われてきた。トシル酸スプラタスト(商品名:アイピーディ)は本邦で開発された抗アレルギー薬で,2001年9月より小児の気管支喘息の治療に使用されている。本剤はTh2細胞からのIL-4,IL-5の産生を抑制することにより抗アレルギー作用を発揮すると考えられている。Th2細胞の活性化が成人のネフローゼ症候群の病因に関与するという最近の知見に基づき,当科で加療中のアレルギー性疾患を有するステロイド依存性ネフローゼ症候群患児(以下,対象患児)にトシル酸スプラタスト(以下,IPD)を使用して,ネフローゼ症候群への治療効果を検討した。2002年9月以降,対象患児24例にIPD(6mg/kg/day,max 300mg/day)を開始し,1年以上観察を終了した13例(男児10例,女児3例,平均年齢9歳)を対象とした。IPD治療により,ネフローゼの再発回数は1年間に平均で1.54回から0.15回,プレドニン投与量も平均で0.19から0.04mg/kg/dayへと有意差をもって減少した。IPD併用による副作用は認められなかった。今後のさらなる薬効機序などの検討を待たれるところであるが,ステロイド依存性ネフローゼ症候群の治療の一つの選択肢として本剤の使用が期待される。
原著
  • 大田 敏之, 花見 亮一, 藤井 寛, 河口 俊之, 多田 昌弘, 木下 義久, 坂野 尭
    2005 年 18 巻 2 号 p. 85-89
    発行日: 2005/11/15
    公開日: 2007/11/06
    ジャーナル フリー
    難治性ネフローゼ症候群で過凝固状態の1歳,男児の浮腫管理目的で,体外循環による限外濾過を施行した。十分な流量の得られるブラッドアクセスの確保が困難で,脱血速度5ml/分で行わざるを得なかった。そのような回路内凝血のリスクの高い体外循環療法を施行するに際して,アンチトロンビンIII製剤の補充,nafamostat mesilateとヘパリンの併用,全血活性化凝固時間を参考としたヘパリンのbolus投与が有用であった。
  • 阿部 祥英, 宮沢 篤生, 三川 武志, 大戸 秀恭, 久野 正貴, 辻 祐一郎, 渡邉 修一郎, 小田島 安平, 板橋 家頭夫
    2005 年 18 巻 2 号 p. 91-96
    発行日: 2005/11/15
    公開日: 2007/11/06
    ジャーナル フリー
    小児期発症の腎疾患患児8症例をミゾリビン低用量投与群(4mg/kg/日未満,2mg/kg/回)と高用量投与群(4mg/kg/日以上,2mg/kg/回)に分け,ミゾリビン投与量と薬物動態パラメータの関係について検討した。全例とも腎機能は正常であった。低用量投与群のCmaxは0.64±0.15 μg/mL,AUC0−∞は3.64±1.20 μg•h/mLで,高用量投与群のCmaxは1.46±0.95 μg/mL,AUC0−∞は8.28±5.93 μg•h/mLであった。他施設での検討であるが,成人関節リウマチ患者において,1.00±0.13mg/kg/回のミゾリビン投与量でのCmaxは0.59±0.22 μg/mL,AUC0−∞は4.30±1.98 μg•h/mLで,1.89±0.31mg/kg/回でのCmaxは1.48±0.36 μg/mL,AUC0−∞は9.84±1.72 μg•h/mLであったとされる。今回の検討で,成人と同様のCmax,AUC0−∞を得るには,小児では,体重1kg当たり,成人の約2倍量のミゾリビン投与が必要であることが示唆された。よって,小児では,成人と異なるミゾリビン投与設計を行う必要がある。
  • 藤永 周一郎, 大友 義之, 高田 大, 竹本 満也子, 清水 俊明, 山城 雄一郎, 金子 一成
    2005 年 18 巻 2 号 p. 97-100
    発行日: 2005/11/15
    公開日: 2007/11/06
    ジャーナル フリー
    シクロスポリン(cyclosporine A:CsA)を長期投与中のステロイド依存性ネフローゼ症候群(steroid dependent nephrotic syndrome:SDNS)小児12人(平均年齢12.3歳)において,CsA減量目的で6カ月間のミゾリビン(mizoribine:MZB)大量療法を施行し有用性を検討した。MZB大量療法(10.3mg/kg/日)の併用により,CsA平均投与量は3.94から1.98mg/kg/日へ約50%減量(P<0.01)され,12人中4人は中止可能であった。また,有意差はなかったが(P=0.055)再発回数は約1/3に減少した。一方,プレドニン(prednisolone:PSL)の平均投与量は7.1から6.8mg/日と同程度であった(P=0.75)。以上よりMZB大量療法は,CsA長期投与によって腎毒性が危惧されるSDNS小児における代替療法になりうると思われた。
  • 相馬 洋紀, 高田 彰, 斉藤 雅彦, 石川 健, 千田 勝一
    2005 年 18 巻 2 号 p. 101-104
    発行日: 2005/11/15
    公開日: 2007/11/06
    ジャーナル フリー
    急性腎不全のため高カリウム血症をきたした2歳から10歳の小児4例と,成人1例に対してβ2抹刺激薬,サルブタモールの吸入療法を行い,その効果を検討した。サルブタモール吸入前の血清カリウム値は5.5~7.4mEq/Lで,サルブタモールは100μg/kg(体重25kg以上には5mg)を使用した。この30分~2時間後に4例で陽イオン交換樹脂を,1例でグルコース・インスリン療法を併用した。この併用前の吸入30分後に評価できた2例の血清カリウム値は,1例が6.3mEq/Lから6.0mEq/Lへ,もう1例が6.9mEq/Lから6.0mEq/Lへ低下した。全症例の吸入前と吸入4時間後の血清カリウム値は,中央値で6.3mEq/L(範囲5.5~7.4)から5.2mEq/L(範囲4.6~7.0)へと有意に低下し,この間に動悸,頻脈,振戦などの副作用は認めなかった。サルブタモール吸入は高カリウム血症の初期治療として有効であり,簡便かつ安全な治療法と考えられた。
  • 梅村 佳予子, 諸岡 正史, 山本 康人, 伊藤 薫子, 木曽原 悟, 美濃和 茂, 矢崎 雄彦, 浅野 喜造
    2005 年 18 巻 2 号 p. 105-109
    発行日: 2005/11/15
    公開日: 2007/11/06
    ジャーナル フリー
    小児期特発性ネフローゼ症候群16例を対象として,シクロスポリンのマイクロエマルジョン製剤の血中濃度モニタリングを行い,モーメント解析で算出した各パラメーターと血中濃度時間曲線下面積(AUC)との関連,ばらつき(CV%)を検討した。内服前血中濃度(C0),内服6時間後血中濃度(C6)はAUC0-12と良好な相関を示した。多くの例で内服後1~2時間の時点で最高血中濃度到達時間(Tmax)を呈したが,CV%は高値で,また,一部に二峰性の推移を示す例や最高血中濃度(Cmax)のはっきりしない例がみられた。今回のわれわれの検討から小児においてAUC0-12との相関はC0,C6,C4,C2の順に良く,C1では相関性を認めなかった。これらの相関性を認めたパラメーターはモニタリングの指標となりうると考えられたが,一部で特異な体内動態を示す例もみられたことから,さらなる検討を要すると思われた。
症例報告
  • 岩田 晶子, 小関 道夫, 伊藤 貴美子, 有木 真子, 岩田 秀樹, 山崎 松孝, 近藤 富雄, 重松 秀一
    2005 年 18 巻 2 号 p. 111-115
    発行日: 2005/11/15
    公開日: 2007/11/06
    ジャーナル フリー
    症例は,19歳男子。12歳時〔体重69.0kg,体容量指数body mass index (BMI)28.3kg/m3〕に初めて蛋白尿を指摘された。2歳より,伊藤白斑,精神発達遅滞,症候性局在関連癲癇にて治療経過観察中であった。16歳時(体重98.0kg,BMI36.9),血圧144/88mmHg,蛋白尿1.5g/日であり,angiotensin-converting enzyme(ACE) 阻害薬(リシノプリル)投与を開始した。肥満に対しては,減量を指導したが体重は増加傾向であった。18歳時(体重107.7kg,BMI40.0),蛋白尿3.9g/日となり,腎生検を施行したところ,糸球体の肥大と分節性硬化を認め肥満関連巣状分節性糸球体硬化症と診断した。現在,運動療法と体重減量の指導を徹底し,ACE阻害薬の内服で経過観察中である。最近,成人では肥満関連腎症の報告が散見されるが,本邦で小児期発症例の報告は少なく貴重な症例と考えられたため報告する。
  • 林 篤, 花田 卓也, 神田 貴行, 村上 村上潤, 岡本 学, 飯塚 俊之, 長田 郁夫, 神崎 晋, 笠置 綱清, 岡田 隆好, 宇都宮 ...
    2005 年 18 巻 2 号 p. 117-121
    発行日: 2005/11/15
    公開日: 2007/11/06
    ジャーナル フリー
  • 海野 大輔, 金子 一成, 田中 聡子, 大瀧 理佐子, 金子 堅一郎
    2005 年 18 巻 2 号 p. 123-126
    発行日: 2005/11/15
    公開日: 2007/11/06
    ジャーナル フリー
    薬剤による膀胱炎はアレルギー反応の関与が示唆され,病理組織学的には好酸球性膀胱炎の所見を呈するものが多い。臨床的には強い膀胱刺激症状を呈し,通常の膀胱炎治療に対しては難治性であること,および投与薬剤の中止により速やかに軽快することで診断される。抗アレルギー剤・トラニラストによる膀胱炎は成人で数多く報告されているが,小児における報告例は少ない。今回,筆者らは火傷に対するケロイド・肥厚性瘢痕治療の目的で投与されたトラニラストによってアレルギー性出血性膀胱炎を呈した3歳,男児例を経験した。そこで小児におけるアレルギー性膀胱炎について自験例と誌上報告例からその臨床的特徴を検討したので報告する。
  • 志水 麻実子, 大野 敏行, 田中 秀典, 加藤 大典, 岩田 直之
    2005 年 18 巻 2 号 p. 127-130
    発行日: 2005/11/15
    公開日: 2007/11/06
    ジャーナル フリー
    学校検尿をきっかけに発見された重症ループス腎炎の14歳,女児例を経験した。低補体血症,抗核抗体,抗DNA抗体強陽性を認めSLEと診断し,腎生検によりループス腎炎ISN/RPS 2003年改訂分類Class IV-S(A)と診断した。治療はメチルプレドニゾロン大量療法の後,サイクロフォスファミド大量療法を選択し,現在月1回6クールが終了したところである。短期的には大きな副作用もなく疾患コントロールは良好であるが,ステロイドによる外見上副作用のためいじめにあい,学校をたびたび休んでいる。疾患とともに成長していく患児をフォローするにあたり,治療だけでなく精神面,社会面でのサポートが重要であると思われた。
  • 藤田 晃生, 野津 寛大, 貝藤 裕史, 神岡 一郎, 田中 亮二郎, 飯島 一誠, 吉川 徳茂, 松尾 雅文
    2005 年 18 巻 2 号 p. 131-135
    発行日: 2005/11/15
    公開日: 2007/11/06
    ジャーナル フリー
    小児期に発症し,各種免疫抑制剤の投与でも完全寛解に至らず,成人期にキャリーオーバーした難治性ネフローゼ症候群に対し,ミコフェノール酸モフェチルを投与し良好な経過を得た2例について報告する。2例とも幼少期にネフローゼ症候群を発症し,頻回に再発を繰り返したためシクロスポリン,シクロフォスファミド,ミゾリビンなどの各種免疫抑制剤を投与されていた。いずれも成人期にキャリーオーバーし,シクロスポリンの腎毒性,シクロフォスファミドの投与量限界などから既存の免疫抑制剤による寛解は困難と判断し,ミコフェノール酸モフェチルの投与を開始した。症例1は投与開始直後と12カ月後にそれぞれ再発を認めたものの尿蛋白は速やかに消失し,症例2は投与開始後10カ月間再発を認めておらず,いずれも良好な臨床経過である。ミコフェノール酸モフェチルは副作用も少なく,難治性ネフローゼ症候群に対する効果が期待されており,今後長期に経過を観察し効果を見極める必要があると思われた。
  • 下野 吉樹, 乾 拓郎, 庵原 俊昭
    2005 年 18 巻 2 号 p. 137-139
    発行日: 2005/11/15
    公開日: 2007/11/06
    ジャーナル フリー
    診断に長期を要した巣状糸球体硬化症女児例を経験した。症例は現在14歳,女児。6歳時にはじめて血尿を指摘され,7歳時に血尿,蛋白尿が出現し,8歳時に腎生検を施行された。組織型は非IgA型でメサンギウム増殖はごく軽度であった。非IgA腎症の診断でステロイド治療を行い,尿所見は改善していた。13歳時に顔面浮腫を来たして来院し,尿蛋白の増加を指摘,2回目の腎生検にて巣状糸球体硬化症と診断された。初回の腎生検からは,巣状糸球体硬化症と診断することは困難であった。巣状糸球体硬化症は,本症例のように長期の経過をたどる例もあり,診断の際に注意が必要とされると考えられた。
  • 小林  由典, 山崎 茂, 武井 黄太, 楠 幸博, 栃丸 博幸, 渡辺 徹, 奥野 章裕, 崎山 幸雄
    2005 年 18 巻 2 号 p. 141-145
    発行日: 2005/11/15
    公開日: 2007/11/06
    ジャーナル フリー
    下痢を伴わない溶血性尿毒症症候群を再発した1症例を経験した。初発時には予後不良であることが懸念されたため持続的血液濾過療法を施行したが,再発時には貧血に対し輸血を行ったのみで保存的治療で軽快した。本症例では母親に溶血性尿毒症症候群を示唆する既往があるため家族発症が疑われた。また,本症例は再発の可能性が高いことを認識して経過観察を行ったため,再発時に早期発見および早期治療が可能であった。今後も注意深い観察が必要と考えられた。
  • 石川 暢己, 大浜 和憲
    2005 年 18 巻 2 号 p. 147-151
    発行日: 2005/11/15
    公開日: 2007/11/06
    ジャーナル フリー
    【目的】乳児期の膀胱尿管逆流症(VUR)について当科での手術成績を提示するとともにその適応について考察する。【対象と方法】1988年8月から2005年3月まで逆流防止手術を施行した乳児41例(男児40例,女児1例)を対象とした。これらの症例について,診断契機,VUR-gradeと腎障害の関係,手術適応および手術成績について検討した。【結果】診断契機は尿路感染症が41例中38例と最も多く,尿路感染を繰り返す症例を6例認めた。また,鎖肛精査2例,胎児診断された症例も1例認めた。VUR-grade 4以上の症例では腎障害の頻度が高かった。術後6カ月経過時のVUR消失率は97%であり,2年目までには100%となった。【結論】乳児期のVURに対しては,grade 4以上の高度の症例,また,grade 3以下でも尿路感染症を繰り返す症例に対しては腎障害の進行を防止する意味で早期に逆流防止手術を施行すべきである。
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