日本小児腎臓病学会雑誌
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19 巻, 2 号
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原著
  • 石川 健, 高田 彰, 相馬 洋紀, 斉藤 雅彦, 千田 勝一
    2006 年 19 巻 2 号 p. 65-69
    発行日: 2006/11/15
    公開日: 2007/07/25
    ジャーナル フリー
     血液浄化装置の安全監視機能が使用可能な低容量回路(36ml)を作製し,新生児に相当する体重のウサギに試用した。実験は回路充填用の自己血液を採取後に対象を透析群(n=8)と対照群(n=5)に分け,透析群には血液流量,透析液流量とも10ml/分で血液透析を6時間行った。除水はしなかった。バイタルサインを1時間ごとに記録し,開始前と開始から1,4,6時間後に血液検査を行った。その結果,安全監視機能のすべてが作動した状態で血液透析を6時間行うことができた。しかし,透析群ではこの間の体温が対照群よりも有意に低く,血圧が5時間以降に有意に低下した。この低容量回路は安全監視機能を用いた血液浄化療法に応用可能と考えられたが,乳児に使用する場合は体温と血圧の低下に注意する必要がある。
  • 藤永 周一郎, 海野 大輔, 染谷 朋之介, 大友 義之, 清水 俊明, 山城 雄一郎, 金子 一成
    2006 年 19 巻 2 号 p. 70-77
    発行日: 2006/11/15
    公開日: 2007/07/25
    ジャーナル フリー
     シクロフォスファミドパルス(IVCY)とメチルプレドニゾロンパルス(MPT)の併用療法は重症ループス腎炎に非常に有効であるが,年単位で大量・長期投与した場合,重篤な副作用が高率に発症する。一方,ミゾリビン(MZB)は,安全に長期投与が可能であるものの,単剤による効果は限定的である。
     われわれは,4例の小児の重症ループス腎炎(組織像がIIIまたはIV型で腎機能障害を伴う)の寛解導入療法として少量・短期のIVCY(500mg/m2を月1回,6ヵ月)とMPT(20mg/kg/dayを2~3クール)およびMZB(4~5mg/kg/day,朝食前1回投与)の3剤併用療法を施行した。この寛解導入療法により全例,腎機能障害や低補体血症の改善,蛋白尿の消失が得られ,約6ヵ月後に腎生検を施行した3例では活動性病変の消失を確認し得た。
     今後,長期の経過観察が必要だが,重症小児ループス腎炎の寛解導入療法として少量IVCY,MPTおよびMZBの3剤併用は有効な治療法になりうると思われた。
  • 川勝 秀一, 天谷 英理子, 前田 洋佐, 中瀬 葉子, 松下 浩子
    2006 年 19 巻 2 号 p. 78-82
    発行日: 2006/11/15
    公開日: 2007/07/25
    ジャーナル フリー
     今回われわれは,京都市の7保健所・支所での3歳検尿の実態と,京都市立病院を受診した3歳検尿異常例の追跡結果を検討して報告した。京都市の7保健所・支所で10年間に53,294人が3歳検尿を受検し,4,450人が再検査を受け,683人(検尿受検者に対して1.28%)が医療機関での精密検査を指示された。一方,この10年間に3歳検尿異常を主訴に京都市立病院を受診したのは394人で,異常なし181人,微少血尿157人,無症候性血尿50人,無症候性蛋白尿3人,腎炎の疑い3人であった。6歳時の尿検査結果は検討の対象となった271人のうち,転医24人,来院しなくなったもの116人,異常なしと判断して追跡を中止したもの51人,検尿異常なし49人,微少血尿22人,無症候性血尿3人,無症候性蛋白尿3例,非IgAメサンジウム増殖性腎炎2人であった。
  • 大田 敏之, 坂野 堯, 城 謙輔, 古江 健樹, 藤井 寛, 中村 朱里, 須藤 哲史, 小野 浩明, 木下 義久
    2006 年 19 巻 2 号 p. 83-88
    発行日: 2006/11/15
    公開日: 2007/07/25
    ジャーナル フリー
     特発性の巣状糸球体硬化症の組織学的亜型であるCollapsing variantの3小児例を経験した。通常量のステロイドへの反応が悪く,著明な高血圧をコントロールすることに難渋した。腹膜透析により適時除水を行いつつ,アンギオテンシン変換酵素阻害薬,アンギオテンシン受容体拮抗薬の内服,塩酸ニカルジピン持続静注を使用し,本邦の小児難治性腎疾患研究会のプロトコルに準じた治療を行った2例で寛解を得ることができた。
     巣状糸球体硬化症を治療する場合,寛解導入できるか否かでその腎予後は著しく異なってくる。今回経験した3例のように,著明な高血圧,大量の蛋白尿を呈し,通常量ステロイドが無効の場合,できるだけ早期に腎生検を行い,Collapsing variantを確認できれば,血圧コントロールを集約的に行い,ステロイドパルス療法を中心とした治療を行う意義は大きいと考えられるが,より多くの症例の蓄積が必要である。
総説
  • 林 篤, 齋藤 源顕, 前垣 義弘, 花田 卓也, 岡田 晋一, 神崎 晋
    2006 年 19 巻 2 号 p. 91-95
    発行日: 2006/11/15
    公開日: 2007/07/25
    ジャーナル フリー
     神経因性膀胱の内科的尿路管理法としては,清潔間欠自己導尿法と抗コリン薬(塩酸オキシブチニンなど)内服併用療法が標準的治療として推奨されている。塩酸オキシブチニンはムスカリン受容体拮抗作用があり,膀胱平滑筋を弛緩させるが,全身的な抗コリン作用の問題がある。抗コリン性有害事象のため治療継続困難な症例,あるいは標準的治療にもかかわらず膀胱内圧が高く腎機能障害の懸念がある症例には膀胱拡大術が検討されることになる。私たちは,このような例に対し塩酸オキシブチニン膀胱内注入療法を試みてきた。本稿では,現在推奨されている神経因性膀胱に対する尿路管理法を概説し,次に小児神経因性膀胱に対する塩酸オキシブチニン膀胱内注入療法について自験例を示しながら解説する。
  • 塚原 宏一
    2006 年 19 巻 2 号 p. 96-103
    発行日: 2006/11/15
    公開日: 2007/07/25
    ジャーナル フリー
     一酸化窒素(nitric oxide,以下,NO)は今から20年前(1986年)より血管内皮由来弛緩因子(endothelial cell derived relaxing factor,以下,EDRF)の本体として脚光を浴びているgaseous mediatorである。その後の研究の進展により少なくとも3種類のNO合成酵素(nitric oxide synthase,以下,NOS)が存在し,それぞれの主要な発現部位も一部は重なり,一部は異なることがわかった1)
     腎臓では内皮型酵素(endothelial nitric oxide synthase,以下,eNOS;3型NOSとも呼称される)は糸球体毛細血管などの血管内皮細胞に分布する。緊密な制御のもとeNOSにより産生されるNOは血管拡張,血流保持,白血球接着抑制,血小板凝集抑制,活性酸素消去,細胞増殖制御などの働きにより組織保護的に作用する。神経型酵素(neural nitric oxide synthase,以下,nNOS;1型NOSとも呼称される)は緻密斑などに分布し,tubuloglomerular feedback機構に関与するとされる。誘導型酵素(inducible nitric oxide synthase,以下,iNOS;2型NOSとも呼称される)は生理的状況ではほとんど発現していないが,糸球体腎炎時には糸球体メサンギウム細胞,上皮細胞,浸潤白血球などに発現する。iNOS由来のNOは活性酸素と反応して組織障害性の強い窒素酸化物(ONOO-など)を形成し炎症を増悪させると言われるが2),iNOS誘導は炎症を局在化されると同時に,炎症時のeNOS抑制により欠乏したNOを補填して炎症を制御し組織を再生するための生体応答とも考えられる。
  • ―チアノーゼ腎症(cyanotic glomerulopathy)―
    生駒 雅昭, 小板橋 靖
    2006 年 19 巻 2 号 p. 104-110
    発行日: 2006/11/15
    公開日: 2007/07/25
    ジャーナル フリー
     チアノーゼ型先天性心疾患に伴う腎疾患,チアノーゼ腎症(cyanotic glomerulopathy)の臨床像,病理像,成因について検討した。われわれが経験した5例と多施設の報告では,cyanotic gloerulopathyの臨床像は,高尿酸血症,蛋白尿,多血症と血小板減少が特徴であり,さらに,腎機能低下を来たす症例も認められた。先天性腎疾患106例の剖検による腎病理像の検討では,糸球体毛細管腔の拡張とうっ血を伴った糸球体腫大,PAS陽性物質の増加を伴ったメサンギウム細胞の増生,メサンギウム領域の肥厚による分葉化と毛細血管腔の虚脱などが特徴であった。血中あるいは尿中エンドセリン-1(S-ET-1,U-ET-1),エリスロポエチン濃度とtype IV collagenの前駆物質であるcollagen-IV7Sの血中濃度の検討では,チアノーゼ性心疾患の患者で血中エリスロポエチン,S-ET-1の高値とcollagen-IV7Sの血中濃度高値が認められ,これらの結果は,cyanotic glomerulopathyの進展機序の成因に関わる興味ある知見と考えられた。
  • 灘井 雅行
    2006 年 19 巻 2 号 p. 111-123
    発行日: 2006/11/15
    公開日: 2007/07/25
    ジャーナル フリー
     一般に,薬物の薬理効果および有害作用の発現強度は薬物の血中濃度によって決定されることから,十分な薬物の効果を得るためには,作用部位において適切な薬物濃度を維持することが必要である。また,個々の患者において,有効かつ安全な治療効果が期待できる血中薬物濃度に基づいて薬物投与設計を最適化することにより,有害作用発現の危険性を回避し,薬物治療の成績を向上することが可能である。しかし,生体に投与された薬物は体内で吸収,分布,代謝,排泄を受けることから血中の薬物濃度は経時的に変化する。したがって,患者における血中濃度の時間的推移(体内動態)を速度論(薬物速度論)に基づいて理解することが必要である。そこで本稿では,薬物速度論の基礎と,薬物速度論に基づいた薬物投与設計の構築,さらに治療薬物モニタリング(TDM)における個々の患者の血中薬物濃度を用いた薬物投与計画の妥当性の評価について概説する。
  • 上田 悟史, 岡田 満, 柳田 英彦, 八木 和郎, 竹村 司
    2006 年 19 巻 2 号 p. 124-127
    発行日: 2006/11/15
    公開日: 2007/07/25
    ジャーナル フリー
     運動不足や食事習慣などのライフスタイルの変化に伴い,肥満児が増加している。今回われわれは,肥満関連腎症(Obesity Related-Glomerulopathy;ORG)と考えられた3例を経験した。3症例ともに中~高度な蛋白尿,Ccrの増加および高血圧を認め,糸球体肥大を全例に認めた。本症の機序として,腎血流量の増加に伴う糸球体過剰濾過やレニン-アンギオテンシン系の亢進に伴う糸球体高血圧の関与が考えられる。治療の基本は,GFRの正常化を目的とした食事療法や運動療法であるが,これらを生涯にわたって持続することが困難な症例も多い。したがって,薬物療法を必要とする症例も多く,ACE-IやARBが有効であるとの報告があり,われわれの症例でも同様であった。小児期において,これまで,肥満児において,臨床的に無症候性蛋白尿としてフォローされている症例や,腎生検が施行されているが組織学的に微小変化群と診断されていた症例の中にもORGが含まれている可能性があり,糸球体径の測定を行うなどの見直しが必要である。小児期におけるORGの実体を把握するため,全国規模での調査が必要であると考えられた。
症例報告
  • 永井 琢人, 後藤 芳充
    2006 年 19 巻 2 号 p. 131-134
    発行日: 2006/11/15
    公開日: 2007/07/25
    ジャーナル フリー
     小児の膜性腎症は疫学的には少数派であるが,その実態については定かではない。今回,2歳で発症した幼児の特発性膜性腎症の症例を経験した。肉眼的血尿と高度蛋白尿で発症したため腎生検を施行したところ,光顕所見では微少変化型であったため微少変化型ネフローゼ症候群プロトコールに従いステロイドによる治療を開始した。後になり蛍光抗体にてIgA,IgM以外が係蹄壁へ顆粒状に染まり,電顕にてElectron Dense Depositが基底膜上皮側に認められ確定診断に至った。幸いにも,ステロイドによる尿蛋白減少効果が見られ約6週間で尿蛋白は陰性化し以後の経過も順調である。症例経過,病理組織と治療について報告を行う。
  • 森野 正明, 井上 明, 三木 幸子, 佐々木 望
    2006 年 19 巻 2 号 p. 135-140
    発行日: 2006/11/15
    公開日: 2007/07/25
    ジャーナル フリー
     C1qがメサンギウムに優位に沈着し,C1q腎症と思われる女児2例を報告した。1例は光顕で巣状糸球体硬化を示し,蛍光抗体法でIgG,C3は弱陽性であった。他の1例は微少変化群でC1qと同様にIgG,IgA,IgM,C3,C4が有意に陽性であった。C1q腎症の文献を検討すると,光顕所見は微少変化群,メサンギウム増殖病変および巣状糸球体硬化症の3つの群に分けられる。C1q腎症は不均一な病変であり,蛍光所見を加味して,光顕で3つの組織所見に分けて検討することが,臨床的意義を明らかにするために必要と思われる。
  • 玉江 末広, 中村 大介, 山本 広己, 立岡 祐司, 酒井 勲, 嶽崎 智子, 樋之口 洋一, 森田 智, 吉見 修子, 西畠 信, 上村 ...
    2006 年 19 巻 2 号 p. 141-144
    発行日: 2006/11/15
    公開日: 2007/07/25
    ジャーナル フリー
    症例は4歳,男児。インフルエンザBと診断され,抗インフルエンザ剤で回復後1週間後に,下肢の浮腫,腹部膨満あり,低蛋白血症(アルブミン1.4g/dl)を認めた。経過中尿所見の異常はまったく認めず,低蛋白血症は無治療にて改善した。精査するも,低蛋白血症の原因は分からなかった。
     しかし,約1ヵ月半後にネフローゼ症候群を発症した。2回目はネフローゼ症候群の診断基準をすべて満たしていたので,ステロイドの治療を行った。蛋白尿は治療1週間後には正常化した。以後,再発を認めていない。この2回のエピソードは尿所見以外の検査結果,臨床経過は類似していた。初回の低蛋白血症は,ネフローゼ症候群の回復過程を見ていたのではないかと推測している。
  • 和合 正邦, 香川 礼子, 安村 純子, 荒新 修, 藤田 篤史, 上田 一博, 金子 真弓
    2006 年 19 巻 2 号 p. 145-151
    発行日: 2006/11/15
    公開日: 2007/07/25
    ジャーナル フリー
     非IgA型びまん性メサンギウム増殖性腎炎に対し,2年間カクテル療法を施行し,腎組織所見の改善傾向を認めた1例を経験した。
     症例は11歳女子。平成14年2月(7歳時),発熱時に血尿・蛋白尿を指摘され,平成15年4月(8歳11ヵ月時)の腎生検で,非IgA型びまん性メサンギウム増殖性腎炎と診断した。腎組織変化をGrade-Stage分類で評価したところ,Grade:2.3,Stage:2.3と,間質性病変を伴った活動性の強い変化を呈していたため,プレドニゾロン,ワーファリン,ジピリダモールを開始した。しかし,尿所見が改善しないため,平成16年2月からアザチオプリンを併用した。平成17年7月(11歳3ヵ月時)の追跡腎生検組織のGrade-Stage分類で,Grade:1.3,Stage:0.5と,病初期と較べて改善傾向にあることが示された。
     本症例における治療経験から,非IgA型びまん性メサンギウム増殖性腎炎でも,重症IgA腎症に適応されるカクテル療法は試みられるべき治療法と考えられる。
  • 丸山 健一, 渡辺 美緒, 関 満, 畠山 信逸, 黒岩 実, 鬼形 和道
    2006 年 19 巻 2 号 p. 152-155
    発行日: 2006/11/15
    公開日: 2007/07/25
    ジャーナル フリー
     本邦第2例と思われるARC症候群の1女児例を経験した。在胎38週,2,466gで出生したが,生下時より両側足関節の拘縮を指摘されていた。閉塞性黄疸が出現したため1ヵ月時に当院へ転院となった。胆道閉鎖症は否定されたが,蛋白尿,糖尿,汎アミノ酸尿が見られた。さらに,中枢神経系合併症(脳梁低形成,多小脳回,難聴)も認められた。ペルオキシソーム病,ミトコンドリア病は否定的であり,臨床症状よりARC症候群と診断した。児にとっては十分な哺乳量が確保できていたが,体重はほとんど増加しなかった。黄疸は一時軽快したが,経過中に再増悪した。尿異常は継続して認められていた。全身状態は次第に悪化し,1歳3ヵ月時に肺炎による呼吸不全で死亡した。
  • 山澤 弘州, 村上 智明, 栃丸 博幸
    2006 年 19 巻 2 号 p. 156-160
    発行日: 2006/11/15
    公開日: 2007/07/25
    ジャーナル フリー
     症例は先天性ネフローゼ症候群の7歳,男児。2歳2ヵ月時に母をドナーとした生体腎移植を施行するも,間もなく感染およびタクロリムスによると思われるthrombotic microangiopathyにより移植腎摘出,泌尿器科にて血液透析による管理となった。それ以後胸部レントゲン写真上心拡大はなく,心臓超音波検査での左室拡張末期径は対正常値101%程度で,低血圧もなく4年ほど推移した。その間,成長に合わせドライウェイトを緩和していったが,最近1年ほどで心胸比も拡大し57%となったため,ドライウェイトを制限したところ,心胸比は大きく変化なかったにも関わらず透析低血圧が出現した。当科にて精査したところ,収縮能,収縮性,心拍出量は正常範囲に保たれているものの,左室拡張末期径が対正常値91%と縮小しており,低血圧は前負荷の不足によるものと考えられた。そこでドライウェイトを緩和したところ左室拡張末期径は対正常値98%へ拡大,透析低血圧も出現しなくなった。また,心胸比がさらに拡大するということもなかった。左室前負荷の評価は胸部レントゲン写真のみでは難しく,心臓超音波検査も組み合わせることが,ドライウェイトの設定に有用であると考えられた。
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