日本小児腎臓病学会雑誌
Online ISSN : 1881-3933
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20 巻, 2 号
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原著
  • 貝藤 裕史, 野津 寛大, 神田 杏子, 田中 亮二郎, 吉矢 邦彦, 濱平 陽史, 関根 孝司, 五十嵐 隆, 松尾 雅文
    2007 年 20 巻 2 号 p. 101-104
    発行日: 2007/11/15
    公開日: 2008/05/12
    ジャーナル フリー
     6家系7症例のDent病についてその原因遺伝子であるCLCN5およびOCRL1の解析を行い,臨床像と遺伝学的背景との関連について検討を行った。3家系3症例にCLCN5の異常を,3家系4症例にOCRL1の異常を認めた。CLCN5に異常を認めた症例のうち2例に腎石灰化を,1例に腎結石を,1例に高カルシウム尿症を認めた。1例は軽度の腎機能障害を有している。一方,OCRL1に異常を認めた症例のうち2症例では軽度の発達遅滞を合併していたが,眼科的疾患やFanconi症候群を有する例はなかった。1例に軽度の腎機能障害を認めた。OCRL1に異常を認めた症例ではCLCN5異常例に比して血液生化学検査でAST,LDHが軽度高値を呈する傾向がみられたが,それ以外の両者の相違は臨床症状からは明らかではなかった。今後さらに症例を蓄積し,検討を進める必要がある。
  • 辻 祐一郎, 阿部 祥英, 三川 武志, 板橋 家頭夫, 酒井 糾
    2007 年 20 巻 2 号 p. 105-110
    発行日: 2007/11/15
    公開日: 2008/05/12
    ジャーナル フリー
     A群β溶血性連鎖球菌 (以下,溶連菌) 感染症は,小児科診療上最もよく接する細菌感染症である。その感染後に伴う合併症として,急性糸球体腎炎は,頻度も高く非常に重要な疾患である。しかし,臨床現場では,溶連菌感染後にどのように急性糸球体腎炎を検索し,診断するかは,個々の医師の判断に任されており,種々の方法がみられる。患児側からすると,診断した医師によって検尿の施行時期や回数,診断基準が異なることは混乱をきたす。今回は,小児腎臓病を専門としている医師のみでなく,小児一般臨床を行っている小児科医に対しアンケートを行い,検尿の施行時期,回数,診断基準などについて回答を得た。その回答から,多くの溶連菌感染後急性糸球体腎炎にたいする捉え方があることがわかった。今後,小児における分かりやすい溶連菌感染後急性糸球体腎炎の診断基準の作成や溶連菌感染後急性糸球体腎炎の発症予防を考慮した治療指針などの作成が望まれると思われた。
  • —シクロスポリン必要量は年齢により異なる—
    牛嶌 克実, 上村 治, 山田 拓司
    2007 年 20 巻 2 号 p. 111-116
    発行日: 2007/11/15
    公開日: 2008/05/12
    ジャーナル フリー
     ネフローゼ症候群36例を対象にネオーラル®(CyA) の食直前,分2投与での血中濃度モニタリングをのべ96回施行した。対象は男児25例,女児11例,平均年齢9.1歳であった。年齢別に,(1)1~5歳群,(2)6~10歳群,(3)11歳以上群の3群に分けて,薬物動態パラメータについて検討した。全例で内服1時間後血中濃度 (C1) もしくは内服2時間後血中濃度 (C2) が最高血中濃度 (Cmax) となる安定した血中濃度動態を示した。Cmax,内服4時間後までの血中濃度時間曲線下面積 (AUC0-4) は各群間で有意差はなかったが,CyA投与量は,(1)群: 4.8±1.0mg/kg/day,(2)群: 3.8±0.9mg/kg/day,(3)群: 3.0±0.6mg/kg/dayで,(1)群と(2)群 (p=0.0001),(1)群と(3)群 (p<0.0001),(2)群と(3)群 (p=0.0004) の間にはそれぞれ有意差がみられた。また,体重当たりのCyA投与量 (dose) で標準化したCmax/dose,AUC0-4/doseはいずれも低年齢群になるほど有意に低値を示した。
     以上より,同程度の血中濃度を目標とした場合,低年齢群ほどCyA投与量は有意に多くなり,年齢によりCyA必要量は異なると思われた。
  • 芦田 明, 松村 英樹, 中倉 兵庫, 青松 友槻, 宮本 良平, 森信 孝雄, 余田 篤, 島田 憲次, 玉井 浩
    2007 年 20 巻 2 号 p. 117-122
    発行日: 2007/11/15
    公開日: 2008/05/12
    ジャーナル フリー
     小児の腹痛の鑑別診断として水腎症などの疾患は念頭に置くべきであるが,その診断は困難である。今回われわれは,反復する腹痛,嘔吐を呈した腎盂尿管移行部狭窄の患児5名を検討した。患児の年齢は4~7歳,すべて男児で,患側は左であった。腹痛発作時の腹部超音波検査では明らかな腎盂拡張を認め,3例が非発作時と比較して有意な腎盂拡張の増悪を認め間歇性水腎症と診断した。間歇性水腎症の3症例では非発作時にも軽度水腎症の残存や腎盂壁の肥厚を認めた。検尿で全例潜血が陽性であった。腹部レントゲンが施行された2例では拡張した腎盂による腸管ガスの圧排像を認めた。術中所見から尿路狭窄の原因として,内因性狭窄,尿管ポリープ,尿管の屈曲,fibrous bandによるものがあった。以上の検討から,反復する腹痛発作,尿潜血,腹部レントゲンでの腸管ガスの圧排像が見られた際には腹痛発作時に水腎症の確認のため腹部超音波検査を施行すべきである。
  • 山口 孝則, 中井 秀郎, 林 祐太郎, 金子 一成, 大友 義之, 吉村 仁志
    2007 年 20 巻 2 号 p. 123-130
    発行日: 2007/11/15
    公開日: 2008/05/12
    ジャーナル フリー
     RNフォーラム幹事施設に対して,UTIの診断や,VURに対する予防投薬の現状についてアンケート調査を実施した。
     採尿法は,乳幼児ではパック尿,年長児では中間尿採尿が多く,尿路感染の診断は膿尿を重要視する傾向にあり,尿培養検査は必須とするものの,その判定には差があった。UTI診断後は超音波検査とVCUGにて検査をし,乳幼児では一度でもUTIを起こせばVCUGを施行していた。
     VURに対する予防投与はセフェム系を用いる施設が多かったが,対象の年齢,VURの程度,期間や投与法などは大きく異なった。UTIの要因となる包茎,便秘症,不安定膀胱についてはあまり積極的に検索しない反面,下部尿路通過障害に対しては積極的にVCUG検査をする施設が多かった。
     結果的にUTIの診断やVURの予防投与については各施設でさまざまであり,今後早急なガイドライン作成が必要と思われる。
  • —当院の年齢別基準値に基づいて—
    塚原 宏一, 平岡 政弘, 森 夕起子, 巨田 尚子, 徳力 周子, 川谷 正男, 長坂 博範, 川上 寿子, 関根 恭一, 眞弓 光文
    2007 年 20 巻 2 号 p. 131-135
    発行日: 2007/11/15
    公開日: 2008/05/12
    ジャーナル フリー
     先天性腎尿路異常症患者においては,機能的ネフロンが減少して腎機能低下が進行する危険性が少なくない。われわれは,先天性腎尿路異常症を有する小児患者を対象に,腎臓局所において酸化ストレスが亢進しているかどうか特異的マーカーを用いて調べた。対象は小児患者46名 (男32名,女14名; 1.2~16.0歳) で,原発性膀胱尿管逆流症 (以下,VUR) 患者20名とVURを呈さない (以下,Non-VUR) 患者26名に分けて評価した。特異的酸化ストレス・マーカーとして,尿中8-hydroxy-2'-deoxyguanosine (8-OHdG),acrolein-lysine, nitrite/nitrate濃度を計測した。健常者100名 (男50名,女50名; 1.5~21.0歳) から得られた年齢別基準値に基づいて,患者群での計測値をSDスコアで表した。25名 (VUR群で12名,Non-VUR群で13名) では,血清中nitrite/nitrate濃度も計測した。尿中酸化ストレス・マーカーについては,VUR患者と健常者との間に差は見られなかった。Non-VUR患者の場合,特に多嚢胞性異形成腎,無形成腎,低形成腎の患者で,健常者と比べてacrolein-lysineが異常高値を呈する患者が目立った (8-OHdGではそのような傾向はなかった)。このような患者では,腎臓局所での脂質・蛋白質酸化が亢進していることが示唆された。nitrite/nitrateの生成・排泄については,患者群で明らかな異常は見られなかった。今回の研究で得られた結果は,先天性腎尿路異常症における慢性腎障害の進展機序を解明し,その対策を立てるための手がかりになると考えられた。
  • 高田 彰, 石川 健, 松本 敦, 斉藤 雅彦, 相馬 洋紀, 千田 勝一, 四本 由郁, 遠藤 充, 長谷川 有紀, 山口 清次
    2007 年 20 巻 2 号 p. 136-140
    発行日: 2007/11/15
    公開日: 2008/05/12
    ジャーナル フリー
     多発嚢胞腎をきたす疾患は多いが,有機酸代謝異常症に伴う症例もあることはあまり知られていない。症例は新生児の姉妹で,各妊娠中の胎児超音波検査から腫大した高輝度の腎と,心筋肥厚に気づかれた。両児とも羊水過少のため正期産で帝王切開により出生し,代謝性アシドーシスをきたした。姉は家族歴,臨床所見,腎組織像から常染色体劣性多発嚢胞腎疾患が疑われたが,妹は尿の有機酸分析によってグルタル酸尿症II型と判明し,姉も本疾患であったと推察された。グルタル酸尿症II型は多発嚢胞腎や心筋への脂肪沈着を合併するが,多発嚢胞腎を鑑別する腎外症候に心病変の記載はない。胎児で高輝度を示す腎腫大と,心筋肥厚が発見された場合はグルタル酸尿症II型を疑い,羊水や尿の有機酸分析を行う必要があると考えられた。
総説
  • ——救命率の向上を目指して——
    北山 浩嗣, 和田 尚弘, 川崎 達也, 高橋 昌里, 稲垣 徹史, 山田 昌由, 澤田 真理子, 山内 豊浩, 深山 雄大
    2007 年 20 巻 2 号 p. 143-146
    発行日: 2007/11/15
    公開日: 2008/05/12
    ジャーナル フリー
     急性血液浄化 (CRRT) が施行された集中治療を要する重症症例に限定し救命率に与える各種条件について検討した。2002年1月から2005年9月までにCRRTを行った34症例を対象とした。Endpointを救命率として各種条件につき検討を行った。年齢の中央値は2歳6ヵ月。体重の中央値は8.9kg。血液浄化法は,CHFが16例,CHDFが19例,PEXが8例。敗血症症例に対してPMX-DHPを7例に施行した。
     年齢1歳以上,体重4kg以上,CAI 5μg/kg/min以下,PELODスコア20点未満,CPRを受けていない患児において救命率が高かった (有意差あり)。敗血症合併例と非合併例との間で救命率50.0%と52.4% (有意差なし)。
     重症小児に対するCRRTは,循環動態が不安定になる前で,PELOD 20未満の早期の血液浄化導入が良好な救命率につながることが示唆された。また,予後不良な敗血症例でも最近はPMX-DHPを積極的に導入しており,以前の報告と比較して救命率が向上した可能性が考えられた。
  • 漆原 真樹, 香美 祥二
    2007 年 20 巻 2 号 p. 147-151
    発行日: 2007/11/15
    公開日: 2008/05/12
    ジャーナル フリー
     MAPK経路は,細胞増殖や分化などさまざまな生命現象において重要な役割を果たしている。これまでに古典的MAPKであるERK1/2は増殖性腎炎や尿細管の成長への関与など多くの報告が見られる。しかし,ERK1/2に近縁のMAPKであるERK5に関してはその腎における役割は近年になって少しずつ知られるようになった。そこで,これまでに明らかにされたERK1/2に関する報告とERK5に関する新たな知見をもとにERKシグナルの腎病態生理における制御機構と役割を考察し,腎疾患治療への応用を検討する。
  • 野津 寛大, 貝藤 裕史, 神田 杏子, 松尾 雅文, 中西 浩一, 吉川 徳茂, 上辻 秀和, 神田 祥一郎, 林 良樹, 志水 信彦, ...
    2007 年 20 巻 2 号 p. 152-158
    発行日: 2007/11/15
    公開日: 2008/05/12
    ジャーナル フリー
     3型Bartter症候群は太いヘンレループに存在するクロライドチャネルClC-Kbをコードする遺伝子,CLCNKBの異常で発症することがすでに明らかとなっている。しかし,同疾患においては遺伝子解析の結果,ヘテロ接合体変異しか検出できない症例が多数あることが報告されている。また,同疾患は,Gitelman症候群の特徴とされている低カルシウム尿症および低マグネシウム血症を伴い,Gitelman症候群と診断されている可能性が指摘されている。
     今回,私たちは日本人3型Bartter症候群患者において,その遺伝学的特徴および臨床的特徴を明らかにしたので報告する。
  • 河内 明宏, 内藤 泰行, 三木 恒治
    2007 年 20 巻 2 号 p. 159-163
    発行日: 2007/11/15
    公開日: 2008/05/12
    ジャーナル フリー
     近年,国際的にも本邦においても,エビデンスに基づいた夜尿症の統一的な理解と治療法の確立を目指し,ガイドラインや治療戦略を作成する試みがなされている。今回,その中から,International Children's Continence Society (ICCS) の用語の標準化に関する報告,エビデンスに基づいた国際的治療戦略の報告および日本夜尿症学会の夜尿症診療ガイドラインについて概説する。
  • 神田 杏子, 野津 寛大, 貝藤 裕史, 松尾 雅文, 中西 浩一, 吉川 徳茂, 飯島 一誠
    2007 年 20 巻 2 号 p. 164-167
    発行日: 2007/11/15
    公開日: 2008/05/12
    ジャーナル フリー
     医原性低ナトリウム血症は発生頻度も高く,重篤な中枢神経症状を引き起こす合併症として近年注目を集めている。医原性低ナトリウム血症発症のリスクとして,低張性輸液および高ADH血症が知られている。重篤な感染症罹患時や手術後ではADHの分泌亢進が起こることが知られているが,その他,一般診療でよく見られるような軽症疾患であってもADHの分泌が亢進している危険性があるという報告が散見されており,その際の低張性輸液には注意が必要である。一方,術後嘔気嘔吐症は手術後の合併症として,発症頻度が高く,また,患者に強い不快感を与えるため問題視されている。その予防法や治療法に関しては研究が進められているが,発症機序に関しては未だ不明な点が多い。今回,私たちが経験した腎生検後に低ナトリウム血症および術後嘔気嘔吐症を発症した症例をもとに,これらの合併症の発症機序およびADHの関与につき考察を行った。
  • 池住 洋平
    2007 年 20 巻 2 号 p. 168-175
    発行日: 2007/11/15
    公開日: 2008/05/12
    ジャーナル フリー
     IgA腎症は最も頻度の高い慢性糸球体腎炎であり,発症が小児期から成人に至る幅広い年齢層にわたることから,腎専門医が診療にあたる機会が最も多い疾患である。しかし,診断および治療は一般に腎生検組織所見に基づいて行われるが,小児と成人では発見の動機,治療のタイミングが異なり,わが国においてさえ治療方針が異なるのが現状である。
     われわれが行った小児および成人IgA腎症の早期診断例を対象とした検討で,成人例は小児と比較し早期からメサンギウム基質の増生や尿細管間質障害といった慢性病変が形成されやすいことが示唆された。また,このような組織所見の違いを生じる原因の一環に活性化マクロファージが関与している可能性を見出している。
     このような結果を踏まえれば,成人例ではより一層早期の診断ならびに治療開始が必要と考えられ,定期健診の重要性とその一般への啓蒙を推進するとともに,診療指針についても再検討が必要と考えられる。
  • —糸球体上皮細胞におけるシグナル伝達系の役割—
    張田 豊
    2007 年 20 巻 2 号 p. 176-181
    発行日: 2007/11/15
    公開日: 2008/05/12
    ジャーナル フリー
     糸球体性蛋白尿は糸球体基底膜と糸球体上皮細胞のフィルター作用が破綻することにより生じる。近年,糸球体上皮細胞間のスリット膜の構造が明らかにされ,この細胞接着構造によるサイズバリア機能の解明が急速に進んでいる。中でもスリット膜のリン酸化やカルシウムシグナルなど,糸球体上皮細胞での細胞内シグナル伝達系の変化が蛋白尿の発症と深く関連していることが次々と明らかになってきた。蛋白尿の発症機序を分子レベルで明らかにし,ターゲットを絞った治療法の開発が急がれる。
  • —外科治療のFirst lineとして—
    宮北 英司
    2007 年 20 巻 2 号 p. 182-185
    発行日: 2007/11/15
    公開日: 2008/05/12
    ジャーナル フリー
症例報告
  • 前川 講平, 高木 信明, 澤木 潤子, 前 寛, 綾部 信彦, 大島 圭介, 服部 益治, 谷澤 隆邦
    2007 年 20 巻 2 号 p. 189-195
    発行日: 2007/11/15
    公開日: 2008/05/12
    ジャーナル フリー
     膜性増殖性糸球体腎炎 (membranoproliferative glomerulonephritis: MPGN) は,メサンギウム細胞の増加,基質の増加,糸球体毛細血管壁の二重化を呈する慢性糸球体腎炎である。組織学的に1982年のWHOの分類で高電子密度沈着物の存在様式により,I型からIII型に分類されている1)。また,MPGNは将来的に腎不全に至る可能性のある進行性原発性糸球体腎炎の一つであり,低補体血症の遷延することが特徴である。小児期では学校検尿で発見されることもある疾患であるが,1970年代には約10年の経過でほぼ半数が末期腎不全に至る疾患であった2)。1980年代にはプレドニゾロンの投与により予後の改善を認め,末期腎不全への移行は約15%に低下している3)
     一方,肥満関連腎症 (Obesity-related nephropathy: ORN) も近年注目されている腎症の一つであり,全身性障害を伴わない著しい肥満においてネフローゼ症候群に匹敵する蛋白尿を示す病態と定義され,蛋白尿,糸球体肥大,巣状糸球体硬化を来し,腎不全に至ることもある疾患である4)~8)。今回,腎組織像の改善後も蛋白尿の持続するMPGN typeIIIの1例を経験し,病因がORNと考えられたので報告する。
  • 花田 卓也, 林 篤, 河場 康郎, 岡田 晋一, 齊藤 源顕, 宇都宮 靖, 神崎 晋
    2007 年 20 巻 2 号 p. 196-201
    発行日: 2007/11/15
    公開日: 2008/05/12
    ジャーナル フリー
     追跡腎生検を施行した日本型Dent病 (J-Dent) の17歳,男児例を報告した。3歳児健診で蛋白尿を指摘。尿β2ミクログロブリン高値とクロライドチャネル5遺伝子検索によりintron 10にTGGTの4塩基の挿入を確認され,J-Dentと診断した。9歳時に行った腎生検組織像は微小変化であった。経過観察していたが,1日尿蛋白0.9g,1日尿アルブミン0.3gと尿蛋白が増加したため17歳で再腎生検を行った。再腎生検組織像では硬化糸球体の出現と間質の線維化が見出された。また,尿細管および間質には小石灰化が10数ヵ所に確認された。本症例の経過から,一部のJ-Dentの長期的腎機能予後は不良である可能性があると考えられた。
  • 芦田 明, 中倉 兵庫, 青松 友槻, 余田 篤, 玉井 浩
    2007 年 20 巻 2 号 p. 202-207
    発行日: 2007/11/15
    公開日: 2008/05/12
    ジャーナル フリー
     腹痛,下痢症状により発症した急性巣状細菌性腎炎 (Acute focal bacterial nephritis: AFBN) の6歳,男児例を報告する。発熱,腹痛,下痢にて発症し,入院時の腹部エコー検査での左腎の腫大および上,下極に皮髄境界不明瞭な腫瘤陰影および腹部造影CTにて同部位の非造影領域を確認しAFBNと確定診断した。入院後,抗生剤治療を開始し,症状は速やかに改善し後遺症を残すことなく退院した。治療経過中,左腎腫瘤陰影は腫瘤陰影の縮小とともに高エコー輝度より低エコー輝度へと変化した。AFBNの腎エコーでの腫瘤陰影は高エコー輝度,低エコー輝度を呈する報告などさまざまであるが,本症例の解析よりエコー輝度の多様性はその病期に依存する可能性が考えられた。
  • 宗 秀典, 波多江 健, 小野山 さがの, 宇都宮 里奈, 山口 結, 原田 達生, 片渕 律子
    2007 年 20 巻 2 号 p. 208-212
    発行日: 2007/11/15
    公開日: 2008/05/12
    ジャーナル フリー
     1歳7か月で発症したC1q nephropathyの1例を経験した。C1q nephropathyは蛍光抗体法でメサンギウム領域にC1qの優位な沈着を認めることで診断される1)が,ネフローゼ症候群を高率に発症し,ステロイド抵抗性やステロイド依存性となる可能性が高いと報告されている2)~7)。本症例は,ネフローゼ症候群で発症し,6週間のステロイド剤投与をおこなったが,寛解に至らずステロイド抵抗性ネフローゼ症候群と診断した。腎生検を施行し,光学顕微鏡所見は微小変化群であったが,蛍光抗体法でメサンギウム領域にC1qの優位な沈着を認めたことからC1q nephropathyと診断した。シクロスポリン投与により寛解を維持することができ良好な経過であった。低年齢でのC1q nephropathyの発症の可能性があることが示唆された。
  • 金田 尚, 太田 和秀, 三浦 正義, 河内 裕, 北村 明子, 塚口 裕康, 飯島 一誠
    2007 年 20 巻 2 号 p. 213-219
    発行日: 2007/11/15
    公開日: 2008/05/12
    ジャーナル フリー
     家族性巣状糸球体硬化症 (FSGS) は家族内集積のある原発性FSGSであり,一般に免疫抑制療法に抵抗性を示し,数年で腎不全に進呈するとされる。しかし,少数例ながら,孤発例と同じく治療反応群も存在する。また,シクロスポリン (CsA) が原発性FSGS患者の寛解率を著しく向上させることが広く認識され,最近では二次選択薬としてのみならず,初期治療から積極的に使用する動きもある。
     今回,ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群を呈した当科通院中の家族性FSGS男児例に対してCsA治療を行い,良好な結果が得られた。CsAは長期投与を考えてC2値600~800μg/mlを目標に1日1回投与法とした。有意な副作用の発現もなく,1年以上寛解を維持している。CsAの蛋白尿減少作用に関しては従来のTリンパ球を介した糸球体障害因子の抑制以外にも,糸球体濾過圧減少などといった非免疫学的な機序も最近明らかとなっている。CsA治療は,家族性FSGSであっても,その一部の症例に対しては十分に有効な治療法となりえるものと考えられた。
  • 波多江 健, 小野山 さがの, 宗 秀典, 緒方 怜奈, 原田 達生, 土本 晃裕, 平方 秀樹, 片渕 律子, 藤野 歩
    2007 年 20 巻 2 号 p. 220-225
    発行日: 2007/11/15
    公開日: 2008/05/12
    ジャーナル フリー
     肉眼的血尿を伴ったネフローゼ症候群の3歳男児例を経験した。
     腎生検光顕所見では,メサンギウム細胞のびまん性増殖,基質の増加とともに,係蹄壁の肥厚がみられた。スパイク,二重化も一部に認められた。蛍光抗体法ではIgG,IgA,C3,Fibrinogenが係蹄壁に強く沈着していた。電顕では上皮下に多量の高電子密度沈着物を認めた。沈着物はメサンギウム領域や内皮下にもみられ,mesangial interpositionも一部に認められた。
     二次性膜性腎症あるいは膜性増殖性腎炎 (MPGN) typeIIIの可能性が考えられたが,IgAの係蹄壁の沈着が強い点が典型的ではなかった。私たちは,この組織を,原発性腎炎のまれな病態「膜性増殖性腎炎 (typeIII) 様IgA関連糸球体腎炎」と考えた。
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