日本小児腎臓病学会雑誌
Online ISSN : 1881-3933
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22 巻, 2 号
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原著
  • 木全 貴久, 磯崎 夕佳, 木野 稔, 金子 一成
    2009 年 22 巻 2 号 p. 91-96
    発行日: 2009/11/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
     膿尿を尿路感染症診断の手がかりとされることが多い。しかし,筆者らは最近,膿尿を認めない症例を経験した。
     そこで膿尿を認めない尿路感染症の臨床的特徴を明らかにする目的で検討を行った。
     対象は最近5年間に入院した上部尿路感染症の129例 (男:女=88:41,年齢中央値4.12ヵ月)。膿尿の有無で2群に分け,年齢,性別,発熱から検尿までの時間,最高体温,最高白血球数,最高CRP,および膀胱尿管逆流現象の有無について比較検討した。
     その結果,膿尿を認めない18例 (14%) と膿尿を認めた111例 (86%) の二群間で,上記項目について統計学的有意差は認められなかった (p>0.05)。ただし,起炎菌に関しては膿尿を認めた例でE. coliが,認めない例でEnterococcusが有意に多かった。
     以上より,膿尿を診断の手がかりとすると,膿尿を呈さない1割強の尿路感染症および基礎疾患としての膀胱尿管逆流現象を見逃す可能性があるため,細菌尿の確認を必ず行うべきであると思われた。
  • 平本 龍吾, 松本 真輔, 江口 広宣, 三好 義隆, 小森 功夫, 秋草 文四郎, 柴田 佐和子, 亀井 宏一, 飯島 一誠
    2009 年 22 巻 2 号 p. 97-101
    発行日: 2009/11/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
     小児の難治性ネフローゼに,リツキシマブが投与され有効であるとの報告が散見される。自験例のステロイド依存性頻回再発型ネフローゼ症候群 (微小変化型) の7歳男児に対し,リツキシマブ (1回375mg/m2) を計4回投与し,有効であった。しかし,投与3ヵ月後に発熱を伴う重篤な無顆粒球症 (好中球0%) を起こした。G-CSF使用により,好中球は速やかに回復している。リツキシマブが投与された他疾患では遅発性 (1~5ヵ月) の好中球減少症発現の報告がある。多くはG-CSF投与で,もしくは自然に回復しているが,好中球減少症が1年続いた例も報告されている。文献上ネフローゼでの報告は見当たらない。小児の難治性ネフローゼに対して,今後リツキシマブの使用頻度が増えることが予想されるが,投与した場合は,少なくとも投与終了後1年間は,重度の遅発性好中球減少症の発現に関して,慎重な経過観察が大切と考えられる。
  • 敦賀 和志, 八代 知美, 沖 栄真, 田中 完
    2009 年 22 巻 2 号 p. 102-105
    発行日: 2009/11/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    【はじめに】遺伝子組換え人血清アルブミン (rHSA) 製剤はピキア酵母を宿主とした組換え型人血清アルブミン製剤である。成人肝硬変症やネフローゼ症候群 (NS) 患者への投与報告は散見されるが,小児患者への投与報告は未だない。今回われわれは,小児NSに伴う浮腫に対しrHSAを投与し,主にその安全性を中心に検討した。
    【対象,方法】2008年9月から2009年1月までNSにて当院で入院加療され,浮腫,尿量低下,循環不全をきたし,利尿剤のみでは症状の改善が得られない状態の患者で同意が得られた6例 (4~17歳),延べ8例を対象とした。原疾患は,微小変化型3例,巣状糸球体硬化症2例,紫斑病性腎炎1例であり,当施設倫理委員会の承認後に本剤の投与を開始した。投与法は一定ではなく個々人の臨床状態により調整したことから,1日投与量は4~37.5g,投与期間は3~22日であった。
    【結果】本剤投与前の血清抗ピキア酵母IgE抗体はすべての症例で陰性であった。また,rHSA投与後1~4ヵ月での抗体が陽性化した者も認められず,繰り返し投与によるアレルギー反応はみられなかった。いずれの症例も浮腫の改善,尿量の増加,循環動態の安定が得られ,血清アルブミン値も改善が認められた。
    【まとめ】今回のわれわれの検討からは,rHSA製剤は小児NS患者の浮腫に対し安全に投与が可能であり,従来の献血由来アルブミン製剤 (nHSA) の近い将来の代替え療法としての可能性も示唆された。今後多数の症例で長期間の検討が必要である。
  • 中原 小百合, 澤井 俊宏, 岩井 勝, 成宮 成朗, 野村 康之, 竹内 義博
    2009 年 22 巻 2 号 p. 106-110
    発行日: 2009/11/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
     家族性膜性腎症の報告は比較的稀で,これまでの報告例は少ない。今回われわれは,品胎のうち一卵性の二児がいずれも比較的低年齢で膜性腎症を発症した症例を経験した。重金属や有機溶媒への曝露は否定的で,家族歴にも膠原病や尿異常を含む腎疾患はみられなかった。腎生検組織所見は光顕で特徴的な糸球体基底膜の肥厚とPAM染色でのスパイク形成がみられたが,電顕で大小さまざまな高電子密度沈着物が基底膜上皮下,基底膜内,内皮下,傍メサンギウム領域にみられ,二次性膜性腎症を示唆する所見であった。
  • 福島 文, 桑門 克治, 武田 修明, 澤田 真理子, 田中 紀子, 西田 吉伸, 藤原 充弘
    2009 年 22 巻 2 号 p. 111-115
    発行日: 2009/11/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
     小児特発性ネフローゼ症候群において免疫抑制剤シクロフォスファミド (CPM) を使用した43例についてその有効性を検討した。CPMはステロイド依存性・頻回再発型ネフローゼ症候群に対して免疫抑制剤の第一選択として使用し,2mg/kg/dayを8~12週間投与した。平均観察期間108.4ヵ月 (25~330ヵ月) における寛解維持率は,6ヵ月65%,12ヵ月53%,24ヵ月39%,36ヵ月32%,48ヵ月30%であった。CPM有効の定義を,頻回再発型ネフローゼ症候群;CPM投与後,6ヵ月間再発がなかった例,ステロイド依存性ネフローゼ症候群;CPM投与前後での再発時のPSL量が1/2以下に減少した例として検討した。CPM有効例は29例 (67%),無効例は14例 (33%) であった。また,CPM使用後にそれ以外の免疫抑制剤を使用した例では,CPM有効例は無効例に比し,CPM以外の免疫抑制剤使用までの期間が平均32ヵ月間長い傾向にあった。
  • 金本 勝義, 飛田 尚美, 安齋 未知子, 松村 千恵子, 宇田川 淳子, 北村 博司, 城 謙輔, 倉山 英昭
    2009 年 22 巻 2 号 p. 116-121
    発行日: 2009/11/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
     小児IgA腎症におけるメサンギウム領域へのIgA-IgG共沈着の意義について明らかにするため,初回腎生検時の臨床所見,病理組織所見,短期予後について比較検討した。さらに,組織像が類似する紫斑病性腎炎 (Henoch-Schonlein purpura nephritis; HSPN) も対象として併せて検討した。対象は1998年1月から2008年12月までの小児IgA腎症175例とHSPN61例で,腎生検標本を用いた蛍光抗体法にてメサンギウムにIgGが沈着する陽性群と陰性群に分け,両群間で初回腎生検時の臨床所見,病理所見,2年後の短期予後について統計学的解析を行った。IgG陽性群はIgA腎症の71例 (40.6%),HSPNの16例 (26.2%) に認められ,陰性群に比して年齢差はなく,尿潜血,血清アルブミン値も差は認められなかったが,IgG陽性群は陰性群に比して,尿蛋白が多く,24-hr Ccrが低く,腎生検までの日数が長期であった。さらにIgA腎症では尿中ポドサイト個数がIgG陽性群に有意に多くみられた。病理所見ではHSPNではIgG陽性-陰性群間に有意差はなかったが,IgA腎症ではIgG陽性群にメサンギウム増殖,管内増殖,半月体形成が高度であった。2年後の評価では,IgA腎症においてIgG陽性群に蛋白尿残存者が多かったが (16.6% vs. 7.9%),HSPNでは有意差はみられなかった。今回の検討から,メサンギウムへのIgA-IgG共沈着はIgA腎症の発症および進展のメカニズムのひとつのファクターである可能性が示唆された。
総説
  • 神田 杏子, 野津 寛大, 橋村 裕也, 飯島 一誠, 松尾 雅文
    2009 年 22 巻 2 号 p. 123-125
    発行日: 2009/11/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
     偽性低アルドステロン症I型 (PHA1) は,レニン-アルドステロン系の亢進にもかかわらず,遠位尿細管におけるナトリウムの再吸収が障害されているため,低ナトリウム血症,高カリウム血症を呈することを特徴とするまれな尿細管疾患である。常染色体優性遺伝形式をとるものと常染色体劣性遺伝形式をとるものがあり,それぞれ重症度が異なる。近年,Bartter症候群II型で新生児期にPHA1とよく似た経過をたどる症例が報告されており,注意が必要である。PHA1は新生児期に適切な脱水・電解質管理がなされれば塩分補充療法のみで成長発達も改善される予後良好な疾患である。
  • 松本 直通
    2009 年 22 巻 2 号 p. 126-130
    発行日: 2009/11/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
     ヒトゲノム解析技術の進展により従来の手法では難しかった疾患ゲノム解析や遺伝子単離がこの数年で可能となってきた。本稿では,疾患遺伝子座をマップする技術として,ゲノムマイクロアレー・小家系を対象としたSNPアレー解析法,さらに候補遺伝子スクリーニングを効率的・迅速に遂行できる技術として,ハイレゾリューションメルト法・リシーケンスアレー・次世代シーケンサーについて自身の経験を踏まえて紹介する。いずれの技術も,従来型の解析技術を遙かに凌駕する利点を有するが,技術特異的な弱点もありプロジェクトの目的に応じて適切に利用する必要がある。
  • 橋村 裕也, 野津 寛大, 神田 杏子, 早川 晶, 竹島 泰弘, 金兼 弘和, 宮脇 利男, 飯島 一誠, 松尾 雅文
    2009 年 22 巻 2 号 p. 131-135
    発行日: 2009/11/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
     IPEX症候群は,FOXP3遺伝子の変異が制御性T細胞の機能異常を引き起こすまれな自己免疫異常症である。また,IPEX症候群患者は無治療で経過すると2歳までに感染や栄養障害から死亡する予後不良な疾患である。しかし,特異的な治療法がなく,免疫抑制剤の併用療法が行われてきたが根治療法とはならない。造血幹細胞移植が,近年,根治術として報告され良好な成績を挙げている。腎合併症は膜性腎症や尿細管間質性腎炎,微小変化型ネフローゼ症候群 (MCNS) を呈した症例などが報告されている。MCNSを呈した症例はIPEX症候群の病因である制御性T細胞機能異常の関与が考えられた。本稿ではIPEX症候群およびその腎症状,さらにはその発症原因である制御性T細胞異常と腎炎の関連性に関して述べる。
  • 近藤 秀治, Christine M Sorenson, 須賀 健一, 松浦 里, 木下 ゆき子, 香美 祥二
    2009 年 22 巻 2 号 p. 136-140
    発行日: 2009/11/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
     胎児腎臓では,アポトーシス抑制分子bcl-2は尿管芽や集合管等に発現し成熟とともにbcl-2の発現は低下する。bcl-2欠損マウスの胎児腎臓では後腎間葉の著明なアポトーシスと尿管芽の分岐の減少により低形成腎をきたし成熟腎で腎嚢胞が形成される。bcl-2欠損マウスの尿管芽と集合管上皮に選択的にbcl-2を発現させることにより腎臓の重量や容積が増大し低形成腎は改善した。また,嚢胞形成や糸球体の肥大は軽減しネフロン数も増加した。bcl-2欠損マウスでみられる亢進したアポトーシスや細胞増殖の程度も改善した。以上から,bcl-2の尿管芽と集合管上皮への発現により,ネフロン数が増加しbcl-2欠損マウスでみられる腎低形成や嚢胞腎は部分的に改善する。
  • —IgA1ヒンジ部糖鎖からのアプローチ—
    比企 能之
    2009 年 22 巻 2 号 p. 141-146
    発行日: 2009/11/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
     1992年,フランスのナンシーで開催された国際IgA腎症シンポジウムで,米国のMesteckyら1),英国スコットランドのAllenらと私たち2)の3グループがIgA腎症の病因にIgA1ヒンジ部の糖側鎖の異常の可能性をまったく別個に発想して同時に発表し,新しい研究分野としてスタートした。本稿では,われわれがこのIgA1分子の構造異常の可能性を着想した経緯とその検討経過を紹介し,このIgA1分子糖鎖異常説の現在の臨床応用の可能性も含めた進捗状況と問題点を総括する。
  • 武輪 鈴子, 谷口 奈穂, 田中 幸代, 中野 崇秀, 蓮井 正史, 金子 一成, 野津 寛大
    2009 年 22 巻 2 号 p. 147-151
    発行日: 2009/11/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
     腎性低尿酸血症は,human urate transporter1の異常により低尿酸血症をきたす疾患で,運動後急性腎不全の合併が多い。その発症機序について二つの仮説,すなわち「急性尿酸腎症説」および「活性酸素関与説」が提唱されているが,詳細は不明である。
     本論文では,腎性低尿酸血症の患者において運動後急性腎不全の合併しやすい理由を過去の文献を参考に考察するとともに,筆者らが経験した腎性低尿酸血症患児において,運動負荷の上で酸化ストレス度と抗酸化力を測定した結果を紹介した。患児は対照成人と同様,運動負荷直後から酸化ストレス度の上昇を示したが,抗酸化力は対照成人と異なり,運動負荷後,急激に低下した。すなわち対照に比して運動負荷時の酸化ストレス増大に見合う抗酸化力を有していないことが示唆された。以上より,酸化ストレス急増時の抗酸化力の相対的不足が腎性低尿酸血症における運動後急性腎不全発症に関与しているものと思われた。
  • 服部 成介
    2009 年 22 巻 2 号 p. 152-160
    発行日: 2009/11/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
     腎臓糸球体上皮細胞 (ポドサイト) スリット膜は,濾過機能の本体を担い,その構成成分の遺伝子異常は家族性ネフローゼ症候群の原因となる。近年,スリット膜構成因子がチロシンリン酸化によりダイナミックな制御を受けることが判明した。われわれは,スリット膜構成因子Neph1およびNephrinにリン酸化に依存して結合する因子を解析し,Neph1にはGrb2およびCSKが結合すること見いだした。Grb2のNeph1への結合はERK活性化を抑制する。Nephrinには既知のNckの他にさまざまな因子が結合し,PLC-γを介して細胞内カルシウムの調節を行う。PLC-γはTRPC6チャネルを活性化するのに対し,NephrinはTRPC6に対して抑制的であるが,家族性巣状糸球体硬化症でみられるTRPC6変異はNephrinによる制御から逸脱していた。スリット膜構成因子のリン酸化はFynによるリン酸化と脱リン酸化のバランスの上に成り立っており,そのバランスの破綻はネフローゼの原因になると考えられる。
  • 柳澤 敦広, 乾 健彦, 生井 良幸, 高梨 潤一, 藤井 克則, 水口 雅, 関根 孝司, 五十嵐 隆
    2009 年 22 巻 2 号 p. 161-165
    発行日: 2009/11/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
     腸管出血性大腸菌 (enterohemorrhagic E. coli: EHEC) 感染症を契機に発症した溶血性尿毒症症候群 (hemolytic uremic syndrome: HUS) の重篤な合併症として,脳症がある。脳症の臨床像・病態生理は複雑である。今回われわれが経験したHUSに合併した脳症は,急性壊死性脳症 (acute necrotizing encephalopathy of childhood: ANE) に特徴的な画像所見を示していた。
     こういった例はHUSに合併した脳症のなかでも,特に重篤な経過をたどりやすいようだ。また,サイトカインの関与も示唆された。HUSに対する既存の治療法では不十分であり,発症機序,管理・治療法に関するさらなる検討が必要と思われる。
  • 元吉 八重子, 市川 家國
    2009 年 22 巻 2 号 p. 166-171
    発行日: 2009/11/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
     糸球体疾患において,高分子蛋白尿の量が多いほど末期腎不全へと移行するリスクが高く,蛋白尿は腎疾患の指標であるのみでなく,さらなる腎傷害の原因となる可能性がある。
     糸球体から漏出した様々な蛋白質は,主にmegalinというレセプターを介したエンドサイトーシスにより管腔側から近位尿細管細胞へと取り込まれ,ライソソームへと運ばれて分解されるか,そのまま基底膜側へと運ばれる。それにともなって,MCP-1やRANTESなどの炎症に関わるメディエーターや,TGF-βなどの線維化に関わるメディエーターが尿細管間質に放出される。また,近位尿細管のアポトーシスも惹き起こされる。このように,漏出した蛋白質が直接的な尿細管傷害の起因となることによって悪循環を形成し,慢性腎不全を進行させている可能性がある。
  • 山崎 雄一郎
    2009 年 22 巻 2 号 p. 172-177
    発行日: 2009/11/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
     小児尿路奇形の主な病態は尿路閉塞と膀胱尿管逆流症 (VUR) である。尿路閉塞による腎障害を閉塞性腎症と呼び,VUR症例に腎癜痕を認める場合は逆流性腎症と呼ぶ。胎児・新生児エコー検査のルーチン化により乳幼児の無症候性水腎症の診断率は飛躍的に増加し,逆流性腎症の概念の普及にともない初回UTIでのVURの早期発見率も向上した。しかし,胎児水腎症の長期予後,乳幼児VURの長期予後についてはいまだに明確とはいえない。本稿では胎児水腎症の評価,新生児・乳児期にみられる水腎症の長期予後,反復UTI患児にみられるVURの特徴,DMSA腎シンチグラム異常を伴うVURの特徴という4点について近年の報告から明らかになってきたことを概説する。
  • 宮沢 朋生, 杉本 圭相, 藤田 真輔, 柳田 英彦, 岡田 満, 竹村 司
    2009 年 22 巻 2 号 p. 178-180
    発行日: 2009/11/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
     STAT3に変異を認めたI型高IgE症候群 (HIES) に,微小変化型ネフローゼ (MCNS) を発症した1例を経験した。血清IgE値は,4000~25000IU/mlと著増していた。ネフローゼは,ステロイド反応性と抵抗性を繰り返した。STAT3の変異は,Trans-activation domain内のexon23に,A744V (GCT→GTT) のヘテロ変異であり,新規の異常であった。われわれの症例では,関節,骨・軟部組織などの異常の合併は認められなかった。その理由としては,変異部位がTrans-activation domain内にあり,シグナル伝達に最も影響するDNA binding domain部ではなかったことなどが推測される。
症例報告
  • 橋村 裕也, 野津 寛大, 忍頂寺 毅史, 貝藤 裕史, 中西 浩一, 吉川 徳茂, 飯島 一誠, 松尾 雅文
    2009 年 22 巻 2 号 p. 183-187
    発行日: 2009/11/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
     今回われわれは,HUS発症8年後より高度蛋白尿を呈し,発症11年後の腎生検で糸球体硬化および著明な間質の線維化を認めた症例を経験したので報告する。
     症例は14歳女性。3歳時に溶血性尿毒症症候群 (HUS) を発症し,約1ヵ月間の腹膜透析治療を要した。透析終了後,尿蛋白は陰性化したが尿中β2MGの高値が持続したため腎生検を行ったところ,腎組織の一部に瘢痕化を認め,急性期での皮質壊死の存在が示唆された。その後,アンギオテンシン変換酵素阻害薬 (ACEI) の内服を開始し尿所見は正常化した。しかし,発症から8年後より高度尿蛋白が出現し,再度腎生検を行ったところ,糸球体硬化および著明な間質の線維化を認め今後の腎機能障害への進行が予想された。本症例のようにHUSの急性期に長期間人工透析を行い,また,尿異常が遷延する症例は,後遺症の発症率が高いと報告されているために,予後に十分な注意を払うべきである。
  • 永田 智子, 岩田 晶子, 都間 佑介, 山本 崇裕, 伊藤 貴美子, 鹿野 博明, 中嶋 義記, 近藤 富雄, 重松 秀一
    2009 年 22 巻 2 号 p. 188-194
    発行日: 2009/11/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
     症例は11歳,男子。基礎疾患はなく,腎静脈血栓症の合併を契機に,膜性腎症と診断された。血栓溶解療法のみでは腎静脈血栓症の再燃を繰り返したため,ネフローゼ症候群の治療としてステロイド剤,免疫抑制剤を併用し,症状が寛解した。
     シクロスポリン投与中はネフローゼ症候群も寛解維持でき,血栓再燃もみられなかったが,シクロスポリン投与2年後の腎病理像では基底膜の肥厚の進行,足細胞下のElectron Dense Depositの増加があり膜性腎症StageIIからIIIへの進行がみられた。肝炎ウィルスをはじめ感染症スクリーニングは陰性,抗核抗体ならびに抗DNA抗体も陰性であり,現在のところ特発性膜性腎症と診断している。しかし,全身性エリテマトーデスなど自己免疫疾患については腎症を発症してしばらくしてから腎外症状が揃い確定診断に至る例の報告もあり,今後も念頭において慎重にフォローアップしていく必要があると考える。
  • 長谷川 博也, 池住 洋平, 唐澤 環, 鈴木 俊明, 内山 聖
    2009 年 22 巻 2 号 p. 195-200
    発行日: 2009/11/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
     症例1は血管炎に伴う続発性ネフローゼ症候群の12歳女児。ステロイド治療に抵抗性を示し,ネフローゼ状態が持続した。小腸出血の合併に対し,入院56日目に腹腔鏡下小腸部分切除術を施行した。手術翌日に高血圧と全身性けいれんを認め,その後も腹痛の増強に合わせて血圧上昇とけいれんを繰り返した。
     症例2は頻回再発型ネフローゼ症候群の9歳男児。6回目の再発時に腹膜炎を合併し,当科入院5日目に頭痛と高血圧を訴え,全身性けいれんを認めた。
     2例とも頭部MRIで後頭葉優位に病変を認め,神経学的後遺症を残さずに回復したことからPosterior reversible encephalopathy syndrome (PRES) と診断した。PRES発症の危険因子とされるカルシニューリン阻害薬は未使用であったが,全身麻酔下手術,血管炎や細菌感染症が血管透過性の亢進を招き,PRES発症の誘因となった。
  • 田中 百合子, 大戸 佑二, 土屋 貴義, 富田 祐造, 吉野 篤範, 塩津 麻美, 幡谷 浩史, 大木 寛生, 西村 玄, 本田 雅敬, ...
    2009 年 22 巻 2 号 p. 201-206
    発行日: 2009/11/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
     Hyponatremic hypertensive syndrome (HHS) は片側腎虚血によって起こり,著明な高血圧と,低Na血症,低K血症,代謝性アルカローシス,蛋白尿,多飲多尿などをきたす病態である。患側では腎虚血によるレニン-アンジオテンシン系の亢進が,健側では過負荷による圧利尿が起こることで生じる。
     入院時,高血圧を呈さず,それ以外のHHSの検査所見と症状のみが見られた腎血管性高血圧の女児を経験したので報告する。多飲多尿を主訴に入院した当初,血圧は86/42mmHgと正常であったが,輸液で循環血漿量の不足を是正したところ,200/140mmHgと著明な高血圧が出現した。ACE-I,Ca拮抗薬で血圧が正常化すると同期し,検査所見も速やかに正常化した。画像検査で腎動脈奇形による左腎下極部の虚血が判明した。HHSを伴う腎血管性高血圧では,脱水を伴い高血圧がマスクされることもあり注意が必要である。
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