日本小児腎臓病学会雑誌
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23 巻, 1 号
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原著
  • 野田 良典, 桑門 克治, 藤原 充弘, 石原 万理子, 大久保 沙紀, 土本 啓嗣, 羽山 陽介, 向井 丈雄, 河村 加奈子, 花岡 義 ...
    2010 年 23 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2010/04/15
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
     腎盂腎炎の再発予防内服と早期の放射線画像診断の妥当性に関して,当施設で米国小児科学会のPractice Parameterに準じて長期管理を行った164例 (男児121例,女児43例) について後方視的に検討した。初回の腎盂腎炎のあとに排尿時膀胱尿道造影検査を行った。膀胱尿管逆流 (VUR) を認めず予防内服を行わなかった32例のうち9例 (28%) が再発したのに対し,予防内服を行った症例の再発はVUR I~III度15例中2例 (13%),IV・V度10例中5例 (50%) であった。DMSAシンチのVUR検出率はIII~V度の症例でも73% (11例中8例) にとどまった。発熱から24時間以内に治療開始された15例のうち6例に放射性同位体の取り込み欠損を認めた。1歳未満ではIII~V度のVURでも11例中7例が改善していた。これらの検討より,現時点では管理手順を変える必然性は見いだせなかった。
総説
  • 岡 政史, 野津 寛大, 飯島 一誠, 松尾 雅文
    2010 年 23 巻 1 号 p. 8-12
    発行日: 2010/04/15
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
     Alport症候群 (AS) は感音性難聴を伴う遺伝性進行性腎疾患である。高頻度に末期腎不全に至るとされ臨床的に重要な疾患であるが,その臨床像,自然予後は十分には解明されていない。今回,分子遺伝学的特徴および近年報告された家族性良性血尿症候群との関連について,常染色体性Alport症候群を中心に概要をまとめる。
  • (中国四国小児腎臓病学会参加施設による小児IgA腎症多施設共同解析報告)
    成瀬 桂史, 林 篤, 大田 敏之, 坂野 堯, 藤枝 幹也, 城 謙輔
    2010 年 23 巻 1 号 p. 13-20
    発行日: 2010/04/15
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
     IgA腎症の組織学的評価方法には,過去から現在まで,多種な分類があり,本邦においても厚生労働省からIgA腎症診断指針が発表されている。さらに,現行の診断基準の問題点を改善し,新規の厚生労働省IgA腎症診断基準が施行過程に移ろうとしている。しかし,小児IgA腎症においては,成人と異なる特徴が多数あり,現行および新IgA腎症診断基準が適切かどうか明らかではなく,小児における病理診断基準の検証が課題となっている。
     今回,中国四国小児腎臓病学会関連病院において,150例を超える多数の小児IgA腎症腎生検を集積し,その病理所見をデータベースとして蓄積することが可能となった。
     ここでは,現行のIgA腎症診断基準の記載,新分類の紹介,さらに厚生省ならびに厚生労働省の分類を自己のデータを含めて比較検討し,小児IgA腎症を適応させることが可能かどうかを考察してみる。
症例報告
  • 松永 明, 鈴木 浩, 早坂 清
    2010 年 23 巻 1 号 p. 22-28
    発行日: 2010/04/15
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
     先天性チアノーゼ心疾患Cyanotic congenital heart disease (CCHD) に伴う腎症 (Nephropathy in CCHD: NCCHD) の2例を経験した。NCCHDでは,低酸素血症,多血症による血液過粘稠により腎糸球体内圧が上昇し,毛細血管の拡張や糸球体の腫大を生じることが主な病態であると言われている。今回われわれは,2例のNCCHDを経験したが,前述の病態に加え,肺循環をバイパスして糸球体内に入り込んだ巨核球と,そこで産生された血小板や血栓に起因する糸球体傷害が推測された。2例とも原疾患に対する治療と,抗血小板薬,Renin-angiotensin system (RAS) 阻害剤の投与で尿所見が改善し,腎機能も正常に維持している。2症例の臨床経過,病理組織について報告するとともにNCCHDの病態について考察する。
  • 岩田 晶子, 棚橋 義浩, 都間 佑介, 大島 一夫, 真鍋 智子, 伊藤 貴美子, 鹿野 博明, 中嶋 義記, 原田 徹, 近藤 富雄, ...
    2010 年 23 巻 1 号 p. 29-34
    発行日: 2010/04/15
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
     著者らは,MPO-ANCA関連腎炎と診断され,ステロイドパルス療法後に,急性膵炎,十二指腸穿孔性腹膜炎,Posterior reversible encephalopathy syndrome (PRES) を合併した1女児例を経験した。
     症例は9歳,女児。学校検尿で異常を指摘され,当科を受診し,腎機能悪化傾向のため,精査入院となった。MPO-ANCAが陽性で,腎病理検査で糸球体の半数に半月体形成を認めた。ステロイドパルス療法後2日目に腹痛を訴え,腹部CTで膵臓の腫大,フリーエアーを認めた。術中所見にて,十二指腸穿孔性腹膜炎と診断した。手術翌日に痙攣が起こり,頭部MRIにてPRESと診断した。本邦でANCA関連腎炎に膵炎を合併した小児例は今までに報告はないが,成人例では散見され,ステロイドパルス後に発症している症例もあった。MPO-ANCAが陽性の場合,腎臓だけでなく,多臓器の合併症にも十分注意が必要である。
  • 中田 麻子, 山藤 陽子, 里村 憲一
    2010 年 23 巻 1 号 p. 35-39
    発行日: 2010/04/15
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
     今回われわれは,超低出生体重児が学校検尿にて蛋白尿を指摘された症例を経験したので報告する。
     症例は9歳女児。在胎25週,出生体重624g,品体の第三子として出生。就学時健診にて蛋白尿をはじめて指摘された。9歳時に行った腎生検では細胞増殖や硬化病変は認めなかったが,糸球体面積が同年齢のそれに比較して増加していた。近年,低出生体重児が成人期に高血圧,耐糖能異常,脂質代謝異常,腎不全などさまざまな成人病を合併することは広く知られるようになった。本症例においては超低出生体重児として出生したため,ネフロン形成過程の停止に伴う糸球体数の減少により,糸球体高血圧や過ろ過が起こり,小児期早期から蛋白尿を呈したと考えられる。急速な医療技術の発展に伴い,超低出生体重児からの生存者が増加傾向にある現在,同様の症例は今後増加することが予想される。わが国では広く学校検尿が行われているが,低出生体重児が学校検尿で異常を認めた場合,軽度の蛋白尿であっても上記の病態を疑って対応し,早期からの介入・治療が必要と思われる。
  • 越智 史博, 中野 威史, 林 正俊, 山内 俊史, 元木 崇裕, 米澤 早知子, 平井 洋生, 徳田 桐子, 大森 啓充, 石井 榮一
    2010 年 23 巻 1 号 p. 40-46
    発行日: 2010/04/15
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
     ネフローゼ症候群ではさまざまな理由から過凝固状態に陥りやすく,抗凝固療法の重要性が指摘されている。なかでも初期治療に対し反応性に乏しいステロイド抵抗性ネフローゼ症候群では,診断確定および治療方針決定のため腎生検が必要となるが,腎生検施行時には出血のリスクのため抗凝固剤を中断する必要があり,さらに過凝固状態に傾く。今回われわれは,左肘静脈より中心静脈カテーテルを留置したネフローゼ症候群の6歳男児に,腎生検施行時に抗凝固療法を一時中断したことで深部静脈血栓症を発症した症例を経験した。抗凝固剤投与を行い,頻回の静脈エコーにより経過観察したところ,静脈血栓は器質化し血流も再開通した。中心静脈カテーテル留置時や抗凝固剤中断時には,深部静脈血栓症のリスクが高くなることを十分考慮し,臨床症状出現に注意するとともに,中心静脈カテーテル管理や抗凝固療法の中止時期を慎重に判断する必要がある。
  • 大塚 泰史, 岡 政史, 酒井 菜那, 佐藤 忠司, 青木 茂久, 濱崎 雄平
    2010 年 23 巻 1 号 p. 47-52
    発行日: 2010/04/15
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
     症例は13歳男児。顔面浮腫,蛋白尿4+,低蛋白血症 (TP4.8g/dl,Alb2.3g/dl) があり,ネフローゼ症候群と診断された。ステロイド抵抗性のため腎生検を行い,巣状分節性糸球体硬化症 (FSGS) と診断した。ステロイドパルス療法 (1週×5) およびステロイド,シクロスポリン,リシノプリルにて不完全寛解となった。発症後7ヵ月より尿蛋白が増加し,ミゾリビンを追加したが,低蛋白血症,下腿浮腫を認め,再発したことから,血漿交換 (PEX) を施行した。PEX (3日/週) 開始とともに尿蛋白は減少し,3日で寛解した。PEXにステロイドパルス療法 (3日/週) を追加し,合計2週間行った。その後,寛解を維持している。本症例は薬物治療のみで不完全寛解となり,再発時にPEXを導入したことで速やかに寛解した。PEXやLDL吸着療法の適応や選択方法は明確ではないが,早期導入は効果的であった。FSGSによる合併症や多剤免疫抑制剤による副作用が懸念される場合には,早期にアフェレシス導入を考慮するべきである。
海外論文紹介記事
  • 後藤 芳充
    2010 年 23 巻 1 号 p. 54-55
    発行日: 2010/04/15
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
  • 岡田 満
    2010 年 23 巻 1 号 p. 56-57
    発行日: 2010/04/15
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
     小児での組織学的には微小変化群の頻回再発型ネフローゼ症候群 (FRNS) において, ミコフェノール酸モフェチル (MMF) とシクロスポリン (CsA) との効果を多施設無作為対照試験にて比較検討した。対象患者24名を, MMF群1200mg/m2/日とCsA群4~5mg/kg/日に12名ずつに分けて12ヵ月間投与した。MMF群の2名が薬剤中止となった。糸球体濾過量 (GFR) では, MMF群は基準値に対して治療後に良好な値を示した。MMF群7人とCsA群11人は完全寛解を維持した。MMF群の再発率は0.83/年で, CsA群では0.08/年であった。下痢を認めた患者はいなかった。ミコフェノール酸 (MPA) の薬物動態を7名に行い, 吸収曲線下面積 (AUC) の最低値を示した患者は, 6ヵ月間に3回再発した。小児FRNSにおいて, MMFはCsAに比較して副作用面では良かったが, 再発の危険性はより高い傾向がみられた。
  • 中島 滋郎
    2010 年 23 巻 1 号 p. 58-59
    発行日: 2010/04/15
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
     【背景】腎不全はI型糖原病の重要な合併症である。今回, I型糖原病患者の腎機能の系時的変化について検討した。また, 代謝状態のコントロールの良好な患者と不良患者の比較およびACE阻害薬の効果を検討した。
     【対象と方法】39名のI型糖原病患者で検討した。GERはI125イソタラム酸で, ERPFはI131馬尿酸で測定し, 体表面積で補正した。微量アルブミン尿は2.5mg/mmol Cr以上, 蛋白尿は0.2g/l以上とした。また, 血糖値3.5mmol/l以上, 尿乳酸/Crが0.06以上, トリグリセリド6.0mmol/l以下, 尿酸450μmol/l以下をコントロール良好とした。
     【結果】GERとERPFは年齢に対して二相性の変化を示した。微量アルブミン尿の頻度はコントロール良好群が不良群に比して有意に少なかった。ACE阻害薬の開始でGERの有意な減少を認めた。
     【結論】今回の検討では, I型糖原病患者はGERとERPFは二相性の変化を示し, その後, 微量アルブミン尿および蛋白尿を呈する経過を示した。代謝状態の良好なコントロールは微量アルブミン尿や蛋白尿に対して腎保護作用を呈した。ACE阻害薬はGERを減少させ, この効果は特に過剰濾過を示すI型糖原病患者で有意に認められた。
各地方会の二次抄録
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