日本小児腎臓病学会雑誌
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30 巻, 1 号
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総説
  • 坂井 智行
    2017 年 30 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/14
    [早期公開] 公開日: 2016/12/15
    ジャーナル フリー

    Non renal indication として実施される血液浄化療法は,病態に関わる物質の除去や補充を目的として実施される。敗血症に対するnon-renal indication としての血液浄化療法は,過剰な炎症性サイトカインを除去し免疫調整による病態改善が目的である。成人敗血症患者ではnon-renal indication として高流量血液濾過やポリミキシンB 固定化カラムを用いた直接血液灌流法,サイトカイン吸着特性をもつ血液浄化膜を用いた持続血液濾過透析が試みられてきたが,それらの有効性を示すエビデンスは存在しない。小児敗血症患者でも同様であり,適切な臨床試験による有効性の検証が望まれる。現状では血液浄化療法の経験不足に起因する諸問題を防ぐため,血液浄化療法と全身状態の管理に習熟している施設に限り,敗血症に対するnon-renal indication は一つの選択肢となり得ると考える。

原著
  • 堀江 昭好, 小池 大輔, 和田 啓介, 平出 智裕, 成相 昭吉, 北村 律子, 加藤 文英
    2017 年 30 巻 1 号 p. 9-13
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/14
    [早期公開] 公開日: 2016/12/15
    ジャーナル フリー

    1999 年4 月~2014 年3 月に島根県立中央病院において在胎35 週未満で出生した早産児の腎機能予後について検討を行った。

    在胎35 週未満で出生した早産児の2 歳時点での推算糸球体濾過率(estimated glomerular filtration rate: eGFR)は出生体重と在胎週数に有意な相関を示した。またeGFR 90 ml/min/1.73 m2 未満が持続するChronic Kidney Disease(CKD)ステージ2 に当てはまる児を11.2%に認めた。これらの症例では,出生後7 日目の血清クレアチニンが高値であり,予測因子の一つになる可能性がある。

    在胎35 週未満で出生した児においては,一般的な尿定性検査で異常を認めなくとも,eGFR が低値となる症例があり,慎重に経過をみる必要がある。

  • 池田 裕一, 小宅 千聖, 大貫 裕太, 平林 千寿, 布山 正貴, 渡邊 常樹
    2017 年 30 巻 1 号 p. 14-20
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/14
    [早期公開] 公開日: 2016/12/22
    ジャーナル フリー

    夜尿症 (nocturnal enuresis: NE)は自尊心の低下や生活の質の低下 (Quality of Life: QOL)をきたすことが知られている。しかし,学校生活を含めた社会的影響は充分理解されていない。そのため,「社会的機能」と「学校の機能」の下位尺度を有するPedsQL を用いて非単一症候性NE (non-monosymptomatic nocturnal enuresis: NMNE) のQOL を調査した。

    [方法]242 例のNE 患児と保護者からPedsQL を回収した。NMNE と単一症候性NE (monosymptomatic nocturnal enuresis: MNE)の比較に加え,本人評価と保護者代理評価,高頻度NE と低頻度NE の違いも検討した。

    [結果]本人評価の総合得点(p=0.020),「身体的機能」(p=0.047),「社会的機能」(p=0.024),「学校の機能」(p=0.028)はMNE よりNMNE で有意に低下していた。しかし,保護者代理評価では差がなかった。「感情の機能」は本人評価より保護者代理評価で有意に得点が低下していた(p=0.025)。NE 頻度の差は本人,保護者代理評価共に差がなかった。

    [結論]NMNE の学校,社会的QOL の低下が保護者に見過ごされている可能性があり,地域や学校を巻き込んだ支援が必要である。

  • 渡邊 佳孝, 本多 貴実子, 小林 久志, 村田 俊輔, 丸山 真理, 布山 正貴, 渡邊 常樹, 齋藤 陽, 池田 裕一
    2017 年 30 巻 1 号 p. 21-24
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/14
    [早期公開] 公開日: 2017/03/09
    ジャーナル フリー

    尿路感染症(UTI)罹患児に対する持続的少量抗菌薬予防投与(CAP)について,本邦で頻用されるcefaclor(CCL)を用いた検討は少ない。今回,3 施設の初発有熱性UTI症例における,CCL のCAP によるUTI 再発抑制効果について後方視的に検討した。

    2004 年4 月から2013 年3 月に昭和大学横浜市北部病院,同藤が丘病院,聖マリアンナ医科大学病院の各小児科に入院した初発有熱性UTI 症例のうち,6 か月以上経過観察できた126 例を対象とした。これらを,CCL のCAP を行った群(CAP 群)と行わなかった群(非CAP 群)の2 群にわけ,患者背景,再発の有無について検討した。また排尿時膀胱尿道造影(VCUG)を施行した症例は,膀胱尿管逆流(VUR)の有無も合わせて検討した。

    126 例(CAP 群52 例,非CAP 群74 例)で,両群の患者背景に有意差はなく,CAP 群で有意に再発が少なかった。またVCUG を施行した114 例(CAP 群50 例,非CAP 群64 例)のうち,VUR がある症例ではCAP 群で有意に再発が少なかった(12% vs. 67%,p<0.01)。

    CCL のCAP により,UTI の再発を抑制できる可能性がある。

  • 渡邊 常樹, 池田 裕一, 小林 久志, 渡邊 佳孝, 村田 俊輔, 丸山 真理, 布山 正貴, 本多 貴実子, 齋藤 陽
    2017 年 30 巻 1 号 p. 25-29
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/14
    [早期公開] 公開日: 2017/03/09
    ジャーナル フリー

    近年の尿路感染症(UTI)のガイドラインでは排尿時膀胱尿道造影(VCUG)の適応が限定される傾向にあり,高度の膀胱尿管逆流(VUR)症例の見逃しが懸念される。そこで,3 施設のUTI 症例から高度VUR 症例の臨床的特徴を明らかにし,VCUG を施行すべき症例を検討した。

    2004 年4 月から2013 年3 月に昭和大学藤が丘病院,同横浜市北部病院,聖マリアンナ医科大学病院の各小児科に初回有熱性UTI として入院し,VCUG を施行した168 例を対象とした。grade IV 以上のVUR を認めた症例を高度VUR 群,それ以外を非高度VUR 群に分類し比較検討した。

    59 例(35.1%)にVUR を認め,そのうち高度VUR は18 例(10.7%)であった。両群間の患者背景に有意差を認めなかった。高度VUR 群では,超音波検査で異常所見を認めた症例が有意に多く(p<0.05),起因菌でも,E. coli以外が有意に多かった(p<0.05)。

    初発UTI において超音波検査で異常所見があり,起因菌がE. coli 以外の症例は高度VUR 合併を念頭にVCUGの施行を考慮する必要がある。

  • 村田 俊輔, 小林 久志, 渡邊 佳孝, 丸山 真理, 布山 正貴, 渡邊 常樹, 本多 貴実子, 池田 裕一, 齋藤 陽
    2017 年 30 巻 1 号 p. 30-34
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/14
    ジャーナル フリー

    尿路感染症(UTI)の再発には腎瘢痕形成の危険性があるが,その再発因子に関する見解は多岐にわたる。2004年4 月から2013 年3 月に聖マリアンナ医科大学病院,昭和大学藤が丘病院,同横浜市北部病院の各小児科に入院した初発有熱性UTI 症例中,6 か月間以上経過観察でき,予防内服未施行の72 例を対象に,再発群と非再発群に分け,UTI の危険因子について後方視的に検討を行った。初発時の起因菌は再発群で有意に非大腸菌群が多かった(p<0.01)。また,再発群では有意にSFU grade III以上の水腎症と膀胱尿管逆流(VUR)を認める症例が多かった(p<0.01)。その他,性別や初発時年齢は両群間で有意差を認めなかった。今回の結果からは初発時の起因菌,SFU grade III 以上の水腎症やVUR の有無が再発に関与する可能性が考えられた。

症例報告
  • 藤村 順也, 石森 真吾, 神岡 一郎, 沖田 空, 親里 嘉展, 西山 敦史, 米谷 昌彦
    2017 年 30 巻 1 号 p. 35-40
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/14
    [早期公開] 公開日: 2016/12/22
    ジャーナル フリー

    インフルエンザウイルス (flu)ワクチン接種,flu 感染は小児特発性ネフローゼ症候群 (NS)再発の誘因となるがその詳細を検討した報告はない。今回,flu ワクチン接種または感染を契機としてNS 再発に至った小児6 例を報告する。flu ワクチン接種によるNS 再発が3 例 (以下,ワクチン再発例),flu 感染によるNS 再発が3 例 (以下,感染再発例)で全例が男児であった。flu ワクチン,感染後に全く再発のないNS 例を対象とし,その背景を検討した。ワクチン再発例では,ワクチン接種3 回全てをNS 初発または最終再発から6 か月未満の時期に行っており対照群 (15 回中3 回)よりも多かった。感染再発例においても,flu 感染3 回全てがNS 初発または最終再発から6 か月未満の時期で対照群 (5 回中0 回)よりも多かった。flu ワクチン,感染に伴ったNS 再発には,背景に症例毎の病勢の影響が存在するかもしれない。本検討は症例数が少なく,今後大規模な多施設共同研究が望まれる。

  • 周戸 優作, 長野 智那, 畔柳 佳幸, 笠原 克明, 後藤 芳充
    2017 年 30 巻 1 号 p. 41-47
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/14
    [早期公開] 公開日: 2016/12/22
    ジャーナル フリー

    Alport-leiomyomatosis syndrome (A-LS)はAlport 症候群にびまん性平滑筋腫症を合併する稀な疾患である。今回我々は感冒を契機に撮影した胸部X 線写真で偶発的に見つかったA-LS の1 例を経験した。症例は6 歳時に腎生検で腎組織IV 型コラーゲンα5 鎖完全欠損を認めAlport 症候群と確定診断し経過観察となっていた男児である。10 歳時に感冒をきっかけに胸部X 線写真の異常陰影を指摘され,精査の結果,食道にびまん性平滑筋腫症を認めA-LS と診断した。さらに,食道以外に直腸にも平滑筋腫を認めた。患児の遺伝子解析では,患児はCOL4A5 からCOL4A6 までの広範囲にわたる欠失を認め,これまでの報告と同じ遺伝子の欠失パターンであった。母の遺伝子解析では欠失を認めなかったため,本症例は孤発例であると考えられた。今後も多臓器に平滑筋腫症を合併することを念頭において,丁寧な問診と身体診察を行っていく必要がある。

  • 松木 琢磨, 熊谷 直憲, 中山 真紀子, 川嶋 明香, 上村 美季, 菅野 潤子, 呉 繁夫
    2017 年 30 巻 1 号 p. 48-53
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/14
    [早期公開] 公開日: 2016/12/15
    ジャーナル フリー

    溶連菌感染後急性糸球体腎炎(acute poststreptococcal glomerulonephritis: APSGN)は,小児において最も頻度の多い感染後急性糸球体腎炎である。一部の症例において,尿所見がみられない,もしくは非常に軽微な場合があり,腎外症候性APSGN として知られている。

    症例は9 歳男児。3 日前からの腹部膨満,食欲減衰を主訴に受診した。体重増加,高血圧,浮腫,肝脾腫を認めた。先行感染症状はなく尿所見は軽微であったが,ASO の上昇,低補体血症を認め,腎外症候性APSGN と診断した。対症療法で管理され,利尿にともない肝脾腫の改善を認めた。後遺症なく入院11 日目に退院となった。フォローアップにおいて補体の回復を認め,腎炎の再燃はみられなかった。小児において浮腫,高血圧の鑑別疾患の一つとして,留意すべき疾患である。

  • 波多江 健, 慶田 裕美, 檜山 麻衣子, 黒木 理恵, 黒川 麻里, 森貞 直哉, 野津 寛大, 飯島 一誠
    2017 年 30 巻 1 号 p. 54-59
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/14
    [早期公開] 公開日: 2017/01/30
    ジャーナル フリー

    PAX2 の変異はCAKUT や腎コロボーマ症候群(renal coloboma syndrome: RCS)の原因となる。私達は腎低異形成の乳児で,偽性Bartter 症候群を呈した症例を経験した。児は41 週3,116 g にて出生。4 生日に11%の体重減少がありミルク追加を指示されたが哺乳瓶をいやがり母乳のみで栄養されていた。2 か月時,体重増加不良を指摘され当院へ紹介された。78 生日,体重3,930 g。血液検査で尿素窒素23.1 mg/dl,Cr 0.57 mg/dl,超音波検査で両側に小さく高輝度の腎を認め,腎低異形成と診断した。眼科検査は異常なし。6 か月時,アルカローシス,低K 血症を認めBartter 症候群を疑った。Bartter 症候群およびCAKUT 関連遺伝子の解析を行い,次世代シークエンサーによる遺伝子解析にてPAX2 のexon2 に一塩基挿入を認めた(NM_003987.3:c.76dupG, p.Val26Glyfs*28)。再度眼底検査を行い軽度の視神経乳頭の変化を認めRCS の診断に至った。

  • 藤井 裕子, 芦田 明, 松村 英樹, 白数 明彦, 山﨑 哲司, 中倉 兵庫, 玉井 浩
    2017 年 30 巻 1 号 p. 60-67
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/14
    ジャーナル フリー

    症例は13 歳,女児。入院16 日前より,38°C の発熱を認めたため近医を受診し,投薬歴のある抗菌薬を処方された。同時に初めてロキソプロフェンを処方されていた。抗菌薬2 回変更後も間欠熱が持続し,精査加療目的に当科紹介。入院時の血液検査では貧血,炎症反応の上昇と総IgE の高値を認めた。各種感染症検査,自己抗体検査は陰性で,尿所見では尿蛋白/尿クレアチニン(Cr)比,尿中白血球,尿β2 ミクログロブリンの軽度上昇を認め,中間尿細菌培養検査は陰性。腹部造影CT 検査で両腎に多発楔状造影不良域,腹部MRI 拡散強調像で両側腎実質にまだらな高信号を認め,腎生検を施行し,急性尿細管間質性腎炎の診断を得た。67Ga シンチグラフィでは異常集積を認めなかった。ロキソプロフェンのリンパ球幼若化試験が陽性であり,薬剤性急性尿細管間質性腎炎と診断した。本症例では診断に腹部MRI 拡散強調像が有用であり,補助診断法として早期診断治療に貢献するものと考えられた。

  • 熊谷 直憲, 工藤 宏紀, 力石 健, 中山 真紀子, 高橋 俊成, 松木 琢磨, 木越 隆晶, 内田 奈生, 呉 繁夫
    2017 年 30 巻 1 号 p. 68-72
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/14
    ジャーナル フリー

    血清Na-Cl=36 からの乖離を契機に酸塩基平衡異常が疑われ,血液ガス分析を施行し臨床上有用であった症例を経験した。症例1:3 歳女児。3 か月時に脳腫瘍を発症し集学的治療を受けた。3 歳時に胃腸炎罹患時に低リン血症,低分子蛋白尿,代謝性アシドーシス,くる病から薬剤性Fanconi 症候群と診断された。血清Na-Cl は常に30 以下であり,長期間の代謝性アシドーシスの存在が示唆された。症例2:19 歳女性。9 か月時に横紋筋肉腫を発症し,集学的治療を受けた。治療終了後より血清マグネシウムは緩徐に低下し,19 歳時に低カルシウム血症,低カリウム血症,代謝性アルカローシスと診断された。血清マグネシウムの低下とともに血清Na-Cl は常に40以上であり,長期間の代謝性アルカローシスの存在が示唆された。血液ガス分析を行っていない場合,血清Na-Cl=36 からの乖離により酸塩基平衡異常を推測することは臨床上有用である。

  • 橋本 直樹, 濱田 匡章, 遠藤 友子, 上田 卓, 田中 一郎, 石川 智朗, 中島 充
    2017 年 30 巻 1 号 p. 73-79
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/14
    ジャーナル フリー

    Tubulo-interstitial nephritis and uveitis syndrome (以下TINU 症候群)の2 症例を経験した。症例1 は14 歳女子。発熱と᷺怠感の主訴で受診し,尿中β2 ミクログロブリン上昇とぶどう膜炎を認めた。症例2 は13 歳女子。主訴は右眼の充血で,ぶどう膜炎の全身疾患の精査目的で受診し,尿中β2 ミクログロブリンの上昇を認めた。2症例とも腎生検で尿細管間質性腎炎の所見を確認し,TINU 症候群と診断した。ぶどう膜炎に対してステロイド全身投与を行ったが,漸減中に再燃し,ミゾリビンを併用することで良好な経過を得た。TINU 症候群に併発するぶどう膜炎は再燃を繰り返すことが多く,難治例に対してミゾリビンは有効な薬剤であることが示唆された。

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