日本小児腎臓病学会雑誌
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32 巻, 1 号
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追悼文
総説
  • 佐藤 直実, 城 謙輔
    2019 年 32 巻 1 号 p. 3-11
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/15
    ジャーナル フリー

    特発性膜性増殖性糸球体腎炎(primary membranoproliferative glomerulonephritis: MPGN)はこれまで形態学的な観点から分類されてきたが,近年補体C3 の活性経路障害の観点からC3 腎症という新たな疾患概念が提唱され,それに基づく病因論的観点により再分類がなされつつある。本総説においては,C3 腎症の概念,定義,臨床的事項,病理所見といった一般的事項とともに,C3 腎症の成り立ちの歴史について文献を引用しながら解説する。また,MPGN の再分類にあたっては,一次性MPGNに免疫複合体型MPGN が存在するのか否か,そして,MPGN III 型第二亜型(Anders & Strife 型)の診断基準についても未だ解決をみていない。これら現状の問題点に触れるとともに,自験例における検討を踏まえて今後の展望に言及する。

  • 粟津 緑
    2019 年 32 巻 1 号 p. 12-15
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/15
    ジャーナル フリー

    生活習慣病,慢性腎臓病(CKD)をはじめとする種々の疾患の発症が,胎生期,周産期,乳幼児期の環境に影響されることが明らかになっている(Developmental Origins of Health and Disease,DOHaD 学説)。低出生体重(子宮内発育遅延,早産による)がマーカーとされているが,高出生体重もリスクである。DOHaD によるCKD 発症機序としてネフロン数減少が知られているが,尿細管,間質,内皮,ポドサイト,血管密度の変化,さらにレニン・アンジオテンシン系,交感神経系,酸化ストレス,炎症,ミトコンドリア異常,エピジェネティクス機構の関与が考えられる。低出生体重は各種腎疾患の重症度を悪化させるとともに罹患率にも影響する。一例として超低出生体重児における糸球体過剰濾過,肥大を介する二次性巣状糸球体硬化症がある。低出生体重者のCKD 発症にはキャッチアップ,肥満,食塩過剰摂取などが関与し,高血圧,糖代謝異常などの生活習慣病との悪循環が形成されている。CKD,低出生体重児が増加している現在,胎生期から腎疾患の予防を考えることが望まれる。それには腎臓医のみでなく多職種連携,一般市民,特に妊娠可能年齢の女性への啓発が重要である。

原著
  • 山田 拓司, 藤田 直也, 山川 聡, 後藤 芳充, 牛嶌 克実, 金原 有里, 上村 治
    2019 年 32 巻 1 号 p. 16-23
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/15
    [早期公開] 公開日: 2019/03/15
    ジャーナル フリー

    近年小児IgA 腎症に対する多剤併用療法やACE 阻害薬などの導入により腎予後は大幅に改善してきたが,未だ予後不良例も存在する。今回我々は,巣状分節性活動性病変を有するびまん性メサンギウム増殖型IgA 腎症に対し,多剤併用療法前にステロイドパルス療法の初期治療を施行した小児28 例の腎予後に関する検討を行った。発見時からの経過観察期間は中央値8.3(6.3~8.8)年で,初回腎生検時年齢は10.5(7.7~12.3)歳,早朝尿蛋白/Cr 比0.79(0.3~1.7)g/gCr だった。経過観察中,一部の症例に扁桃摘出術やRAS 阻害薬を併用し,最終観察時の蛋白尿と血尿蛋白尿両者の消失率はそれぞれ85.7%と67.9%であった。蛋白尿残存例は全て最終尿蛋白/Cr 比が<0.5 g/gCr と軽微であり,腎機能障害例(eGFR<90 ml/min/1.73 m2)や高血圧合併例は存在せず,重篤な有害事象もみられなかった。巣状分節性活動性病変を有する小児IgA 腎症に対し,多剤併用療法前にステロイドパルス療法を施行し,その後の経過により適宜追加治療を行うことで長期予後が改善する可能性があると考えられた。

  • 伊藤 創太郎, 山川 聡, 日比野 聡, 河口 亜津彩, 山口 玲子, 真島 久和, 内田 博之, 藤田 直也
    2019 年 32 巻 1 号 p. 24-30
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/15
    ジャーナル フリー

    小児ネフローゼ症候群における液剤とカプセル剤のシクロスポリン(CsA)の薬物動態の変化を検討した。対象はCsA を液剤からカプセル剤に変更した小児特発性ネフローゼ症候群患者13 例。変更した年齢中央値は3.9歳。液剤とカプセル剤の投与量に差はなかった。液剤とカプセル剤の血中濃度-時間曲線下面積(AUC)を比較すると液剤の最高血中濃度は低く,血中濃度の低下は緩徐であった。投与量で補正したCmax/dose,C2/dose,AUC0-4/dose は液剤が有意に低値であったが,AUC0-12/dose では有意差はなかった(P=0.15)。C2 とAUC0-12 の相関は液剤ではカプセル剤より弱かった(P<0.001)。これは液剤では物理的な要因から胆汁の混和が遅延することが原因と考えた。C2 を参考に血中濃度調整を行う場合,液剤はカプセル剤よりも低値となる可能性があり,その場合はAUC の評価が必要である。

症例報告
  • 佐藤 朋子, 浅野 貴子, 橋本 淳也, 山本 かずな, 山村 智彦, 野津 寛大, 飯島 一誠, 野々山 恵章
    2019 年 32 巻 1 号 p. 31-36
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/15
    [早期公開] 公開日: 2019/02/27
    ジャーナル フリー

    Alport 症候群は,IV 型コラーゲンα 鎖の異常により,進行性腎障害,感音性難聴,眼科的異常を来す遺伝性疾患である。病初期は顕微鏡的血尿が唯一の所見であるため,早期に診断することは困難とされる。今回我々は,3 歳児検尿で血尿・蛋白尿を指摘され,7 歳時の第1 回腎生検で非IgA メサンギウム増殖性腎炎と暫定診断され,11 歳時の第2 回腎生検のIV 型コラーゲン染色によりAlport 症候群と診断した男児例を経験した。遺伝形式はIV 型コラーゲンα5 鎖の染色パターンからは常染色体劣性型が疑われたが,遺伝子解析でCOL4A5 exon21 に9 塩基の欠失によるインフレーム変異を認め,X 染色体連鎖型と診断した。Alport 症候群は,IV 型コラーゲン染色や遺伝子解析で診断が可能であるため,持続性血尿の鑑別疾患として積極的に考慮する必要がある。

  • 鈴木 博乃, 山田 拓司
    2019 年 32 巻 1 号 p. 37-42
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/15
    [早期公開] 公開日: 2019/03/15
    ジャーナル フリー

    家族性巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)を来たす原因遺伝子としてTRPC6 (Transient receptor potential cation channel 6)遺伝子が知られる。今回,無症候性蛋白尿を契機に発見されたTRPC6 遺伝子変異によるFSGS の孤発例を経験した。症例は2 歳女児。溶連菌罹患後に蛋白尿が持続したため,2 歳6 か月時に腎生検を施行。高血圧や浮腫,血尿,腎機能障害,低補体血症等は認めず。光顕所見上軽度のメサンギウム増殖性腎炎像で,58 個の糸球体のうち1 個のみポドサイトやボーマン囊上皮細胞の腫大・変性像と,それに続く近位尿細管の上皮細胞の膨化像からFSGS を強く疑った。次世代シークエンサーにより既報のTRPC6 遺伝子変異が同定された。NS に至る前に遺伝性FSGS と診断されたことにより,治療不応性が予測されるステロイド剤使用を回避した。しかし今後難治性NS から末期腎不全に至る可能性が極めて高いため,長期的視野に立った治療管理が必要となる。3 歳6 か月現在ACE 阻害剤投与中であるが,蛋白尿の改善はみられていない。

  • 大山 里恵, 西村 謙一, 中永 思蘭, 大原 亜沙実, 服部 成良, 原 良紀, 伊藤 秀一
    2019 年 32 巻 1 号 p. 43-49
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/15
    [早期公開] 公開日: 2019/03/22
    ジャーナル フリー

    小児ANCA 関連血管炎(AAV)は稀である。成人AAVでは,他のリウマチ性疾患合併例が散見されるが,小児の類似報告は殆どない。顕微鏡的多発血管炎(MPA)と多関節型若年性特発性関節炎(pJIA)を合併した2 例を報告する。症例1 は23 歳女性。10 歳時にMPA を発症し,メチルプレドニゾロンパルス療法(MPT)とシクロホスファミド静注療法で寛解した。16 か月後に関節痛が生じpJIA と診断し,メトトレキサート(MTX)を追加し関節痛は消失した。症例2 は14 歳女児。11 歳時にpJIAを発症し,13 歳からプレドニゾロン,MTX,エタネルセプトを開始した。血尿,蛋白尿を認め,14 歳時にMPAと診断し,MPT,リツキシマブを開始し改善した。JIAとAAV の併発は稀だが,併発の可能性を考慮した診察や検査を行うべきである。また,両疾患に共通した治療選択が重要であり,とくにMPA に対する治療が,腎予後および生命予後に影響すると考えられた。

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