小児肺炎治療の際の抗菌薬の適応, および, ペニシリン系抗菌薬の有用性について検討した。
1. 細菌性かウイルス性かの鑑別
a. 起炎病原体と検査所見
炎症反応の強弱によって, 細菌性とウイルス性とを鑑別することは不可能で, 抗菌薬投与前の起炎菌診断が重要である。入院時CRP値が3.0mg/dl以下の症例で, 基礎疾患なく全身状態良好であれば, 抗菌薬療法は待ってもよい。
b. 胸部X線像
入院時胸部X線像では細菌性か否かの鑑別出来ない場合が多いが, 炎症反応の強い症例では, X線像で細菌性を示唆する所見を呈した。
c. 多呼吸の有無からみた抗菌薬の適応1~4歳の幼児例では有用である。
2. 治療
2001年に入院した肺炎389件の抗菌薬治療内訳は, ABPC静注で治癒した症例は48.3%, マクロライド・テトラサイクリンでは18.3%, 抗菌薬投与せず治癒した症例は20.6%, カルバペネム系は0.5%であった。起炎菌判明後ABPCから別の抗菌薬に変更した症例は14件 (3.6%) あり, このうちABPC投与中に増悪した症例はなかった。マクロライド・テトラサイクリンで治療した症例の年齢は6.1±3.3歳と学童期に多かった。
細菌性肺炎の場合, まず, ABPC静注で治療開始し, 起炎菌および感受性検査の結果によって抗菌薬を変更しても臨床的には大過がない。一方, 学童期の肺炎で, 全身状態が比較的良好な例ではマクロライド系抗菌薬が適応になる。
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