生理心理学と精神生理学
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20 巻, 1 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 長野 祐一郎
    2002 年 20 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    近年, 非侵襲的な心臓迷走神経活動指標として, 圧受容体反射感度 (BRS) が大きな注目を集めつつある.BRSは, 防衛反応時に抑制されるため, 能動的対処においても同様に抑制される事が期待される.本実験では, 能動的対処課題として二種の暗算課題が用いられ, 両課題により生じるBRSの抑制の度合いが評価された.すなわち, 13名の大学生が連続引き算課題を行い, また, 別の13名がコンピュータディスプレイ上の計算問題に回答した.これら二つの課題は, 刺激の提示方式の違いにより, 内部生成型 (IGT) 対外部生成型 (EGT) に分けられた.収縮期血圧 (SBP) と, 心拍数 (HR) が連続的に計測され, SBP記録からBRSが, Bertinieri et al. (1985) のシーケンス検索法を用いて算出された.
    結果からは, IGT課題では, SBPとHRの上昇は少量であるにもかかわらず, BRSの有意な抑制が認められ, 一方EGT課題では, 顕著なSBPとHRの上昇があったが, BRSは抑制傾向を示すに留まった.このような矛盾した結果は, EGT課題における外部刺激への注意集中により生じたものであると考えられる.
  • 本多 麻子, 正木 宏明, 山崎 勝男
    2002 年 20 巻 1 号 p. 9-17
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    自律神経系の反応特異性とは, 特定の刺激に対して特定の生理的反応が生じることをいう.本研究の目的は, 正・負の情動喚起に対する自律神経系の反応特異性を検出することと, 自律神経系の指標によって各情動を弁別することであった.各10min間に編集した3種類の映像刺激を用いて, 正の情動喚起条件, 負の情動喚起条件, 特定の情動は喚起させない統制条件を設定した.15名の被験者から, 血圧, 心電図, 指尖表面皮膚温, 呼吸を同時測定した.映像刺激呈示後, 質問紙によって喚起された情動について評定させた.その結果, 正・負の情動喚起条件ともに, それぞれ標的とした情動が明確に喚起された.強く情動が喚起された時点で, 心臓血管系の指標は, 正の情動喚起時では低下し, 負の情動喚起時では上昇した.指尖表面皮膚温は, 正の情動喚起時では変化しなかったものの, 負の情動喚起時では急峻に低下した.指尖表面皮膚温の低下は, 恐怖, 嫌悪といった強い負の情動喚起に伴う末梢血管抵抗の上昇に起因したものと考えられる.血行力学的側面から, 平均血圧上昇は末梢血管抵抗と心拍数の上昇が重畳したものであると考えられる.また, 刺激に対する認知的側面から, 情動喚起場面でみられた条件間で異なる心臓血管系反応パタンは, 取り込み-拒絶仮説からも説明可能である.正の情動喚起時では映像刺激に興味を抱き, 環境刺激を取り込んだために心臓血管系指標が低下した.一方, 負の情動喚起時では不快な映像刺激を拒絶したことによってそれらが増加したものと考えられる.動画によって喚起された正と負の情動に対する異なる方向の反応パタンは, 自律神経系の反応特異性が検出されたことを示したと考えられる.
  • 鈴木 博之, 久我 隆一, 内山 真
    2002 年 20 巻 1 号 p. 19-28
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    REM睡眠からの覚醒時に高い確率で夢見体験が報告される.しかし報告された夢見体験がいつ起こった体験であるかは明らかでない.本研究は夢が体験されたときの睡眠状態を特定するために, 短時間の仮眠 (nap) を繰り返し行う方法を用いて睡眠期間を一定とし, 夢報告と睡眠変数との関係を検討した.被験者は11名の健康な男性 (平均年齢=22.7±1.44歳) であった.20分間の睡眠ポリグラフ記録を1時間おきに78回連続して行った.睡眠区間終了時に夢の形式的側面 (量・鮮明度・快・不快) を評定する構造化面接を行った.REM睡眠が出現したnap (REM trials) は172, NREM睡眠のみが出現したnap (NREM trials) は563であった. REM trialsは夢報告率が51.2%であり, NREM trialsの17.9%と比べて高かった.夢得点, 夢内容の鮮明度, 快得点はREM trialsがNREM trialsに比べ高かった.これらの結果はREM睡眠時に夢見体験が多く出現することを示すと同時に, 先行するREM睡眠の影響を実験的に削除したNREM睡眠時にも夢見体験が存在することを示唆した.
  • 田中 秀明, 正木 宏明, 高澤 則美, 山崎 勝男
    2002 年 20 巻 1 号 p. 29-37
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    近年, エラー検出課題時に出現するエラー関連陰性電位 (error-related negativity : ERN) が報告されており, ERNは注意資源の配分を反映する電位として注目されている.本研究では, 単一課題と二重課題を用いて, ERNがエラー検出処理へ配分される注意資源量を反映するか否か検討した.Eriksenの認知的葛藤課題を単一課題として用いた.二重課題は, Eriksenの認知的葛藤課題を主課題とし, 聴覚刺激に対する選択反応課題を副課題とした.さらに, 副課題の難易度を操作した.単課題に比較して, 二重課題では副課題が難しい条件なので, 主課題の反応時間が遅延し, 主課題のERN振幅は減衰した.これは副課題により多く注意資源の配分が必要とされた時に, 主課題のエラー検出処理へ配分される注意資源が減少したことを示唆している.本研究では, 減少した注意資源が主課題のエラー検出処理へ影響することを, ERN振幅の減少によって示した.
  • 佐々木 実
    2002 年 20 巻 1 号 p. 39-47
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    本実験はP3を指標に用いたGKTに対する心理的カウンタメジャーの効果を検討した.28名の被験者が模擬窃盗に参加し, 引き出しに入った5つの貴金属のうち1つを盗んだ.被験者はカウンタメジャーを行う群 (CM群) とカウンタメジャーを行わない群 (NCM群) のいずれかにランダムに割り当てられた.本実験のGKTでは, 5つの貴金属がそれぞれCRT上に呈示され, 被験者は刺激が呈示されたらすぐにボタンを押すように教示された.さらに, CM群の被験者にだけ, 検査中200から7ずつ暗算で引き続けるように教示が与えられた.実験の結果, CzとPzで裁決刺激に対するP3振幅が小さくなっていたが, 非裁決刺激との振幅差は有意であった.検出成功率はCM群で50%, NCM群で79%であった.本実験の結果から, P3を指標に用いた虚偽検出はカウンタメジャーの影響を受けないことが示された.
  • 廣田 昭久, 高澤 則美
    2002 年 20 巻 1 号 p. 49-59
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    本研究では, レーザードップラー血流測定法により計測した末梢皮膚血流量について, 虚偽検出のための新たな指標としての有効性を検討することを目的とした.18名の学部学生は, 貴金属の入った色のついた封筒を「窃取」し, それを隠すようにと教示された.その後, 参加者に対して, 盗んだ封筒の色を尋ねる複数の質問が呈示された.彼らは全ての質問に対して「いいえ」と答えるように求められた.質問呈示後の指尖部の血流量と皮膚コンダクタンス反応 (SCR) 振幅が計測された.裁決質問においても非裁決質問においても, 血流量は一過性に低下することが示された.しかしながら, 血流量は裁決質問時に有意により大きく低下した.その血流量の低下は裁決質問呈示後, 約6-15秒で最も顕著に示された.裁決質問と非裁決質問問でSCRの有意差を示さなかった参加者においても, 血流量では裁決質問での低下が示された.本研究は, レーザードップラー血流測定法により計測された血流量が, 精神生理学的虚偽検出の指標として有効であることを示した.
  • 松浦 倫子, 林 光緒, 堀 忠雄
    2002 年 20 巻 1 号 p. 61-69
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    本研究では習慣的自己覚醒が夜間睡眠に及ぼす効果を検討した.朝, 習慣的に自己覚醒している13名の被験者が2夜の実験夜に参加した.1夜は強制覚醒夜で, 被験者は習慣的な起床時刻に実験者によって強制的に起こされた.もう1夜は自己覚醒夜で, 被験者は習慣的な起床時刻に自己覚醒を試みた.就床直前の不安, 夜間のポリグラフ記録, さらに起床直後の睡眠の主観的評価が分析された.19夜の自己覚醒夜のうち, 自己覚醒に成功したのは8夜 (42.1%) であった.不安, 睡眠の主観的評価, 睡眠段階1の出現量以外の睡眠変数には, 強制覚醒夜と自己覚醒夜の間で有意差は認められなかった.これらの結果は, 習慣的自己覚醒は夜間睡眠, 起床後の気分, 睡眠満足感を悪化させないことを示唆している.
  • 2002 年 20 巻 1 号 p. 70
    発行日: 2002年
    公開日: 2012/12/14
    ジャーナル フリー
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