【はじめに】
近年,NICU・GCU入院中の児に対して理学療法士が介入している施設も増えてきている.当院でもNICU・GCU入院中の極低出生体重児に対して,フォローアップの一環として,退院前に早産 児 行 動 評 価 (APIB : Assessment Premature Infant Behavior) を実施し外来にて新版K式発達検査2001を用いて評価している. APIBとは,NBAS (ブラゼルトン新生児行動評価)とSynactive Theoryを基にしてAlsにより開発された新生児の神経行動能力 と発達状況を検査する評価法の一つである.今回,極低出生体重児の退院前のAPIBのシステムスコアと修正1歳6ヶ月時の新版 K式発達検査の発達指数 (DQ)を調査し,その関係について検討したので報告する.
【対象と方法】
対象は,2019年8月から2022年1月までに当院NICU・GCUに入院した極低出生体重児のうち,退院前にAPIBを実施でき,退院後のフォローアップで修正1歳6ヶ月時の新版K式発達検査を実施することができた児21例 (男児10例,女児11例,平均出生週数 29.1±3.0週,平均出生体重1144.5±235.5g)である.なお退院前の頭部MRIで低酸素性虚血性脳症 (HIE)や脳室周囲白質軟化症 (PVL)等の神経学的異常を認めた児は除外した.方法は,まず退院前 (平均39.1±1.3週)に実施したAPIBのシステムスコア (1 ~9で9が最も脆弱).また,修正1歳6ヶ月時 (平均18.0±0.9ヶ月 )の新版K式発達検査のDQを算出した.そして,APIB各システムスコアと新版K式発達検査のDQについて関係があるかを検討 した.APIBはAPIBプロフェッショナルによって実施,スコアリングされ,新版K式発達検査も同一PTが実施し,P-M (姿勢-運動)領域,C-A (認知-適応)領域,L-S (言語-社会)領域と全領域のDQを算出し検討した.尚,統計学的検討は,スピアマンの順位相関係数 (ρ)を用いて検討し,危険率p<0.05 を統計学的有意とした.
【結果および考察】
APIBシステムスコアと修正1歳6ヶ月時のDQの相関を見ると,自律神経系,運動系,状態系,注意相互作用系,自己調整系のスコアでは,状態系と自己調整系のシステムスコアの一部においてDQと有意な正の相関を認めた (ρ=0.44~0.64, p<0.05).これは,退院前のAPIBにおいて覚醒状態や自己調整力が高いほどDQが低いという矛盾を示していた.そこで,自律神経系と状態系,注意相互作用系,自己調整系のシステムスコアの差に注目し,再度DQとの相関を検討した結果,一部に有意な負の相関を認めた (ρ= -0.46~-0.71, p<0.05).これは,特に方位反応 (orientation)の場面で自律神経系と状態系,注意相互作用系,自己調整系の乖離が大きい児ほど発達指数が低いことを示していた.つまり,自律神経系が弱く呼吸・循環の不安定性や振戦・驚愕等の神経系の脆弱さを示しながら,覚醒状態が高く,ぐずったり,過覚醒をしめしているような児では,発達指数が低かったということを示している.これらより,それぞれのサブシステムは協調しながら発達していくことの重要性を示しており,自律神経系が弱いときにしっかりと休めていない児では,発達に注意が必要であることを示唆しているのかもしれない.
【倫理的配慮】
対象児の保護者には,入院中および外来でのフォローアップおよび情報の取り扱いについて,紙面および口頭にて説明し,同意を得て実施した.尚,本研究は,姫路赤十字病院 倫理委員会の承認を得ている (承認番号:2021-04).
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