小児理学療法学
Online ISSN : 2758-6456
2 巻, Supplement_1 号
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第10回日本小児理学療法学会学術大会
大会長挨拶
学術大会長講演
特別講演1
特別講演2
教育講演
シンポジウム1
シンポジウム2
評価尺度セミナー
日本小児理学療法学会合同企画
特別企画
発表演題抄録
表彰候補演題①
  • 楠本 泰士, 髙橋 恵里, 高木 健志, 松田 雅弘, 新田 收
    原稿種別: 表彰候補演題 ①
    2024 年 2 巻 Supplement_1 号 p. 28
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

    【はじめに、目的】

    児童発達支援は、地域の中核となる公立の児童発達支援事業所や支援センターと、地域に点在する民間の支援事業所がある。診断名の有無にかかわらず、公立事業所が初回の発達相談の場となることが多いが、保護者の相談内容である主訴や地域における児の特徴などの情報は極めて少ない。公立事業所での相談内容が明らかになれば、支援事業全般の療育方針や専門職が学ぶべき知識がより明確になる。 本研究では、都内中規模都市の公立発達支援事業所を利用した方の初診面談時の相談内容 (主訴)の特徴を明らかにし、診断名の有無により専門職に求められる知識に違いがあるかを明らかにすることを目的とした。

    【方法】

    2013~ 2022年の10年間で某公立の発達支援事業所にて、初診面談を行った総件数は1245件だった。初診面談時に相談したい内容 (主訴)を、面談シートに自由記述にて保護者に回答いただき、 児の月齢、性別、診断名、センター利用の紹介元を調査した。主訴の記載があった1241件を分析対象とし、記述内容を質的記述的分析方法を用いて分析した。その際、文脈に沿って意味を最小限の言葉で補い、コードとして抽出した。質的記述的分析の分析作業は、実施経験のある研究者2名が行い、複数回の修正後に研究者1名がカテゴリー表の最終版を完成させた。 対象を診断名有り群 (122名)、無し群 (1119名)に群分けし、t検定、カイ二乗検定、フィッシャーの正確確率検定にて検討した。また、従属変数を診断名の有無の2群、独立変数を性別、年齢、各主訴とし、ロジスティック回帰分析 (強制投入法)にて 検討した。統計処理にはIBM SPSS Statistics Ver.27を使用し、有意水準を5%とした。

    【結果】

    月齢の平均値 (標準偏差)は、診断名有り群、無し群の順に、 38.6(16.7)ヶ月、41.1(17.9)ヶ月と差はなかった (p=.144)。 初診時の主訴の自由記述は、内容から、137のコードが抽出され、13のカテゴリーにまとめられた。カテゴリーを「 」、全件数の割合を ( )に%で示す。カテゴリーは、「言語発達」 (43.9)、「保育、就学相談」(15.4)、「多動、不注意」(13.9)、 「発達全般」(13.6)、「行為の問題」(13.4)、「コミュニケーションの問題」(13.2)、「療育相談」(12.7)、「情緒の問題」 (10.1)、「運動発達」(8.5)、「摂食の問題」(3.1)、「精神発達 」(2.5)、「感覚の偏り」(1.2) 、「視機能」(0.2)で、全カテゴリーで診断の有無による差はなかった。 回帰分析の結果、性別、月齢、発達全般が抽出された。オッズ比 (95%信頼区間)は性別が1.573 (1.056-2.343)、月齢が0.988 (0.976-1.000)、発達全般が0.421 (0.200-0.886)だった。

    【考察】

    初診時の主訴は、「言語発達」が43.9%と最も相談件数が多く、 「運動発達」は8.5%だった。児童発達支援に関わる専門職は、運動発達の知識だけでなく、言語や発達全般に関する幅広い知識や地域の保育、就学体制に関する総合的な知識が必要と考えられる。 診断名の有無には、性別、月齢、「発達全般」が関連していた。オッズ比より、専門職は、診断名の無い児には「発達全般」に 関する内容を考慮しながら、情報提供を意識していく必要性が示唆された。

    【倫理的配慮】

    本研究は福島県立医科大学倫理審査委員会の承認を得て実施した。対象者にはオプトアウトにて本研究内容を周知した。本研究への協力を断っても、何ら支障のないことを書面にて伝えた。

  • 吉岡 クレモンス紀穂, 竹中(蜷川) 菜々, 後藤 萌, 三木 麻有甫, 青山 朋樹, 櫻井 英俊
    原稿種別: 表彰候補演題 ①
    2024 年 2 巻 Supplement_1 号 p. 29
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

    【はじめに、目的】

    デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は、小児期に発症し、筋力低下や易疲労症状が進行する難治性筋疾 患である。DMD遺伝子の変異と、それに伴うジストロフィンタンパクの欠損が病因であることはよく知られているが、筋線維変性と筋機能低下に至る分子機序についてはまだ十分に解明されていない。そこで、本研究では、DMDマウスモデルに対してジストロフィン発現が正常な細胞を移植し、筋組織にジストロフィンを補充する実験手法を用いて、ジストロフィン補充がDMD筋の運動機能に及ぼす効果を評価することと、ジストロフィン欠損に起因するDMD病態の分子機序を明らかにすることの2点を目的とした。

    【方法】

    ジストロフィン補充がDMDマウスの運動機能 (筋力と疲労耐性)に及ぼす効果を正確に評価するため、運動機能評価法の新規確立を目指した。筋力は、麻酔下のマウスの下腿後面に経皮的電気刺激を加えて足関節底屈を惹起し、その際に検出される最大等尺性収縮時トルク値 (MCT)で評価した。筋疲労耐性は、9m/分で15分間の平坦トレッドミル走行を負荷し、その前後でのMCTの下がり幅で評価した。上記2種類の運動機能評価は、4週に1回 (13週齢(wo)、17wo、21wo)の頻度で、5 woの時点で腓腹筋に健常筋芽細胞を局所投与したDMDマウス (DMD移植群)、未処置のDMDマウス (DMDcon群)、野生型マウス (WT群)の3群に対して実施された。さらに21woでの機能評価後、筋サンプルを採取し組織学解析を実施した。

    【結果】

    全ての評価時点において、DMD群ではWT群と比較してMCTが優位に低下していた。一方、DMD移植群とDMDcon群との比較では、統計学的に有意な差は認められなかった。組織学解析では、DMD移植群の腓腹筋で全筋線維のうち平均し て約10%の筋線維でジストロフィンが補充されていた。さらに、相関分析により、ジストロフィン補充率がMCT値と正の相関関 係にあることが示され、ROC分析では、ジストロフィン補充率 10%が、重度の筋力低下を防ぐのに十分な閾値であることが示された。疲労耐性評価では、DMD移植群でDMDcon群と比較して、 21wo時点において有意な改善が見られた。また、相関分 析の結果、疲労耐性とジストロフィン補充率との間には有意な相関は認められず、補充率が低くとも疲労耐性は有意に改善されることが示された。組織学解析では、DMD移植群において遅筋線維の占める割合が他の2群と比較して有意に増加していた。さらに、DMD移植群について同一筋サンプル内での単一筋線維ごとのミトコンドリア活性を比較したところ、ジストロフィン陽性線維では陰性線維よりも有意にミトコンドリア活性が向上していた。

    【考察】

    DMDマウスでは、10%のジストロフィン補充率で、重度の筋力低下を防ぐ効果が発揮されることが示された。さらに、DMD筋にジストロフィンが補充されると、酸化型筋線維が優先的に再生され、ミトコンドリア活性が有意に向上することにより、補充率の如何を問わず疲労耐性が有意に改善されることも証明された。

    【倫理的配慮】

    本研究はCiRA動物実験委員会の承認(計23-196)を受け実施した。

  • 宮本 清隆, 楠本 泰士, 加藤 愛理, 脇 遼太朗, 飯田 佐代子, 成田 晶子, 西塚 裕人, 松本 優子, 森 裕輔, 竹脇 真悟
    原稿種別: 表彰候補演題 ①
    2024 年 2 巻 Supplement_1 号 p. 30
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

    【はじめに、目的】

    肢体不自由特別支援学校 (以下,支援学校)ではリハ職を活用する動きがあるがその連携は十分に進んでいない。特に外来リハの範囲内で連携を図る場合,時間的な制約から教員と定期的に話し合いの場を持つことは難しい。支援学校と医療機関との間に児童生徒 (以下,児)の成長につながる効率的で効果的な連携方法の構築が求められている。本研究は支援学校と当院との間で児の目標・課題・取り組みについての情報を相互に提供し,その有用性について検証した。

    【方法】

    対象は当院外来PTを利用する支援学校の在籍児34名の教員24名とPT3名である。調査期間は2022年2月から1年とした。PTから評価の要約,カナダ作業遂行測定 (COPM)による目標,プログラムを記載した「PT目標シート」を,教員から「個別の教育支援計画・個別の指導計画」 (以下,支援・指導計画)を相互に提供した。提供後, PT及び教員から記名式質問紙を用いて児34名分のアンケート調査を行った。得た結果を,児の所属,横地分類,目標の分類,COPMの変化量で項目分けし,各項目に対し「PT目標シート」及び「支援・指導計画」の有用性を4件法にて,共同意思決定 (SDM)について2件法にて調査した。 SDMについてのアンケートは,「日本語版SDM-Q-Doc」を参考に作成した (以下,SDMQ)。SDMQについてPTと教員間でカイ二乗検定にて検討した。COPMの変化量についてウィルコクソンの符号順位検定にて検討した。統計処理にはEZR(v1.61)を使用した。

    【結果】

    アンケートの回収率は「目標シート」79%,「支援・指導計画 」100%, SDMQはPT100%,教員68%だった。児の所属は,小学部62%,中学部23%,高等部15%だった。横地分類は重症者55%だった。目標の分類は,心身機能のこと56%,家庭のこと41%,学校のこと3%だった。COPMは,低下もしくは変化なしが29%,1点向上が24%,2点以上向上が48%となり,遂行度,満足度ともに有意な改善がみられた (<0.05)。「PT目標シート」及び「支援・指導計画」についてほとんどが「有用である,今後も活用していきたい」との回答だった。SDMQは 「方法についての比較検討」でPTより教員で有意に高かった。教員は全質問で「当てはまる」が高かったがPTは「選択肢を伝えること」と「方法についての比較検討」で低かった。

    【考察】

    結果から「PT目標シート」及び「支援・指導計画」の有用性が確認された。COPMは作業遂行に対し,本人及び保護者が内容 の決定や成果の評価に積極的に参加することができる,とされている。今回,COPMを評価する過程でSDMが行われ,効果的な 取り組みが実践されたことで有意な改善が得られたと考えられる。今回の対象に重症者が多くPTでは心身機能の維持を目標として 継続的に取り組んでいたためSDMQの「新たな選択肢を提示」 や「方法についての比較検討」で低かったと考えられる。目標の分類は,学校のことがほとんどなかった。学校の取り組みにPTを活用すれば,学校での目標達成の可能性は高まり,家庭への波及効果が示唆される。

    【倫理的配慮】

    本研究の説明と協力依頼を学校長に行った。また各担任教員には本研究の説明文書,質問紙調査への協力依頼の文書,質問紙を返信用封筒とともに同封し保護者を通じて渡した。説明文書には,質問紙調査への回答・返答をもって研究への参加に同意が得られたものとすること,また,学術的公表を予定していることも明記した。ヘルシンキ宣言に基づき,児童生徒本人及び保護者には口頭で十分に説明を行い,書面にて研究参加の同意を得た。なお,本研究は,福島県立医科大学倫理委員会の承認を得ている (2022-038)。

  • 清水 俊行, 代田 琴子, 平松 奈実, 西尾 祥子, 越智 貴則, 野村 龍雅, 大坪 英一, 山﨑 美邑, 稲葉 智洋, 大西 巧真, ...
    原稿種別: 表彰候補演題 ①
    2024 年 2 巻 Supplement_1 号 p. 31
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

    【はじめに、目的】

    脳室周囲白質軟化症 (periventricular leukomalacia以下,PVL)患者は,運動麻痺以外に視知覚障害を合併することが報告されている.近年,視知覚障害の一部である視覚的注意障害の合併も疑われているが,その実態は明らかではない.本研究はPVL患者の視覚的注意能力と計数の課題の関係を検討することで,視知覚障害の一端を明らかにすることを目的とした.

    【方法】

    対象はPVLと診断されたPVL群14例 (年齢14.3 ± 5.5歳,BMI 17.7 ± 4.0kg/ⅿ2,粗大運動能力尺度GMFM-66 98.7 ± 50.3点) と対照群のアテトーゼ(dyskinetic cerebral palsy 以下, DCP)群7例 (14.9 ± 2.9歳,17.8 ± 3.6 kg/ⅿ2,59.6 ± 56.2 点)で あり,両群間に有意差は認められなかった.被検者選択基準は,両眼開放下の視力がTeller acuity cardsⅡ(Stereo Optical)で0.1以上,提示した課題を理解し口頭や指差しで解答できる者とし た.計測はTobii Pro TX300 Eye Tracker (Tobii Technology) を用い,課題を画面に表示して行った.課題は同時に5つの図形が表示される視覚的注意課題である①特徴ベース注意課題 (Gakken WAVES),②オブジェクトベース注意課題(Gakken WAVES) を採用し,正答数を算出した.さらに③合同で同色な正方形を2から9まで順に増やし,それを目視で数える課題(以下,計数の課題)を実施した. 統計学的方法として,両群において対応のないt検定を実施し, PVL群においては③計数の課題と①特徴ベース注意課題,②オブジェクトベース注意課題の関係をピアソンの積率相関係数を用いた.さらに③PVL群を計数の課題で5つまでの図形しか数 えられなかったU5-PVL群と6以上数えられたO6-PVL群に分け,両サブグループにおいて①特徴ベース注意課題,②オブジェク トベース注意課題の正当数をそれぞれ比較した.有意水準は5 %とし,解析にはR version 4.3.0を使用した.

    【結果】

    両群の比較において,①特徴ベース注意課題 (PVL群2.4 ± 0.9点,DCP群3.0 ± 0.0点,p=0.022),②オブジェクトベース注意課題 (PVL群2.4 ± 0.6点,DCP群3.0 ± 0.0点,p=0.0057), ③計数の課題 (PVL群6.6 ± 2.6点,DCP群9.0 ± 0.0点, p=0.0058)に有意差が認められた.またPVL群において,③計数の課題と①特徴ベース注意課題 (r= 0.86, p=0.000082),②オブジェクトベース注意課題 (r= 0.81, p=0.00049)に相関関係が認められた.さらにPVL群をサブグループに分けて比較した結果,①特徴ベース注意課題 ( U5-PVL群1.4 ± 0.9点, O6-PVL群2.9 ± 0.3点, p=0.018),②オブジェクトベース注意課題 ( U5-PVL群1.8 ± 0.5点, O6-PVL群2.8 ± 0.4点, p=0.0040)に 有 意差が認められた.

    【考察】

    本研究結果より,PVL患者はDCP患者と比べて視覚的注意能力が低下し,画面上に表示された合同で同色の図形を区別することが困難であること,より多くの図形を数えられる者は視覚的注意課題の正当数が多いことが明らかとなった.さらに今回の視覚的注意課題は画面上に5つの図形が同時に表示される課題であり,計数の課題で5つまでの図形しか数えられなかったサブグループの方が有意に視覚的注意課題の正当数が少なかったことから,視知覚課題を行う場合は本人が数えられる図形の数よりも少ない図形で評価するのが望ましいのではないかと考えられた.

    【倫理的配慮】

    本研究は当院倫理委員会にて承認を受けた(承認番号:1805).またヘルシンキ宣言に則り,代諾者及び被検者に研究の目的と内容,被検者の利益と不利益を説明し,自由意思により書面にて研究参加に同意を得た上で計測を行った.

  • 笹尾 丞子, 峯 耕太郎, 阪本 靖介, 上出 杏里
    原稿種別: 表彰候補演題 ①
    2024 年 2 巻 Supplement_1 号 p. 32
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

    【はじめに】

    小児肝移植術の対象児は、手術に伴う長期入院や術後管理等から、粗大運動の発達が阻害されるリスクがあり、その影響は、長期的な身体機能や健康全般にも影響を及ぼすとされている。当院では、小児肝移植術対象となった全例に、術後早期から介入を行い、退院後の発達経過についてもフォローを開始しているが、術後の粗大運動発達経過には個人差を認めており、先行研究で示されているような周術期因子との関連はまだ明らかとなっていない。

    【目的】

    当センターにて、肝移植術の対象となった乳幼児の退院後の粗大運動発達について調査し、それらに関連する入院中や周術期の要因を分析し、どのような支援が必要とされるかを検討すること。

    【方法】

    本研究は後ろ向き縦断研究である。当センターにて、2019年 10月から2022年6月に肝移植術を施行し、手術前/退院時/退院後3ヶ月に理学療法士が粗大運動発達評価を行った児を対象とした。粗大運動発達評価には、アルバータ乳幼児運動発達検査を用い、先行研究より、退院後3ヶ月の運動発達が10%ランク 未満を遅滞群、以上を正常群とした。診療録から原疾患、性別、葛西術有無 (回数)、各評価時期の身長・体重・BMI、およびそれらのZスコア、アルブミン値、入院時PELDスコア、手術前後 の入院期間と合計の入院期間、手術後PICU入室期間、挿管期間、手術日より理学療法士による座位/腹臥位練習開始までの日数、 手術前/退院時の運動発達評価を背景因子として抽出した。背 景因子の比較のため統計解析には、対応のないt検定、 Mann-WhitneyのU検定、X2検定を用い、統計学的有意水準を 5%とした。

    【結果】

    対象24例 (退院後3ヶ月時点の平均月齢:12.0±2.6ヶ月、男児 :11名)の、退院後3ヶ月時の運動発達について遅滞群 (16名)と正常群 (8名)で背景因子の比較を行うと、退院後3ヶ月時の体重Zスコア (遅滞群:-2.3±1.7SD、正常群:-0.8±0.9SD、P= 0.04)、肝移植術に伴う合計入院期間 (遅滞群:51.2日[ 40.8-62.0日]、正常群:36.8日[30.0-41.5日]、P=0.01)、手術日より理学療法士による座位練習開始までの日数 (遅滞群 :5.6日[4.0-7.3日]、正常群:3.0日[1.8-4.0日]、P= 0.04)、腹臥位練習開始までの日数 (遅滞群:32.8日[ 24.8-37.3日]、正常群:21.3日[16.3-22.0日]、P=0.01)に有意な差を認めた。

    【考察】

    先行研究では、肝移植術対象児の40%にサルコペニアを呈すると述べられており、本研究においても、退院後3か月の体重Zスコアに有意な低下を認め、サルコペニアの臨床症状である体重減少を示していると考えられた。また、入院の長期化や、理学療法士による早期からの粗大運動発達支援を目的とした座位や腹臥位練習の介入の遅延が、退院後の粗大運動発達に影響を与える可能性があるが、その要因については、さらなる背景因 子の検討が必要だと考えられた。また、症例数が少ないために、交絡因子の検討ができず、今後、さらなる症例数の増加、また 長期的なフォローを行い、必要な支援の検討が必要だと考えられる。

    【倫理的配慮】

    本研究はヘルシンキ宣言に基づき行った。データの解析にあたっては匿名化を行い、取り扱いの際には漏洩がないよう配慮して行った。また、国立成育医療研究センターの倫理委員会によって承認(倫理番号2023-054)された。

  • 石本 壮星, 糸数 昌史
    原稿種別: 表彰候補演題 ①
    2024 年 2 巻 Supplement_1 号 p. 33
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
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    【はじめに、目的】

    学齢期以降に歩行・粗大運動能力を維持していても成人期になり歩行・粗大運動能力が低下した脳性麻痺 (CP)の症例を目にする.WalleらによるとCP児は健常児と比較し歩行中のエネルギーコストが高く,歩容異常が歩行効率低下に関連すると報告している.木元らはCP児を対象に,Total Heart Beat Index (THBI)にて心拍数から歩行効率を算出し,歩容分類が片側肢でも正常範囲内に入っていると歩行効率が良いと報告している.しかし,歩容異常の部位と歩行効率との関係は明らかになっていない.本研究はCP児の歩行効率を説明する要因を明らかにするため,歩容・バランス・歩行持久力などのパラメータとの関連について検討した.

    【方法】

    対象はGMFCS LEVELⅠ・ⅡのCP児・者33名 (平均年齢14.8± 6.7歳)とした.対象者は腕装着型光学式センサーを着用し,片道30mの歩行路を6分間歩行 (6MD)実施し,その動作映像を前額面と矢状面から記録した.歩行効率の指標としてTHBI (歩行中の総心拍数/総歩行距離)を算出し,歩容はEdinburgh visual gait scoreを使用した.副次的パラメータとして,最大ステッ プ長テスト (MSL)とBerg Balance Scaleを実施した.THBIは,先行研究を参考に健常児のTHBI下限値 (2.13beat/m)以下をカ ットオフと設定して歩行効率の高低で2群に分類した.統計手法は,歩行効率の高低による差は対応のないt検定または Mann-WhitneyのU検定 (EVGS・BBS・MSL・6MD)を用いた. THBIと各歩行パラメータおよびTHBIとEVGSの各項目との関連 は,ステップワイズ法による重回帰分析で解析した.統計ソフ トはSPSS Statics Version28.0を用い,有意水準は5%とした.

    【結果】

    歩行効率の高い群は,低い群と比較してTHBI,EVGS,BBS, MSL,6MDは有意に高い値であった.THBIに関連する因子として,EVGSとBBSの項目が選択された.さらに,THBIを従属変数,EVGSの各項目を独立変数とした重回帰分析の結果,3分で立脚相の踵挙上,遊脚終期の膝関節角度,遊脚相における足部クリアランス,6分で立脚相の踵挙上,遊脚終期の膝関節角度,遊脚相における最大膝屈曲角度が選択された.

    【考察】

    本研究の結果から,CP児・者の歩行効率に影響する要因として歩容異常およびバランス能力が選択された.NandyらはCP児・者の異常な歩行パターンは不安定な姿勢制御を伴い,歩行効率とバランス能力との関連性を示唆している.THBIと関連があ る歩容の項目として,立脚相の踵挙上と遊脚終期の膝関節角度が選択された.立脚相における踵離地の遅延は対側歩幅の短縮に関連し,早期の踵挙上は重心の前方移動を制限することにつながることから,踵挙上のタイミングが歩行効率に影響する妥当な要因であると考える.また,遊脚終期の膝関節角度はステップ長の減少と初期接地の膝屈曲角度の増加に関連していること から,歩行効率との関連が大きい要因であることを示している.本研究の結果は,CP児の歩行効率の改善を目的とした介入の結果分析に有用であり,歩行効率改善を目的としたアプローチと して歩容とバランス能力に着目した治療戦略の必要性を改めて示すものである.

    【倫理的配慮】

    本研究は国際医療福祉大学研究倫理審査委員会にて承認後 (承認番号:22-Ig-243)対象と保護者には口頭と書面で説明し,承諾を得て実施した.

表彰候補演題②
  • 信迫 悟志, 大住 倫弘, 中井 昭夫, 森岡 周
    原稿種別: 表彰候補演題 ②
    2024 年 2 巻 Supplement_1 号 p. 34
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
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    【目的】

    Bimanual coupling (BC)効果とは,片手で直線を描きながら同時にもう片方の手で円を描くと,直線が楕円形に歪む現象のことであり,これは片方の手で円を描く運動プログラムが,もう片方の手で直線を描く運動プログラムに影響するためである.したがって,BC効果の減少は,両手を同時に別々に操作する能力が高いことを表す.BC効果は6歳児で既に強くみられ,子ども (6歳,10歳)から成人 (20-30歳)にかけて減少することが分かっているが (Piedimonte et al., 2014),子どもにお けるBC効果と微細運動技能との関係を調べた研究は皆無である.そこで本研究では,定型発達児を対象にBC効果がどのような微 細運動技能と関連しているかについて調査した.

    【方法】

    定型発達児56名 (平均年齢±標準偏差:9.5±2.3歳,範囲:6-13歳,男児29名,右利き49名)が本研究に参加し,BC課題と微細運動技能テストを完了した.BC課題には,利き手で反復して直線を描く片手条件,利き手で直線を描きながら同時に非利き手で反復して円を描く両手条件があった.タブレット PCによって計測された利き手による直線軌道から両条件の楕円化指数 (ovalization index: OI値)を算出した.OI値が減少するほど,直線軌道が円形に変形する歪みがないことを表した.また両手条件のOI値から片手条件のOI値を減算することでBC効果を算出した.微細運動技能には,Movement Assessment Battery for Children-2nd editionのManual dexterity testを使 用し,利き手運動技能,非利き手運動技能,両手協調運動技能,利き手運筆技能,総合の標準化得点を各微細運動技能の指標と した.統計学的検討として,BC効果の有無を確認し,年齢を制 御変数とした各OI値と各微細運動技能の偏相関分析を実施した.

    【結果】

    両手条件のOI値は,片手条件のOI値と比較して,有意に増加した (t(55)=-10.028,p<0.001).偏相関分析の結果,片手条件のOI値と利き手運筆技能 (r=-0.296,p=0.028),両手協調運動技能と両手条件のOI値 (r=-0.271,p=0.045),および BC効果 (r=-0.313,p=0.020)との間に,それぞれ有意な相関関係を認めた.

    【考察】

    先行研究と一致して,6-13歳児におけるBC効果が確認された.6-13歳児において,両手条件におけるOI値および BC効果の減少,すなわち両手を同時に別々に操作する能力の向上と両手協調運動技能の向上との間には,重要な関係性があることが示された.

    【倫理的配慮】

    本研究は,所属施設の研究倫理委員会で承認された後に,ヘルシンキ宣言に基づき,個人情報の管理には十分配慮して実施した (承認番号:R4-41).対象児とその保護者には,事前に本研究の目的,方法,参加期間,いつでも参加を撤回できること,不利益がないこと,プライバシーの保護,学会 ・論文における公表について,文書による説明を行い,署名による同意を得た.

  • 大曲 正樹, 南野 初香, 原品 結衣, 松井 香菜子, 浅井 明美, 鈴木 里枝, 熊谷 有加, 内山 圭, 河合 美早, 天野 美乃里, ...
    原稿種別: 表彰候補演題 ②
    2024 年 2 巻 Supplement_1 号 p. 35
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

    【はじめに,目的】

    我が国の重症心身障がい児 (以下重症児)の数は増加傾向にあり,呼吸器感染症が主要な死亡原因として挙げられている.そのた め呼吸状態の適切な評価は,呼吸器感染症の予防に重要であり, 呼吸状態の変化を詳細に捉える評価スケールの開発が必要である.本研究の目的は,重症児の呼吸状態を詳細かつ簡便に評価が可 能な新しい評価スケールの開発と,その信頼性,妥当性の検討を目的とすることである.

    【方法】

    重症心身障害児施設の入所者を対象とした.全118例の入所者から強度行動障害によりリハビリ介入がない16例の高齢者を除外し,102例 (平均36.6歳,超重症児 (者)・準超重症児 (者)判定基準 (以下超重症児判定基準)スコア平均16.9点)を対象とした.評価項目は診療記録を後方視的に調査し,呼吸器疾患の入 院リスク因子や,超重症児判定基準など先行研究より選択した.本研究では身体機能 (年齢,横地分類,入院歴,摂食状況,呼 吸器感染症治療歴,発熱歴),呼吸機能 (側弯,可能な姿勢, SpO2値,唾液の貯留,聴診・触診所見,咳嗽力,嚥下機能),呼吸ケアの必要度 (吸引回数,ドレナージ回数,人工呼吸器,パルスオキシメータ,酸素,吸入器,排痰機器,BVMの使用状況)の3領域を各8項目,合計24項目を調査した.各項目は0から 3までの4段階のリッカート尺度を用いて症状,重症度,能力等を階層化し,最良0点,最重症を72点にスコア化した.その総合点と超重症児判定基準との相関関係から開発したスケールの妥当性を検討した. 各評価項目,総合点の検者間信頼性の検討には重み付けカッパ係数と級内相関係数ICC (2,1)を使用した.妥当性の検討には Spearmanの順位相関係数を用いた.統計学的有意水準は5%とした.

    【結果】

    各評価項目の重み付けカッパ係数は0.930~1.0,総合点の級内相関係数ICC (2,1)は0.995であり,検者間の信頼性が確認された.また超重症児判定基準との間に有意な相関関係 (rs=0.85)が認められ,開発したスケールの妥当性も確認された.超重症児判定基準により18段階に階層化された対象者を,開発し た評価スケールでは41段階に階層化が可能であった. 次に総合点と各評価項目との相関関係を検討した結果,咳嗽力,吸引回数,パルスオキシメータの使用状況,ラ音の状況,摂食 状況,触診所見,ドレナージ可能姿勢等は特に高い相関関係を認め,呼吸状態の重要な指標であることが示唆された.一方,発熱の回数のみ有意な相関関係を認めなかった.また年齢は負の相関関係を認めた.

    【考察】

    開発した評価スケールの信頼性と妥当性が示唆された.また超重症児判定基準と比較し,より詳細に呼吸機能を評価することが可能であった.総合点と相関関係を認めない項目等については修正が必要と考えられた. 本研究の成果は,重症児の呼吸機能を簡便かつ詳細にスコア化することが可能になったことである.経時的なスコアの変化から呼吸機能を捉え,重症度に応じた適切なケアを提供することが可能となることで,呼吸器感染症予防に寄与する可能性がある.今後は評価項目の再検討や,対象者を増やして検討していく.

    【倫理的配慮】

    本研究はオプトアウト方式を用いた後方視的研究である.研究の実施に際して,聖隷三方原病院倫理委員会で承認を得た (承認番号:第 22-51号).

  • 藤本 智久, 皮居 達彦, 田中 正道, 久呉 真章
    原稿種別: 表彰候補演題 ②
    2024 年 2 巻 Supplement_1 号 p. 36
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

    【はじめに】

    近年,NICU・GCU入院中の児に対して理学療法士が介入している施設も増えてきている.当院でもNICU・GCU入院中の極低出生体重児に対して,フォローアップの一環として,退院前に早産 児 行 動 評 価 (APIB : Assessment Premature Infant Behavior) を実施し外来にて新版K式発達検査2001を用いて評価している. APIBとは,NBAS (ブラゼルトン新生児行動評価)とSynactive Theoryを基にしてAlsにより開発された新生児の神経行動能力 と発達状況を検査する評価法の一つである.今回,極低出生体重児の退院前のAPIBのシステムスコアと修正1歳6ヶ月時の新版 K式発達検査の発達指数 (DQ)を調査し,その関係について検討したので報告する.

    【対象と方法】

    対象は,2019年8月から2022年1月までに当院NICU・GCUに入院した極低出生体重児のうち,退院前にAPIBを実施でき,退院後のフォローアップで修正1歳6ヶ月時の新版K式発達検査を実施することができた児21例 (男児10例,女児11例,平均出生週数 29.1±3.0週,平均出生体重1144.5±235.5g)である.なお退院前の頭部MRIで低酸素性虚血性脳症 (HIE)や脳室周囲白質軟化症 (PVL)等の神経学的異常を認めた児は除外した.方法は,まず退院前 (平均39.1±1.3週)に実施したAPIBのシステムスコア (1 ~9で9が最も脆弱).また,修正1歳6ヶ月時 (平均18.0±0.9ヶ月 )の新版K式発達検査のDQを算出した.そして,APIB各システムスコアと新版K式発達検査のDQについて関係があるかを検討 した.APIBはAPIBプロフェッショナルによって実施,スコアリングされ,新版K式発達検査も同一PTが実施し,P-M (姿勢-運動)領域,C-A (認知-適応)領域,L-S (言語-社会)領域と全領域のDQを算出し検討した.尚,統計学的検討は,スピアマンの順位相関係数 (ρ)を用いて検討し,危険率p<0.05 を統計学的有意とした.

    【結果および考察】

    APIBシステムスコアと修正1歳6ヶ月時のDQの相関を見ると,自律神経系,運動系,状態系,注意相互作用系,自己調整系のスコアでは,状態系と自己調整系のシステムスコアの一部においてDQと有意な正の相関を認めた (ρ=0.44~0.64, p<0.05).これは,退院前のAPIBにおいて覚醒状態や自己調整力が高いほどDQが低いという矛盾を示していた.そこで,自律神経系と状態系,注意相互作用系,自己調整系のシステムスコアの差に注目し,再度DQとの相関を検討した結果,一部に有意な負の相関を認めた (ρ= -0.46~-0.71, p<0.05).これは,特に方位反応 (orientation)の場面で自律神経系と状態系,注意相互作用系,自己調整系の乖離が大きい児ほど発達指数が低いことを示していた.つまり,自律神経系が弱く呼吸・循環の不安定性や振戦・驚愕等の神経系の脆弱さを示しながら,覚醒状態が高く,ぐずったり,過覚醒をしめしているような児では,発達指数が低かったということを示している.これらより,それぞれのサブシステムは協調しながら発達していくことの重要性を示しており,自律神経系が弱いときにしっかりと休めていない児では,発達に注意が必要であることを示唆しているのかもしれない.

    【倫理的配慮】

    対象児の保護者には,入院中および外来でのフォローアップおよび情報の取り扱いについて,紙面および口頭にて説明し,同意を得て実施した.尚,本研究は,姫路赤十字病院 倫理委員会の承認を得ている (承認番号:2021-04).

  • 後藤 萌, 竹中 菜々, 吉岡 紀穂, 三木 麻有甫
    原稿種別: 表彰候補演題 ②
    2024 年 2 巻 Supplement_1 号 p. 37
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

    【はじめに、目的】

    Ullrich型先天性筋ジストロフィー(UCMD)は、生後間もなく筋力の低下を呈し、筋萎縮や近位関節の拘縮、遠位関節の過伸展などが特徴的な症状と見られる先天性筋ジストロフィーの1つであり、COL6A1、COL6A2、 COL6A3の遺伝子の変異によって正常なⅥ型コラーゲン (COL6)が産生されないことが原因で発症する。しかし、現在UCMDに対しては対症療法的治療が一 般的で、有効な根治治療法は未だに確立されていない。そこで、我々はCOL6を含めた様々な因子を分泌することで知られてい る間葉系間質細胞 (MSC)に着目し、UCMDに対する新規治療法の確立を目指し研究を進めてきた。当研究所では、多能性幹 (iPS)細胞からのMSC(iMSC)の作成に成功し、さらにそれらを UCMDモデルマウスの骨格筋へ移植することでUCMD筋組織中にCOL6が補充され、骨格筋再生不全の病態が改善されることを証明した (Takenaka-Ninagawa et al., 2021)。また、MSCは成体の様々な組織から収集可能であるが、その中でも骨髄由来 MSC (BM-MSC)や脂肪由来MSC(Ad-MSC)については既に臨床において様々な疾患の治療に使用されている。そこで、本 研究ではUCMDモデルマウスにBM-MSCと Ad-MSCを移植し、その際にもCOL6の補充がされiMSCと同等のUCMD病態改善効 果が発揮されるか否か、治療効果を比較検討し、UCMD治療の 為に最適な移植用細胞源を明らかにすることを目的とした。

    【方法】

    オスUCMDモデルマウス (5週齢~8週齢)の左前脛骨筋 (TA)に BM-MSC、Ad-MSC、 iMSCをそれぞれ培養液中に懸濁して移植した。同時に対照実験として、右TAには培養液のみを注入した。移植1週間後と12週間後にそれぞれのTA筋組織を採取して凍結薄切切片を作製し、蛍光免疫染色及びシリウスレッド染色を実施して各群間で比較した。

    【結果】

    移植後1週間では、総面積に占めるCOL6陽性面積の割合は、 BM-MSC移植群が他2群よりも有意に高かった。筋線維総数に 占めるCOL6陽性線維 (COL6に完全に囲まれた筋線維)の割合は、 iMSCとBM-MSCを移植した群が、Ad-MSC移植群よりも有意に 高かった。しかし、再生筋線維数の割合ではiMSC移植群が他2群と比較して有意に高かった。移植後12週間では、COL6陽性面積の割合は、iMSCとBM-MSCを移植した群でAd-MSC移植群よりも有意に高かった。COL6陽性線維数の割合は、BM-MSC 移植群では他の2群よりも有意に高かった。一方で、線維化領域を示すシリウスレッド陽性領域の割合についても、BM- MSC移植群で他の2群よりも有意に高かった。

    【考察】

    BM-MSCとAd-MSCも、UCMD筋に移植された際、12週間生着することが確認できた。しかし、COL6の補充領域については、 BM-MSCとiMSC移植群の2群が同程度に大きく、筋再生不全の病態改善効果についてはiMSCが最も優れていた。加えて、 BM-MSC移植群では顕著な線維化領域の拡大が認められ安全性が懸念されることから、移植用細胞源として治療に使用することは難しい。以上の結果から、iMSCがUCMDに対する移植用細胞源として最も適していることが示唆される。今後は、UCMDに対するiMSC移植治療の臨床応用を目指し、移植対象筋の選 定や移植時期、具体的な移植方法を含めさらなる研究を進める。

    【倫理的配慮】

    本研究は京都大学動物実験委員会の審査を受け実施した (承認番号:計23-196 計 23-197)。

  • 亀山 啓博, 北原 エリ子, 渡部 幸司, 池野 充, 田中 弘志, 渡邉 篤優, 藤原 俊之
    原稿種別: 表彰候補演題 ②
    2024 年 2 巻 Supplement_1 号 p. 38
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

    【はじめに,目的】

    上位腰椎二分脊椎症患者に対する歩行練習は,骨の健康や身体活動の促進を目標としてReciprocating-Gait-Orthosis(RGO)や骨盤付き長下肢装具(HKAFO)等が適用され実践されてきた (Wilson,2020).成人高位対麻痺患者においては内側股継手装具 (MSH-KAFO) の有用性を示す報告があるが (鈴木,2005),小児患者では報告がみられない.今回,歩行に意欲がある上位腰椎二分脊椎児に対し,HKAFOおよびMSH-KAFOを使用して歩行練習を行い,比較検討したため報告する.

    【方法および症例報告】

    症例は脊髄髄膜瘤術後(L3/4),脳室腹腔シャント術後,キアリ2型奇形(神経圧迫解除術),水腎症・急性腎不全による尿管皮膚瘻 増設後の11歳男児. ADLはFunctional Independence Measure for Children 92点, Pediatric Evaluation of Disability Inventory尺度化スコア(標準誤差)セルフケア71.7(1.9),移動57.3(2.1),社会的機能63.2(1.5).知能指数は田中ビネー知能検査102. 移動は4歳から車椅子自走. 歩行練習は6歳時にHKAFOで開始.7歳にRGO,8歳2ケ月にHKAFO股関節屈曲フリー設定による練習開始.9歳11か月で体幹装具併用MSH-KAFOにて練習開始. 変形は体幹側弯,右股関節脱臼を認め,徒手筋力テスト(右/左)は股関節屈曲1/2,内転1/2,伸展1/1,外転1/1,膝関節伸展3/3,足関節背屈1/1で8歳時から著変なし.評価項目は最長歩行距離,10m歩行速度, 主観的アウトカム Global Rating of Change Scale(GRC)とした.8歳2ヶ月~10歳8ヶ月までのHKAFO歩行と,10歳9ヶ月 ~11歳のMSH-KAFO歩行を比較した.

    【経過および結果】

    HKAFO歩行は開始時平行棒内自立,1ヶ月後に歩行器歩行が50m可能となった.ロフストランドクラッチ(以下LC)歩行は介助を外すことが難しく,2年後10歳3ヶ月時に10mの監視歩行が可能となった.10m歩行速度は2分59秒.10歳5ヶ月時のLC歩行は軽介助にて最長歩行距離79.6m,10歳7ヶ月時の10m歩行速度は1分 31秒. MSH-KAFOでのLC歩行は開始した10歳9ヶ月時より監視にて 89.2mの歩行が可能.10m歩行は1分17秒. GRCは+1(少し歩きやすくなった)であった.11歳7ヶ月での10m歩行は1分1秒で速度 はさらに改善した.

    【考察】

    HKAFOは右下肢遊脚時にはさみ足となりやすく,膝内側が接触するため介助が必要であったが,MSH-KAFOは股継手が内側にあるため立脚相・遊脚相ともに股関節内転が回避され,両側立脚相が安定したと推察した.そして早期の監視長距離歩行を実現し ,10m歩行速度の改善も認めたと考える. 上位腰椎二分脊椎児の実用的移動手段は車椅子であり,歩行練習の意義については議論すべき点がある(芳賀,2009)が,積極的な歩行練習を行った群の車椅子移乗自立の割合が高く,骨折回数や褥瘡が少ない(Mazur,et al.1989)との報告があり,児の希望に合わせて一定期間に歩行練習を行うことは意義があると考える.麻痺レベルに加え,知的能力,平衡機能,変形,体重など様々な要因を考慮して装具の検討を行う必要があるが, MSH-KAFOは上位腰椎二分脊椎患者に対する装具選択肢の一つとなるとことが示された.

    【倫理的配慮】

    本報告はヘルシンキ宣言に基づき,対象者とその保護者に口頭と書面で趣旨・内容を説明し,承諾を得ている.

  • 宮城島 沙織, 萬井 太規, 佐藤 優衣, 広崎 蒼大, 小塚 直樹
    原稿種別: 表彰候補演題 ②
    2024 年 2 巻 Supplement_1 号 p. 39
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

    【はじめに,目的】

    運動の発達や成熟を評価する上で歩行能力の定型的な発達過程を理解することは重要である.自然に近い小児の歩行を評価するためには,AI技術を用いたマーカーレスモーションキャプチャやビデオによる歩行分析が臨床において採用しやすい.しかし,歩行分析の際に指標になるような幼児期からのデータは我が国では報告されていないのが現状である.本研究の目的は, 3~12歳児における歩行中の関節運動パターンの発達を明らかにすることとした.

    【方法】

    3~12歳の定型発達児92名を対象とした.対象は3-4歳25名, 5-6歳28名,7-8歳20名,9歳以上19名の4群に割り当てた.対象者は,裸足にて6mの直線歩行路を快適速度で歩行するよ うに指示された.27個の反射マーカーを貼付し,三次元動作解析システムおよび床反力計にて,歩行中の運動学的データを記録した.解析範囲は,中間の4mの内,最初の踵接地から1歩行周期とした.矢状面における股・膝・足関節の関節運動の時系列データを算出した.統計解析は,多変量分散分析を用い,支持脚と遊脚相それぞれの各最大屈曲および伸展関角度,踵接地時の足関節角度を各年齢群で比較した.危険率は5%とした.

    【結果】

    踵接地時の足関節角度は各群間に有意な主効果が認められた (p = 0.03).多重比較の結果,3-4歳群が7-8歳群より有意に大きかった (p = 0.04).支持脚と遊脚相それぞれの各関節の最大屈曲および伸展関角度において,年齢間に有意な主効果は認められなかった.関節運動パターンは,足関節にて,3-4歳群 ではほぼ全例で足関節は0度からやや背屈位で接地し,その後の底屈運動が見られない.5-6歳群で接地後の底屈運動を認めるようになるが,個人差が大きかった.足関節運動は,9-12歳群でほぼ成人と同様のパターンとなった.

    【考察】

    3~ 12歳児における歩行中の股・膝関節運動は各年齢群で同様のパターンを示すことが明らかとなった.これらは既に報告されているような成人の関節運動パターンとも類似している.一方, 足関節運動においては,3-4歳群では多くが背屈位で踵接地し, 7-8歳群と有意差を認めた.関節運動の時系列データを見ると 9歳以降に成人のようなパターンとなることが明らかとなった.これはVictoria Lら (2006)の過去の報告と一致している.足関節運動は効率的かつ円滑な歩行に貢献する.踵接地時の衝撃吸収後,足関節が速やかに底屈運動を行うことで前方への推進力を生み出すロッカー機能は5-6歳頃から発達し,9歳以降に成 熟する可能性が示唆された.本報告は我が国の幼児期からの歩行中の関節運動パターンを明らかにした初めての報告であり,今後臨床や研究において活用されることを期待する.

    【結論】

    股・膝関節は3-4歳から成人と同様のパターンを示し,足関節運動は9歳以降に成人同様のパターンとなる.

    【倫理的配慮】

    対象者およびその保護者には事前に,口頭と書面で本研究の目的,実験手順,考えられる危険性を十分に説明し,署名にて同意を得た.なお,本研究は所属機関の倫理委員会の承認を得て,実施された (承認番号:28-2-52,F200016).

早産・低出生体重
  • 宮城島 沙織, 佐藤 優衣, 笹川 古都音, 鎌塚 香央里, 坂井 拓朗, 五十嵐 リサ, 小塚 直樹
    原稿種別: 早産・低出生体重
    2024 年 2 巻 Supplement_1 号 p. 40
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

    【はじめに、目的】

    Dubowitz神経学的評価法は予定日付近における神経行動発達をよく反映しているとされ、児の全体像把握、理学療法介入のスクリーニングとして活用されている。低出生 体重児を対象とした本評価法の予後予測能は不十分とされているが、乳児期の粗大運動発達の経過との関係について詳細に検討した報告は稀である。本研究の目的は、Dubowitz神経学的評価法のカットオフ値を算出し、発達予後予測能および乳児期の粗大運動発達との関係について検討することである。

    【方法】

    対象者は2012年1月1日から2020年12月31日までに当院にて出生し、医師より理学療法評価介入の依頼のあった児とし、脳性麻痺やダウン症など神経疾患および染色体異常の診断がある児、転居などを理由に当院の発達フォロー外来を終了した児は除外した。診療情報は、カルテ記録より全て後方視的に収集した。周産期情報および発達の経過として、出生体重、在胎日数、人工呼吸管理期間、酸素療法期間、予定日頃の Dubowitz新生児神経学的評価のトータルスコア、修正6ヶ月時および12ヶ月時のアルバータ乳幼児運動発達検査法 (以下、 AIMS)の下位項目およびトータルスコア、修正1歳6ヶ月時の新版K式発達検査法 (以下、新版K式)のDevelopmental Quotient (DQ)を収集した。神経学的予後として、修正1歳6ヶ月時の新版K式においてDQ85未満であった場合を発達遅延ありとして、発達遅延を予測するDubowitz新生児神経学的評価のカットオフ 値をReceiver Operating Characteristic (ROC)曲線にて算出した。また、算出されたカットオフ値により2群に分類し、出生体重、 在胎日数、人工呼吸器による管理期間、酸素療法期間、粗大運 動発達の経過として、修正6ヶ月時と修正12ヶ月時のAIMSについて、2群間で比較を行った。統計処理ソフトはR (ver. 4.2.1) を用いた。危険率は5%とした。

    【結果】

    対象者は90名で在胎週数、出生体重は、中央値 (四分位範囲)で29.4 (26.9-31.1)週、1,104 (884-1,333)g、男女比は 45:45であった。ROC曲線によるDubowitz新生児神経学的評価のカットオフ値は31.5点、感度38.1%、特異度84.0%、陽性的中率38.2%、陰性的中率33.3%、AUCは0.59を示した。カット オフ値に満たない群では、在胎週数が有意に短く、人工呼吸管理期間が有意に長かった (p < 0.01)。修正6ヶ月時と修正12ヶ月時のAIMSでは、2群間で有意差は認めなかった。

    【考察】

    Dubowitz新生児神経学的評価による発達遅延の予後予測能は低く、すでに報告されているものと同様の結果であった。一方でカットオフ値によって2群に分類し、周産期情報を比較 すると未熟性と関連のある在胎週数、人工呼吸管理期間において有意差を示した。この結果から、Dubowitz新生児神経学的評価は予定日頃の児の成熟度を反映している可能性が示唆された。しかし、乳児期の粗大運動発達の経過には、2群間で差が見ら れなかった。したがって、Dubowitz新生児神経学的評価は乳児期の発達経過との関連性は低いことが予想されるため、予定日頃の児の成熟度評価として活用することが望ましいことが考えられた。

    【倫理的配慮】

    本研究は、当院の臨床研究倫理審査委員会の承認を受け、観察研究として行った(承認番号332-153)。なお、拒否機会を設けた情報公開を行った。

  • 峯 耕太郎, 儀間 裕貴, 笹尾 丞子, 矢島 侑実, 丸山 秀彦, 諫山 哲哉, 上出 杏里
    原稿種別: 早産・低出生体重
    2024 年 2 巻 Supplement_1 号 p. 41
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

    【はじめに、目的】

    極低出生体重児 (VLBW)は神経学的障害のリスクが高いとされ,ハイリスク児としてフォローアップ健診の対象とされている. また,慢性肺疾患 (CLD)はVLBWの合併症として多い疾患であり,従来の定義では日齢28での酸素投与の有無で診断されるが,修正36週での呼吸補助の方法による診断は,在胎期間の個体差 も考慮されており,より合理的であると考えられている (Jensen EA, 2019).CLDの罹患は中・長期的な発達予後に悪影響を及ぼすとする報告も多い (Cheong JLY, 2018)が,より早期の新生児の神経学的発達との関連に着目した報告は少ない.本研究の目的は, 修正36 週でCLD と診断されるVLBW の Dubowitz神経学的評価 (Dubowitz評価)のスコアの特徴を明らかにすることとした.

    【方法】

    デザインは後ろ向きコホート研究とした.対象は2017年1月~ 2021年12月に当院の新生児集中治療室に入院したVLBWのうち,先天異常を有する児は除外し,修正37~42週の時点で Dubowitz評価を実施した児とした.診療録より基本情報 (性別,在胎期間,出生時の身長・体重・頭囲),合併症 (修正36週での CLD,症候性動脈管開存症,脳室内出血,脳室周囲白質軟化症,敗血症,壊死性腸炎,消化管穿孔,治療を要する未熟児網膜症 )の有無,Dubowitz評価のスコア (トータル,6つのカテゴリー, 34の評価項目)を抽出した.なお本研究におけるCLDとは,修 正36週時点で酸素投与または呼吸補助を必要とするものと定義した.対象をCLDの有無により2群に分け,基本情報と合併症 の有無,Dubowitz評価スコアの群間比較をするために,t検定, Mann-WhitneyのU検定,χ2検定を行った.また,従属変数に Dubowitz評価のトータルスコアを,独立変数に性別,在胎期間,出生体重,CLD,症候性動脈管開存症,脳室内出血または脳室 周囲白質軟化症,敗血症,壊死性腸炎または消化管穿孔,治療を要する未熟児網膜症の有無を投入して重回帰分析を行った.統計学的有意水準は5%とした.

    【結果】

    124例のVLBWが対象となり,そのうちCLD群は56例であった.基本情報では,CLD群において在胎期間,出生時の身長・体重 ・頭囲が有意に小さく,合併症の有無では症候性動脈管開存症,敗血症,治療を要する未熟児網膜症の発症割合が有意に高かっ た (p<0.01).Dubowitz評価のトータルとカテゴリースコアには群間で有意差は認めず,評価項目では姿勢,膝窩角,頭部ラグのスコアにおいて,CLD群で低値の頻度が有意に高かった (多重比較後 p<0.05).重回帰分析の結果,有意な項目として抽出されたのは,性別 (B=2.14, p<0.01),出生体重 (B=0.004, p<0.05),敗血症の有無 (B=3.27, p <0.01)であった.

    【考察】

    修正36週でCLDと診断されるVLBWのDubowitz評価 スコアを検討した結果,筋緊張カテゴリーの一部の項目に有意差がみられたが,トータルやカテゴリースコアにはみられなかった.Dubowitz評価は,評価時点での児の神経学的成熟度をよ く反映すると報告されている (儀間,2015).本研究の結果は,修正37~42週におけるDubowitz評価のスコアには,CLDの影 響よりも出生体重などの神経成熟学的要因が強く反映されている可能性を示唆した.

    【倫理的配慮】

    本研究は人を対象とする医学系研究に関する倫理指針に則り,当院倫理員会にて承認された.対象者における研究参加の同意と撤回権に関しては,オプトアウトにて対応した.

  • 佐藤 優衣, 宮城島 沙織, 笹川 古都音, 鎌塚 香央里, 坂井 拓朗, 五十嵐 リサ, 小塚 直樹
    原稿種別: 早産・低出生体重
    2024 年 2 巻 Supplement_1 号 p. 42
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

    【はじめに、目的】

    本研究の目的は、発達遅延の有無を予測す る修正6ヶ月時のアルバータ乳幼児運動発達検査法 (以下、 AIMS)のカットオフ値を検討し、発達遅延、神経発達症と診断される児の早期発見、早期介入の一助とすることである。また、算出されたカットオフ値により2群に分類し、周産期情報や修 正12ヶ月時のAIMSの特徴を検討した。

    【方法】

    対象者は2012年1月1日から2020年12月31日に当院にて出生した超・極低出生体重児とし、脳性麻痺やダウン症など神経疾患および染色体異常の診断がある児、転居などを理由に 当院の発達フォロー外来を終了した児は除外した。診療情報は、カルテ記録より全て後方視的に収集した。周産期情報(出生体 重、在胎日数、人工呼吸管理期間、酸素療法期間、予定日頃の Dubowitz新生児神経学的評価のトータルスコア)および発達の経過(修正6ヶ月および12ヶ月時のAIMSの下位項目およびトータルスコア、修正1歳6ヶ月時の新版K式のトータルスコア)を収集した。発達遅延の有無は、新版K式発達検査の Developmental Quotient (DQ)85未満 (以下、新版K式条件)および実際に発達遅延、神経発達症の診断 (疑いを含む)がされていること (以下、診断条件)の2条件とした。発達遅延を予測する AIMSのカットオフ値を算出するため、Receiver Operating Characteristic (ROC) 曲線での分析を行い、感度、特異度、カットオフ値、陽性的中率、陰性的中率およびROC曲線下面積 (AUC:area under curve)を算出した。また、算出されたカットオフ値により2群に分類し、周産期情報、発達の経過を2標本 t検定もしくはMann-Whitney U 検定にて比較した。統計処理ソフトはR (ver. 4.2.1)を用いた。危険率は5%とした。

    【結果】

    対象者は71名 (在胎日数199.9±23.0日、出生体重 1029.6±297.2g、男女比34:37)であった。ROC曲線の結果は、新版K式条件の場合、カットオフ値は28点,感度38.7%,特異 度82.5%,陽性的中率36.5%,陰性的中率36.8%、AUCは 0.59、診断条件では、カットオフ値は27点,感度54.1%,特異度 76.5%,陽性的中率39.5%,陰性的中率28.6%、AUCは0.65を 示した。また、診断条件にてROC曲線から算出されたカットオフ値以上の群は、未満の群と比較し、周産期情報に有意な差は認められず、修正12ヶ月のAIMSにおいてprone、standingの 項目で有意に高値を示した (ともにp<0.001)。

    【考察】

    診断条件における修正6ヶ月時のAIMSのカットオフ値は、新版K式条件よりも感度、特異度ともに高く、より有益な基準となり得る可能性がある。これは、新版K式における DQ85未満は、一般的に発達遅延とされるが、実際は診断がついていない場合やDQ85以上であっても発達遅延、神経発達症 (疑い含む)と診断される児もいることが影響したと考えられる。さらに、修正6ヶ月時のAIMSにて、28点を下回る場合は、12ヶ 月時の粗大運動発達、特に腹臥位、立位において低値を示すこ とから、より注意深いフォローアップを要する可能性が示唆された。

    【倫理的配慮】

    本研究は、当院の臨床研究倫理審査委員会の承認を受け、観察研究として実施した (承認番号332-153)。なお拒否機会を設けた情報公開を実施した。

  • 佐藤 隆一, 小澤 哲也, 出岡 有希, 長田 きらら, 新山 祐貴, 霜田 直史, 渡邊 玲子, 小郷 寛史
    原稿種別: 早産・低出生体重
    2024 年 2 巻 Supplement_1 号 p. 43
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

    【はじめに、目的】

    近年、早産児の中でも最も割合を占める中等度早産児および後期早産児 (以下MLPT)の予後について関心が高まっており、その成熟度に差があるとの報告も増えてきている。今回当院は、2021年1月から新生児集中治療管理室 (以下NICU)に対して理学療法士が介入するにあたり実施の有無で MLPT児にどのような影響を与えるのかを検討した。

    【方法】

    本研究は後向き観察研究である。対象は2020年7月 ~2023年6月まで当院NICUに入院された187例のうち中等度 (在胎32週以上、34週未満で出生)および後期早産 (在胎34週以上、37週未満で出生)児を対象とした。またその中から,脳疾患、染色体異常や遺伝子疾患などを含む先天性疾患のある児、 転院などで最終転帰の確認ができない児を除外した45例とした。 2020年7月~2021年12月までを理学療法未実施群 (以下未実施群)24例、2021年1月~2023年6月までを理学療法実施群 (以下実施群)21例として出生時妊娠週数、出生時体重、出生時身長、アプガースコア (以下AP;1分/5分)、退院時週数、退院時体重、在院日数を比較検討した。 尚、在院日数、出生時体重、退院時体重は対応のあるt検定、その他はMann‒Whitney U testで統計処理を行い群間比較した。

    【結果】

    出生時妊娠週数 (未実施群 vs 実施群)33.6w±1.1day vs 34.1 w±1.2day、出生時体重1745.8±189.4g vs 1768.3± 158.1g、出生時身長41.8±1.9㎝ vs 41.9±1.6 cm、AP1分7.4 ±1.2 vs 7.2±1.8、AP5分8.8±0.8 vs 9.1±0.7、退院時週数 38.3w±1.1day vs 38.1w±0.8day、退院時体重2342.8± 240.8g vs 2298.4±225.0g、在院日数34.1±11.9日vs 29.2± 7.7日といずれの項目においても有意な差を認めなかった。

    【考察】

    今回はMLPT児に着目して理学療法の実施、未実施が退院時の体重増加や在院日数の短縮までの結果を得ることはできなかった、しかし、脳性麻痺を発症していない早産児が粗大運動能力と微細運動能力の障害に遭遇する頻度が高く、有病率は軽度から中等度の障害で約40%、中等度の障害で約20%との報告もされ大きな問題の一つと考えられている。今後は、外来でフォローアップし理学療法実施、未実施による影響を問いたいと考えている。

    【倫理的配慮】

    使用したデータの研究目的の利用については,株式会社girasolの同意と小田原市病院倫理委員会の承認を得ている。

  • 成瀬 健次郎, 和田 崇, 三浦 真澄, 尾﨑 まり
    原稿種別: 早産・低出生体重
    2024 年 2 巻 Supplement_1 号 p. 44
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

    【目的】

    新生児集中治療室 (Neonatal Intensive Care Unit:NICU)に2ヵ月以上長期入院する新生児の約6割が低出生体重児である。低出生体重児のうち極・超低出生体重児は未熟な臓器や器官系の機能不全による合併症が生じやすく、NICU入院中は合併症の治療が必要となる。染色体異常、神経筋疾患、脳血管疾患は NICUでの入院を長期化させる因子だが、それらの疾患を除外しても極・超低出生体重児は入院が長期化することを臨床で経験する。本研究は、染色体異常、神経筋疾患、脳血管疾患の診断がない極・超低出生体重児に対する理学療法評価が入院期間に関連するか調査した。

    【方法】

    研究デザインは後方視的観察研究である。対象は鳥取大学医学部附属病院周産期母子医療センターNICUで2018年2月から 2021年11月までにリハビリテーションを受けた出生時体重が 1,500g未満の極・超低出生体重児である。退院までに染色体異常、神経筋疾患、奇形症候群、脳室周囲白質軟化症、脳室内出血、低酸素性虚血性脳症と診断された児を除外した。対象の基本情報、周産期情報、入院日数、ポジショニング用具の使用日数をカルテから情報収集し、周産期情報として分娩の種類、アプガースコア、呼吸器疾患などの合併症を調査した。理学療法評価は初回介入時と退院時の評価結果を用いた。新生児自発運動評価 (General Movements:GMs)はWrithing MovementsまたはFidgety Movementsを定型発達、それ以外を非定型発達に分けた。Modified Ashworth Scale (MAS)は頸部 (屈曲・伸 展・回旋)、上下肢 (屈曲・伸展)を評価した。スピアマンの順位相関係数を用いて入院日数と各変数との関連を解析した。有意水準は5%とした。

    【結果】

    対象は30名 (男児15名、女児15名)で極低出生体重児が12名、超低出生体重児が18名であった。極・低出生体重児の各変数の中央値は在胎週数が29週2日、出生時身長が32.1cm、出生時体重が940gであった。入院期間中央値は75日 (四分位範囲: 61.8日-124.8日)であり、極・超低出生体重児の入院期間と有意な正の相関を示したのは、ポジショニング用具の使用期間 (r=0.729)、退院時の頸部伸展に対するMAS (r=0.512)、退院時 GMs (r=0.680)であった。有意な負の相関を示したのは出生時の身長(r=-0.500)、体重 (r=-0.626)、在胎週数 (r=-0.504)、5分値のアプガースコア (r=-0.495)であった。

    【考察】

    本研究の結果から、極・超低出生体重児に対する理学療法評価の一部が入院日数と有意に相関することが示された。出生時の身長、体重が小さい、在胎週数が短い、5分値のアプガースコアが低いことはNICUに入院する極・超低出生体重児にとって長期入院の因子となる可能性がある。また、極・超低出生体重児が姿勢を保持できるようになるまで時間を要することや頸部伸展の筋緊張亢進、異常な自発運動がみられるという発達的特徴を持っている可能性が示唆された。

    【倫理的配慮】

    本研究は鳥取大学医学部倫理審査委員会の承認を得て行った (承認番号:No.22A173)。

  • 川島 瞳, 辻 悦子, 荒川 依子, 伊藤 百合香, 梶原 厚子, 岡崎 薫
    原稿種別: 早産・低出生体重
    2024 年 2 巻 Supplement_1 号 p. 45
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

    【はじめに】

    極低出生体重児の神経学的合併症の頻度は未だ高く、その早期発見とフォローアップのためのシステム作りは重要な課題である。しかしながら、フォローアップに関しては出生した医療機関や小児専門病院の比重が大きい。地域での療育支援の体制は各都道府県や地域間での格差が大きく、支援の充実が図られているとは言い難い。近年、訪問看護・リハビリテーションにおいて医療的ケアを要する児への支援は退院後早期から導入されている。一方で、医療的ケアのない極低出生体重児に関しての介入報告は少ない。極低出生体重児を含むハイリスク児は未熟性を抱えながら育つため、授乳や病気にかかりやすいなど育てにくさもあり、母親の育児不安は高い。また発達面の問題の発生頻度も高いことから療育上の問題が生じやすいと報告されている。今回、近隣の総合周産期母子医療センターである東京都立小児総合医療センターと連携の元、訪問看護ステーションにおけるハイリスク児への育児支援・発達支援の機会を得たのでここに報告する。

    【対象】

    2021年9月~2023年3月までに訪問看護依頼があった極低出生体重児のうち医療的ケアのない8名 (在胎週数27.8±3.4週、出生体重901±327g)。

    【方法】

    診療記録や共有ツールの記録、家族との連絡ツールから、紹介理由、相談内容、困りごと、支援内容について後方視的に調査した。

    【結果】

    訪問開始時期:修正0ヵ月~修正5ヵ月。訪問頻度:平均2.1回/週。紹介理由:健康観察、発達フォロー、育児支援(100%)、反り返 る(50%),定頸が遅い(12.5%)。相談内容:排便ケア (87.5%)、哺乳・離乳食(75%)、体重増加 (62.5%)、皮膚トラブル (50%)、漠然と発達のことが不安(100%)、遊び方が分からない(75%)。 困りごと:反りやすい、過敏、低緊張、身体が硬い等の身体の 扱いにくさ (100%)、泣いてしまうので1日中抱っこ(37.5%)。支援内容:看護では授乳や離乳食の栄養面の相談、排便ケア、皮膚トラブルに対してオイルマッサージ、保湿ケア。理学療法では、ポジショニング、ストレッチ、運動発達の促進、発達段階 に合った遊びの提供、臥位・座位環境の支援、食事環境の支援、装具療法。療育センターへの移行や保育園入園にあたり情報提 供。

    【考察】

    外来フォローでは見えずらい育児の不安や困り感、家庭での支 援の必要性を知ることが出来た。ほぼ全例に身体の扱いにくさ、反りやすさ、発達がゆっくり、離乳食の姿勢環境の困り感があった。訪問ではより生活に密着した育児支援・発達支援ができるので、ニーズに沿った、具体的で個別性の高い支援を行うことができる。理学療法士及び看護師の協働による遊び方や離乳食の進め方、環境面のアドバイスを通して、家族の不安軽減に努め、育児を楽しむ一助となっていると考える。子どもたちが地域の中で育っていけるよう保育園や療育機関への情報提供も有益と考える。ハイリスク児のフォローアップは、子ども達の生活している地域ぐるみでの支援体制が求められている。その 1つとして訪問看護・リハビリテーションが担える役割の可能 性を見つけた。

    【倫理的配慮】

    所属施設の承認を得るとともに、ヘルシンキ宣 言に則り、個人が特定できないよう個人情報の扱いに配慮した。

  • 西川 良太, 佐藤 紗弥香, 川尻 美和, 田中 明里, 三澤 由佳
    原稿種別: 早産・低出生体重
    2024 年 2 巻 Supplement_1 号 p. 46
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

    【はじめに,目的】

    当院では早産低出生体重児に早期から神経学的評価を行い,定期的なフォローアップを行なっている.新生児期には修正37~ 42週にGeneral Movements評価(GMs)とHammersmith新生児神経学的検査(HNNE)を実施し,修正3ヵ月にもGMsを実施.修正 6ヵ月・1歳6ヵ月・3歳では新版K式発達検査 (K式検査)を実施している.この度 Hammersmith乳幼児神経学的検査 (HINE)の日本語版が使用可能となり,修正3ヵ月でも定量的な評価が実施可能となった.今回,品胎早産超低出生体重児に対して,修正3ヵ月でのGMsとHINE,修正6ヵ月でのK式検査と HINEを実施したため報告する.

    【方法および症例報告】

    症例は3絨毛膜3羊膜品胎と診断され,在胎24週3日に緊急帝王切開で出生.3症例とも呼吸窮迫症候群,慢性肺疾患あり,出生直後から挿管・人工呼吸器管理された. <第1子>出生体重572g,Apgar Score(APS)1/5/6.修正29週3日に抜管し非侵襲的陽圧換気(NPPV)に変更するも,無呼吸発作頻発し再挿管.その後も抜管試みるが乳児期の抜管困難と判断され,修正45週3日に気管切開術施行.転院時は呼吸器(自発換気モード)と人工鼻を併用.PT介入は修正39週2日より開始. <第2子>出生体重660g,APS1/3/5.修正30週2日に抜管し NPPV管理に変更.酸素需要は継続したが,修正41週3日から 微量の酸素投与に変更し,修正45週1日に呼吸補助は終了した. PT介入は修正38週6日より開始. <第3子>出生体重642g,APS2/5/6.修正29週3日に抜管する も,気道閉塞があり再挿管.その後も抜管試みるも管理困難で挿管管理続いたが,修正32週3日に抜管,NPPV管理に変更し,修正40週3日に呼吸補助は終了した.PT介入は修正38週4日より開始. 転院前の脳MRI評価では全員異常なし.修正3ヵ月評価は修正3ヵ月4~10日に実施.修正3ヵ月15日に全員で転院し,修正4ヵ月3日に自宅退院.修正7ヵ月2日に当院にて修正6ヵ月評価を実施した.

    【結果および経過】

    <第1子>新生児期のGMs・HNNEは挿管中で実施できず.修正 3ヵ月評価・GMs:Fidgety+,HINE:45.5点.修正6ヵ月評 価・ K式検査:姿勢運動(PM)83/認知適応(CA)93/言語社会 (LS)85/Total89,HINE:67.5点. <第2子>修正37週4日ではGMs:Poor Repertoire(PR), HNNE: 18点.修正3ヵ月評価・GMs:Fidgety+,HINE: 56.5点.修正 6ヵ月評価・K式検査:PM77/CA90/LS75/Total84,HINE:68 点. <第3子>修正37週4日ではGMs:PR,HNNE:24.5点.修正3ヵ月評価・GMs:Fidgety+,HINE:59点.修正6ヵ月評価・K式検査:PM75/CA67/LS81/Total73,HINE:70.5点.

    【考察】

    第1子は第2・3子より修正3ヵ月のHINEは低く,Romeoらの早産児のカットオフ値である53点より低いが,修正6ヵ月ではカットオフ値の62点より高くなり,新版K式も3症例の中で最も高い数値であった.修正3ヵ月で発達が遅れていても,成長とともに児の発達は大きく伸びる可能性が示唆されるため,フォローアップが重要だと考えられる.今後はこれらの症例の経過をフォローするとともに,さらに多くの症例で評価を重ねていき,修正3・6ヵ月でのHINEとK式検査との関連性を検討し,発達障害リスクなどの検出が可能かなどを明らかにしたいと考える.

    【倫理的配慮】

    本症例報告について,ヘルシンキ宣言に基づき,対象者および保護者に対して,目的や内容,撤回の自由と個人 情報に関する十分な説明を行い,書面にて同意を得た.

重症心身障害
  • 小笠原 悠人, 菊池 芹佳, 渡邉 観世子
    原稿種別: 重症心身障害
    2024 年 2 巻 Supplement_1 号 p. 47
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

    【はじめに、目的】

    重症心身障害児・者(以下、重心児)は、大島分類を用いることで知的・運動機能の全体像が把握できるが、呼吸・循環機能や姿勢等の情報は不十分である。これらに対し、重心児の詳細な 生活機能評価法のLife Inventory to Functional Evaluation(以下、 LIFE)と従来よりも細分化した生活機能分類のLife Function Classification System(以下、LFCS)が開発された。それらを利 用し機能ごとの心身機能の差を知ることで、重心児を細分化し 個々に沿った理学療法介入が可能となる。併せて、筋量や栄養状態を把握することは運動プログラムを詳細に決定できる要素となる。以上より本研究では、LFCSのレベル間でLIFEの生命維持機能と姿勢運動のスコアの差および身体組成の比較を行った。また LIFEのスコアと身体組成との関連を明らかにした。

    【方法】

    当施設を利用する重心児34名(男性:17名、女性:17名、年齢 :25.1±10.5歳、2~43歳)を対象としLIFE (Version0.5.5)の PartⅠとPartⅡを評価した。またLFCS (Preliminary Version)を用いてレベル1~6に分類した(レベル1:5名、レベル2:9名、レベル4:5名、レベル5:6名、レベル6:9名)。身体組成評価 にはIn Body S10を使用し、Body Mass Index(BMI)、体脂肪率、 Extracellular Water/Total Body Water(ECW/TBW)、Phase Angle(PhA)、Skeletal Muscle Mass Index (SMI)の計測値を抽 出した。解析はLFCSのレベル間でのLIFEのPartⅠとPartⅡのスコアと身体組成値の差をKruskal-Wallis検定、LIFEのPartⅠと Part Ⅱの各スコアと身体組成値との関連性をSpearmanの順位相関 係数にて検討した。

    【結果】

    LFCSのレベル間でのLIFEの差はPartⅠではLFCSレベル1と5 (p =0.03),6(p<0.01)、レベル2と5(p=0.03),6(p<0.01)、Part Ⅱではレベル1と5(p<0.01),6(p<0.01)で有意差が見られた。 LFCSのレベル間での身体組成値は、SMIでレベル2とレベル 6(p<0.01)にて有意差が見られた。LIFEのPartⅠとPartⅡのそれぞれのスコアと身体組成値との相関は、PartⅠではPhA(ρ= 0.41)、SMI(ρ=0.57)との有意な正の相関が認められ、体脂肪率(ρ=-0.37)とECW/TBW(ρ=-0.38)との有意な負の相関 が認められた。PartⅡでは、SMI(ρ=0.56)との有意な正の相関が認められ、体脂肪率(ρ=-0.53)とECW/TBW(ρ=- 0.67)との有意な負の相関が認められた。

    【考察】

    LFCSによる分類で抗重力位保持が可能で呼吸機能の問題の少ないレベル1・2よりも気管切開や人工呼吸器管理で寝たきりのレベル5・6の対象者でLIFEの各Partの合計値が低い傾向を示した。これにより、抗重力位保持の可否に加え呼吸管理の方法が心身機能に影響する可能性があると考えられる。また、LFCSにて心身機能が低いレベルの重心児は、SMIが有意に低下しており抗重力位保持には筋量維持が重要となると考えられる。身体組成との関連性では、両Partで体脂肪率とECW/TBW、SMIが関わっており、心身機能を捉えるには、栄養状態と筋量の関わりが大きいことが示唆された。また、PartⅠでは、PhAとの関係性も見られた。重心児の心身機能を捉えるうえで、呼吸状態や姿勢保持機能、筋量・栄養状態を評価することは個々の状態に沿った理学療法介入のために重要となる。

    【倫理的配慮】

    本研究は国際医療福祉大学倫理審査委員会の承認を受けている(承認番号:21-Ig-39、21-Io-13)。

  • 菅野 航生, 小笠原 悠人, 菊地 優斗, 小野 紋奈, 渡邉 観世子
    原稿種別: 重症心身障害
    2024 年 2 巻 Supplement_1 号 p. 48
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

    【はじめに、目的】

    重症心身障害児・者(以下、重心児者)は、運動量の低下や抗てんかん薬の服用などにより、骨折発生率が高いことが報告されている。骨折による活動量の低下は機能低下に繋がるため、骨折の予防は重心児者において重要であり、そのリスクを把握することは、運動強度の設定やプログラムを考える上で必須であ る。骨折のリスクを把握する指標として骨密度があり、これは、運動機能や服薬状況、筋量や栄養状態などの身体組成と関連す ると言われているが、重心児者での検討は不十分である。以上より、本研究では、当施設の重心児者の骨密度の特徴について、運動機能の違いや服薬状況、筋量や栄養状態などの身体組成から明らかにすることを目的とした。

    【方法】

    対象は当施設の入所者25名とした (男性:13名、女性:12名、 30.8±8.9歳、16~62歳)。対象者の情報としてカルテより骨 粗鬆症に対する治療薬、抗てんかん薬使用の有無、立位保持の可否を収集した。 骨密度の測定方法は定量的超音波測定法で端座位姿勢にて測定した。骨密度は同年齢および同性の対象者の基準値に対する値のZ偏差値を解析の対象とした。身体組成については、骨格筋指数のSkeletal Muscle mass Index (以下、SMI)、体水分量や栄養状態の指標であるExtracellular Water/Total Body Water(以下、ECW/TBW)、Phase Angle(以下、PhA)を体成分分析装置 (In Body S10)にて計測した。Z偏差値について骨粗鬆症に対する治療薬、抗てんかん薬使用の有無、立位保持の可否による違 いをMann-WhitneyのU検定にて比較した。またZ偏差値とSMI、 ECW/TBW、PhAとの関連をSpearmanの順位相関係数にて検討 した。

    【結果】

    Z偏差値は平均が-3.79であり全対象者が負の値を示していた。また、Z偏差値は立位保持の可否において有意差を認め (p=0.001)、立位保持が不可能な群において低値を示した。一方で、骨粗鬆症に対する治療薬と抗てんかん薬使用の有無ではそれぞれ有意差を認めなかった。Z偏差値と身体組成の関連性では、SMIとの間に有意な正の相関(ρ=0.65、p = 0.001)、 ECW/TBWとの間に有意な負の相関を認め(ρ=-0.47、p =0.02)であった。一方で、Z偏差値とPhAとの間には有意な相関は認めなかった。

    【考察】

    重心児者において、骨密度は全体的に著しい低下を認めた。特に、立位保持不可能な対象者では低値を示した。要因として、骨のリモデリングが立位保持を行うことで促進されたことが考えられる。そのため、立位に関わる要素の筋量は骨密度が高いほど高値であることや筋量の主な成分である体水分を示す ECW/TBWは骨密度が高いほど低値という関連性も立位保持能力に影響するものと考えられる。一方で、今回の結果では、骨粗鬆症に対する治療薬と抗てんかん薬の使用による影響と栄養状態との関連性は不明確であった。服薬に関しては、本研究の対象者25名のうち6名で骨粗鬆症に対する治療薬を服用し、25名のうち24名で抗てんかん薬を服用しており、対象者数の差が大きく比較が困難であったと考えられる。また、抗てんかん薬の種類や服薬量、服薬回数の違いも関連要因であると考えられるため、今後詳細に検討する必要性があると思われる。

    【倫理的配慮】

    本研究は、国際医療福祉リハビリテーションセンターなす療育園の施設長の許可を得て実施している。

  • 渡會 雄基, 横井 裕一郎, 松岡 審爾
    原稿種別: 重症心身障害
    2024 年 2 巻 Supplement_1 号 p. 49
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

    【はじめに、目的】

    重症心身障害児・者 (以下,重症児・者)の呼吸障害は多岐にわたり,様々な要因が絡み合い複雑である.その中に,気管の病態や舌根沈下,下顎後退などの上気道狭窄・閉塞,さらには気管に問題があると考えられる.健常児・者においては,気管の大きさに影響する要因の検討はされているものの,重症児・者を対象とし,気管の大きさに影響する要因について検討している報告はない.そこで本研究の目的は,重症児・者の気管横径の特徴を明らかとし,健常者との違いについて検討することとした.

    【方法】

    対象は,当施設を利用する大島分類1~4に該当する重症児・者とし,除外基準は気管切開,24時間人工呼吸器を使用,超音波測定部位に皮膚トラブルがある,不随意運動等により測定が困難とした.健常者の除外基準は,損傷を伴う呼吸器疾患や気管病変の既往があるとした.気管横径の測定肢位は背臥位,頸部中間位に保持した.測定方法は,触診にて甲状軟骨,輪状軟骨を識別し,輪状軟骨の下端にプローブを短軸方向に当て,超音波画像を2回取得し気管横径を測定した.超音波画像から気管横径を測定する際は,乱数表を作成しランダムに測定した.統計解析には,2回測定した平均値を使用した.統計解析は,目的変 数を気管横径,説明変数を年齢,性別,身長,頸部周径として,ステップワイズ法による重回帰分析を実施し,各対象群で比較,検討した.有意水準は危険率5%とした.

    【結果】

    本研究には,重症児・者21名 (平均年齢32.9±16.1歳,男性11名,女性10名),健常者は,33名が参加し,その中の1名が除外基準に該当したため,健常者32名 (平均年齢32.2±16.6歳,男性22名,女性10名)の計53名が対象となった.重症児・者の障害属性は,CP 16名,脳炎後遺症3名,脳外傷後遺症1名,染色体異常1名であった.気管横径の平均値は,重症児・者13.3 ±1.4mm,健常者15.1±2.1mmであった.ステップワイズ法 による重回帰分析の結果,重症児・者では身長 (P<0.001,標準偏回帰係数:β=0.64)と頸部周径 (P=0.001,β=0.46)が説明変数として残り,気管横径に対して有意に影響があることが示唆された.健常者では性別 (P<0.001,β=0.63)と年齢 (P=0.004,β=0.30)が説明変数として残り,気管横径に対して有意に影響があることが示唆された.

    【考察】

    気管横径に対して影響する要因は,重症児・者では身長と頸部 周径,健常者では性別と年齢となり,異なっていることが明らかとなった.重症児・者の障がい特性を考慮すると,身長・頸部周径への影響因子として栄養摂取状態が考えられる.加えて,頭部保持能力などの運動機能の影響が考えられる.発達過程においては,感染症や消化器症状,誤嚥が気管の炎症・ダメージを招くことで気管横径に影響を与えている可能性が考えられる.このように,障がいが重度であるほど,気管横径が狭小化する可能性が考えられる.そのため,栄養摂取状態,生活場面に応じた姿勢・呼 吸管理,運動機能向上を目指した介入が重要であると考えられる.今後は,重症児・者の重症度による要因や発達過程において縦断 的に捉える必要がある.

    【倫理的配慮】

    本研究は,北海道文教大学研究倫理審査委員会ならびに社会福祉法人札幌緑花会大倉山学院倫理委員会による審査,承認を得て実施した (北海道文教大学承認番号:第 03009号).対象者が健常者の場合は,本人に書面および口頭で説明し,対象者が重症児・者の場合は,ご家族または後見人に書面および口頭で説明し,書面にて同意を得て実施した.

  • 石野 智香, 糸数 昌史, 小笠原 悠人, 渡辺 玲菜
    原稿種別: 重症心身障害
    2024 年 2 巻 Supplement_1 号 p. 50
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

    【はじめに、目的】

    重症心身障害児(者)の特徴として、寝たきりの状態が多い、変形や拘縮を伴うことが多い、痰の吸引が必要であり、肺炎や気管支炎を起こしやすいとされている。また、重症心身障害児 (者)は骨格系の変形による胸郭変形や横隔膜の運動制限が生じやすく、呼吸機能の低下が示唆される。今回、横隔膜のみで呼吸を行った場合の肺活量は一般的に予想肺活量の70%であるといわれているため、重症心身障害児(者)の横隔膜に着目した。現在、行われている呼吸機能検査ではスパイロメータによる検査が定着しているが、重症心身障害児(者)では重度の知的障害のため、言語によるコミュニケーションを使用した検査は困難である。そのため、非侵襲的で身体の表面から内部を測定することができる超音波診断装置を使用し、横隔膜の移動距離を評価できないかと考え、研究を行った。今回の研究では重症心身障害児(者)の姿勢と横隔膜の動きの関係性を明らかにし、呼吸機能に対する影響を検討することを目的とした。

    【方法】

    対象者は重症心身障害児(者)17名(男性10名女性7名、年齢21.7 ±11.2歳、身長1.33±0.19m、体重29.3±9.8kg)とし、測定肢位は背臥位、両側臥位、腹臥位とした。超音波診断装置 (VolusonE8)、コンベックス型プローブ3.5Hzを使用し、右肋骨弓下斜走査法を用いて計測した。先行研究に基づき、Bモードで肝臓、腎臓、胆嚢をランドマークに横隔膜位置を同定し、Mモードで安静呼気から最大吸気時の横隔膜移動距離を安静時呼吸5回分測定した。基礎情報として年齢、性別、身長、体重、心拍数、呼吸数、動脈酸素飽和度、脊柱変形角度 (cobb角、胸郭扁平率)を得た。統計処理としてデータの正規性の検定は Shapiro-wilk検定、各姿勢の横隔膜移動距離の変化はフリードマン検定、多重比較としてダービン=コノバー法を使用した。横隔膜移動距離と体格・胸郭形状・バイタルサインとの関連性の検討にSpearmanの相関分析、脊柱変形の特徴および脊柱変形の程度による横隔膜移動距離の差の検定にマンホイットニー のU検定を使用した。統計ソフトはSPSS version 22.0を用い、有意水準は5%とした。

    【結果】

    各姿勢の横隔膜移動距離の中央値は腹臥位 0.28cm、背臥位 0.79cm、右側臥位 0.64cm、左側臥位 0.57cmであり、腹臥位での横隔膜移動距離が有意に低値であった (p<0.05)。各姿勢での横隔膜移動距離と体格・胸郭形状・バイタルサインとの有意な 関連性は認められなかった。脊柱変形は胸部C字側弯が4名、 S字側弯が12名であった。S字側弯の中で胸部側弯50°未満が 6名と50°以上が6名であり、脊柱変形の特徴および脊柱変形 の程度の群間における横隔膜移動距離には有意な差は認められなかった。

    【考察】

    重症心身障害児(者)は背臥位、左側臥位、右側臥位と比較して腹臥位での横隔膜移動距離が低下していた。これらは前胸部の圧迫によりポンプハンドル機能が働かず、他の姿勢と比較して腹臥位の横隔膜移動距離が低下したのではないかと考えた。各姿勢での横隔膜移動距離と体格・胸郭形状・バイタルサインに有意差がみられなかったことから重症心身障害児(者)の横隔膜動作には姿勢による影響が強いと考えた。

    【倫理的配慮】

    国際医療福祉大学大学院倫理審査委員会の承認を得た(承認番号:22-lg-196)

  • 田代 峻一, 東 菜奈子, 米倉 照代, 澤田 一美
    原稿種別: 重症心身障害
    2024 年 2 巻 Supplement_1 号 p. 51
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

    【はじめに、目的】

    重症心身障害児(者) (以下、重症児(者))の呼吸障害に対する健康管理は生命維持機能と直結した重要な課題である。呼吸姿勢管理では腹臥位系姿勢の有用性が多く報告されているが、その他の選択肢も必要である。セミファーラー位(以下、SF位)は背臥位に比べ腹部臓器による横隔膜圧迫が軽減され、慢性閉塞性肺疾患ではリラクゼーション効果や呼吸困難感の軽減が報告されているが、実際に重症児(者)に呼吸管理目的で使用した報告は見受けられない。今回、重症児(者)に対しSF位の呼吸機能への影響を評価したため、考察を加えて報告する。

    【方法】

    当通所事業所を利用され、呼吸管理を行っている大島分類1の重症児(者) 9名(16~46歳、中央値30歳、四分位範囲24.5-33.5歳)を対象とした (背臥位で唾液誤嚥等の不利益がある者は除外した)。評価項目は①経皮的動脈血酸素飽和度(以下、SpO2)②脈拍③呼気時間④横隔膜筋厚変化率(以下、ΔTdi%)。背臥位 /SF位15度/SF位30度をそれぞれ30分実施し動画撮影を行った。 ① SpO2②脈拍はモニター(DSL-80001:フクダ電子)より1分ずつの平均値を使用。③呼気時間は動画低速再生より、各姿勢25分経過以降の胸郭運動を視覚的に評価し1/100秒単位で15回計測。 ④ΔTdi%は超音波画像診断装置(vscan extend: GEヘルスケアジャパン)で側弯凸側の中腋窩線上第8・9肋骨部(Zone of apposition)から横隔膜運動を10回撮影。吸気/呼気終末時の横隔膜筋厚を画像解析ソフトImage Jで各5回計測し、最大/最小値を除く3回の平均値を使用、(吸気筋厚-呼気筋厚)/呼気筋厚 × 100から算出した。評価時のポジショニングは枕とクッションを使用し股関節/膝関節軽度屈曲位、計測はすべて同一検者が実施した。統計解析は一元配置反復測定分散分析、多重比較 にはTukey法、統計ソフトはJSTATを使用し有意水準5%とした。

    【結果】

    SpO2は15度で増加1例、30度で減少が3例みられた(p<0.01)。脈拍は15度以上で減少が4例(p<0.05 1例、p<0.01 3例)、30度で減少が2例みられた(p<0.01)。呼気時間は15度以上で増加が 3例(p<0.01 )、30度で増加が3例(p<0.05 1例、p<0.01 2例)、 15度以上で減少が2例みられた(p<0.01 )。ΔTdi%は15度以上で増加が3例(p<0.01 )、30度で増加が1例(p<0.01 )、30度で減少が1例(p<0.01 )みられた(計測不可2例あり)。

    【考察】

    緊張が高い筋肉はリラックスした状態に比べ数倍の酸素消費があるとされ、リラクゼーション肢位により呼吸補助筋の過剰な活動を抑制することは重要である。今回の対象者では、SF位で脈拍減少や呼気延長する例が多くみられ、リラクゼーションに寄与した可能性がある。また2例でSpO2低下や呼気時間短縮などネガティブな変化がみられ、この2例は普段から上体を起こす姿勢をあまり好まれない傾向があり、それを支持する結果となった。呼吸障害を有する重症児(者)へのSF位はリラクゼーションや呼吸管理姿勢として有用である可能性があり、個別性に応じた配慮は必要だが、日常生活を安楽に過ごすための選択肢として活用できるものと考える。

    【倫理的配慮】

    本研究は、はながしま診療所倫理審査委員会の承認を得て実施した。対象者には口頭と文書で研究内容と個人情報の取扱い、参加の有無に関わらず不利益のない旨などを十分に説明し、同意の署名を得て実施した。

  • 小島 賢司, 中村 拓人
    原稿種別: 重症心身障害
    2024 年 2 巻 Supplement_1 号 p. 52
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

    【背景】

    重症心身障害とは多様な障害像であり,生涯にわたり包括的な支援が求められている. 理学療法士は重症心身障害者を支援する代表的な専門職であり, 理学療法実践においても心身機能のみならず日常生活への参加を支援することが求められている. 近年参加に焦点を当てた多くのリハビリテーション研究が出版されており, 参加に影響を与える要因の特定や, 参加に焦点を当てた介入の開発が行われている. これらの研究のほとんどは海外で行われた研究であるものの, 我が国でもICFに根ざした測定ツールであるLife Inventory to Functional Evaluation for Individuals with Severe Motor and Intellectual Disabilities (以下 LIFE)の開発が進められており, 参加に焦点を当てた研究の基盤が整備されつつある. そこで本研究では, LIFEを用いて以下 2つの研究疑問を調査することとした. (1)施設入所する重症心身障害者の参加の状況を記述する. (2)彼らの心身機能と活動が重症心身障害者の参加をどの程度予測するかどうかを検証する.

    【方法】

    横断研究を実施した.対象は富田分類の基準に合致する 20歳以上の重症心身障害者とし,重症心身障害者施設Aの5つの異なる病棟から便宜的にサンプリングした. 各参加者を担当している理学療法士によってLIFEが実施され, カルテから人口統計学的情報が収集された. 全対象者のLIFEの「Part IV :生産的活動場面における参加」のスコアを従属変数とし, LIFE「Part I :生命維持機能」「Part II : 姿勢と運動」「Part III :日常生活活動場面における機能的活動」および人口統計学的情報を説明変数として重回帰分析を実施した.有意水準は5%とし, 分析には SPSS25.0を用いた.

    【結果】

    56名からデータが収集された. 内訳は男性31名,女性 25名であり, 年齢の中央値は31歳(SD:11.5), 入所歴は6年 (SD:2.3)であった. 富田分類1の参加者が77%, 2の参加者が 14% , 5の参加者が7%, 6の参加者が2%であった. 全参加者のLIFEスコアの中央値は, Part1で52%(SD:19) ,Part2で 22%(SD:24),Part3で11%(SD:5),Part4で15%(SD:7)であった. 重回帰分析の結果は年齢の標準化係数が-.278, 性別が.240, 入所歴が. 097, Prat1が .651, Part2が.140, Prat3が.015であり,年齢とPart1のスコアのみが有意であった. R2乗値は.347であった.

    【結論】

    本研究の参加者は生命維持機能や姿勢・運動機能に比べてLIFEの参加に関する項目では個人差が小さかったことから , 心身機能に関わらず参加の機会が保障されていた可能性がある. また, 入所施設においては, 認知機能や運動機能といった機能よりも, 生命維持機能が参加制限と関連していた. このことは , 生命維持機能の重要性を示唆している. 一方で, LIFEの参加に関する項目には医療的ケアの必要性に関する項目が多く含まれており, この測定ツールの内容妥当性が十分に検証されていないことを考慮する必要がある. また, 本研究では環境に関する変数が未測定であり, R2乗値が高くなかったことを考慮すると, 参加における環境の重要性を指摘する多くの先行研究と同様に,環境が重要な予測因子であった可能性がある. 今後は環境的側面にも考慮した調査を行うことで, より包括的に重症心身障害者の参加を理解することができる.

    【倫理的配慮】

    本研究はヘルシンキ宣言に沿った研究であり当法人の倫理審査員会にて承認を得た (2023-5-29).対象者へは本人または代理人に同意を得て,個人が特定されないよう配慮した

  • 田實 裕嗣, 福元 喜啓, 南 弘一, 井下 兼一郎, 野田 知秀, 芝﨑 嘉寿緒, 薗畑 勇佑, 坪井 直人, 日根野谷 昇
    原稿種別: 重症心身障害
    2024 年 2 巻 Supplement_1 号 p. 53
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

    【はじめに、目的】

    重症心身障がい児・者 (以下,重症児・者)は肺炎を含む呼吸器感染症を合併しやすいことが知られており,死亡原因の主な一つとされている。高齢者において骨格筋量の低下は肺炎の発症や再発に関連していることが報告されている。重症心身障がい児・者においても骨格筋量が低下しているため,肺炎を発症しやすいことが考えられるが,渉猟しえた限りではこれらの関連性を調べた研究は見当たらない。そこで本研究は重症児・者の骨格筋量および筋質が肺炎の発症に及ぼす影響を検討することを目的とした。

    【方法】

    対象者は当院へ入院している重症児・者74名(男/女:48/26名,平均年齢:43.4±17.8歳)とし,ベースライン評価時に肺炎を 発症している者は除外した。ベースラインの評価として診療録より気管切開の有無,人工呼吸器使用の有無,栄養摂取状態 (経口,経鼻経管,胃瘻または腸瘻,持続注入),側弯の有無,アルブミン値,リハビリテーションによる1ヶ月あたりの平均 離床時間,過去1年間の肺炎発症の有無,身体属性として年齢,性別,BMI,身長,体重の情報を得た。骨格筋量・筋質の測定は超音波画像診断装置を用いて行い、上腕二頭筋,大腿四頭筋,腹直筋,内・外腹斜筋,腹横筋の筋厚と筋輝度を評価した。ベースラインから半年間のフォローアップ期間に,肺炎を発症した者を肺炎群(n=23,男/女:17/6,平均年齢40.3±20.2歳),発症しなかった者を非肺炎群(n=51,男/女:31/20,平均年齢 44.8±16.5歳)とした。統計解析として,ベースラインにおけ る群間比較をχ2検定またはマン・ホイットニーのU検定にて行った。また肺炎の発症に関連する要因を抽出するため,従属変数として肺炎の発症を,独立変数として群間比較にて有意差を認めた項目を投入したロジスティック回帰分析を行った。統計学的有意水準は5%未満とした。

    【結果】

    群間比較の結果,気管切開の有無(p=0.019),栄養摂取状態 (p<0.002),過去1年間の肺炎発症の有無 (p=0.001),内腹斜筋筋厚 (p=0.032)において有意差を認めた。一方で他の項目においては群間による差を認めなかった。ロジスティック回帰分析の結果,肺炎の発症には過去1年間の肺炎発症 (オッズ比: 4.54,p=0.026)と内腹斜筋筋厚 (オッズ比:0.008,p=0.025)が有意な関連を示した。

    【考察】

    重症児・者における肺炎の発症には内腹斜筋筋厚と過去1年間の肺炎の有無が関連していた。腹斜筋群は腹直筋よりも強く呼気に影響していること,特に内腹斜筋は呼吸需要が増加する状況で腹腔内圧を調節することが報告されている。そのため,内腹斜筋の筋量低下は咳嗽やくしゃみなどの気道クリアランスの低下につながり,肺炎のリスクを高めている可能性があると考えられる。以上より、重症児・者の肺炎発症は内腹斜筋の筋厚減少によって予測できることが示唆された。

    【倫理的配慮】

    本研究は,和歌山病院倫理審査委員会の承認を 得て実施した (承認番号:04-1)。また,すべての被験者の家族または成年後見人に本研究の趣旨および内容について口頭および文書で説明し,自由意思による参加の同意を書面により得た。

装具・支援工学
  • 富樫 希望, 羽鳥 航平, 横山 浩康
    原稿種別: 装具・支援工学
    2024 年 2 巻 Supplement_1 号 p. 54
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

    【はじめに】

    急性脳症後遺症は、筋緊張異常や知的障害により姿勢保持能力や移動能力に異常をきたす事がある。予後として、歩行獲得後も関節拘縮や筋力低下をきたし、歩行能力維持が課題となり運動療法と共に装具療法を行う。今回、高校卒業を控える脳症後遺症の症例を担当し、生活で必要となる装具の選定について以下に報告する。

    【方法】

    症例は年齢10代、女性、特別支援学校に通学中。1歳4か月で発症、11歳で短下肢装具付靴型装具 (以下旧装具)を作成。旧装具は金属支柱付きで、足部補正が少ない装具である。足長の成長が少なく、靴部分を残し金属支柱のみ修理を行い使用。当院でのリハビリテーションは3年前より開始。初回、寝返り・起き 上がり・あぐら床座位自立。起立・立位保持・歩行は一人介助。両足部外反扁平変形、足関節背屈制限あり。左足関節背屈 -3°、右足関節背屈0°である。立位も、左足底全面接地困難。主に車いす生活で、場所により後方一人介助にて歩行。知的障 害より簡単な指示理解可能だが意思の訴えに困難さあり。当院でも旧装具を使用し起立・歩行練習を実施。学校での活動時間や、歩行練習の際も使用。しかし、内転筋群優位の歩容が目立ち、外反扁平変形の助長で外転筋群の筋出力低下が見られた。 2年半前に外転筋の筋トレと足部変形防止も兼ねて、左外側ウ ェッジ、両足ヒールアップした短下肢装具付靴型装具 (以下現装具)を作成。完成直後、歩行時股関節外転外旋と後方重心あり。精神的緊張で、バランスを崩す場面にて身体硬直あり。プログラムとして関節可動域練習、腹臥位姿勢保持練習を行い、歩行時前方ステップ促しとして、手すり把持での起立・立位練習と、手引き歩行練習を実施。

    【結果】

    介入後1年程でステップ改善と歩行介助量軽減が可能。足関節背屈可動域は介入開始時と比べ著変なし。現装具は足部前方荷重可能となり、ステップ円滑となった。元々恐怖心が強く、現装具への適応にも時間を要したが、2人介助で段差昇降練習も可能。徐々に使用頻度が増加した。しかし、身長・体重の増加とイベントや環境変化にて、歩行への恐怖心が出現。右母趾の深爪による傷も重なり、現装具着用困難な期間が1か月程あった。傷の治癒後、現装具で歩行練習を再開したが、後方重心が多く歩行困難となった。家族介助も困難となり、現装具の着用機会減少。現在、現装具はリハビリのみで使用。家族より日常生活で使用できる装具の希望あり、高校卒業後の生活でも着用できる新しい装具の選定をすることになった。

    【考察】

    歩容改善と関節可動域維持目的の装具作成し、歩容改善と生活場面にて使用可能となったが、現在は装具の使用頻度が減少。背景として、前方荷重促進目的のヒールアップが、成長による足部前方への荷重増加にて恐怖心に繋がったと考える。また、精神的ストレスも身体状況に影響を与えていたと考えられる。今回の結果として、精神的安定のある装具と身体的改善を目的とした装具を比較し、本症例は前者の方が生活場面での使用が見込めると考えた。この結果をもとに、今後は精神面を考慮した装具を作成したいと考えている。

    【倫理的配慮】

    本報告は当院の規定に基づき、個人を特定できないよう配慮し、研究以外の目的で患者データを利用しないこと。また、症例の家族に対して本報告の主旨を伝え、書面にて同意を得た。

  • 戸村 菜々美, 石田 悠, 藤本 潤, 星山 伸夫, 鈴木 文晴
    原稿種別: 装具・支援工学
    2024 年 2 巻 Supplement_1 号 p. 55
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

    【目的】

    当院リハセンター小児理学療法外来における足底装具療法は,以前はダウン症児が多くを占めていたが,近年はDSM-5の大カテゴリー「神経発達症群」に該当する児の作製例が増加してきている.現在,常勤の小児神経専門医は1名でリハ処方や薬物療法,装具診察を実施しており,診察予約をとるのが非常に困難な状況である.そのため,足底装具療法の相談や適応判断に関しては,担当の理学療法士 (以下,PT)が窓口になって行 われている.必要性に応じて装具診察に繋げているが,PT間でばらつきがあることや判断に迷うことも多いのが現状である.自閉スペクトラム症 (以下,ASD)や注意欠如・多動症 (以下, ADHD),発達性協調運動症 (以下,DCD)などの神経発達症児の足底装具療法の報告は少なく,その実態は明らかになっていない.そこで今回の研究では,当院PT部門の神経発達症児に対する足底装具作製の目的や時期を後方視調査し,足底装具療法の現状を明らかにすることを目的とした.

    【方法】

    対象は,2023年4月時点に当院でPTを実施している「神経発達症群」の下位診断に該当する小児195例のうち足底装具を作製した32例 (CA範囲:2-14歳)とした.方法は,対象児を知的能力障害 (以下,ID)併存の有無でID (+)群とID (-)群の2群 に分類し,診療録から後方視的に性別,診断名,歩行獲得月齢,足底装具作製目的,装具作製月齢を調査した.分析は2群間で 診断名,足底装具作製目的の比率をFisher’s exact test で比 較した.さらに,歩行獲得月齢,装具作製月齢について Mann-Whitney’s U testにより2群間で比較し,有意水準は全て5%とした.

    【結果】

    ID (+)群は12例 (男児8例,女児4例),ID (-)群は20例 (男児 17例,女児3例)であった.診断別では,ID (+)群は12例全例 ASDであった (100%).ID (-)群はASD14例 (70%),DCD6例 (30%)であった.足底装具作製目的は,ID (+)群で扁平足の改善が9例 (75%),歩行時のバランス改善が3例 (25%),痛みの改善1例 (8%),ID (-)群は扁平足の改善が13例 (65%),歩行時のバランス改善が9例 (45%),痛みの改善が5例 (25%)で,両群の比率に有意差は認めなかった (p=.46).歩行獲得月齢の中央値 (四分位範囲)は,ID (+)群が23.5 (21.3‐24.5)ヶ月,ID (-)群は15 (13.8‐18.5)ヶ月で,ID (+)群は有意に歩行獲得月 齢が遅かった (p<.05).装具作製月齢の中央値 (四分位範囲)は, ID (+)群は64.5 (57‐97.8)ヶ月,ID (-)群が75 (54.8‐111.3) ヶ月で,2群間に有意差は認めなかった (p=.47).

    【考察】

    当院で足底装具療法を実施した「神経発達症群」の下位診断は ID併存に関わらずASDが最も多く,次いでDCDで,ADHDはいなかった.ASDやADHDにDCDが合併することが多いが,5歳児健診で指摘されているように,ASDはADHDに比べて閉眼立位・片脚立位など下肢の協調運動やバランス能力に問題があることが報告されている.歩行獲得月齢はIDを併存すると有意に遅かったが,ID (-)群でも足底装具作製に至った症例は多く,下肢の協調運動やバランス能力の評価が足底装具適応を判断する指標になる可能性が示唆された.

    【倫理的配慮】

    本研究はヘルシンキ宣言に基づき,当院倫理委員会の承認を得て,倫理的配慮として個人を特定できないよう個人情報の扱いに配慮し実施した.

  • 加藤 久幸, 井上 孝仁, 西部 寿人, 井上 和広, 藤坂 広幸
    原稿種別: 装具・支援工学
    2024 年 2 巻 Supplement_1 号 p. 56
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

    【はじめに】

    脳性麻痺は、身体機能低下と並行して日常の活動制限を認め、介助が必要となることが多い。理学療法評価を行う上で、介助が必要な量や動作を把握することが必要である。2014年Wardらにより、Ease of Caregiving for Children Measure (以下 ECC)が考案され、2023年には日本語版も翻訳されている。今回は、 ECCを用いて、介護者からみた「介助のしやすさ」の改善が示された1症例を経験したので報告する。

    【対象および方法】

    対象は、混合性脳性麻痺を持つ6歳男児。機能分類では、 GMFCS:Ⅴ・MACS:Ⅴ・CFCS:Ⅴ、EDACS:Ⅳ、在胎39週 3日、 2565gにて仮死なく出生。母の困り感として、「姿勢を保つことができず、抱っこや椅子座位、入浴時に床に座ることなど介助が大変」とのこと。身体機能としてGMFM11.76%、 頚定(+)、寝返り未、ジストニック様の筋緊張のため、感情の高低に筋緊張が左右される。床上座位は、前方もたれ座位で安定しやすい。座位保持装置は、リクライニング角度によって食事中の嚥下状態が変化する。 方法は、ECCとCanadian occupational performance measure(以下COPM)を用いて入院時と退院時 (入院2週間)に評価した。 ECCは、お子さんが安全に毎日の生活を送れるように手助けすることがどれくらい難しいかを保護者が記入する評価尺度である。項目数は12項目で、1 (とても難しい)~5 (手助けは必要ない)の5段階で採点。合計は最低12、最高60。尺度化スコアは最低0、最高100で算出した。 COPMは、目標を設定し遂行度・満足度を1 (全くしていない) ~0 (とてもしている)で採点した。

    【結果および経過】

    ECC:入院時→退院時 (2週間)合計スコア43→49 尺度化スコア46.3→54.2 変化点した項目は、就寝時の姿勢、食事中の姿勢、服の着脱、装具着脱、入浴・身だしなみを整える、オムツ交換であった。 COPM:目標①「バギー・座位保持装置の新調と調整」は遂行度4→10、満足度2→10と変化し、目標②「お座りができるように」は遂行度2→9 満足度2→9へと変化した。 理学療法介入は、床上座位の前方もたれ座位練習に加え、自宅入浴時に使用するテーブルを作成し、入浴中に座っていられる工夫をした。座位保持装置のリクライニング角度を40度にセッティングすることでムセなく食事を摂ることが可能となった。

    【考察】

    理学療法の介入による床上座位の姿勢保持能力が向上したことや、座位保持装置の環境調整により生活面が変化し、筋緊張が緩和したことで介助のしやすさが改善したと考える。 介助のしやすさが変化することで、COPMの目標の遂行度と満足度の変化に関与したものと推察する。 今回ECCをもとに、生活に必要な介助の実態を家族と共有し、話し合いながらアプローチしていくことの重要性を再確認し、介助のしやすさは、生活リズムや環境面でも変化するため、それらの要因に配慮して理学療法を行う必要があると考える。 今回は2週間と比較的短期的な調査であったため、今後より長期的な視点に立ち、介入、評価を継続していきたい。

    【倫理的配慮】

    発表にあたり、患者の個人情報とプライバシーの保護に配慮し、家族から同意を得た。

  • 高木 健志, 新田 收, 高橋 恵里, 楠本 泰士
    原稿種別: 装具・支援工学
    2024 年 2 巻 Supplement_1 号 p. 57
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

    【はじめに、目的】

    近年、幼児の足部の発達に関わる要素として、靴におけるつま先の余裕が重要と考えられているが、日常使用している靴のつま先の余裕 (以下:つま先の余裕)と乳幼児の運動発達との関係についての研究は限られている。 本研究は、独歩可能な乳幼児の発達状況とつま先の余裕の関連性を明らかにすることを目的とし、遠城寺式乳幼児分析的発達検査法 (以下:遠城寺式検査)の各領域とつま先の余裕との相関関係を検討した。

    【方法】

    1. 対象

    対象は、名古屋市某法人の複数の保育所で募集された独歩を獲得し日常的に歩行している1-2歳の幼児とした。除外基準は、発達障害、知的障害、神経系疾患、整形外科疾患を有する者とした。

    2. 測定項目

    乳幼児の発達状況を遠城寺式乳幼児分析的発達検査法を用いることで評価した。本研究では、日常的に参加者の保育を担当している保育士が評価を行なった。その後、実際の月齢と遠城寺式乳幼児分析的発達検査法における各領域での発達月齢の差 (以下:月齢差)を算出した。 つま先の余裕は、靴のサイズと足のサイズの差を算出することで評価した。足長の評価は股関節・膝関節が屈曲90度になる椅子座位姿勢で行、硬い床面の上に測定面を接地させ、踵点から足先点 (第一趾と第二趾で長い方の足趾点)を結んだ直線距離を計測した。その後、左右の足長の平均値を算出した。靴のサイズは、靴からインソールを取り出し、最後点と最前点を結んだ直線距離を計測した。 その後、遠城寺式検査の各領域の月齢差とつま先の余裕の Spearmanの相関係数を算出した。

    【結果】

    14名が対象となり,平均月齢は27.4±4.5ヶ月であった.遠城寺式検査の月齢差は移動運動領域が-0.1±3.2ヶ月、手の運動が-0.5±6.0ヶ月、基本的習慣が-2.0±3.3ヶ月、対人関係が 1.2±6.0ヶ月、発語が-3.0±5.5ヶ月、言語理解が-1.4±5.9ヶ月であった。平均足長は13.5±0.8cm,平均インソール長は 14.2±1.1cmであった.つま先の余裕は0.6±1.cmであった.遠城寺式検査の各領域の月齢差とつま先の余裕のSpearmanの相関係数を算出した結果、移動運動の月齢差とつま先の余裕の間にのみ有意な正の相関を認めた (rs=0.6、p=0.03)。

    【考察】

    本研究では独歩を獲得した幼児を対象に、遠城寺式検査の各領 域の月齢差とつま先の余裕のSpearmanの相関関係を検討した。その結果、移動運動の月齢差とつま先の余裕の間に有意な正の 相関関係を認め、他の領域には相関関係がないことが明らかになった。報告により差はあるが、子供の靴においてつま先の余裕は5~15mm程度必要とされている。本研究におけるつま先の余裕は0.6±1.cmであり、小さい靴を履いている乳幼児が多いことがわかる。遠城寺式の移動運動領域には「走る」「両足で飛ぶ」といった足趾の活動が必要な項目が多く、小さい靴を履いたことが足趾の運動発達に負の影響を及ぼし移動運動領域のスコアが低くなったことが推察される。本研究は横断的研究であり、発達状況とつま先の余裕の因果関係は明らかになっていない。また、つま先の余裕が発達に及ぼす長期的な影響は明らかになっていないため、さらなる調査が必要である。

    【倫理的配慮】

    本研究は東京工科大学倫理審査委員会の承認を得て実施した。ヘルシンキ宣言に基づき研究の目的および方法を対象者の保護者に対し十分に事前説明し、研究協力の同意を得て行った。また、本研究への協力を断っても、何ら支障のないことを書面にて伝えた。

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