日本補綴歯科学会雑誌
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45 巻, 2 号
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  • 金谷 貢, 渡辺 孝一, 宮川 修
    2001 年 45 巻 2 号 p. 227-237
    発行日: 2001/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    目的: 本研究ではブリッジと有床義歯に関する教育, 研究および臨床の将来計画立案の-助とするために, 将来使用されるそれら補綴物数の推計を試みた.
    方法: 研究対象は65歳以上の高齢者および要援護高齢者とした. 将来における一人平均のブリツジ数と有床義歯数を歯科疾患実態調査報告をもとにした単純回帰分析より推定した. 回帰分析においては, 推定回帰線の交差および上限に対する補正を加えた. 推定された一人平均のブリッジ数, 有床義歯数, および将来推計人口から, 将来使用される補綴物数を予測した.
    結果: 高齢者が使用するブリッジと有床義歯の総数は, 今後20年間で2.0倍 (2.2~1.1倍, 95%信頼区間より算出) と1.5倍 (1.8~1.0倍) にそれぞれ増加し, その後10年間は両者ともにほぼ一定で推移すると推定された.ブリッジ数と有床義歯数の増加率はともに年齢階層が高くなるほど大きくなっていた. また, 要援護高齢者が必要とするブリッジと有床義歯の総数は, 今後25年間で2.7倍 (3.2~1.0倍) と1.8倍 (2.2~1.0倍) にそれぞれ増加すると推定された.
    結論: 以上より, 高齢者および要援護高齢者を対象としたブリッジあるいは有床義歯に関する教育, 研究および臨床はこれまで以上に必要性が増してくると考えられた.
  • 後藤 まりえ, 齋藤 正恭, 三浦 美文, 野谷 健治, 川崎 貴生, 高木 敏彦
    2001 年 45 巻 2 号 p. 238-248
    発行日: 2001/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    目的: リジッドサポートを支持様式とした部分床義歯において, 通常のクラスプ義歯に比べ失活支台歯に関するトラブル, 特に補綴物の脱落や歯根破折が多いと報告されている. そこで, 支台装置の連結強度と支台歯の残存歯質の高さに着目し, これらが部分床義歯の予後にどのような影響を与えるかについて検討を行った.
    方法: 連結強度の違う2種類の支台装置 (エーカースクラスプ, コーヌステレスコープ) と歯頸部の残存歯質の高さが2, 1, 0mmの支台歯を用い, 静荷重試験と繰り返し荷重試験により, 補綴物辺縁部と築造体ポスト部表面のひずみを測定した.
    結果: 1.静荷重時では, 補綴物辺縁部と築造体ポスト部表面のひずみは荷重量の増加に従い増加した. また, コーヌステレスコープのひずみはエーカースクラスプのひずみより有意に大きい値を示した. 2.静荷重時において, コーヌステレスコープのひずみは, 残存歯質の高さが1mm以上であると減少した. 3.繰り返し荷重時では, コーヌステレスコープで残存歯質の高さが1mm以下, エーカースクラスプでは0mmの場合, 有意に少ない回数でセメント初期破壊が生じた.
    結論: 支台歯として失活歯を用いた部分床義歯で良好な予後を得るためには, コーヌステレスコープでは2mm以上, エーカースクラスプでは1mm以上の残存歯質の高さが必要であることが示唆された.
  • 宮前 真, 吉村 文信, 田中 貴信
    2001 年 45 巻 2 号 p. 249-256
    発行日: 2001/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    目的: 最近, 小型で強い吸引力を有する磁性アタッチメントが, 可撤性義歯やインプラントの上部構造に応用され, 高い評価を得ている. しかし, 磁性アタッチメントから発生される磁場が及ぼす口腔内環境への影響に関しては, 現在不明な点が多い. そこで今回, 磁場の生体への影響を確認する研究の一環として, 口腔内微生物へ磁場が及ぼす影響について検討した.
    方法: 被験材料として磁性アタッチメントの磁石構造体の着磁されたものと脱磁されたものを用いた. 種々の微生物を培養後, 菌数を調製した. 菌液に被験材料を一定時間浸潰した後に, 被験材料を取り出し, 洗浄後, 軽く超音波処理を施し, 被験材料に付着した菌体を落とした. その一定量を平板に塗布し, 菌数測定を行い, 磁場がある・なしについて比較を行った.
    結果: 被験材料の着磁, あるいは脱磁されたものへの付着量は, それぞれの菌種による違いはあるが, 同一菌株間においては著明な差はみられなかった.
    縞論: 本研究において, 磁場が最も強いと考えられる磁石構造体表層で起こる微生物付着の様相を観察したが, 磁場が微生物付着には影響を及ぼさず, 臨床において使用される磁性アタッチメントから発生される磁場の口腔内微生物への影響は無視できると結論した.
  • 杉木 進, 山縣 健佑, 樋口 貴大, 杉山 一朗, 北川 昇
    2001 年 45 巻 2 号 p. 257-270
    発行日: 2001/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    目的: 本研究の目的は, 被験音 [サ], [シ] を義歯装着時と無歯顎時にそれぞれ発音させ, 静的パラトグラフィーを利用して, 舌と口蓋ならびに歯槽部, あるいは舌と上顎義歯との接触パターンを比較することである.
    方法: 被験者は, 無歯顎者10名 (男性3名, 女性7名). 口蓋ならびに上顎歯槽部を覆う黒色ビニール製の人工口蓋板に白色アルジネートの粉末を散布し, 被験者の口腔内に装着した. 被験音の発音後に, 人工口蓋板の舌接触部位は湿って白色から黒色へと変化して判別できた. 新たに開発した画像解析システムを使用して, 各被験者の同一被験音5回のパラトグラムを平均化した. 各被験者のパラトグラムを平均化したパターンを標準歯列模式図上に変換した. 同一音を累積したパラトグラムについて接触面積と左右の接触部位間の最短距離を比較した.
    結果: 無歯顎時 (E) と義歯装着時 (D) のパターンを比較すると, [サ], [シ] 発音ともに接触面積は, EのほうがDより広く, また, 左右の接触部位間の最短距離も, EのほうがDより有意 (Student t-test, p<0.05) に短かった.
    結論: パラトグラムのパターンは, Dに比較してEでは口蓋前方部への舌接触範囲が広く, 口蓋ヒダ部での呼気流路を示す “せばめ” が狭まる傾向がみられた.
  • 稲葉 仁, 志賀 博, 小林 義典
    2001 年 45 巻 2 号 p. 271-282
    発行日: 2001/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    目的: 各種食品咀嚼時における末梢からのフィードバック調節を明らかにするため, 咀嚼開始後の10サイクルにおける下顎切歯点の運動と咬筋の筋活動量を分析した.
    方法: 正常者10名にカマボコ, チューインガム, ピーナッツ, ピーフジャーキーを主咀嚼側で咀嚼させたときの咀嚼開始後の10サイクルにおける開口量, 咀嚼幅, サイクルタイム, 咬筋筋活動の積分値を算出し, 被験者間, サイクル間, 食品間で比較した.
    結果: 各指標は, いずれも第1サイクルで最も大きく, 以下第2, 第3サイクルの順に小さくなる傾向を示し, 変動が大きかったが, チューインガム咀嚼時で第3サイクル, カマボコとピーナッツ咀嚼時で第4サイクル, ビーフジャーキー咀嚼時で第7サイクル以降の変動が小さかった. サイクル間で比較すると, 各指標はいずれも第1サイクルと他のほとんどのサイクルとの間にそれぞれ有意差が認められた. 食品間で比較すると, 第1から第4サイクルまでは, ほとんどの2食品咀嚼時との間でそれぞれ有意差が認められなかったが, 逆に第5サイクル以降では, ほとんどの2食品咀嚼時との間でそれぞれ有意差が認められた.
    結論: 咀嚼運動は, 咀嚼開始後の数サイクルでは, 食品の性状に応じた運動量や筋活動量を決定するために大きく変動し, またそれらの量が決定された後のサイクルでは, わずかな変動を伴いながら, 食品の性状に応じて営まれることが示唆された.
  • 宮崎 仁, 志賀 博, 小林 義典
    2001 年 45 巻 2 号 p. 283-294
    発行日: 2001/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    目的: 咀嚼運動の分析による咀嚼機能の評価の信頼性を明らかにするため, 正常者と頭蓋下顎障害 (TMD) 患者の咀嚼運動の安定性を分析した.
    方法: チューインガム咀嚼時の経路の安定性を表す開閉口時側方成分と垂直成分のSD/OD (標準偏差/開口量), リズムの安定性を表す開閉口相時間, 咬合相時間, サイクルタイムの変動係数, 速度の安定性を表す開閉口時速度成分のSD/ODを指標として, 正常者50名 (正常群A) のデータから正常の基準を設定後, 新たに選択した正常者50名 (正常群B) とTMD患者50名 (TMD群) の咀嚼運動の安定性における特異度と敏感度を調べた.
    結果: 各指標値は, TMD群が正常群よりも有意に大きかった (p<0.01). 正常群Aから求めた一次的な正常範囲に正常群Aの全被験者が入る指標数から, 経路では2指標, リズムでは3指標, 速度では1指標以上を正常の基準に設定することができた. 正常群BとTMD群における特異度と敏感度は, 経路, リズム, 速度の各安定性の3項目中1項目の評価では72%以上, 2項目の評価では80%以上, 3項目すべてでの評価では90%以上のきわめて大きな値を示した.
    結論: 咀嚼運動の分析による咀嚼機能は, 経路, リズム, 速度の各安定性をすべて組み合せて評価するほうが個別あるいは2項目の組合せで評価するよりも, きわめて高い信頼性を得られることが示唆された.
  • 虫本 栄子, 田中 久敏, 市川 大
    2001 年 45 巻 2 号 p. 295-304
    発行日: 2001/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    目的: 口腔感覚入力刺激の変化が脳機能に及ぼす影響を明らかにし, 口腔感覚の変化を脳波学的に検出できるか否かを確かめることを目的とした.
    方法: 正常有歯顎者14名を対象に, 口腔環境に変化を与える条件として口蓋床のみを装着した条件1群と, より大きな変化を与えるために口蓋床と咬合干渉装置を装着した条件2群を設定し, 咀嚼筋筋電図と咀嚼前後の脳波を同時記録した. 咀嚼筋筋電図からは嚥下閾, 群化放電分析, 両側性協調パターンを求めた. 脳波では咀嚼前後のα波, β波のパワー値および含有率の変化を観察し, 装置未装着のコントロール群と各条件間で比較, 検討した.
    結果: すべてのパラメータで口蓋床装着群では影響は少なかった. 一方, 口蓋床と咬合干渉装置装着を付与した群では, カマボコ咀嚼時の嚥下閾は有意に多く, 働側咬筋の平均電位は有意に減少し, また, 群化放電図ではより中枢制御傾向を認めた. 脳波では, %αは咀嚼後有意に減少し, β波パワー値および%βは咀嚼後有意に増大した. したがって, 咬合干渉装置がその変化の要因と考えられた.
    結論: 脳波は口腔環境の変化に鋭敏に反応し, 障害感や咀嚼機能の低下に符合してα波の減少とβ波の増大という相反活動を認めたことから, 咬合由来の体性感覚情報は上位中枢において認知され, 脳波学的に検出できる可能性が示唆された.
  • 市川 大
    2001 年 45 巻 2 号 p. 305-314
    発行日: 2001/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    目的: 実験的咬合干渉を1週間付与し, Visual Analogue Scale (VAS) による感覚的評価, 咀嚼筋筋電図から末梢フィードバックへの影響を評価し, あわせて咀嚼前後の脳波を経日的に解析した.
    方法: 正常有歯顎者8名に実験的に早期接触型咬合干渉装置を1週間にわたって付与し, VASによる感覚的評価, 咀嚼筋筋電図による末梢フィードバックへの影響, 咀嚼前後の脳波を同時記録した. 観察期日は干渉装置装着前をコントロールとし, 装着直後, 同1~7日後, 除去直後, 除去1~2日後の連日12回とし, 早期接触によって誘起される咀嚼筋活動と情動, および脳波の経日的変化を検討した.
    結果: 咀嚼筋筋電図から求めた群化放電図では中枢性の制御傾向を認めたが, 装置装着1日後には回復した. 一方, 両側性協調パターンは作業側咬筋優勢パターンの崩壊傾向を認め, 装置除去2日後でも回復しなかった. 咀嚼前の脳波には経日的変化を認めなかったが, 咀嚼後のα波含有率は, コントロールと比較して装置装着中は有意に減少し, 装置装着中では消失しなかった違和感, 不快感といったVASによる感覚的評価の変動と一致した.
    結論: α 波含有率は口腔感覚由来の情動変化を反映し, 咀嚼系の障害感を検出しうる可能性が示唆された.
  • 小池 麻里, 藤井 弘之
    2001 年 45 巻 2 号 p. 315-321
    発行日: 2001/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    目的: Ag, Sn, Znを主成分とする歯科鋳造用銀合金はしばしばコアあるいは一部被覆冠に使用され, それらの約89%は変色している. しかし, 現在まで乳酸以外の有機酸に対する銀合金の腐食反応を観察した報告は少ない. 本実験の目的は, 唾液やプラークに多く含まれる有機酸および人工唾液中における銀合金の化学的安定性を評価し, 腐食試験などで用いられることが多い生理食塩水中で得られた結果と比較検討することである.
    方法: 浸漬試験法を用いて, 成分元素の溶出, 重量変化, 表面色の変化および腐食生成物の組成を分析した.
    結果: 全浸漬液で, 銀合金から解離したZnとSnの溶出および不溶性の沈殿物を認めた. Agの溶出はほとんど認められなかった. また, 試料の重量減少と変色を確認した. さらに, 溶出や重量の減少が多い試料のなかに変色が少ない場合があることを観察した. 銀合金は生理食塩水に接触したときよりも乳酸, ギ酸および酢酸などの有機酸に接触したときのほうが腐食しやすいこと, 有機酸の種類によって溶出イオンの動態が異なることがわかった.
    結論: 本論文の結果は, 銀合金は口腔内環境のなかで腐食しうることを示している. この腐食の程度は変色だけでは評価すべきではない.
  • 鳥井 克典
    2001 年 45 巻 2 号 p. 322-331
    発行日: 2001/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    目的: リン酸カルシウム系結晶化ガラス・ブリッジの良好な寸法精度を得る技工操作上の条件を見いだすこと.
    方法: 一歯欠損, 両側支台歯の金型を用い, 種々の条件で製作したブリッジ内面と金型外面を三次元計測器によって計測した. 支台装置内面ではSN比および感度を, またブリッジの弧状変形には両支台装置の中心軸間角度を特性値として, 9つの因子のなかからブリッジの寸法変化に影響を及ぼす因子の検索を直交配列表を用いて行った. 次にそれらの因子にさらに3つの因子を加え, 変化量が最小となる最適水準の推定と確認を行った.
    結果および結論: 1. キャスティングライナーを使用することによって, ブリッジと金型との間隙量のばらつきを小さくできることがわかった. 2. 直径45mmの鋳造リングを使用することによって, 弧状変形を小さくできることがわかった. 3. ばらつきと弧状変形に大きな影響を及ぼさない埋没材の種類および専用液濃度によって, ブリッジと金型との間隙量を調整できることがわかった. 4. 本実験の条件内で良好な寸法精度を有したブリッジを得るための条件は, 直径45mmの鋳造リング, キャスティングライナー, 中膨張性埋没材, 50%濃度の専用液を使用することであることが明らかとなった.
  • 稲井 哲司
    2001 年 45 巻 2 号 p. 332-333
    発行日: 2001/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
  • 大谷 賢二
    2001 年 45 巻 2 号 p. 334-335
    発行日: 2001/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
  • 鈴木 彰
    2001 年 45 巻 2 号 p. 336-337
    発行日: 2001/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
  • 米田 隆紀
    2001 年 45 巻 2 号 p. 338-339
    発行日: 2001/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
  • 薦田 淳司
    2001 年 45 巻 2 号 p. 340-341
    発行日: 2001/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
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