目的: 各種食品咀嚼時における末梢からのフィードバック調節を明らかにするため, 咀嚼開始後の10サイクルにおける下顎切歯点の運動と咬筋の筋活動量を分析した.
方法: 正常者10名にカマボコ, チューインガム, ピーナッツ, ピーフジャーキーを主咀嚼側で咀嚼させたときの咀嚼開始後の10サイクルにおける開口量, 咀嚼幅, サイクルタイム, 咬筋筋活動の積分値を算出し, 被験者間, サイクル間, 食品間で比較した.
結果: 各指標は, いずれも第1サイクルで最も大きく, 以下第2, 第3サイクルの順に小さくなる傾向を示し, 変動が大きかったが, チューインガム咀嚼時で第3サイクル, カマボコとピーナッツ咀嚼時で第4サイクル, ビーフジャーキー咀嚼時で第7サイクル以降の変動が小さかった. サイクル間で比較すると, 各指標はいずれも第1サイクルと他のほとんどのサイクルとの間にそれぞれ有意差が認められた. 食品間で比較すると, 第1から第4サイクルまでは, ほとんどの2食品咀嚼時との間でそれぞれ有意差が認められなかったが, 逆に第5サイクル以降では, ほとんどの2食品咀嚼時との間でそれぞれ有意差が認められた.
結論: 咀嚼運動は, 咀嚼開始後の数サイクルでは, 食品の性状に応じた運動量や筋活動量を決定するために大きく変動し, またそれらの量が決定された後のサイクルでは, わずかな変動を伴いながら, 食品の性状に応じて営まれることが示唆された.
抄録全体を表示