目的: この研究の目的は, リンガライズド・オクルージョンにおける滑走間隙量が, 咀嚼機能に及ほす影響を明らかにすることである.
方法: 被験者には, 男性2名, 女性4名の無歯顎者を選択した. 滑走間隙量のみ0.5, 1.0, 1.5, 2.0mmに変更可能な実験用総義歯を用いて, 咀嚼値, 咀嚼運動および被験者自身による主観的評価について比較した. 咀嚼値の測定には, カマボコ, ピーナッツ, ニンジンを被験食品として篩分法を用いた. 咀嚼運動の測定は, カマボコ, ピーナッツ, ニンジン, タクアンを被験食品としてMKG (Mandibular kinesiograph) を用いて行った. 被験者自身による主観的評価は, これら4種類の被験食品および普段の食生活における全般的なかみやすさについてVAS (Visual analogue scale) を用いて評価した.
結果: 咀嚼値はカマボコとピーナッツにおいて, 滑走間隙量0.5mmで最も大きな値を示した.また, 滑走間隙量が大きくなるに従い, 閉口相時間とサイクルタイムが延長する傾向を示した. 本研究で選択したすべての被験食品に対するかみやすさの評価と, 普段の食生活におけるかみやすさの評価のいずれにおいても滑走間隙量0.5mmの場合, VAS値が最大であった.
結論: 滑走間腿の変化が咀嚼機能に影響を及ぼし, 滑走間隙量を0.5mmにすると, 性状の異なる食品を効果的に破砕し, 主観的にもかみやすいということが明らかとなった.
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