日本補綴歯科学会雑誌
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46 巻, 3 号
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  • 坂東 永一
    2002 年46 巻3 号 p. 309-323
    発行日: 2002/06/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    目的: 動的な咬合解析のために必要な6自由度運動測定器について, 著者らの研究を中心に測定器開発の経緯と現状ならびに将来展望について述べる.
    研究の選択: 食事などの機能時も含めて, 咬合接触状態ならびに離開の状態を観察する手段として, 歯や顎の三次元形態とその6自由度運動を測定して解析する方法は, 最も有望な方法と考えられる.本稿では運動測定に的を絞り, 報告されている各種測定法の特徴と, その測定器を用いて得られた成果についてまず紹介する.次に被験者に種々の高さのクラウンを装着した研究から得られた, 臨床的に目指すべき咬合の精度について述べる.さらに, 必要な精度を達成するために著者らが行っている磁気方式の各種測定器の現状を報告し, 咬合の可視化についての将来展望について触れる.
    結果: 咬合面の誤差が10μm以下であれば, 臨床上問題を生じることはないと考えられるので, 動的な状態も含めて意味のある咬合解析を行うためには, 300Hzの動特性とμmオーダの精度をもった6自由度運動測定器が必要である.
    結論: 咬合可視化装置は咬合に関する異なる見解を統一して, 臨床での咬合治療を確実なものとするための有効なツールとなると期待できる.咬合可視化装置の主要構成要素である高精度6自由度運動測定器の1日も早い開発が待たれる.
  • 石垣 尚一, 梶原 教平, 森重 恵美子, 遠茂谷 直子, 黒住 琢磨, 宮城 正廣, 中村 隆志, 高島 史男
    2002 年46 巻3 号 p. 324-331
    発行日: 2002/06/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    目的: 本研究の目的は, 顎口腔機能異常者の下顎の位置と形態, 頸椎の配列および全身姿勢の関連の有無を明らかにすることである.
    方法: 被験者として, 顎口腔機能異常と診断され, 顎顔面あるいは頸部に疼痛を認めた患者から10名 (男性2名, 女性8名, 平均年齢36.4歳) を無作為に選択した.下顎位および頸椎の配列に関しては, 咬頭嵌合位における側方頭部X線規格写真を用いて計測を行い, 全身姿勢の計測に関しては, 側方全身写真を用いた. 全被験者における下顎の位置と形態, 頸椎の配列および全身姿勢の分析には相関係数を用いた. 次に, 下顎の位置と形態の計測結果について, 主成分分析を用いて被験者を分類し, 各群間での頸椎の配列および姿勢の比較をWilcoxonの順位和検定にて行った.
    結果: 下顎下縁平面と第二頸椎の前傾との間に正の相関が認められ, また第二頸椎から第四頸椎までの彎曲との間に負の相関が認められた. 頭部の前後的傾斜とANB角および第二頸椎の前傾との間に負の相関が認められた. 下顎が後下方に位置するものでは, 前上方に位置するものと比較して, 第二頸椎および第四頸椎の前傾が強く, 第二頸椎から第四頸椎までの配列が直線的になる傾向が認められた.
    結論: 顎口腔機能異常者の下顎の位置と形態, 頸椎の配列および全身姿勢の三者がそれぞれ関連を有していることが明らかとなった.
  • 鈴木 康司, 前川 賢治, 窪木 拓男, 矢谷 博文
    2002 年46 巻3 号 p. 332-340
    発行日: 2002/06/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    目的: いわゆる顎関節症患者のなかには, 顎口腔系の諸症状に加えて慢性的な頭痛や頭頸背部痛などを訴えるものが少なくない. しかしながら, これまで用いられてきた顎関節症の細病態分類に基づいて治療を進めた場合, ややもするとこれら随伴症状と呼ばれてきた患者の訴えに対する適切な対応がなおざりにされがちとなることは否めない. そこで本研究では, 顎関節症の細病態分類と患者の訴えた主要症状との関連を検討することにより, 現行の分類システムに望まれる改善点などについて考察した.
    方法: 対象者は, 1994年4月から1998年3月までに顎関節症状あるいは口腔顔面痛を主訴に岡山大学歯学部附属病院第1補綴科を受診した連続患者サンプル393例である. 対象者に対し, 顎関節症の細病態分類ならびに訴えの分類を行い, 両者をつき合わせ, その整合性について検討した.
    結果: 訴えの頻度を分析すると, 顎関節症の三大症状と呼ばれる「顎の痛み」が49.6%, 「開 (閉) 口障害」が32.6%, 「関節雑音」が30.8%と多くを占める一方, 「頭痛, 頭部の痛み」が6.9%, 「咀嚼障害, 咬合不全」が6.1%, 「首, 肩のこり・痛み」が5.9%と三大症状に含まれない訴えが各病態に少なからず存在した.
    結論: 顎関節症の三大症状以外の症状を訴えて来院する患者もけっして少なくないことが明らかとなった.顎関節症の細病態分類に加えてこれらの訴えにも適切に対応するためには, 複数診断を許す診断システムの確立が必要であると考えられた.
  • 高橋 晃子, 森田 望之, 平川 和助, 豊田 實
    2002 年46 巻3 号 p. 341-346
    発行日: 2002/06/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    目的: 下顎遊離端欠損部顎堤と補綴学的粘膜分類法による部位別顎堤粘膜の厚径を明らかにして, EBD (evidence-based dentistry) に基づいた歯の欠損補綴治療方策に寄与することである.
    方法: 下顎遊離端欠損を有する被験者31名に対し, インフォームドコンセントを得たうえで, 第二小臼歯部, 第一大臼歯部, 第二大臼歯部の歯槽頂部および下顎中切歯部舌側の粘膜の計4カ所をSDMにて5回計測し, 粘膜の厚径を求めた. また, 補綴学的粘膜分類法により固定部, 可動部, 硬固部, 浮動部に分類し部位別の厚径を測定した.
    結果: 1. SDM装置の信頼性の検討についてブタ粘膜2, 3mm両方の場合において, 5%の危険率で有意差は認められなかった. 2. 粘膜厚径の測定について測定部位によって粘膜厚径に違いがみられ, 下顎遊離端欠損の歯槽頂部粘膜よりも下顎中切歯部舌側粘膜のほうが薄い結果を得た.
    結論: 1. SDM装置でヒト顎粘膜の測定を行った結果, 下顎遊離端欠損の歯槽頂部粘膜よりも下顎中切歯部舌側粘膜のほうが薄い結果を得た. 2. 補綴学的粘膜分類については固定部, 可動部に比べて硬固部では粘膜の厚みが薄く, 浮動部では厚い結果が得られた.
  • 宮本 満, 柏木 宏介, 川添 尭彬
    2002 年46 巻3 号 p. 347-356
    発行日: 2002/06/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    目的: 感圧シートを用いる咬合検査機器による咬頭嵌合位における咬合接触面積測定について, 一般化可能性理論を応用し, 測定日数と繰り返し回数を考慮に入れた術者内信頼性を検討すること.
    方法: 被験者は健常有歯顎者男性10名を選択した. 咬頭嵌合位における歯列全体の咬合接触面積測定はデンタルプレスケール (R) を用いた. 咬みしめ強度は中程度と最大とした.測定日2日を設け, 3回の繰り返し測定を行った. 術者内信頼性の推定には, 測定日数と繰り返し回数を相とする一般化可能性研究を行った. 次に決定研究を行い, 3つの信頼性の指標, 信頼度指数, 測定の標準誤差と探知可能な最小差を算出した. 分析的な目標を信頼度指数0.9以上とした.
    結果: 両咬みしめ強度において被験者, 測定日数と測定回数のかかわる交互作用が測定誤差に与える影響が大きかった. また信頼性の指標は, 測定1回の単独測定よりも複数日, 複数回から得られる平均値のほうが良好な信頼性を示した. 信頼度指数0.9以上の測定値を得るためには, 中程度咬みしめにおいて測定日数2日, 繰り返し回数3回による6回以上の平均値, 最大咬みしめでは, 測定日数1日, 繰り返し回数3回以上あるいは測定日数2日, 繰り返し回数2回以上の平均値が必要であった.
    結論: 感圧シートを応用した咬合検査機器の咬合接触面積測定では, 術者内信頼性は測定日数と繰り返し回数を増加させることにより向上する.
  • 菅原 佳広, 小出 馨, 佐藤 利英
    2002 年46 巻3 号 p. 357-366
    発行日: 2002/06/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    目的: この研究の目的は, リンガライズド・オクルージョンにおける滑走間隙量が, 咀嚼機能に及ほす影響を明らかにすることである.
    方法: 被験者には, 男性2名, 女性4名の無歯顎者を選択した. 滑走間隙量のみ0.5, 1.0, 1.5, 2.0mmに変更可能な実験用総義歯を用いて, 咀嚼値, 咀嚼運動および被験者自身による主観的評価について比較した. 咀嚼値の測定には, カマボコ, ピーナッツ, ニンジンを被験食品として篩分法を用いた. 咀嚼運動の測定は, カマボコ, ピーナッツ, ニンジン, タクアンを被験食品としてMKG (Mandibular kinesiograph) を用いて行った. 被験者自身による主観的評価は, これら4種類の被験食品および普段の食生活における全般的なかみやすさについてVAS (Visual analogue scale) を用いて評価した.
    結果: 咀嚼値はカマボコとピーナッツにおいて, 滑走間隙量0.5mmで最も大きな値を示した.また, 滑走間隙量が大きくなるに従い, 閉口相時間とサイクルタイムが延長する傾向を示した. 本研究で選択したすべての被験食品に対するかみやすさの評価と, 普段の食生活におけるかみやすさの評価のいずれにおいても滑走間隙量0.5mmの場合, VAS値が最大であった.
    結論: 滑走間腿の変化が咀嚼機能に影響を及ぼし, 滑走間隙量を0.5mmにすると, 性状の異なる食品を効果的に破砕し, 主観的にもかみやすいということが明らかとなった.
  • 語音明瞭度検査による分析
    春野 雅俊, 是枝 美行, 湯本 光一郎, 川畑 直嗣, 長岡 英一
    2002 年46 巻3 号 p. 367-376
    発行日: 2002/06/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    目的: 総義歯の交叉咬合排列の欠点とされている発音機能障害について検討する.
    方法: 有歯顎群, 義歯群 (交叉咬合排列群, 正常排列群) について, 単音節 (62子音と5母音) による語音明瞭度検査を行い, 聞き誤った語音について検討した. 被験者別に誤聴率と語音別誤聴率, 各群別に平均誤聴率と平均語音別誤聴率を算出した. また, 各群別に平均語音別誤聴率が平均誤聴率よりも高かった検査語音を抽出し (抽出誤聴語音), 調音点別に分析を行った.
    結果: 1. 誤聴率. 1) 交叉咬合排列群, 正常排列群ともに各被験者の誤聴率に有意差を認めた. 2) 義歯群では, 誤聴率と義歯装着期間との間に有意な負の相関を認めた. 3) 有歯顎群, 交叉咬合排列群, 正常排列群の各群の平均誤聴率に有意差を認めなかった. 2. 調音点別の抽出誤聴語音. 1) 歯茎音と声門音において, 交叉咬合排列群のほうが正常排列群よりも平均語音別誤聴率の高かった語音数が多い傾向を示した. 2) 交叉咬合排列群において, 正常排列群に比べ, 歯音, 歯茎音および軟口蓋音は調音点が異なる語音へ誤聴され, 声門音は先行子音が欠落する傾向を示したが, 有意差はなかった.
    結論: 語音明瞭度検査結果については, 交叉咬合排列群と正常排列群との間に有意な差は認められなかったが, 義歯群では, 誤聴率と義歯装着期間との間に有意な負の相関を認めたことから, 発音機能障害が慣れにより解消される可能性が示唆された.
  • 浅野 彰夫, 山内 六男, 堺 誠, 岸井 次郎, 都尾 元宣, 長澤 亨
    2002 年46 巻3 号 p. 377-384
    発行日: 2002/06/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    目的: われわれは先にキーパーと12%金銀パラジウム合金の鋳接状態について基礎的に検討し, 接合部には酸素を固溶した反応層と間隙 (黒色層) がわずかながら存在し, これは鋳型の係留温度や鋳造方法などによって影響を受けることを報告した.本報告では, 実際に口腔内に装着されたキーパー付き根面板における鋳接状態について検討した.
    方法: 被験歯数は7歯で, すべて歯周疾患によって抜去されたものである.鋳造用合金にはすべて12%金銀パラジウム合金が使用されていた.鋳造はすべて遠心鋳造機により行われていた.根面板を支台歯とともにレジンにて包埋し中央にて割断後, 金属顕微鏡および走査型電子顕微鏡にてキーパーと鋳造用合金との接合部を観察した.また, X線電子マイクロアナライザーによる分析を行った. これらを既報告で良好な鋳接状態が得られた条件における結果と比較した.
    結果: 金属顕微鏡観察からキーパーと鋳造用合金との接合部には黒色層が観察された. 黒色層は, 走査型電子顕微鏡およびX線電子マイクロアナライザー分析から, 間隙と反応層から構成されていた. この黒色層は基礎実験の結果に比べて厚く, 不均一であった.
    結論: キーパーの根面板への鋳接に際しては適切な鋳造条件を厳守する必要がある.
  • 酒匂 充夫, 海田 健彦, 黒岩 昭弘, 関口 祐司, 小澤 武史, 鈴木 章, 高井 智之, 宇田 剛, 峯村 崇史, 五十嵐 順正, 伊 ...
    2002 年46 巻3 号 p. 385-393
    発行日: 2002/06/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    目的: 歯冠用硬質レジンは可撤性補綴物であるテレスコープ義歯外冠に前装するにはたわみ量が小さく, そのため外冠前装部の剥離がしばしば見受けられる. 本研究は, テレスコープ義歯の外冠に適した歯冠用硬質レジンを検索すること, さらに, ガラス繊維強化材による外冠のメタルフリー化の実用性を検討する目的で初期物性値を比較検討した.
    方法: 三点曲げ試験, 圧縮試験, ビッカース硬さ試験, 吸水試験を行った.
    結果: 曲げ強さでは光加熱重合型のTargis (Ta) は光重合型のSpectrasit (Sp), Cesead (Ce), New META COLOR INFIS (NM) より高い値を示した.圧縮強さでは加熱加圧重合型のChromasit (Ch) は低い値を示し, Spと同一重合形式であるCeは, ガラス繊維強化材のVectris Frame (Ve) とTaと組み合わせたもの (Ta-Ve) とほぼ同等の値を示した.ビッカース硬さではTaはTa-Veに近似した値を示し, NMは若干低い値を示した.Sp, Chは低い値を示し, Ceの値はそのおよそ4倍であった. また, 吸水率ではTa, Ta-Veは低い値となり経時的増加量もわずかであった.Sp, ChはNMと比較し低い値を示し, Ceは最も高い吸水量を示した.
    結論: テレスコープ義歯外冠のような着脱時に大きな変形を伴う支台装置には, Taのように弾性に富んだレジンが有効であると思われる.
  • 上田 章浩
    2002 年46 巻3 号 p. 394-395
    発行日: 2002/06/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
  • 右遠 英悟
    2002 年46 巻3 号 p. 396-397
    発行日: 2002/06/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
  • 岩瀬 勝也
    2002 年46 巻3 号 p. 398-399
    発行日: 2002/06/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
  • 田地 豪
    2002 年46 巻3 号 p. 400-401
    発行日: 2002/06/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
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