目的: 顎関節症患者に対し, 先端の径が小さい口腔粘膜用加圧疼痛閾値計を用い, 疼痛評価を行った.今回は, 試作した加圧痔痛閾値計における顎関節症患者の各被験部位の診断可能なカットオフ値の設定を目的とした.
方法: 対象は顎関節症と診断された33名とした.また, コントロール群は顎口腔系に自他覚的な異常を認めない20名の健常有歯顎者である.検討項目は, それぞれの被験部位における疼痛閾値で, 顎関節症群 (以下TMD群とする) とコントロール群の閾値の違いに着目し, さらにカットオフ値の設定についても検討した.
結果: コントロール群の疼痛閾値はTMD群と比較し, すべての部位で高い値を示し, すべての測定部位において有意な差を認めた.さらに, TMD群を無痛群および有痛群に分類し, コントロール群と比較したところ, すべての部位において有意な差を認めた.また, 無痛群の顎関節前方部の加圧疼痛閾値は, 有痛群と比較し大きく, 有意差が認められた (p=0.0074).一方, そのほかの部位では有意な差を認めなかった.側頭筋部のカットオフ値は合谷1, 800gf, 前額部800gf, 側頭筋部1, 100gf, 顎関節前方部1, 100gf, 顎関節中央部1, 000gf, 顎関節後方部1, 000gf, 咬筋起始部1, 050gf, 咬筋中央部1, 150gf, 咬筋停止部1, 050gfであった.
結論: 以上の結果から, 本実験で用いた加圧疼痛閾値計は, 顎関節症患者に対し臨床応用可能なカットオフ値を設定できた.
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