目的: 歯の喪失に随伴して生じる歯槽骨の吸収は, 残遺歯槽堤の高度な吸収, 低下を招き, 咀嚼機能, 発音, 審美性などの口腔機能の回復を困難にし, 補綴後の義歯床の維持安定にも大きな影響を与える. そのため, 歯を喪失した後の歯槽骨の吸収抑制, あるいは再構築は, 口腔機能の回復のために重要な課題となる. 本論文では高分子電解質錯体 (PEC) を用いて, 生体材料の拡散, 漏出を防ぎ, 早期の骨再構築を可能とする骨充填材の開発を目的として, Hydroxyapatite (HAP) およびβ-tricalcium phosphate (β-TCP) 顆粒とPECとのHybrid体 (HAP-PEC, β-TCP-PEC hybrid体) を作製し, 成犬を用いて実験的研究を行った.
方法: 成犬下顎骨に骨欠損部を形成後, その骨欠損部にHAP-PEC, β-TCP-PEC hybrid体を充填し, 2, 4, 6週後に, X線所見および組織学的所見から比較, 検討を行った.
結果: X線所見ではこれらのHybrid体に顆粒の拡散, 漏出は認められなかった. 組織学的所見では, それぞれのHybrid体はともに2, 4, 6週と新生骨の形成が増加しており, コントロールと比較し形成量も多く, 6週例では, 欠損部は元の形態の位置近くまで回復していた.また, β-TCP-PEC hybrid 体6週例では顆粒の吸収像も認められた.
結論: HAP-PEC, β-TCP-PEC hybrid体は, 顎骨再構築にきわめて有用であることが示唆された.
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