日本補綴歯科学会雑誌
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49 巻, 2 号
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  • 山森 徹雄
    2005 年 49 巻 2 号 p. 163-165
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
  • 福島 俊士
    2005 年 49 巻 2 号 p. 167
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
  • 石井 拓男
    2005 年 49 巻 2 号 p. 168-178
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    8020運動の発生とその後の展開を分析することで, 国全体の動きと歯科保健医療の関係を明らかにすることを目的とした. 国策として高齢者対策がなされているときに, 厚生省における検討会で8020運動は提示された。その後全国的に運動は展開され, 歯科医学の研究においても, 口腔保健と全身的な健康に関する研究がなされ, 歯科保健の重要性の認識が深まった. この運動の契機となったのは, 老人保健法の成立と, そのなかの保健事業に歯科が盛り込まれなかったことにある. わが国の高齢者の保有歯数は調査の度に数を増し, 8020の方向に間違いなく進んでいる.
  • 安井 利一
    2005 年 49 巻 2 号 p. 179-189
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    わが国における国民の現在歯の状況は年々向上しており, 8020の実現に近づいているといえる. 一方で, 有床義歯とブリッジを合計した補綴物の作製経験は, 40歳代後半から50歳代前半の年代で40%を超えるようになり, 60歳代後半から70歳代前半では約80%に近づいている。欠損補綴でこのような状況であるから, 歯冠補綴にいたっては若年者から相当数の処置が行われていると考えられる. 8020の実現には, う蝕による歯の広範囲の実質欠損を回復したり, 咬合関係の悪化により発生した咬合性外傷を防いだりするためにも, 補綴臨床が重要な要素であることに間違いはない. しかしながら, 一般的に, 補綴臨床は現実に何らかの原因で歯を失っている人に行う処置であることから, 補綴歯を口腔内で長期に機能させることは難しいという一面がある. そこで, 抜去歯の補綴処置の有無に着目して, 補綴されている歯の喪失リスクを解析した研究の結果も踏まえ, 8020の実現に補綴臨床がどのようにかかわっているのかを考察した. その結果, 補綴歯と補綴歯以外の歯の抜歯原因の比較においては, 補綴の有無にかかわらず, 抜歯原因のなかで最も高い割合となったのは歯周病であることが明らかになった. また補綴歯では, 無髄歯が74.1%を占めていることから, 歯根破折の割合においては, 補綴歯と補綴歯以外の歯の問に有意差がみられ, 破折と歯髄の有無の関連性が示唆された. これらのことから, 補綴歯においては, 歯周病と破折が喪失原因となることが示された. 抜歯の誘因として, 補綴の有無を考えるのであれば, 基本的に歯周疾患の標準化をすることが必要であると考えられる. すなわち, 歯の喪失の要因である歯周病の状況が補綴歯の喪失にきわめて大きな影響をもっているため, 歯周病の程度の標準化なくしては補綴歯の喪失リスクを検討することは困難であるといえる.
  • 矢谷 博文
    2005 年 49 巻 2 号 p. 190-198
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    目的: 補綴臨床が8020運動にどのような臨床的インパクトを有しているかを知るため,(1) 歯質欠損あるいは少数歯欠損を補綴することで支台歯の寿命は延びるか,(2) 補綴治療は補綴をしていない残存歯の寿命を延ばすことに貢献するか, の2つの問いに対する答えを系統的文献レビューにより明らかにすること.
    方法: 歯冠補綴装置の生存率, クラウンブリッジの支台歯の運命, 部分床義歯装着およびインプラント治療が残存歯の生存に及ぼす影響, および欠損を放置した場合と補綴した場合の残存歯の喪失率について, 適切なMeSH (Medical Sublect Headings) の選択と包含基準の設定を行ったうえで, PubMed からコンピュータオンライン検索を行った. 検索された文献の抄録を精読してさらに文献を絞り込み, レビューを行った.
    結果: 得られた結果は以下のとおりである.(1) クラウンブリッジは, 装着後13年以上経過すると急速にトラブルが増加し, 15年で約1/3, 20年で約1/2が機能しなくなる,(2) 歯質欠損あるいは少数歯欠損をクラウンブリッジで補綴することで支台歯の寿命を延長することができる,(3) 少数歯欠損を放置した場合と比較して, インプラントあるいはブリッジによる欠損補綴は残存歯の寿命を延ばすことに貢献できる.
    結論: クラウンブリッジおよびインプラント治療は, 支台歯ならびに欠損隣在歯の寿命の延長に貢献できることから, 補綴臨床が8020運動に与える臨床的インパクトは大きい.
  • 宮地 建夫
    2005 年 49 巻 2 号 p. 199-210
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    8020という言葉を聞いたときは “贅沢な注文” だと思った. しかし欠損歯列の難症例を経験するうちに, 20歯は難症例にならないためにはむしろ必要最少値であると思うようになった. それは咬合支持数が4以下にならないためには18歯以上が必要で, 咬合支持数が4以下になると欠損歯列では難症例になりやすいという臨床的な根拠からである. 長期経過でみると, 80歳で20歯以上を保有することができた症例は咬合支持が安定していることが多く, 多数歯を失って8020が達成できなかった症例では咬合支持に欠陥があることが多かった. 8020の達成には, カリエスになった歯は歯冠修復による崩壊防止が必要であり, 同時に咬合支持に欠陥が生じた欠損歯列では積極的に咬合再建をすることで, 歯列の崩壊を食い止めることが必要になる. さらに大切なことは, 継続的なチェックをしながら, 繰り返し悪化防止を行っていく必要である. 継続対応が可能ならば診療室全体の8割ぐらいは8020という目標を達成できる可能性が高い.
  • 上田 一彦, 渡邉 文彦, 畑 好昭
    2005 年 49 巻 2 号 p. 211-220
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    目的: 骨形成促進剤TAK-778を徐放性マイクロカプセルに封入したTAK-778-SRの担体として, 気孔率の異なる2種 (気孔率60%, 75%) のβ-TCP (β-tricalcium phosphate) を用いて, TAK-778の有無および埋入期間の違いによる骨形成能を形態組織学的に評価することである.
    方法: 9週齢SD系雌性ラットを使用し, 頭頂部に切開を加え, 骨膜ごと剥離し頭頂骨を露出させトレフィンバーにて頭頂骨を除去したのち, その欠損部をTAK-778の有無による各条件 [生食, 徐放性マイクロカプセルのみおよびTAK-778封入の徐放性マイクロカプセル (TAK-778-SR)] に従って処理したβ-TCPブロックを填入した.5週後, および10週後に組織標本を作製し, 組織形態的に観察しNIHイメージにて新生骨の割合を比較検討した。
    結果: 組織形態的観察から気孔率, 埋入期間を問わずTAK-778-SRを含浸したすべてに新生骨を認め, 10週気孔率75%β-TCPブロックのTAK-778-SR含浸の条件で最も多くの新生骨が認められた.
    結論: 1.β-TCPブロックおよび徐放性マイクロカプセルは治癒過程の障害にはならなかった.2.5週群, 10週群ともに気孔率60%β-TCPブロックの吸収は, 鋭縁部および辺縁部のみであったが, 75%では5週群でブロック内部, 外部ともに吸収が起こり, 10週群でさらにこれが進行した.3.TAK-778-SRの骨形成促進効果が確認され, その担体としてのβ-TCPブロックは気孔率によって骨形成量が異なった.
  • 友永 章雄, 池田 雅彦, 加藤 熈, 大畑 昇
    2005 年 49 巻 2 号 p. 221-230
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    目的: 本研究は夜間装着したオクルーザルスプリント上にできる咬合小面 (ファセット) を観察し, Sleep bruxism (以下SBと略す) の強さの評価指標とし, SBの強さと修復物脱落との関係を解明することを目的とした.
    方法: 1976年から2004年までにスプリントを装着した患者912名のうち422名を任意に選択し, その患者の修復物 (インレー, クラウン, 連結冠, ブリッジ) 3, 673個を調査対象とし, 脱落状態を調査した.SBの強さは評価用インクを塗布したスプリントを夜間装着させ, スプリント上のインクと咬合小面 (ファセット) の状態を観察する池田式分類で評価し, 経時的に修復物の残存率を調べた.B-0: ファセットなし, B-1: インクが剥げファセットが認められる状態, B-2: ファセットが削れている状態, B-3: ファセットが著しく深くえぐれている状態.
    結果: 修復物が脱落した人はB-1: 12.7%, B-2: 35.1%, B-3: 43.8%でSBが強いほど多く, 合着後早期に脱落し, B-1, B-2, B-3各群の15年後の脱落率は全修復物9%, 18%, 24%, インレー19%, 24%, 32%, クラウン5%, 12%, 13%であった.
    結論: 修復物脱落にはSBの強さが影響し, スプリントの咬合小面 (ファセット) 観察によるSB評価が修復物脱落の予後判定に有効であり, SBの力の抑制により脱落を減らせることが示唆された.
  • 安藤 栄里子, 重田 優子, 小川 匠
    2005 年 49 巻 2 号 p. 231-241
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    目的: 下顎頭の回転量と滑走量が, 顎関節症患者における開口障害の成因を追究するうえで有用なパラメータとなりうるかどうかの検討.
    方法: 正常者7名と顎関節症患者55名に対して, 習慣性1回開閉口運動時の下顎頭の回転量・滑走量を, 6自由度顎運動測定装置を用いて計測した.自力最大開口量40mm未満を開口障害とし, 被験者を開口障害あり群と開口障害なし群に分類し, 各群の下顎頭の回転量・滑走量と最大開口量, 関節円板動態および痔痛との関係について検討した.
    結果: 最大開口量と下顎頭回転量, 下顎頭滑走量は強い相関を示した.両者を比較すると下顎頭回転量の相関係数のほうがやや高かった.関節円板動態別にみた最大開口量, 下顎頭回転量および滑走量の分布に差は認められなかった.一方, 筋痛は最大開口量の減少に影響を及ぼしていた.たとえ開口障害なし群に属していても, 実際には制限を受けていた.下顎頭滑走量は, 開口障害があり関節痛のあるものでは有意に制限されていた.ただし, 両側性非復位型関節円板転位 (Wo-Wo) 群では関節痛があっても下顎頭滑走量は制限を受けず, 開口障害を呈するとは限らなかった.一方, 筋痛がある場合には下顎頭滑走量は有意に制限されていた.
    結論: 下顎頭回転量は筋痛との関連性が認められ, 外科的療法の適否の決定などに有用であることが示唆された.一方, 下顎頭滑走量は, 開口障害, 関節円板動態, 疼痛などの条件の組み合わせにより異なる傾向を示した.
  • 彦坂 達也, 田中 貴信, 星合 和基, 金澤 毅, 中村 好徳, 津田 賢治, 大橋 秀也
    2005 年 49 巻 2 号 p. 242-252
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    目的: 金属加工技術の1つである粉末冶金法にチタン粉末を利用して作製した多孔質材料は, 幅広い分野で用いられている.この技法を補綴物作製に利用できるならば, 融点以下の温度で焼結するため, 鋳造が容易でないチタンの応用が拡大できる.そこでドクターブレードにより作製したTiシートから得た焼結体の機械的諸性質の検討および歯科補綴物への応用に関する検討を行った.
    方法: 球形Ti粉末にバインダーを添加した厚さ1mmのTiシートを作製し, 900-1, 150℃ の間を, 50℃ 間隔6種の温度で焼結を行った.焼結体の評価としては, 硬さ試験, 曲げ強さ, 引張強さおよび寸法変化率の測定を行い, さらにSEM観察で行った.また耐火模型上で焼結を行い, 耐火模型の焼結体への影響を確認するため同様の評価を行った.
    結果: 機械的諸性質は, 焼結温度を高く設定することで有意に増加し, さらに, 粉末およびバインダー混合時に粉砕工程を加え, 脱バインダー工程を加えることで, 機械的諸性質においてより優れた焼結体が得られた.また, 耐火模型材を用いた焼結では, 模型のみの前焼成を100分以上行うこと, および焼結温度を1, 050℃ 以上に設定することにより, チタン焼結体の機械的諸性質が実用レベルに達することが確認された.
    結論: 以上より, 焼結チタンの歯科補綴物への応用が可能であると考えられた.しかし焼結体の収縮量のコントロールに関しては, 今後も検討が必要である.
  • 高村 幸, 秋池 成律, 小松 繁樹, 畑 好昭
    2005 年 49 巻 2 号 p. 253-262
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    目的: Notchless Triangular Prism Fracture Toughness Test (NTP法) のプリズム長の違いによるプリズム把持状態が及ぼす影響を明確にし, 測定条件としてプリズム長を規定する.
    方法: セラミックス (C) と硬質レジン (R) のプリズム材料2条件と, プリズム長3条件8.0mm, 12, 0mm, 16.0mm (08, 12, 16) についてNTP法を行い, プリズムの破壊面分析と破壊までのプリズム把持金型の把持間隙の変位量 (Δd) および最大破壊応力値 (Pmax) を測定して検討した.
    結果: CとRともにプリズム長が08は, 破壊面分析で安定破壊像の偏りが観察された.また12, 16と比較すると08はΔdとPmaxが有意に大きくなった.
    結論: プリズム長を8.0mmに短縮すると, プリズム把持状態が不安定となり破壊靱性値に影響することから, プリズム長は12.0mmかもしくはそれ以上に調節すべきである.また本実験で用いたセラミックスの破壊靱性値 (3.68±0.09MPa・m1/2) は, 硬質レジンの破壊靱性値 (2.38±0.20MPa・m1/2) より有意に高かった.
  • 第1報 アンケート調査結果
    高山 慈子, 西村 克彦, 東條 敏明, 細井 紀雄
    2005 年 49 巻 2 号 p. 263-272
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    目的: 本研究は, 中高齢の義歯装着者と若年者の口腔乾燥感に関する自覚症状の比較, ならびに義歯装着者における口腔乾燥感と義歯との関連性を把握する目的で調査を行ったものである.
    方法: 2003年6-10月に鶴見大学歯学部附属病院補綴科に来院した中高齢の義歯装着患者100名 (平均年齢66.2±8.6歳) および若年者50名 (平均年齢25.6±2.4歳, 以後20-29歳群とする) に調査を行った.調査はアンケートおよび口腔内や義歯に関する診査である.アンケート調査は, 口腔乾燥感に関する自覚症状や全身状態, 服用中の薬剤などに関するものである.口腔内や義歯に関する調査は, 残存歯の状態, 補綴装置, 義歯の形態や材料などである.
    結果: 義歯装着者では口腔乾燥感自覚者は48%を示し, 20-29歳群の22%に比べて有意に高かった (p<0.01).乾燥感の自覚症状と性別, 服用薬剤, 残存歯数, 修復歯数などとの関連は認められなかった.また義歯装着者群においても, 補綴装置の種類 (義歯を装着していない・部分床義歯・全部床義歯) や義歯の形態, 材料で乾燥感の自覚症状に有意差は認められなかった.
    結論: 義歯装着者の口腔乾燥感自覚者は, 20-29歳群に比べて有意に高かった.義歯装着者群では, 義歯の種類や形態, 材料などによって乾燥感の自覚症状に差がみられなかった.口腔乾燥感の発現に関連する因子については今後さらに検討が必要である.
  • 第2報 唾液湿潤度について
    高山 慈子, 西村 克彦, 東條 敏明, 細井 紀雄
    2005 年 49 巻 2 号 p. 273-282
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    目的: 本研究は, 中高齢の義歯装着者と若年者の口腔乾燥の現状と, 義歯装着者における義歯と口腔乾燥との関連性を把握する目的で調査を行ったものである。
    方法: 2003年6-10月に鶴見大学歯学部附属病院補綴科へ来院した義歯装着患者100名 (平均年齢66.2±8.6歳) と20-29歳の50名 (平均年齢25。6±2。4歳) に調査を行った.調査項目は, 口腔乾燥度の評価, Condida属の検出である.口腔乾燥度の客観的評価には唾液湿潤度検査紙 (Saliva WetTester, エルサリボ) を用いた.
    結果: 唾液湿潤度は, 20-29歳群に比べ義歯装着者群のほうが有意に低かった (p<0.05).しかし, 全身状態や服用薬剤, 口腔内の状態, 補綴装置の種類や義歯材料との関連は認められなかった.唾液湿潤度は, 床面積の小さな義歯の装着者よりも, 上下顎の口蓋および舌側粘膜をすべて覆う形態の義歯装着者のほうが低い値を示した。口腔乾燥感と唾液湿潤度は必ずしも一致しなかった.義歯装着者群において, 100CFU以上のCondida属の検出率を有する被検者は, 唾液湿潤度が低い傾向にあった.
    結論: 義歯装着者群の唾液湿潤度は, 20-29歳群に比べ有意に低くかった.また, 義歯装着者では義歯の形態により唾液湿潤度に差がみられた.しかし口腔乾燥感と唾液湿潤度は必ずしも一致せず, 乾燥感に関連する因子に関してさらに検討が必要と思われた.
  • 高橋 史, 小司 利昭, 森田 修己
    2005 年 49 巻 2 号 p. 283-289
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    目的: 簡便にチェアサイドで行える口腔乾燥の評価法である口腔水分計の有用性について検討することを目的とした.
    方法: 口腔水分計に影響を与える因子の検討は被験者16名 (平均年齢27.5歳), 健常成人の水分量の測定は被験者32名 (平均年齢24.4歳) を対象とした.水分計の測定値に影響を与える因子のうち, 接触圧については, 接触圧をメーカー指示である約200gにコントロールするためのストッパーを付与したときと, 付与しないときの水分量を比較した.センサーカバーについては, 専用カバーを取り換えて使用したときの水分量を比較した.測定器については, 2個の測定器を使用したときの水分量を比較した.健常成人の水分量の測定は, 舌粘膜および頬粘膜において行った.
    結果: 接触圧については, ストッパーを付与したときのほうが付与しないときよりも0.2-0.3%低い値となった.センサーカバーについては, カバーを取り換えると0.5-0, 8%値が異なった.測定器については, 個々の測定器の間に有意差が認められなかった.健常成人における水分量は, 舌粘膜では平均値30.6±0.3%, 頬粘膜では30.9±0.3%であった.
    結論: 口腔水分計は, 測定時の接触圧を適切にコントロールすることにより測定誤差は1%以下となり, また, 健常成人の水分量が一定の範囲内となることから, 安静時の口腔乾燥状態を検査するのに有用な機器であることが示唆された.
  • 三澤 弘子
    2005 年 49 巻 2 号 p. 290-293
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    症例の概要: 交通外傷による歯槽骨および歯の欠損を1℃ アタッチメント応用部分床義歯で補綴した.
    考察: 前歯部にクラスプが使用されていないこと, 義歯の維持力の不足や使用時の疼痛もなく, 着脱が容易なことから審美性および機能性に対する患者の十分な満足が得られた.
    結論: 前歯部欠損症例において, 比較的小型でクラスプに比べ審美性の良いアタッチメントを用いたことで患者の十分な満足を得ることができた.また経過が良好なことから, 前歯部欠損症例に対してI-Cアタッチメントが有効使用できることがわかった.
  • 日浅 恭
    2005 年 49 巻 2 号 p. 294-297
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    症例の概要: 患者 (57歳女性) は, 重度慢性歯周炎のため抜歯を受け両側臼歯部の咬合支持を喪失していた. 抜歯後ただちに治療用義歯を装着して咬合支持を回復し, 前処置後には治療用暫間補綴装置を修正しながら, 患者の審美性と違和感への要望に対応し, 患者の納得後に最終補綴治療を行った. その後の喪失歯はなく, 現在まで9年経過するが良好な咬合状態が維持されている. 考察: 本症例では, 咬合支持を早期に回復したことが残存歯の新たな喪失を防いだと考える. 結論: 治療用補綴装置は咬合支持を保持するとともに, 患者の審美性や違和感への十分な対応を可能とし, 良好な予後を導いた.
  • 藤井 肇基
    2005 年 49 巻 2 号 p. 298-301
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    症例の概要: 患者は頭痛, 肩こり, めまいを主訴として来院した19歳男性 (初診時1999年4月). 頭蓋骨, 下顎骨, 頸椎との関係に着目したスプリントを考え, 患者に使用し, 新しい知見が得られたので報告する. 開閉時の運動軸の支点が第二頸椎歯突起より下方にずれていることなどから顎口腔系機能障害と診断し, スプリント療法を行い, 3カ月後に主訴の症状が改善された.
    考察: II級咬合に対して, 上下の顎骨はIII級に適応しようとしてさまざまな全身症状を引き起こしたのではないかと考えられる.
    結論: 下顎の偏位により, 頸椎ならびに全身の姿勢に関して影響を及ぼすことは考えられているが, 不明な点が多く, 今後さらなる解明が必要と思われる.
  • 井上 貴章
    2005 年 49 巻 2 号 p. 302-305
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    症例の概要:7欠損ならびに鼻腔への穿孔を伴う左側上顎部分欠損患者に対し, 片側設計による顎義歯を装着した. 顎義歯装着により鼻腔への水漏れはなくなり, 咀嚼・嚥下機能が改善した. 現在7年9カ月が経過したが, 鉤歯の動揺はなく, 顎義歯の維持も良好で咀嚼・発音・嚥下機能に関して良好な経過が得られている.
    考察: アルタードキャスト法を用いた顎欠損部の正確な印象採得と顎義歯の機能時の動きを可及的に阻止するよう設計することで, 良好な結果が得られたと考えられる.
    結論: 片側設計による顎義歯は, 遊離端欠損で顎欠損が小さい上顎部分欠損患者に対する治療法として有用な治療法であると考えられる.
  • 六人部 慶彦
    2005 年 49 巻 2 号 p. 306-309
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    症例の概要: 上顎前歯部の不良補綴装置による審美障害を主訴に来院された症例. スマイルラインを考慮にいれたプロビジョナルレストレーションを装着し, 歯周組織の成熟を待った. 最終補綴装置装着後約半年で歯間乳頭は完全に再建し, 下部鼓形空隙に存在していたブラックトライアングルは完全に消失した.
    考察: 歯周組織のマネージメントのためには, 生理的な咬合も重要なファクターであると考えられる.
    結論: 自然と調和のとれた審美補綴治療を行うためには, 歯科医師が自らの審美性に対する意識を高めるとともに, 歯科技工士が機能的で審美的な補綴物を製作しやすい環境をつくることが非常に重要である.
  • 荒木 次朗
    2005 年 49 巻 2 号 p. 310-313
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    症例の概要: 平成8年3月に52歳女性が, 歯周疾患および正中離開による審美障害のため来院した. 歯周治療, 矯正治療後に上顎左右犬歯間に接着性リテイナーを装着した. 現在装着後6年が経過しているが, 正中離開や歯周疾患の再発はなく良好な経過が得られている.
    考察: 矯正治療を補綴治療と併用することによって, 健全な歯周組織が回復するとともに歯質削除量は少なくなった. その結果, 歯髄処置が回避でき, 望ましい歯冠形態の付与が可能となった.
    結論: 本症例の経験から歯周疾患および過蓋咬合を伴った正中離開に対して, 歯周治療, 矯正治療後に接着性リテイナーを接着することで, 審美的問題の改善, 健全な歯周組織の回復と維持が可能であることが示唆された.
  • 友竹 偉則
    2005 年 49 巻 2 号 p. 314-317
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    症例の概要: 53歳男性, 上顎両側臼歯部欠損および低位上顎洞底症例に対して, 腸骨移植による上顎洞底挙上術を併用したインプラント治療を行った. 1年経過後, 上顎前歯部に外傷性咬合による動揺を認めたが, 咬合調整を行ったところ減少した. また, 下顎左側臼歯部で歯周病の増悪から抜歯, インプラント治療を施行した.
    考察: 今回の症例では, 患者の満足は十分に得られている. インプラントを含む歯列回復で, 天然歯で滑走運動を誘導する場合においては, 咬合接触の経時的変化に配慮することが長期的保存に重要であると考えられた.
    結論: 骨造成を併用したインプラント治療は相応の負担を強いるものの, 良好な治療結果が得られた.
  • 廣瀬 由紀人
    2005 年 49 巻 2 号 p. 318-321
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    症例の概要: 60歳の女性の患者は, 平成9年9月に北海道医療大学歯学部付属病院外来を下顎左側ブリッジの咬合痛による咀嚼障害を主訴に来院した. この報告は, 患者の支台歯の第二大臼歯と第二小印歯を抜歯後, インプラント支持の固定性補綴物で修復した症例である.
    考察: 患者は遊離端欠損に対して可撤性部分床義歯を使用したが, リンガルバーに耐え難い違和感を訴えたのでインプラント支持の固定性補綴物による治療が計画された.
    結論: 治療終了後, 4年の経過で問題はない. 本症例を通じて, インプラントの補綴治療への応用は患者のQOLを改善することが示された.
  • 佐藤 孝弘
    2005 年 49 巻 2 号 p. 322-325
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    症例の概要: 53歳女性, 下顎右側第二小臼歯の歯根破折による咀嚼障害のため保存科より紹介された. 抜歯後, 2000年6月に広範な骨欠損に対してGBR (Guided bone regeneration) 法を行い, 約6カ月後にインプラント植立を行った. 2001年7月に最終補綴を行った.
    考察: 骨欠損部に対してGBR法の前後と, 最終: 補綴から3年経過後にX線CT撮影を行い骨量の比較を行ったところ, GBR法による骨造成と機能後の骨量が維持されていることを確認できた.
    結論: GBR法により広範な骨欠損に対して骨量を造成することが可能であり, 造成された骨に植立されたインプラントはその後も良好に機能し, インプラント周囲骨の状態も良好であった.
  • 松香 芳三
    2005 年 49 巻 2 号 p. 326-329
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    症例の概要: 1994年10月, 58歳女性が咀嚼障害を主訴に受診した. 旧義歯の床辺縁は短く不安定で, レジン歯は極度に咬耗していた. 治療義歯を作製し, 義歯使用に問題がないことを確認後, その形態を最終義歯に移行した.
    考察: 治療義歯は, 最終義歯装着後の調整回数の減少に有効であった. コクランライブラリーによれば, 全部床義歯とインプラントオーバーデンチャーを比較すると, 本症例のように十分な顎堤がある場合には, 患者の満足度・咀嚼効率に差はないことが示されていることからも, 本症例に対する治療は妥当であると考えられた.
    結論: 治療義歯を利用することにより, より安全な, 後戻りの少ない全部床義歯の装着が可能であった.
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