日本補綴歯科学会雑誌
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49 巻, 4 号
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  • 魚島 勝美
    2005 年 49 巻 4 号 p. 561-562
    発行日: 2005/08/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
  • 田畑 泰彦
    2005 年 49 巻 4 号 p. 563-568
    発行日: 2005/08/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    再生医療とは, 細胞の増殖, 分化能力を活用して, 生体組織の再生修復および臓器機能の代替を行う新しい治療法である.この再生医療を実現するためには, 細胞に加えて, 細胞の増殖, 分化を促す周辺局所環境を作り与えるための医工学技術, 方法論 (生体組織工学) が必要である.本論文では, この生体組織工学を概説するとともに, 生体組織工学をベースとした生体組織の再生医療の現状について述べる.生体組織工学には, 4つの基盤技術がある.1.細胞の増殖, 分化のための足場技術, 2.細胞の単培養技術, 3.細胞増殖因子の活性発現のための技術 (ドラッグデリバリーシステム;DDS), お離, よび4.再生誘導の空間を維持するための隔離技術.これらの技術について説明するとともに, それらを利用したin vitroおよびin vitroで生体組織の再生誘導の具体例を紹介する.細胞足場としてのコラーゲンスポンジおよび細胞増殖因子を徐放化するゼラチンハイドロゲルを用いることによって, 細胞の増殖, 分化を促し, その結果, 種々の生体組織の再生修復が可能となった.細胞の周辺局所環境を創製する医工学技術, 方法論である生体組織工学は, 再生医療の実現には必要不可欠であり, 今後, この研究領域が発展していくことを願っている.
  • 木下 靱彦
    2005 年 49 巻 4 号 p. 569-575
    発行日: 2005/08/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    顎骨再建の最終目的は義歯やインプラントが可能な骨を再生することである.本稿では生体吸収性のポリ-L-乳酸 (PLLA) メッシュと骨髄海綿骨細片 (PCBM) による下顎骨再生法を紹介した.分子量20.5×104のPLLAを紡糸, 延伸したモノフィラメントからPLLA meshを織製した。対象例は腫瘍, 嚢胞, 顎提萎縮など62例である.PLLAメッシュシートまたはトレーを欠損部に合わせ切除, 加温, 成形し, 既存骨にStainless wireで固定後, 腸骨から採取したPCBMをトレー内に注入した.術後6カ月の臨床評価では, 著効 (骨形成範囲が2/3以上) が35例 (56.5%), 有効 (骨形成範囲が2/3未満だが再手術を必要としない) が17例 (27.4%), 無効 (上記のいずれにも属さない) が10例 (16.1%) であった.再生骨の長期観察 (40例, 1~7年, 平均3.3年) では, 32例 (80.0%) が10%未満の吸収に止まり, 早期に義歯, Implantにより機能回復された例は骨吸収が少ない傾向を示した.PLLAメッシュとPCBMによる顎骨再建法は義歯, Implantが可能な骨を再生し, Donor siteも再生するなどの利点がある.しかし, 局所の血行不良例や一般に骨前駆細胞の少ない高齢者には, 血行や骨形成を促進する生理活性因子の併用あるいはハイブリット人工骨の開発, 応用が必要である.
  • 確実かつ質の高いインプラント治療をめざして
    窪木 拓男
    2005 年 49 巻 4 号 p. 576-586
    発行日: 2005/08/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    適切な口腔インプラント治療は, 歯の欠損患者の生活の質を向上させ, 欠損の拡大を阻止する効果があるため, 歯科医療を抜本から変革しつつある. しかし, 本治療も当初から高い信頼感をもって歯科に迎えられたわけではなく, チタンに直接骨結合 (オッセオインテグレーション) が生じることを生かすことにより, 初めて安定した予後が約束されるようになった. ところが, オッセオインテグレーションの生物学的メカニズムはいまだ十分解明されておらず, それに必要な期間は一般的に3~4カ月と長いのが実情である. また, 上顎臼歯部など骨質の脆弱な部位や埋入に利用できる骨量が不足している場合には, オッセオインテグレーションの獲得や維持が不確実になることが知られている. このオッセオインテグレーション獲得に要する期間を短縮するとともに, 埋入に適した骨質・骨量を確保することが, 補綴治療の一選択肢としてのインプラント義歯の可能性を大きく伸ばすことになる. そこで, われわれは歯槽骨の再生やオッセオインテグレーションの早期獲得に向けて, 関連遺伝子の網羅的探索, チタン表面のナノレベルでの改質, 歯槽骨再生に適したアパタイトフォームの開発, 生体材料に吸着させた各種成長因子の応用, 骨髄由来間質細胞移植などの研究を進めてきた. 本論文では, これらの研究動向をわれわれの研究を中心にレビューし, 新しい補綴学を担う研究活動につなげたい.
  • 山崎 和久
    2005 年 49 巻 4 号 p. 587-592
    発行日: 2005/08/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    歯周炎は歯周病原細菌感染によって発症し, 歯根膜組織やセメント質の破壊と歯槽骨の吸収を引き起こす. その結果, 適切な処置がなされない場合には多数の歯を失い, それに伴う審美的, 機能的障害はQOLを大きく損なうことになる. 歯周組織再生療法の歴史は長く, GTR法に代表される歯周組織再生療法は一定の効果を上げてきたものの, 再生量が限定的である, 術式が困難である, 適応症が限られる, 予知性が低い, などの問題が指摘されてきた. 創傷の自然治癒過程を組織再生に応用するティツシュエンジニアリングの概念に基づいた治療法の開発が進められている. これは組織幹細胞, 細胞成長 (増殖) 因子, それらが効果的に働くための足場 (Scaffold), の3つを効果的に組み合わせて組織再生を誘導しようとする方法である. 幹細胞の応用に関する研究ははじまったばかりであるが, 塩基性線維芽細胞増殖因子に代表される増殖因子の応用が効果的であることが明らかにされつつある. 生体親和性に優れ, 適切な期間生体内で機能するようなScaffoldの開発も進んでいる. しかしながら組織再生を制御するメカニズムは複雑であり, 3つの要素以外にも老化など, 再生を抑制していると考えられる重要な現象がある. これらを解明することでより完全なかたちでの再生が可能になるかもしれない.
  • 箱崎 達司, 武部 純, 藤澤 政紀, 橘 英弘, 小川 有, 石橋 寛二
    2005 年 49 巻 4 号 p. 593-598
    発行日: 2005/08/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    症例の概要: 咬合咀嚼障害を訴えて来院した39歳男性の症例を報告する. 患者は仕事中, 頭部をフォークリフトに挟まれる事故により他院にて緊急入院, 治療を受けた後, 陳旧性上顎骨骨折による咬合咀嚼障害を訴え, 本学歯学部附属病院に来院した. 1999年4月に術前診査の目的で当科受診の後, 口腔外科にて上顎骨の観血的整復固定術が施行されたが, 術後の咬合咀嚼障害を訴え再度当科受診. 補綴装置による咬合機能回復を図ることとし, 既存の臼歯部の補綴装置および歯冠破折した前歯部をプロビジョナルレストレーションに置き換えた後, 2000年4月に最終補綴装置を合着した. 現在4年経過したが良好な状態を維持している.
    考察: 陳旧性の上顎骨骨折により生じた咬合咀嚼障害に対する処置方法として, 再度の外科処置ならびに矯正処置による機能回復の方法などが検討されるものの, 患者からの早期の社会復帰に対する希望が強かったため, 補綴装置による形態, および機能回復を行った.
    結論: 補綴装置による咬合機能回復を図ることができ, 患者の要望である早期の社会復帰が可能となり, QOLの向上も図られた. 上顎骨骨折に対する外科的整復処置後の咬合不全に対し, 補綴処置を行った症例報告は少ないことから, このような症例に対する方策を拡大するために長期間にわたり経過を観察する必要がある.
  • 馬場 一美, 有留 久美子, 羽毛田 匡, 木野 孔司, 大山 喬史
    2005 年 49 巻 4 号 p. 599-607
    発行日: 2005/08/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    目的: 歯科を受診する患者のなかには, 少なからず咬合の不安定感や不快感を訴える患者がいる. これらの患者のなかには, 臨床検査において咬合按触関係に異常が認められないにもかかわらず, 咬合の異常感のために日常生活に支障をきたす患者も認められる. このような状態は「咬合感覚異常」と総称されているが, 本態が不明なため, その診断および治療法は確立されていない. 本研究の目的は, 咬合感覚異常患者の口腔運動感覚能力を正常者と比較検討することである.
    方法: 咬合感覚異常患者8名および正常者31名において, アルミ箔を用いた厚み識別試験 (フォイルテスト), プラスチックブロック棒を用いた厚み識別試験 (スティックテスト), 下顎位再現性試験 (開口量再現テスト) の3種類の口腔運動感覚能力試験を行った. 両群間の口腔運動感覚能力をMann-Whitney U test (有意水準0.05) にて比較検討した.
    結果: フォイルテストによる識別能は, 健常者群で中央値14μm (平均15.31μm), 患者群で8μm (平均12.86μm) であった. スティックテストでは, 両群とも平均±1mm以内の識別能を示し, 下顎位再現性テストでは, 両群とも平均約10%の誤差で規定された開口量を再現することができた. いずれのテストにおいても, 2群間に有意差は認められなかった.
    結論: 本研究で対象とした被験者においては, 口腔運動感覚能力は咬合感覚異常患者と正常者間で差があるとはいえず, 咬合感覚異常と口腔運動感覚能力の異常の関連性は確認されなかった.
  • 武田 友孝, 黒川 勝英, 内藤 薫, 奈良 和彦, 蜷川 雅晴, 宮島 至郎, 正村 正仁, 半田 潤, 川村 慎太郎, 小島 一郎, 澁 ...
    2005 年 49 巻 4 号 p. 608-616
    発行日: 2005/08/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    目的: スポーツを長期的に行っている選手のなかには, 高度の歯の咬耗, 歯槽骨の吸収, 歯の喪失, 咬合の崩壊が認められるが, その予防にもマウスガードの装着が有効と考えられる. しかし, これらの関係は十分検討されてはおらず, その解明はマウスガードの必要性を啓発するうえで有益と思われる. そこで, 噛みしめによって生ずる歯のひずみに対するマウスガードの効果を検討した.
    方法: 被験歯には下顎第一大臼歯を選択し, これにひずみゲージを付与した. 測定は, マウスガードの装着, 非装着時に3種の噛みしめ強さ (10, 50, 100%) で行った. マウスガードの咬合面の厚さは約3mmとした. 得られた波形の最大値をひずみのデータとし, Mann-Whitneyの検定を行った.
    結果: 1.歯のひずみは, マウスガードの有無にかかわらず, 噛みしめ強さが大きくなるに伴い大きくなった. 2. すべての被験者において, 歯のひずみは噛みしめ強さにかかわらず, マウスガード装着によって小さくなり, 50および100%噛みしめ強さでは危険率5%で有意となった.
    結論: マウスガードは噛みしめによって歯に生ずるひずみを減ずることができる. よって, マウスガードはコンタクトスポーツにおける外傷予防のみでなく, 強い噛みしめが起こるスポーツにおいて, 歯および歯周組織の負担を減少させる可能性が示唆された.
  • 赤坂 恭一朗, 北川 昇, 佐藤 裕二, 樋口 貴大, 西尾 允秀
    2005 年 49 巻 4 号 p. 617-624
    発行日: 2005/08/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    目的: 全部床義歯治療に際し, 顎堤の高さの適正な診査は重要である. 主観的評価の再現性を向上させるための基準値設定の可能性を明らかにするために, 複数の歯科医師による従来の主観的評価と, 模型計測による客観的評価の関係を検討した.
    方法: 上下顎無歯顎者の研究用模型 (100組) の左右第一大臼歯中心窩相当部を評価部位とし, 複数の歯科医師による3段階の主観的評価とデジタル式ノギスでの客観的評価を行った. 臨床経験3年未満と7年以上の評価者別に主観的評価と客観的評価の関係を検討し, 主観的評価の各評価の割合が逆転する客観的評価の判別値を求めた. さらに, 主観的評価と客観的評価の一致度を検討した.
    結果: 主観的評価には個人や臨床経験年数により, かなりのばらつきが認められた. 今回臨床経験7年以上の評価者の主観的評価より, 上顎の “低い” と “中間” は6mm, “中間” と “高い” は10mm, 下顎では, “低い” と “中間” は0mm, “中間” と “高い” は5mmという判別値が得られた. しかし, 判別値を基にした主観的評価と客観的評価の一致度は, 臨床経験にかかわらず低い結果となった.
    結論: 顎堤高さの主観的診査は再現性が低いことが示された. 主観的評価の普遍性・再現性を向上させるためには, 診査の際に今回設定された判別値のような基準値を用いて主観的評価を行う必要性があると考えられる.
  • 虫本 栄子, 八重樫 祐成, 吉田 光宏, 佐藤 博, 河上 雄之介, 小野田 利枝, 田中 久敏
    2005 年 49 巻 4 号 p. 625-634
    発行日: 2005/08/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    目的: 患者の主観により評価されてきた味覚を電気性味覚誘発電位から客観的に評価できるか否かを検討することである.
    方法: 健常成人15名の鼓索神経領域, 舌咽神経領域, 大錐体神経領域に電気味覚計を用い, 刺激時間1, 000, 500, 300, 200, 120, 100, 70msecの7条件で刺激を与え, 各条件下の電気味覚閾値と味質を評価した. また脳波は, 国際10-20法に従い19部位で記録し, 刺激開始時をトリガーとして40回加算平均した.
    結果: 電気味覚閾値は刺激時間を鼓索神経領域で100msec, 舌咽神経領域で120msec, 大錐体神経領域で200msec以下になると有意に高くなった. 味質は, 鼓索舌咽神経領域において100msec以下になると非味覚感知群の人数が有意に増加した. 大錐体神経領域ではどの刺激時問でも非味覚感知群の人数が多かった. 脳波では, 味覚感知群において9部位にP1, N1, P2の3波形を再現性よく認めたのに対し, 非味覚感知群ではP2が不明瞭であった. 刺激強度を強くすると, 振幅N1-P2が有意に増大した. また, 味覚感知群の波形は, 典型的な電気性味覚誘発電位 (K-H Plattig, 1971) と潜時が類似していた.
    結論: 得られた誘発電位のうちP2は味覚誘発電位と考えられた. 以上から, 味覚を客観的に評価できる可能性が示唆された.
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