目的: 患者の主観により評価されてきた味覚を電気性味覚誘発電位から客観的に評価できるか否かを検討することである.
方法: 健常成人15名の鼓索神経領域, 舌咽神経領域, 大錐体神経領域に電気味覚計を用い, 刺激時間1, 000, 500, 300, 200, 120, 100, 70msecの7条件で刺激を与え, 各条件下の電気味覚閾値と味質を評価した. また脳波は, 国際10-20法に従い19部位で記録し, 刺激開始時をトリガーとして40回加算平均した.
結果: 電気味覚閾値は刺激時間を鼓索神経領域で100msec, 舌咽神経領域で120msec, 大錐体神経領域で200msec以下になると有意に高くなった. 味質は, 鼓索舌咽神経領域において100msec以下になると非味覚感知群の人数が有意に増加した. 大錐体神経領域ではどの刺激時問でも非味覚感知群の人数が多かった. 脳波では, 味覚感知群において9部位にP1, N1, P2の3波形を再現性よく認めたのに対し, 非味覚感知群ではP2が不明瞭であった. 刺激強度を強くすると, 振幅N1-P2が有意に増大した. また, 味覚感知群の波形は, 典型的な電気性味覚誘発電位 (K-H Plattig, 1971) と潜時が類似していた.
結論: 得られた誘発電位のうちP2は味覚誘発電位と考えられた. 以上から, 味覚を客観的に評価できる可能性が示唆された.
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