日本補綴歯科学会雑誌
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50 巻, 4 号
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  • Part III. 投稿論文のブラッシュアップと査読への対応
    細川 隆司
    2006 年 50 巻 4 号 p. 511-518
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    日本語で投稿するのにくらべ, 英語で投稿するのは非常に高いハードルがあるように思われます. しかし, 自分が発見した『新規の知見』を世界の1人でも多くの研究者・臨床医に知ってもらおうとすると, 英語で論文を書くことの有用性は極めて大きなものがあります.(社) 日本補綴歯科学会では, 英文誌のProsthodontic Research & Practice (PRP) を2002年より刊行しており, 2006年以降年4回発行が予定されています. 編集委員会では, PRPの編集に際し, 投稿された論文をいかにより良い英語の原著論文として掲載していくかというスタンスで親切丁寧な査読を行うよう意見が一致しており, 投稿された先生方には, 海外への投稿では得られないメリットを感じて頂けるものと考えています. 我々は, 第115回学術大会 (札幌) や地方支部会においてPRPのスキルアップセミナーを開催してきました. 本総説は, 札幌におけるセミナーの前半部分をまとめたもので, 投稿規定の読み方, 投稿前のブラッシュアップ, レビューシステムなどについて解説しました.
  • Part IV査読者からみた英語論文投稿の問題と対策
    菊池 雅彦
    2006 年 50 巻 4 号 p. 519-526
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    研究活動によって得られた結果や知見を公表することは, 研究実施者の責務である. 研究報告は, 貴重な成果を普及させるという意味では, 一般に, 国内において公表するよりも, 可能であれば海外に向けて発信する方が望ましい. わが国の歯科医学研究を取りまく環境は良好であり, 研究の水準も他の先進国に比べて高いと思われるが, 英語が苦手な日本人にとって英語論文を海外の学術誌に投稿し, 雑誌に掲載されることは必ずしも容易ではなく, やむを得ず和文誌に投稿している研究者も少なくないと思われる. そこで,(社) 日本補綴歯科学会発行のProsthodontic Research & Practice (PRP) は, 英語論文の執筆や投稿に不慣れな大学院生や若手教員などを支援すべく, 懇切丁寧な査読を行って, 掲載数を増やすことを重要な編集方針の1つとしている. 本稿は, 本学会員からのPRPへの投稿を促す目的で, 実際に査読を行っている立場から, 英語論文投稿時にしばしばみられる問題点と対策について整理し, 第115回学術大会で解説を行った内容をまとめたものである.
  • 小池 秀行, 加藤 優美子, 山下 秀一郎, 汲田 健
    2006 年 50 巻 4 号 p. 527-533
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    症例の概要: 患者は27歳の男性で, 上顎左側前歯部の痛みを主訴に来院した. 近医にて感染根管治療が必要との判断から, 上顎左側中切歯に対してポストコアの除去が試みられたが不能であった. 本学初診時にはすでにコア部分は過度に削合されており, リトルジャイアントを応用するも, コア部分に対して十分な把持が得られず同様に除去不能であった. そこで, コア部分に適合する自家製アタッチメントを金銀パラジウム合金によって製作し, これを介してリトルジャイナントを応用したところ, 2回目の来院時には容易にポストコアの除去を成功させることができた. ポストコア除去後の歯根には破折線等の異常は観察されず, 除去に伴う痺痛の増悪も認められなかった.
    考察: すでに削合されていたコア部分に対して, リトルジャイアントに合わせてさらなる形態修正を行えば, 金属の強度低下による破折という危険性が予測された. したがって, 本症例では現状のコア部分の強度を維持したままでポストコアを除去することが必須であった. リトルジャイアントの特性を熟知した上で, 最適な自家製アタッチメントを製作できたことが, 今回の成功につながったものと考察される.
    結論:ポストコア除去に困難を極めた症例に対して, 的確な判断のもと自家製アタッチメントを製作しこれを併用することで, 無事に除去を成功させることができた.術後には, 患者, 術者ともに高い満足感を得ることができた.
  • 濱田 直光, 永田 睦, 濱田 敦子
    2006 年 50 巻 4 号 p. 534-541
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    I. 症例の概要固定性遊離端床装置free-end saddle-bridge (以下FESBと略) は, 1970~80年代にかけてIzikowitzによって発表された補綴装置で, 延長ブリッジの遠心部を粘膜面に支持を求めたセメント合着による固定性遊離端床義歯である. しかし, 現在では, 暫間的な使用を除いてほとんど報告例がみられない. 今回我々は, 重度歯周病患者の治療に際し, FESBを応用して治療を行い, 結果的にFESBを最終補綴として修復した症例を報告した. 患者は40歳女性で, 全顎にわたり歯周炎が進行し, 歯の動揺が著しく, 摂食困難な状態であった. 上顎の全残存歯周囲に6mm以上の深い歯周ポケットが認められた. 保存不可能な歯の抜歯を行った後, 歯周治療を開始した. 患者の嘔吐反射が著しかったため, 歯周治療用装置として, セメント合着によるFESBを装着し, 歯内療法, 歯周治療, 補綴, 外科処置など一連の歯科治療を行った. 治療結果は治療終了後も良好に維持されている.
    II. 考察FESBの使用により, 歯周病学的各パラメーターの改善が認められ, FESBの使用によって, 一連の歯科治療を円滑に遂行し得ただけでなく, 治療期間中の患者のQuality of lifeの高揚・維持が図られた.
    III. 結論本症例は, 類似の症例における治療および補綴法の選択肢の一つになり得ることが示唆された. FESBに関しては報告例が少なく, 今後さらなるデータの蓄積と検討が必要と考えられる.
  • 加藤 秀昭, 若林 克敏, 岩佐 文則, 川和 忠治, 立川 哲彦
    2006 年 50 巻 4 号 p. 542-551
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    目的: 骨組織再生のための新たな生体材料の開発や成長因子の応用が期待されている. そこで, 本研究は各種成長因子の担体として高分子複合化材料の作製を行い, この材料の骨髄由来未分化間葉系細胞への影響を検討した.
    方法: 脱アセチル化キチン50とType I-Aコラーゲンをクーロン反応させることで, DAC50-TYPEIコラーゲン複合化ゲルを作製した. そして, この材料内にて骨髄由来未分化間葉系細胞の三次元培養を試み, 細胞増殖そして分化という観点から細胞増殖性試験, H-E染色による形態学的観察, ALP染色によるALP活性の観察およびRT-PCR法によるBSP, ALP, Osteopontin, Osteocalcin, およびGAPDH遺伝子の発現を検索した.
    結果: 細胞増殖性試験では細胞増殖は認めたが, 著しい増殖傾向を示すものはなかった. H-E染色では三次元的な細胞伸展所見を呈した. ALP染色では明らかなALP陽性所見が観察された. また, RTPCR法ではOsteocalcin以外の標的遺伝子の発現を確認した.
    結論: 今回作製した材料は骨髄由来未分化間葉系細胞に対して為害作用がなく, 三次元培養を可能とし, 骨組織再生への新たな生体材料として期待できる物質であることが示唆された.
  • 松崎 孝徳
    2006 年 50 巻 4 号 p. 552-560
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    目的: 電解酸性機能水を義歯の洗浄・消毒に応用することを目的として, 義歯床用材料を各種電解酸性機能水中に浸漬し, その表面粗さ, 光沢度, 色差の経時的変化について比較検討を行った.
    方法: 加熱重合レジン1種類, 常温重合レジン2種類を電解酸性機能水4種類, コントロールとして水道水中に浸漬し, 浸漬前, 浸漬後6時間, 12時間, 24時間, 48時間, 7日後, 14日後, 30日後の表面粗さと, 光沢度, 及び色差を測定した. また, 30日後の各材料間, 浸漬液間において二元配置分散分析を行った. 浸漬液は24時間ごとに新鮮な溶液に交換した.
    結果: 表面粗さ, 光沢度は, いずれの組み合わせにおいても有意差はみられなかった. 色差は浸漬7日後までは有意差は認められなかったが, 浸漬14日後ではコントロールと2種類の電解酸性機能水間で有意差が認められた. また, 浸漬30日後ではコントロールと3種類の電解酸性機能水との間で有意差が認められた. また電解酸性機能水の間でも4組の組み合わせで有意差が認められた.
    結論: 以上のことから, 電解酸性機能水が義歯床用レジンに与える影響は色差で若干の差がでたものの表面粗さ, 光沢度では水道水と比較しても有意な差異は認められず, また, 加熱重合レジンー常温重合レジン間で有意な差異もみられなかったことから, 電解酸性機能水を用いた洗浄消毒法は今後義歯の洗浄, 消毒に十分応用できることが示唆された.
  • 佐藤 華子
    2006 年 50 巻 4 号 p. 561-564
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    症例の概要: 患者は上顎右側中切歯の唇側歯肉の腫脹を訴えて来院した38歳の男性. 患歯マージン部では唇側に限局した軟化象牙質が認められた. 歯冠補綴に先立ち, 限局矯正を行い, 歯を意図的に再植させることで歯肉縁上に健全歯質が得られたので, 歯冠補綴を行った.
    考察: 歯冠補綴装着後も動揺はM0~M1程度で変化はない. また, 歯肉の歯冠側への移動はみられるものの, 患者に違和感はなく機能的にも問題はない. 半年毎のリコールでは, 咬合状態の変化に注意して経過観察を行っており, 現在までエックス線写真上では骨の吸収等認められず, 良好な経過をたどっている.
    結論: 意図的に再植を行うことにより, 歯冠補綴前に良好な歯周組織を得ることが出来た.
  • 住吉 圭太
    2006 年 50 巻 4 号 p. 565-568
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    症例の概要: 49歳女性が審美障害, 咀嚼障害を主訴に来院. 下顎両側臼歯部をインプラント支台のブリッジ, 上顎多数歯欠損をインプラント支台のオーバーデンチャーで補綴し, そのアタッチメントとして磁性アタッチメントを使用した.
    考察: 上顎はインプラント同士を連結していないため, 偏心・機能運動時に特定インプラントへの応力集中が懸念される. しかし1年に1度のX線写真診査では, 歯槽骨の吸収などの所見は見られない.
    結論: インプラント支台のオーバーデンチャーの維持装置として磁性アタッチメントを3年間使用したが, 特にトラブルは発生しなかった. 従って磁性アタッチメントはインプラントのアタッチメントとして有用と思われた.
  • 磯村 哲也
    2006 年 50 巻 4 号 p. 569-572
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    症例の概要: 患者は58歳の女性. 主訴は咀嚼および審美障害であった. 上顎にアタッチメントを応用した片側遊離端義歯, 下顎に天然歯とインプラントを連結補綴し, 咬合再構成を行った.
    考察: 13年経過した現在において上顎のアタッチメント・デンチャー, 下顎のインプラントは共に良好である. インプラント補綴において天然歯との連結は, その動揺度の違いから一般的には禁忌とされている. 但し, この症例のように多数歯を連結してブリッジとする場合は, 動揺自体の減少により動揺度が特に小さなインプラントとの連結も許容されるのではないかと考えられる.
    結論: 咬合再構成を行うことにより長期に渡り安定した咬合状態ならびに口腔環境が得られた.
  • 堀 紀雄
    2006 年 50 巻 4 号 p. 573-576
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    症例の概要: 上顎左側第一大臼歯が腫れて痛い事を主訴に来院した58歳男性. 左側顎関節部の疼痛もみられた. 各種検査により咬合不調和と重度の歯周疾患が原因と考えられた. 客観的な基準を参考にし, 機能回復を図った. 最終補綴終了後, 定期観察を行い, 現在4年が経過した. 左側第一, 第二大臼歯は抜歯したが, 保存した他の歯は腫脹や違和感等はなく経過している.
    考察: 生体に調和した咬合再構成を行う事により, 残存歯や周囲組織の保護が出来たと考えられた.
    結論: 生体に調和した咬合の構築は, 歯科補綴治療において重要であり, また, 客観的な基準を用いる事は再評価時に有効であることが示唆された.
  • 内田 剛也
    2006 年 50 巻 4 号 p. 577-580
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    症例の概要: 患者は45歳の女性で, 21の違和感と67欠損による咀嚼障害を主訴として来院した. 211にはマージンの不適合な陶材焼付鋳造冠が装着されており, 67欠損の対合歯列は歯槽骨を伴う挺出を示し咬合平面が乱れていた. 処置として, 全顎的な歯周組織の改善をはかり21にポケット除去を目的とした矯正的挺出を行い, 左側臼歯部の咬合平面を是正したのち, 全顎的な審美修復を行った. 補綴処置終了後10年6ヶ月たっているが経過良好である.
    考察: 補綴前処置として矯正的挺出を行うことは単に審美的な観点からだけでなくプラークコントロールの観点からも有用である.
    結論: 補綴前処置として矯正的挺出と歯周外科処置を行うことによって, 歯間乳頭を含めて歯周組織を長期にわたり健全に維持することができた.
  • 千葉 豊和
    2006 年 50 巻 4 号 p. 581-584
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    症例の概要: 患者は26歳の女性で, 上顎前歯部の審美障害を主訴として来院した. 矯正学的診断により軽度の上下顎前突を認めたことから, 補綴前矯正により前歯部歯軸の修正をした後, 審美的補綴処置により主訴の改善をはかった.
    考察: 補綴前矯正による歯軸の改善は補綴装置による審美性の改善を容易にし, プロビジョナルレストレーションによるガイドの確認は顎運動と調和した補綴装置の装着に有効であったと考える. 補綴処置後3年以上を経過しているが良好である.
    結論: 前歯部の審美障害に対して矯正処置と審美的補綴処置の併用により改善をはかったところ, 形態的, 機能的に十分に満足する結果が得られた.
  • 岡本 信
    2006 年 50 巻 4 号 p. 585-588
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    症例の概要: 咀嚼時における上顎総義歯の脱離と疼痛を主訴に来院. 上顎無歯顎堤の高度な吸収および, 下顎両側第二大臼歯の欠損を認めた. 上下顎咬合負担域の対向関係の検査の結果, 下顎歯が上顎に対して大きく前方に位置しており, 上顎総義歯のみで安定を得ることが困難であることが判明した. そこで下顎両側第二大臼歯欠損についても局部床義歯で補綴を行い, 機能時における義歯の安定を得ることができた.
    考察: 本症例では, 上下顎咬合負担域の対向関係の検査の結果から, 下顎義歯を作製する必要性を判定できたことが, 良好な結果を招いたものと思われる.
    結論: 本症例の結果から, 本検査方法が臨床的に有用であることが示唆された.
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