日本補綴歯科学会雑誌
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50 巻, 2 号
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  • 議論の端緒にあたって
    石上 恵一, 倉澤 郁文, 山口 泰彦
    2006 年 50 巻 2 号 p. 145-165
    発行日: 2006/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    支台築造ポのストに歯質より大きな剛性をもつ材質を使用すると, 残存歯根の一部分に応力が集中し, 歯根破折を招きやすくなるとされる.臨床で散見される金属ポストを用いて築造された麦台歯の歯根破折の多くは縦破折であり, 抜歯に到る場合も多い.そのため歯冠部歯質が十分ある場合には, ポストを使用もない築造も近年提唱されている.そこで弾性係数が象牙質に近く, “しなり” がある特性から, レジン築造に併用されるポスト材料としてファイバーポストが注目を集めている.わが国でも最近厚生労働省の認可が下りたものの, 実験的研究や臨床報告も含めて情報が不足している.そこでファイバーポストに関し, In vitro研究につき破壊試験と有限要素解析の両面から, In vivoの観点から海外での臨床成績について文献的考察を行った.その結果, 実験的研究では, すべての築造方法で残存歯質に十分なフェルールが存在することが応力集中防止効果が高いこと, ファイバーポストは歯頸部付近に応力が集中しやすい築造法であることが明らかとなった.また臨床成績ではファイバーポストは破折, 脱離の観点から鋳造ポストや既製金属ポストより優れている可能性が示唆された.しかし, 現在までの臨床研究には問題点も残されており金属ポスト, ファイバーポストいずれが優れているかについて比較研究が望まれる.
  • Part I. 投稿における注意点
    中村 隆志
    2006 年 50 巻 2 号 p. 166-170
    発行日: 2006/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    (社) 日本補綴歯科学会の学術大会や地方支部会では, 多数のレベルの高い研究発表が行われている. ところが学会での発表の多くが論文として公表されていないのが現状である. 一方,(社) 日本補綴歯科学会では, わが国の歯科補綴学分野における研究成果を国際的に紹介することを目的として, 2002年に英文誌であるPRP (Prosthodontic Research & Practice) を発刊した.2006年からは, PRPの発行が年4回となり, 以前にも増して, 論文の投稿が求められている. 編集委員会では, PRPに投稿された論文がより良い英語論文となるよう編集作業を進めている. 特に査読を懇切丁寧に行い, 可能な限り返却ではなく修正により, 投稿論文を雑誌に掲載することを基本方針としている. このようなPRPに関する知識を広め, 多くの方々に投稿をいただくために, われわれは第114回学術大会 (新潟) や地方支部会においてPRPのスキルアップセミナーを開催してきた. 本稿はセミナーの前半部分の内容をまとめたもので, PRPの特色や具体的な編集作業の流れ, さらに投稿規定や査読方法について述べたものである.
  • Part II. 英語論文の書き方
    二川 浩樹
    2006 年 50 巻 2 号 p. 171-179
    発行日: 2006/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    この10年間, 歯科補綴学に関連した領域の研究分野も細分化・専門化し, 関連領域の学会も非常に多くなってきています.それに伴い, 関連分野の学会誌も多数作られ, 和文誌に加え英文誌も刊行され始めています.(社) 日本補綴歯科学会ではProsthodontic Research & Practice (PRP) が刊行され, 2006年より年4回の発行が行われます.他学会や学会誌なども含めて省みた場合, 学会での多くの発表がそのまま埋もれたままになっているという問題点があります.また, この一方で, 論文を厳しく査読することでそのレベル・クオリティを高めようとする学会誌は多くあります.しかし, 学会発表を一人前の原著論文に育てることに手を差しのべてくれる学会誌はほとんどないことに気づきました.編集委員会では, PRPの編集に際し, 投稿された論文をいかにしてより良い英語の原著論文に育てていくかを中心に査読を行うことで意見の一致がみられていますので, 投稿された先生方に, 海外投稿では得られないメリットを感じていただけるものと考えています.われわれは第114回学術大会 (新潟) や地方支部会においてPRPのスキルアップセミナーを開催してきました.本総説は, セミナーの後半部分の内容をまとめたもので, 実験を立案した際の文献検索と参考文献の見つけ方, 用語集・文例集の作成の仕方 (イントロ-考察まで), Web辞書の紹介などPRPへの投稿に向けての英語原著論文の準備の仕方をできるだけ具体的に紹介しています.
  • 大祢 貴俊
    2006 年 50 巻 2 号 p. 180-190
    発行日: 2006/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    目的: ファイバーポスト併用レジン支台築造がポスト長の短縮を可能とするか否かについて検討した.
    方法: 牛歯をヒト上顎中切歯の歯根形態に倣い加工し, 支台歯を製作した.実験条件としてポスト長3条件 (2, 5, 8mm), 歯冠部歯質量3条件 (0, 0.5, 1mm) について, ファイバーポスト併用レジン支台築造と鋳造支台築造で修復した失活歯の破折強度と破折様相を比較検討した.
    結果: 両支台築造方法とも, 歯冠部歯質1mmではいずれのポスト長でも破折強度に有意差が認められなかったため, ポスト長を短くできる可能性が示唆された.鋳造支台築造の歯冠部歯質0mmでは, ポスト長5mm, 8mmを設定することで高い破折強度が得られた.ファイバーポスト併用レジン支台築造の歯冠部歯質0mmでは, いずれのポスト長でも破折強度に有意差が認められなかった.ファイバーポスト併用レジン支台築造で検討した歯冠部歯質0.5mmでは, ポスト長8mmの破折強度が有意に高くなり, 長いポスト長が必要となることが示唆された.一方, 歯冠部歯質0mmでは, ファイバー難な破折様相を示した.ポストを使用することで再修復可能な破折様相を示したが, 歯冠部歯質0.5mm, 1mmでは
    結論: ファイバーポスト併用レジンにおいて, ポスト長を短縮できる可能性が示唆された.また, ファイバーポストを使用しても再修復困難な破折様相を示す可能性も示唆された.
  • 長田 知子
    2006 年 50 巻 2 号 p. 191-199
    発行日: 2006/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    目的: レジン床および金属床オーバーデンチャーにおける義歯の補強法について検討する.
    方法: レジン床義歯を想定した試料片は, 半円線とパラタルバー用線を補強線とし, それぞれ試料の咬合面側, 基底面側に設置し, 人工歯はレジン歯と硬質レジン歯の2種を用いた.金属床義歯を想定した試料片は, 従来のフレーム設計のスケルトン, 支台歯周囲を円柱状に覆うハウジング, ハウジング上部をプレートで覆うメタルバッキング, ハウジングとスケルトン間を支柱で連結した二重金属構造とした.アルミナサンドブラスト処理後プライマー処理し, 加熱重合レジンを重合後37℃ 水中に2週間浸漬し, クロスヘッドスピード20mm/min, 支点間距離50.0mmで曲げ試験を行い, 破折強度剛性を測定した.結果は一元配置分散分析/Tukey多重比較検定を用い, 危険率1%で統計処理を行った.
    結果: レジン床では, 人工歯の相違による破折強度, 剛性に有意差は認められなかった.パラタルバー用線を埋入した試料は半円線, コントロールと比較して有意に大きな破折強度岡性を認め, 咬合面側に埋入したほうが高い値を示した.金属床の破折強度は金属構造, メタルバッキング, ハウジング, スケルトンの順に高い値を示した.
    結論: レジン床オーバーデンチャーでは, パラタルバー用線の咬合面側への埋入, 金属床オーバーデンチャーでは, 二重金属構造の設計により強度の著しい向上が認められた.
  • 温度条件, ショア硬度が衝撃吸収に及ぼす影響
    富田 貴志, 月村 直樹, 大野 繁, 梅川 義忠, 澤野 宗如, 藤本 俊輝, 高村 昌明, 馬嶋 藍子, 片倉 祐輔, 蔵田 明美, 大 ...
    2006 年 50 巻 2 号 p. 200-209
    発行日: 2006/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    目的: 温度変化に対するマウスガード材料の物理的性質の変化を考慮するため, 室温条件 (25℃) ならびに口腔内を想定した温度条件 (37℃) において, 現在市販されているMG材料とその他の弾性材料の, 衝撃吸収試験ならびにショア硬度測定を行った. さらに材料のショア硬度と衝撃吸収の関係について比較検討した.
    方法: 衝撃吸収試験には自製落下衝撃試験装置を用い, 試料の厚さは3mmとした. 荷重条件は, ∅10mm (409), 15mm (1a79), 20mm (32.69) の3種の鉄球を高さ60cmから落下させ, 全材料間の衝撃吸収を最大衝撃力で比較した. ショア硬度はJIS規格に基づき測定した. 両試験ともに, 室温条件 (25℃) ならびに口腔内を想定した温度条件 (37℃) において行った.
    結果: 温度条件の違いにより, 同一材料において異なる最大衝撃力を示した. 弾性変形の範囲内で吸収できる衝撃力の場合には, 最大衝撃力とショア硬度の問に強い相関が確認された. 口腔内を想定した37℃ の温度条件で, 今回用いた最大の荷重条件では, テッシュコンディショナーとFDソフトは現在市販されているMG材料に比べ, 高い衝撃吸収を示した.
    結論: MG材料の温度特性や研究の際の温度条件に配慮する必要がある. 弾性変形による衝撃吸収を示す材料では, 最大衝撃力とショア硬度間の相関が明らかとなった.現在市販されているMG材料に比べ, 高い衝撃吸収を示す材料が存在した.
  • 小川 匠, 重田 優子, 安藤 栄里子, 平井 真也, 須摩 真由美, 平林 里大, 井川 知子, 細田 裕, 荒木 次朗, 伊藤 孝介, ...
    2006 年 50 巻 2 号 p. 210-218
    発行日: 2006/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    目的: 現在まで6自由度顎運動測定装置は, さまざまな装置が開発されてきた.それらは, 顎機能の解明に大きく貢献しているが, 一般歯科臨床において広く利用されていないのが現状である.そこで, 基本コンセプトとして操作性, 低コスト, 高精度を目標とした下顎運動測定装置を開発し能, 臨床応用の可性を検討した.
    方法: 本研究では, 被験者に2系統の顎運動測定装置を装着し計測する, 1運動2系統の計測を行った.本実験はディジタル方式顎運動測定器と今回開発した光位置測定方式顎運動測定装置の2種類の測定装置を用いて検討した.両顎運動計測時のサンプリング周波数は100Hzとした.被験者は当教室の女性医局員3名で, 平均年齢26.3歳である.被験運動は, 1回開閉口運動, 矢状面内限界運動, 前頭面内限界運動とし.矢状面内限界勘から全運動轍を算出し, その運動についても検討した.検討項目は, 最前方咬合位.最側方咬合位, 最大開口位の咬頭嵌合位からの移動距離と回転量について結, 比較検討した.
    結果: 基準座標系の位置計測誤差は真値に対し, ディジタル方式でRMS誤差0.163mm, 光方式でRMS誤差0.178mmであった.顎運動測定では, ディジタル方式と同様な軌跡が描記され, 実測値徳差は最大0.8mm, 最小0.1mmであった.
    結論: 切歯点付近の計測において, 光位置測定方式罰計測装置の今後の臨床応用が可能と考えられだ.
  • 本間 済, 河野 正司, 櫻井 直樹, 小林 博
    2006 年 50 巻 2 号 p. 219-227
    発行日: 2006/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    目的: これまで種々行われてきた咀嚼能力の評価方法は, その大半が粉砕能力評価を主体とした評価法であった.そこで, 咀嚼能力を簡易に評価できる方法を用いて, 義歯の咀嚼能力評価を試みた.
    方法: 被検者は, 大学病院において一連の補綴治療が終了してメンテナンスに移行した義歯装着者125名.(男性71名, 女性54名, 平均年齢704±15.5歳) とした.咀嚼回数計測法 (吸水性の高い煎餅を用いて初回嚥下までの咀嚼回数を計測する方法) を用い, 各被検者をアイヒナーの欠損分類で群分けして, 義歯補綴治療効果の検討を行った.
    結果: 事前に行った筋電図, 喉頭運動および嚥下音より明確となる初回嚥下までの咀嚼回数の的中度が高いことを確認後, 義歯の装着効果の評価を行い以下の結果を得た.1.義歯非装着時の咀嚼回数にアイヒナーA群, B群, C群間で有意差が認められた.2.義歯装着時の咀嚼回数にアイヒナーA群, B群, C群間で有意差は認められなかった.3.義歯の装着により咀嚼回数の有意な減少が認められた.4.ア冠ヒナーA群, B群, C群の順に咬合支持域数が減少するに伴い, 被検者それぞれで異なる初回嚥下までの咀嚼回数で除した値である咀嚼回数の改善率が有意に大きくなった.
    結論: 本評価法は, 欠損形態別の義歯装着効果の評価が可能であった.また, 咀嚼回数の改善率を用いた分析を行うことにより, 義歯機能状態の評価が可能であることが示唆された.
  • 研磨材と研磨時間に関する基礎的研究
    山森 徹雄, 古澤 正克, 島崎 政人, 中山 公人, 和栗 範幸, 佐藤 克彦, 清野 和夫
    2006 年 50 巻 2 号 p. 228-237
    発行日: 2006/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    目的: コバルトクロム合金製金属床粘膜面の滑沢化, 研磨作業における省力化および作業環境改善のためバレル研磨を応用するにあたり, その適切な研磨条件を設定することを本研究の目的とした.
    方法: 鋳造用コバルトクロム合金にて製作した板状鋳造体の表面性状を規格化した試験片を用い, 表面粗さをパラメータとして, 一次研磨および二次研磨に適する研磨材, 研磨時間を検討した. さらに得られた研磨条件での結果を. メーカー指示の研磨条件および電解研磨の場合と比較した.
    結果: 一次研磨二次研磨とも, 酸化アルミニウムと二酸化珪素を主成分とする三角柱形の研磨材が選択され, 一次研磨には一辺の長さおよび高さが6mm, 二次研磨には4mmのものが適していた. 研磨時間が長くなるに従い試験片の表面性状は平滑となる傾向を示した. 表面粗さに有意差が生じなくなる時間を適切な研磨時間としたところ, 一次研磨で60分間, 二次研磨で40分間となった. また本条件で研磨した試験片の表面粗さは, メーカー指示の研磨条件や電解研磨に比較して有意に小さかった.
    結論: 本研究により, コバルトクロム合金に対するバレル研磨の条件が設定された. 研磨後に光沢が得られるにはいたらなかつたため, 義歯床研磨面については回転切削器具による最終仕上げ研磨が必要と考えられた.
  • 第1報常温重合レジンとの比較
    高橋 研省, 岡崎 祥子, 田中 貴信, 星合 和基, 山田 恒, 若山 浩一郎, 長谷川 明
    2006 年 50 巻 2 号 p. 238-244
    発行日: 2006/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    目的: 有床義歯の咬合採得に用いられる咬合床は, 口腔内環境で安定し, さらに, 十分な機械歯強度を有することが必要である. また, 咬合堤を支える基礎床は, 顎堤への適合性も良好でなければならない. そこで, 臨床で用いられている光重合レジンに着目し, 基礎床専用の光重合レジンを試作し, その機械的強度や適合性などを, 常温重合レジンと比較検討した.
    方法: 基礎床用光重合レジン (SBPL-S3) と常温重合レジン (オストロンII, ユニファストII) を用い, 3点曲げ試験, 衝撃破壊試験接着試験適合試験を行った.
    結果: 3点曲げ試験の結果では, 光重合レジンは40.9MPaの曲げ強さを示したが, ユニファストIIより小さい値であった. 衝撃破壊試験では, 光重合レジンは2.81KJ/m2, オストロンIIは2, 35KJ/m2であり同程度の破壊強さであった。接着試験では, 光重合レジン間にコンポジットプライマーを使用し, 24時間後に測定したものが他のものより接着強さが強く5.25MPaであった. 適合試験の結果では, 光重合レジンは最大0.20mm, オストロンIIは0.15mmの間隙量を示したが, 光重合レジンとオストロンII間, 加圧後の放置時間では, いずれも有意差は認められなかった.
    結論: 試作光重合レジンは. 基礎床用材料としての臨床応用可能な物性を有することが確認された.
  • 猪飼 紘代, 菅野 太郎, 木村 幸平
    2006 年 50 巻 2 号 p. 245-255
    発行日: 2006/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    目的: 日常の臨床を通じて患者が関心を示す項目の1つは, 治療対象の歯もしくは補綴物がどのくらいもつかということである. これまでに報告されているブリッジの術後に関する研究は, 補綴物の種類による残存率の評価が主流であった. 今後, 個々の歯に対応した, より臨床に直結した評価を行う研究が必要であると考える.
    研究の選択: ブリッジの術後に関する研究のうち, ブリッジの残存率が明らかなものを選択し, 1. 術前・装着時の支台歯の状態について, 2. 選択した診査項目について, に焦点を当てたReviewを行った.
    結果: これまでの研究では, 術前・装着時の1歯1歯の支台歯の状態について明確な判定基準をもって評価し追跡した研究は1つもなかった.診査項目は, ほとんどの研究で, 補綴物自体と口腔内細菌に関するものについて調べられており, 主観的なデータに関するものは比較的少なく, 全体の21.2%であった.
    結論: 今回のReviewを行い, 術前・装着時の支台歯の状態から術後の状態を予測することが科学的根拠のもとに行うことができるよう, 臨床的支台歯分類あるいはリスクアセスメントの確立が必要であることが唆された.
  • 中村 健太郎
    2006 年 50 巻 2 号 p. 256-259
    発行日: 2006/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    症例の概要: 患者は70歳男性で, 上下顎部分床義歯不適合による咀嚼障害にて来院した.残存歯は重度の歯周疾患が認められ, 咬合状態は下顎前突による反対咬合, 咬合支持域はアイヒナーの分類B-3であった.最終補綴装置にはコーヌステレスコープ義歯を選択した.
    考察: デンタルプレスケール・オクルーザーシステムを用い, 咬合力の増大や前後, 左右的な不均衡を発見し, その原因を対処することで, 補綴装置の破損や支台歯・歯周組織への悪影響を最小限に止める努力を施した.
    結論: 再構築した顎口腔系に対して, 新たな咬合崩壊を誘発させないためには, 術後管理において力の病的要因を早期に発見, 除去することが肝要であることがわかった.
  • 宇野 光乗
    2006 年 50 巻 2 号 p. 260-263
    発行日: 2006/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    症例の腰: 患者は44歳女性で, 咀嚼, 審美障害を訴え来院.上顎前歯部のコンポジッレジン修復物の変色とその辺縁の着色.前突そして正中離開を, そして下顎前歯部が上顎歯槽部に咬み込む形の過蓋咬合.8の挺出と4の欠損を認めた.そこで, 歯周, 矯正治療を併用して審美, 機能回復を行った.
    考察: 鞭処置終了後は, 徹底したプラークコントールと並行して歯の後戻り現象の防止のための保疋送装置 (Begg), 筋機能療法 (舌の運動パターンの改善と舌筋, 口輪筋の強化) と咬合などの術後管理が重要である.
    結論: 本症例によって補綴前処置としての矯正治療が, 歯質保存, 補綴治療の容易化.そして予知性の高さについて非常に有効であることが改めて認識できた.
  • 牧平 清超
    2006 年 50 巻 2 号 p. 264-267
    発行日: 2006/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    症例の概要: 患者は咀嚼障害を主訴として来院した.臨床所見および客観的検査より不適合な義歯と不適切な下顎位による下顎運動異常を伴った総義歯症例と診断し, 旧義歯を参考にせず総義歯を製作後, 装着した.
    考察: 本症例の診断, 治療, 定期検診には, 各種検査が有効であったと考えられる.
    結論: 十分な説明を行い, 同意を得たうえで, 適合性の向上, 適切な下顎位の付与による顎運動の改善が, 良好な結果をもたらした.
  • 木本 統
    2006 年 50 巻 2 号 p. 268-271
    発行日: 2006/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    症例の概要: 49歳男性, 患者は平成11年2月4日に下顎義歯クラスプに対する審美的不満と上顎義歯維持不良を主訴として来院した.患者の審美的満足を得るためにコーヌス義歯を用いて補綴処置を行つた症例を報告する.
    考察: 治療終了後約6年経過するが, 支台歯および義歯ともに良好であり, 患者の満足度も高い.しかしながら, パノラマエックス線写真の上顎顎堤に吸収像が認められるため, 来院時には顎堤吸収によるトラブルの兆候を注意深く観察する必要がある
    結論: 上顎顎堤に吸収の兆候があるものの・本症例へのコーヌス義歯の応用聴者に高い満足感を与えている.
  • 石井 治仲
    2006 年 50 巻 2 号 p. 272-275
    発行日: 2006/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    症例の概要: 53歳男性.上下顎多数歯欠如による咀嚼障害を主訴に来院した.上顎右側の中切歯および犬歯のみに対合歯との咬合接触を有しており, そこに明らかな咬耗が認められたことから低位咬合と診断した.主訴である咀嚼障害の改善を目的として, 支台歯の構築を行った後に, 上下顎に可撤性補綴装置を作製することとした.支台築造および歯冠補綴装置作製の際に, 咬耗によって崩壊した前歯の歯冠形態を模型上で解剖学的な形態に回復し, 合わせて欠如部の人工歯排列を行い最終的な咬合高径を予想した.
    考察: 補綴装置作製時に顎間関係を規定するインターオクルーザルレコードを用いて咬合採得を行い, 欠如部位に人工歯排列を行った咬合床を用いて最終的な咬合高径を予想しながら治療をすすめたことが適正な咬合高径の付与に役立ったと考えられる.
    結論: 咬耗によって高径の低下した歯冠を有する症例において, 歯冠形態を回復しながら適切な咬合高径を診断した後に, 補綴装置の作製を行うことは重要である.
  • 峯 篤史
    2006 年 50 巻 2 号 p. 276-279
    発行日: 2006/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    症例の概要: 患者は70歳男性. 主訴は手の湿疹 (掌蹠膿庖症) である. 皮膚科でのパッチテストにてクロムに陽性反応が認められていたため, 口腔内金属の元素分析を行ったところ, 上顎前歯の陶材焼付鋳造冠にのみクロムが認められた. この冠を除去し, 金銀パラジウム合金を用いたレジン前装冠を装着した.
    考察: 問診のみでは, 金属アレルギー発症と該当歯科治療の直接の因果関係を導くことが困難であった. このような症例で原因修復物を同定するためには, 口腔内に存在する金属の元素分析をパッチテストと並行して行うことが必要と思われた.
    結論: 非破壊的口腔内金属分析を行うことにより, 最小限の侵襲でアレルギー症状の軽減をはかることができた.
  • 壹岐 俊之
    2006 年 50 巻 2 号 p. 280-283
    発行日: 2006/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    症例の概要: 患者は左側上顎歯肉癌により左側上顎骨全摘出術を行った77歳の男性. 主訴は上顎義歯の脱落による咀嚼障害であった. 通常の義歯製作方法では, 維持を得るのが困難と考えられ, 機能印象法を応用して顎義歯を製作した.
    考察: 製作した顎義歯により良好な維持安定が得られ, 主訴である咀嚼障害を回復することができ, 患者の満足を得られた. これは機能印象法を応用したことにより, 義歯と口腔粘膜との適合性が向上した結果と考えられる.
    結論: 顎義歯製作において. 印象採得時に機能印象法を応用することは, 有用な治療法のひとつであると考えられる.
  • 井手 孝子
    2006 年 50 巻 2 号 p. 284-287
    発行日: 2006/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    症例の概要: 患者は23歳女性. 全歯牙にェナメル質石灰化不全を認め. これに伴い臼歯部の歯冠が崩壊していた. X線検査で多数歯に根尖病巣を認めた.
    考察: 残存歯の歯冠修復処置によって, 審美性, 咀嚼機能の双方が回復された. この (歯冠長延長術) を行ったことにより, より清掃性の高い補綴装置を装着することが可能となった.
    結論: 冠長延長歯長術においては歯槽骨の切削を伴い, 将来欠損となったときに顎堤が低くなるというりスクが生じるが, 本症例のように骨量が十分にある場合は清掃性の高い補綴装置の装着術式である.
  • 森脇 祥博
    2006 年 50 巻 2 号 p. 288-291
    発行日: 2006/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    症例の概要: 患者は初診時年齢54歳の女性で, 右側臼歯部欠損による咀嚼障害を主訴に来院した. 長期にわたり欠損を放置したことにより咬合平面に乱れが生じていた. 本症例に対し, インプラント支持を含む固定性補綴装置を用いて咬合平面の修正と咬合支持の回復を行った結果, 5年にわたり良好な経過が得られた.
    考察: 咬合平面の修正にはアンテリアガイダンスの設定とプロビジョナルレストレーションによる観察が効を奏した. また, インプラントと歯冠補綴が混在する歯列では, 生体力学的に異質な要素が存在するため, 定期的な経過観察と咬合調整の必要性を実感した.
    結論: 遊離端欠損を有する症例に対するインプラント治療は, 患者のQOLにとって有効なことが示された.
  • 寺門 正徳
    2006 年 50 巻 2 号 p. 292-295
    発行日: 2006/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    症例の概要: 患者は24歳の女性で, 前歯部の審美障害を主訴に来院した. 天然歯の削除に対して抵抗感を示したため, インプラント支持の補綴装置にて主訴の改善をはかった. 両側犬歯部に装着したインプラント上部構造を含めてアンテリアガイダンスを設定したが, 5年後においてもインプラント周囲組織は健全に経過している.
    考察: インプラント上部構造に偏心位における咬合接触を付与する場合は, 咬頭嵌合位の安定と側方力の発現を抑制することが重要であると考えられた.
    結論: 本症例の経過はインプラント支持の補綴装置に付与すべき咬合接触について有益な示唆を与えている.
  • 難波 郁雄
    2006 年 50 巻 2 号 p. 296-299
    発行日: 2006/04/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    症例の概要: 患者は57歳の男性で, 咀嚼障害と前歯部唇側傾斜斜による審美障害を主訴に来院した. 歯周治療と矯正治療後にインプラント支持と固定性ブリッジによる咬合再構成を行った. 現在, 補綴装置を装着後6年経過しているが良好な状態を維持している.
    考察: 前歯部の歯軸を矯正で改善したことはブリッジの生体力学とアンテリアガイダンダンスの設定にとって有效といえる. また, インプラント支持と歯根膜支持の補綴装置が混在しても. 咬合の長期的保持は可能であることが示唆された.
    結論: 咬合支持の回復と矯正治療の固定源確保の点からインプラント治療の有用性が確認された。
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