日本補綴歯科学会雑誌
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50 巻, 3 号
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  • 佐々木 啓一
    2006 年 50 巻 3 号 p. 345-352
    発行日: 2006/07/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    本論文は, 日本補綴歯科学会第114回学術大会 (平成17年10月1~2日, 新潟市) で催されたシンポジウム「歯科補綴のストラテジックプラン」において発表された内容に基づき, 歯科補綴学, 補綴歯科臨床の将来展望と研究戦略プランを総括したものである.
    歯科補綴学には, 歯科補綴装置により回復される形態, 機能に関する研究と, 力に対する生体応答, マテリアルによる生体応答をはじめとする歯科補綴装置と生体組織との間での生体応答に関する研究, マテリアルに関する研究がある. すなわち, 補綴歯科臨床では, 生体 (筋) の発揮する機能力が補綴装置を介して残存歯, 顎堤等の生体組織で支持することにより機能の回復が達成される. これが補綴歯科治療の本質であり, また他の医療, 歯科医療と比較した際の最大の特色である.
    このような認識に基づく戦略プランとしては, 基盤戦略としてメカニカルストレスによる生体応答の解明など生物学的基盤の確立と, EBMとして治療効果の評価・確立が提示された. さらに創生戦略として異分野連携による新材料, 新技術の開発, 導入の必要性が示された.
  • 平井 敏博, 越野 寿
    2006 年 50 巻 3 号 p. 353-362
    発行日: 2006/07/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    歯科補綴学は生命科学や健康科学をベースとする実学であり, 人々の健康・福祉の向上に貢献する役割を担っている. そして, その臨床の特徴は, 齲蝕や咬合・咀嚼障害などの疾患や障害に対しての「予防」と「治療」の面と, 歯などの喪失により損なわれた形態的・機能的障害の改善や回復を目指す「リハビリテーション」の面を併せ持っていることである. 歯科補綴学研究は, 健康科学, 生命科学の視点からの種々の研究によって, 必ずや補綴歯科治療の健康・福祉への重要性を明確に証明するであろう. 三叉神経が関与する咬合・咀嚼と高次脳機能や生体情報伝達系との関係など, 脳研究の進展が期待されるところである. また, 人口動態からみても, 本学会の学術研究活動は, まさに21世紀に求められる主要な医療のための活動の一つであるといえる.
    補綴歯科臨床の観点からは, 診察法, 検査法を含む診断学の充実が望まれる. 診断には, 補綴治療後の機能回復の程度を予測することも含まれる. このためには, 咀嚼機能評価法とともに, 顎口腔系を構成する各器官・組織の評価法の確立が待たれるところである.
    社団法人としての本学会の公益・社会活動も重要である. 専門医のみならず歯科医師全体の診療能力の向上による良質な医療の提供を図るとともに, 補綴歯科臨床の意義に関する活発な啓発活動を実践し, 「健康科学としての歯科補綴学」を広く国民に認識させるための方策を考え, 実行すべきである.
  • 市川 哲雄
    2006 年 50 巻 3 号 p. 363-369
    発行日: 2006/07/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    本稿ではまず歯科補綴学における研究の抱える問題点を整理し, 学問分野としての歯科補綴学のあり方について述べた. つぎに歯科補綴学の研究が臨床医学として進むべき方向性を (1) 従来の学問分野の体系化,(2) 既存の技術を発展する形での, より快適なより審美的な補綴治療の推進,(3) 高齢者, 要介護高齢者を対象とした摂食・嚥下・言語リハビリテーションと口腔ケアへの寄与,(4) トランスレーショナルリサーチの推進の4つに分け, それぞれの意義を説明した. 最後に, 輝ける歯科補綴学にするための学会の行動要件を提案した.
  • 田上 直美
    2006 年 50 巻 3 号 p. 370-375
    発行日: 2006/07/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    固定性歯科補綴とは歯質欠損や歯の欠損を修復する科学である. その根底には機能的な咬合を回復することで「噛めるようにする」という目的がある. しかしながら, 近年の固定性補綴装置には, 患者の年齢や性別を問わず, 必ずと言っていいほど審美性の回復が求められる. 通常, 固定性補綴装置の製作では目標とすべき歯のモデルが既に口腔内に存在することが多く, 満足できる審美性の付与は難しい. これらの目的に対する研究は, 固定性補綴における「基盤研究」に位置するものであると推測される. 審美性を補綴的手法で回復するには, 一般的に陶材や前装用レジンのような歯冠色歯科材料を用いる. これらの材料は, 厚ければ厚いほど優れた機械的性質や審美性が期待できる. しかしながら, 材料を厚く築盛できる支台歯形成は「Minimal Intervention (MI)」の理念からはかけ離れたものである. 固定性歯科補綴の「創生研究」は, 審美性とMIのどちらかを優先するのではなく, その双方を満たす補綴方法に基づくものでなければならない. この二つは, 現状では未だ相反する要素であるが, 患者は間違いなく「削らずに美しくする」治療を求めており, それが臨床的なニーズである. 打開のためのストラテジーとしては, 新たな歯科材料と技術の創生に繋がる研究を推進することとなろう.
  • 前川 賢治
    2006 年 50 巻 3 号 p. 376-385
    発行日: 2006/07/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    咀嚼障害にも直結する頭頚部の筋骨格系疼痛疾患は, 患者のQOLを著しく低下させるとともに, 有症状率が中高齢者を中心に高いことが知られている. しかしながらこれらの疾患患者の中には, 既存の治療法では対応できない症例も少なくない. また, 高額な医療費を要していることからも, 高齢社会を迎えつつある我が国において解決が急がれる疾患領域である. さらに, 全身健康に直結する分野であることや, 他部位の類縁疾患研究へも寄与することから, 歯科補綴学の普遍性に結びつくという点でも重要な研究領域である. これらの問題の解決には, 既存の診断・治療法を良質な臨床研究でその有効性を確認することにより, 現時点での治療効果を高める短期的な研究戦略に加えて, 診断・治療法の革新を目指し, 疾患の病態ならびに病態形成に寄与する因子を明確化する中長期的な戦略が重要と考える.
    そこで本論文では, これまでの歯科補綴学で中心的に研究が進められてきた臨床生理学的研究成果等を基盤として, その病態解明や寄与因子とその役割を明らかとすることを試みる研究戦略を考えてみたい. さらに, これらの研究遂行にあたって期待される新技術や, 歯科補綴学の価値を高める新しい研究領域の開発についても考察し, これらの疾患に対する歯科補綴学の今後の研究活動に繋げたい.
  • 會田 雅啓, 小滝 美佐子, 西山 典宏, 増田 美樹子, 寺本 一郎, 根本 君也
    2006 年 50 巻 3 号 p. 386-395
    発行日: 2006/07/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    目的: 歯冠部象牙質および歯根部象牙質に対して一括処理し, 高い接着性を得ることを目的として考案されたメタクリルアミドモノマーの効果について検討した.
    方法: N-メタクリロイル-ω-アミノ酸 (MωA) としてN-メタクリロイルグリシン (Gly), N-メタクリロイル-β-アラニン (βAla), N-メタクリロイル-4-アミノ酪酸 (Bu), N-メタクリロイル-5-吉草酸 (Va) を合成し, MωAのカルボン酸カルボキシル基解離平衡pH (pKa) を測定した. Glyは牛歯歯冠部象牙質または歯根部象牙質に作用させる時間を変化させた場合の圧縮せん断接着強さを測定した. また, MωAを30秒間作用させ, pKaの違いによる圧縮せん断接着強さを測定した.
    結果: Glyの作用時間が30秒までは歯冠部および歯根部象牙質ともに接着強さが上昇したが, その後はほぼ一定値を示した. 各作用時間による歯冠部および歯根部象牙質の接着強さの差はなかった. MωAのメチレン鎖が長くなるとpKaは上昇していったが, 30秒の作用時間では, 上昇に伴う接着強さの低下は見られず, pKaの値と考え合わせ, Glyに対し, Bu, Vaは象牙質に対して侵襲の少ないプライマーであることが示唆された.
    結論: メタクリルアミドモノマーは歯冠部および歯根部象牙質に対して一括処理が可能で, 同等の接着性を示すセルフエッチングデンティンプライマーとして有効であることが示された.
  • 泉田 明男, 友田 浩三, 木村 幸平, 小松 正志, 奥野 攻
    2006 年 50 巻 3 号 p. 396-404
    発行日: 2006/07/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    目的: 各種市販歯冠用硬質レジンペーストの賦形性に影響する流動性を調べることを目的に, 各種ペーストの挙動と築盛操作時の温度依存性について検討を行った.
    方法: 使用材料は現在臨床で用いられている5種類の前装用硬質レジンであるニューメタカラーインフィス, ソリデックス, セラマージュ, グラディア, エステニアC&Bを使用し, 各ペーストの組成分析と流動性を調べた. 硬化前レジンペーストの粘度は, コーンプレート型回転粘度計を用いて測定を行った.
    結果: 各レジンペーストは非ニュートン流動を示し, 流動曲線は上昇曲線と下降曲線の異なるヒステリシス曲線を描いた. また各レジンペーストの各流動曲線 (20℃, 25℃, 30℃) における保留開始時のずり応力を測定した結果, 20℃のずり応力は25℃, 30℃ に対し有意に大きく, 25℃ のずり応力は30℃に対し有意に大きな値を示し, 低温側で粘性が高い傾向を示した. 保留前後のずり応力の比較では, エステニアC&Bを除いて, 他は全て保留前が保留後よりも有意に大きな値を示した.
    結論: 今回使用した各種レジンペースト全てにおいて作業温度の20-30℃ 間で温度依存性, チキソトロピー性を有していた. しかし歯冠用レジンペーストは, ペーストの種類により, 流動性に大きな差がありレジン築盛時の操作性に大きく影響を及ぼしていることが示唆された.
  • 水内 一恵, 志賀 博, 小林 義典
    2006 年 50 巻 3 号 p. 405-413
    発行日: 2006/07/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    目的: 本研究の目的は, 側頭下顎障害 (TMD) 患者の咀嚼機能を客観的に評価することである.
    方法: グミゼリー咀嚼時の咬筋筋活動, 下顎切歯点の運動の安定性, 咀嚼能率の定量的指標について, 健常者10名, 関節原性TMD患者10名, 筋原性TMD患者10名の三群間で比較した. 咬筋筋活動については, 咬筋筋活動の積分値を算出した. 運動の安定性については, 運動経路と運動リズムの安定性を表す7指標のデータについて, 主成分分析を行い, 主成分スコアを算出した. 咀嚼能率については, グミゼリー咀嚼後のグルコースの溶出量を血糖測定機器で測定した.
    結果: 咬筋筋活動の積分値は, 健常者群が関節原性TMD患者群, 筋原性TMD患者群よりも著明に大きく, 健常者群と関節原性TMD患者群, 筋原性TMD患者群との間にそれぞれ有意差が認められた. 運動経路と運動リズムの安定性の主成分スコアは, 健常者群が関節原性TMD患者群, 筋原性TMD患者群よりも著明に小さく, 健常者群と関節原性TMD患者群, 筋原性TMD患者群との間にそれぞれ有意差が認められた. グルコースの溶出量は, 健常者群が関節原性TMD患者群, 筋原性TMD患者群よりも著明に多く, 健常者群と関節原性TMD患者群, 筋原性TMD患者群との間にそれぞれ有意差が認められた.
    結論: 側頭下顎障害患者の咀嚼機能は, 健常者のそれよりも有意に劣ることが示唆された.
  • 三澤 弘子
    2006 年 50 巻 3 号 p. 414-421
    発行日: 2006/07/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    目的: ポストを応用した下顎小臼歯における歯根破折と支台歯頬側の歯槽骨吸収との関係について検討することを目的とした.
    方法: 実験1ではクラウンがポストと一体として脱落し, 目視で歯根破折の観察された下顎小臼歯9歯について歯科用小型X線CT (以下3DX) 撮影を行い, 歯根破折と周囲歯槽骨の吸収部位を観察した. 実験2では実験1で観察した歯を基にして歯槽骨非吸収と歯槽骨吸収の三次元有限要素モデルを作成し, 応力解析を行い歯根部のvon Mises相当応力と, XZ, YZおよびXY剪断応力の応力分布を解析した.
    結果: 実験1では3DXにおいて頬側の歯槽骨に吸収像がみられ, 歯根を近遠心方向に二分する頬舌的な亀裂が認められた.実験2では近心側または遠心側荷重下の歯根部のXY剪断応力は, 歯槽骨非吸収モデルにおいて, プラス値の応力集中が歯根部歯頸部付近に, マイナス値の応力集中が頬側ポスト先端部歯質に認められた. 歯槽骨吸収モデルにおいて, プラス値の応力集中が舌側ポスト先端部歯質に認められ, マイナス値の応力集中は頬側ポスト先端部歯質に認めた.
    結論: 歯槽骨非吸収モデルでは, ポスト先端に応力集中は観察されなかったが, 頬側の歯槽骨吸収がある場合は, 近心側または遠心側荷重下でポスト先端部に剪断応力の集中が認められ, 歯根破折が生じやすくなることが, 三次元有限要素法による応力解析によって示唆された.
  • 含有量の違いによる骨形成量の比較
    笹澤 武史, 吉江 紀夫, 渡邉 文彦, 畑 好昭
    2006 年 50 巻 3 号 p. 422-431
    発行日: 2006/07/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    目的: 本研究の目的は, 骨形成促進剤3-ベンゾチエピン誘導体TAK-778 (武田薬品工業) の担体としてβ-リン酸三カルシウム顆粒β-TCP (オリンパス光学) を用い, その含有量を変化させることによる骨形成量を形態組織的に検討することである.
    方法: 週齢SD系雌性ラットの頭頂部に切開を加え, 骨膜を剥離し頭部中央にチタンチューブをレジン系セメントにて固定した. チタンチューブ内にTAK-778とβ-TCPを混和したものを各条件で填入した. 4週後, 8週後および16週後に組織標本を作製し, 組織形態的に観察しNIHイメージにて新生骨の割合を比較検討した. 統計学的分析は, TAK-778群および各週群の要因で一元配置分散分析を行い, 各平均値間の検定にはFisherのPSLDによる多重比較 (P<0.05) を行った.
    結果: 形態組織観察から, 含有量, 埋入期間を問わずTAK-778含浸群すべてに新生骨を認め, 各平均値間の検定では16週β-TCP+TAK778100mgの複合体で最も多くの新生骨が認められた.
    結論: 1. TAK-778は, 本実験でも早期に新生骨の形成を促進することが確認できた.2. β-TCPを用いることにより, TAK-778は長期的に作用することが示唆された. 3. TAK-778とβ-TCPの割合を変化させることにより骨形成時期は異なっていた. 4. 早期の新生骨量は, TAK-778100mgよりもTAK-77810mg, および50mgが良好であった. 以上のことより, TAK-778は新生骨形成を促進し, また, β-TCPはその担体としての有用性が認められた.
  • 小倉 京子, 木本 統, 小林 喜平, 山口 秀紀, 齊藤 孝親
    2006 年 50 巻 3 号 p. 432-440
    発行日: 2006/07/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    口腔粘膜を測定部位とした電流知覚閾値 (Current Perception Threshold以下CPTとする) 測定の方法論の確立と信頼性の検討を目的として本研究を立案した. 方法: 上下顎に智歯以外に欠損歯を持たない男性20名 (31.4歳±6.3歳), 女性20名 (27.7歳±2.7歳) を被験者とした. 測定はNeurometer ® NS3000を用い同一の測定者が行い, 鼻口蓋神経支配領域の切歯孔相当部粘膜, 右側大口蓋神経支配領域の大口蓋孔相当部粘膜, 左側大口蓋神経支配領域の大口蓋孔相当部粘膜の3点を測定部位とした. 同一被験者に対し2000Hz, 250Hzおよび5Hzの順に各周波数の測定を同一の測定者により3日間行った. 検討項目はCPTの周波数特異性, CPTの日差変動, CPTの性差, CPTと年齢の関係, 大口蓋孔部CPTの左右差, 大口蓋孔部CPTと測定順序の関係, 測定者内信頼性とした.
    結果: CPTに周波数特異性が認められ, 経時的に安定していた. CPTは女性の方が男性より低い値を示した. CPTへの年齢の影響は一部の周波数と測定部位において認められた.大口蓋孔部のCPTに左右差および順序効果ともに認められなかった. 測定者内信頼性は高かった. 結論: 口腔粘膜測定部位時のCPT測定法の方法論の確立とデータの信頼性を検討したところ, 本法は, 口腔粘膜へ応用可能な評価方法であることが示唆された.
  • 脇 智典
    2006 年 50 巻 3 号 p. 441-444
    発行日: 2006/07/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    症例の概要: 患者は20歳女性.上顎左側中切歯部の外観不良を主訴に来院した.
    考察: 外観不良を改善するためには, 補綴装置を再製するだけでなく, 歯間乳頭の再建が必要と考え, 上顎左側中切歯の補綴処置のみでこの両方の問題を解決することを試みた. この症例では, プロビジョナルレストレーションの隣接面および歯肉縁下の形態のラボサイドへの伝達とその方法が, 非常に重要であることが示された.
    結論: 単冠による補綴治療のみで歯間乳頭を再建させる方法は, プロビジョナルレストレーションの段階で隣接面および歯肉縁下の形態を決め, それを最終補綴の形態に反映できれば, 十分に臨床応用が可能であることが示唆された.
  • 藤林 晃一郎
    2006 年 50 巻 3 号 p. 445-448
    発行日: 2006/07/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    症例の概要: 多数歯にわたる歯周疾患, 歯肉縁下う蝕, 不良修復物・補綴物による咬合異常を, 歯周外科処置後に下顎頭の運動経路から求めたオクルーザルガイダンスに従って咬合を再構築し, また補綴物歯頸辺縁のエマージェンスプロファイルを歯周組織と調和させた形態で回復した.
    考察: 顎関節内部構造に対応した適切なアンテリアガイダンスにより臼歯部の即時離開が行われる様な咬合様式を与えることによって, 歯周組織の破壊を招くことなく, 顎関節との調和を保って, 長期的に安定した状態が継続できているものと考える.
    結論: 顎関節内部構造に対応したオクルーザルガイダンスの付与が, 顎関節, 歯, 歯周組織を安定した状態で維持させる上で重要である.
  • 大久保 昌和
    2006 年 50 巻 3 号 p. 449-452
    発行日: 2006/07/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    症例の概要: 49歳女性. 咀嚼障害と審美的問題を主訴に受診した. 上下顎臼歯部歯列欠損と中等度から重度歯周炎と診断し, 歯冠修復とRPDで咬合の再構成を行った. 審美的要求から下顎RPDにはDimple-bar telescopic (DBT) systemを適応した.
    考察: DBT systemを用いた下顎RPDは, 5年以上良好に機能している. コーピングした最後臼歯による支持を得たことで, 両側遊離端義歯の問題点である支台歯に対するストレスを軽減できたものと考えられた.
    結論: DBT systemはクラスプの維持力不足や審美的問題を解決する可能性を有していると考えられた. また, メインテナンスの重要性を再認識した.
  • 鈴木 啓介
    2006 年 50 巻 3 号 p. 453-456
    発行日: 2006/07/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    症例の概要: 患者は右側上顎洞部歯肉癌により同部部分切除術を施行した71歳の女性. 欠損部に対して創面の状態を考慮しながら顎義歯を作製した.
    考察: 義歯装着後3年6カ月経過している. その間に鉤歯である上顎左側犬歯の継続歯が脱離したため, 同歯の支台装置をOPアンカーへ変更した. その後同歯の根端に一部破折を生じるも患者本人の希望に より保存している. また間接法のリラインを行うことにより, 義歯の維持力は改善し, 咀嚼, 発音, 嚥下機能には問題なく使用されている.
    結論: 右側上顎洞腫瘍術後に対して早期に顎義歯を作製し, 機能回復を試み, 改善できた症例であるが, 残存歯の長期保存が期待できないために今後の対処の重要性が示唆された.
  • 高木 一郎
    2006 年 50 巻 3 号 p. 457-460
    発行日: 2006/07/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    症例の概要: 本症例では, 咬合時における下顎前突感による審美障害および咀嚼障害を主訴として来院した上下顎無歯顎症例に対して, 治療用義歯を用いて下顎位の改善および顔貌の回復を図った. また客観的評価法を用いて新義歯装着前後を比較した.
    考察: 治療用義歯を用いて, 適正な下顎位および咬合高径の改善を行い, その後新義歯を作製した結果側方セファログラム分析では, FH平面に対してのA-B planeのなす角は, 87° から83° に減少し, 下顎が後退し, 顔貌が回復した.
    結論: 本症例では適正な下顎位および咬合高径を与えることによって審美および機能ともに患者の満足を得ることができた. また主観的評価だけではなく, 客観的評価法をより多く取り入れることによって, 新義歯装着前後について比較および評価ができた.
  • 浪越 建男
    2006 年 50 巻 3 号 p. 461-463
    発行日: 2006/07/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    症例の概要: 患者は64歳 (初診時) の女性である. 病理組織診断にて頬粘膜, 歯肉部の扁平苔癬と診断された. 投薬などにより症状に軽快が認められないこと, パッチテストにより歯科用金属に対する感作が確認できたこと, 口腔内金属修復物成分分析結果から, 歯科用金属アレルギーを疑い, 被疑金属の排除と経過観察, 被感作材による治療と生活指導をおこなった.
    考察: 治療開始後, 頬粘膜, 歯肉ともに改善傾向を示し, 13ヶ月経過後には症状がほぼ消失し, その後悪化をみていない.
    結論: 歯科臨床で頻繁に使用されている金銀パラジウム合金の成分のひとつであるPdが口腔内扁平苔癬の発症, 増悪因子となりえる可能性を示した症例と考えられた.
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