日本補綴歯科学会雑誌
Online ISSN : 1883-177X
Print ISSN : 0389-5386
ISSN-L : 0389-5386
51 巻, 3 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
  • 佐々木 啓一
    2007 年 51 巻 3 号 p. 533-540
    発行日: 2007/07/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    本稿は, 平成19年3月4日に開催された平成18年度第2回総会併催のアドバンスト・セミナーにおける講演「歯科用バイオマテリアル研究の在り方-Journal of Oral Rehabilitationサマースクールを踏まえて-」に基づくものである.“Oral Biomaterials-from material science to biology-the clinicalconsequences”をテーマとしたJournal of Oral Rehabilitationサマースクール2006における講演, ディスカッションを紹介し, それを踏まえて本邦ならびに本学会における歯科用バイオマテリアル研究を如何に推進すべきかについて論じた.
  • ICP教育者ワークショップを踏まえて
    櫻井 薫
    2007 年 51 巻 3 号 p. 541-545
    発行日: 2007/07/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    The First International Clinical Prosthodontics Educators Workshop が, 2006年10月30から11月1日までの3日間, ドイツのカールスルーエにある卒後研修施設the Institute for Advanced Dental Studiesにおいて開催された. 本稿は主にその内容を紹介することを目的とする.
    ワークショップ参加者は22ヵ国からの36名で, チューターは, ICP関係者15名であった. ワークショップの方法は, まず事前にメールにて2つのシナリオ, 36の参考文献リストおよび症例の概要を示すパワーポイントのデータが送付された.そしてワークショップ初日は第1症例に関する講義とスモール・グループ・ディスカッション, 2日目は第2症例に関する講義とスモール・グループ・ディスカッション, そして3日目は講義とワークショップのまとめが行われた.
    本学会も今後の歯科補綴学の発展をめざして, 教育者の能力開発を狙ったワークショップを開く必要があると考える. 単なる大人数を集めた一方的で古典的なセミナーを開催するのではなく, やはり教育効果のあるスモール・グループ・ディスカッション形式をとった受講者参加型のワークショップを学会として開催するべきであろう.
  • 小池 秀行, 山下 秀一郎, 橋井 公三郎, 中塚 佑介, 溝上 真也, 富田 美穂子, 浅沼 直和
    2007 年 51 巻 3 号 p. 546-555
    発行日: 2007/07/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    目的: 臼歯部咬合支持の喪失に伴う咬みしめ時の下顎頭変位の様相と矢状顆路傾斜角との関連性について検討を行った.
    方法: 健全歯列を有する19名の被験者に対して, 上顎歯列に適合するレジン製スプリントを装着し, 後方歯部分より両側性に順次これを切断することで, 擬似的な咬合支持喪失の条件を設定した. 6自由度顎運動測定装置を用いて, 各咬合条件における最大咬みしめ時の下顎頭変位, さらに矢状顆路傾斜角の測定を行った.
    結果:
    1.スプリントを装着後, 順次後方から咬合支持を喪失させると, 咬みしめ時の下顎頭変位量は大きくなる傾向にあったが, 喪失範囲の拡大とともに被験者間のばらつきが増大した.
    2.上下顎天然歯列同士の咬合接触状態における咬みしめ時の下顎頭変位量と, スプリント上での咬合支持喪失前後における咬みしめ時の下顎頭変位量の差との間には, 正の相関が認められた.
    3. 上下顎天然歯列同士の咬合接触状態における咬みしめ時の下顎頭変位量と矢状顆路傾斜角との間, さらに, スプリント上での咬合支持喪失前後における下顎頭変位量の差と矢状顆路傾斜角との間には, それぞれ負の相関が認められた.
    結論: 咬みしめ時の下顎頭の変位は, 矢状顆路傾斜角と関わりのあることが判明し, これは, 上下顎天然歯列の場合にも, 咬合支持喪失時においてもあてはまることが示唆された.
  • 三浦 賞子, 稲垣 亮一, 依田 正信, 木村 幸平
    2007 年 51 巻 3 号 p. 556-562
    発行日: 2007/07/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    目的: レヤリング法により製作するオールセラミック修復では, クラック発生を防止し, 強度のある修復物を製作する上で, コア材と前装用陶材の熱膨張率関係が重要であると考えられている.そこで, 酸化ジルコニウムを応用したオールセラミックシステム (cercon®smart ceramics, Degu Dent) で使用するコア材および前装用陶材について, 加熱時・冷却時の熱膨張の測定を行った.
    方法: 熱膨張の測定は, ISO規格9693に準じて行った. 試料数はコア材5個, 前装用陶材はデンティン色およびエナメル色を各10個, 合計25個用意した. コア材はCAMマシーンにてスキャニング後, 焼結を行った. 前装用陶材は, 焼成回数が2回と4回の試料を各5個製作した. 測定は, 赤外線縦型熱膨張計を使用し, ISO規格に準じて行った, 加熱時と冷却時の熱膨張収縮係数を算出し, その平均値の比較を行った.
    結果: コア材の熱膨張収縮係数は, 加熱時・冷却時ともに10.8×10-6/℃ であった. 前装用陶材の熱膨張収縮係数は, 9.3-11.1×10-6/℃ の範囲であった. コア材の熱膨張収縮係数は, 前装用陶材との間に-0.3-1.5×10-6/℃ の差がみられた.焼成回数が2回と4回の場合では, ほぼ同じ値を示した.
    結論: コア材と前装用陶材は亀裂発生の可能性が少ない熱膨張関係であることがわかった.
  • 丸山 満, 河野 正司, 澤田 宏二, 本間 済, 根岸 政明
    2007 年 51 巻 3 号 p. 563-571
    発行日: 2007/07/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    目的: 上顎臼歯の咬合面形態の変化が咀嚼能力に与える影響を明らかにする目的で, 可撤性橋義歯の咬合面形態を変化させ, 破砕性食品の代表であるピーナッツを被験食品として食物動態と食物粉砕能力を指標に評価した.
    方法: 被験者は顎口腔系に異常を認めない29歳の健常な男性で,(7) 6 (5) 可撤性橋義歯を装着し, その頬側咬頭は咬頭嵌合位で咬合接触し, 側方位は接触滑走する間隙量0mmを基準に, 頬側咬頭内斜面を0.5, 1.0, 1.5mmと削除した咬合面形態に設定した. 咀嚼能力の評価方法として, 3gのピーナッツを一定回数すなわち, 5, 10, 20回と咀嚼させた. 食物動態として頬側口腔前庭および舌側固有口腔それぞれの貯留率を求めた. 食物粉砕能力としては, 回収食品粒子のうち10mesh篩を通過した粒子重量の比率とした.
    結果: 上顎臼歯の頬側咬頭内斜面を削除して, 下顎頬側咬頭との間隙量を増加させると, 粉砕された食物の頬側口腔前庭への貯留率は有意に増加し, 一方, 舌側への貯留率は減少した. 粉砕度は, 間隙量0.5, 1.0mmでは有意差がなく, 間隙量1.5mmでは有意に低下した.
    結論: 上顎臼歯頬側咬頭内斜面と下顎臼歯頬側咬頭の間隙量を増していくと, 粉砕食物の頬側口腔前庭への貯留量が増加し, 舌側貯留量の低下と粉砕度の低い粒子が貯留する様相が観察された. 上顎臼歯頬側の咬合面形態は食物動態と食物粉砕能力に影響を及ぼすことが明らかとなった.
  • 河相 安彦, 矢崎 貴啓, 松丸 悠一, 先崎 孝三郎, 浅井 秀明, 今道 康夫, 伊藤 允人, 杉村 華織, 竹尾 藍, 朱 一慶, 伊 ...
    2007 年 51 巻 3 号 p. 572-581
    発行日: 2007/07/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    目的: 本研究の目的は総義歯学の授業で講義型学習 (以下LBL) と問題解決型学習 (以下PBL) 双方を経験した学生の自己学習および臨床推理能力に関する教育効果と授業・教員に対する評価の両教育形式間での比較検討である.
    方法: 総義歯学の授業を平成15年度入学の学生に, 平成17年度3年次前期にLBL, 平成18年度4年次前期にPBLにて行った. PBLは5回にわたり, 毎回1症例についてグループディスカッションを行い, グループによるまとめを2回, 個人レポートを2回および全体発表を1回という予定で進行した. 全体発表終了後, 教育効果および授業・教員に関する27項目のアンケートを行った.因子分析により質問項目の類型を行い, 各質問項目についてLBLおよびPBLの比較を行った (Paired-t).
    結果: 因子分析より質問項目は4因子に類型された. LBLとPBLとの間で「学習態度」について7項目中4項目, 「臨床推理能力」について全項目, 「授業内容」について7項目中5項目, 「教員評価・そのほか」について6項目中2項目, 合計27項目中18項目 (66.6%) でPBLが有意に高い値を示した.
    結論: PBLはLBLに比べ自己学習および臨床推理能力の教育効果の向上に極めて有効で, 授業に関する評価も有意に高かった. 一方, 同様の授業を受けることに学生は後向きで, 消極性解消法の検討が必要であると示唆された.
  • 前澤 周文, 若林 則幸, 横山 紗和子, 塩田 真, 鈴木 哲也
    2007 年 51 巻 3 号 p. 582-591
    発行日: 2007/07/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    目的: 天然歯による咬合支持が存在する歯列に装着したインプラントを支台とするクラウンにおいて, 咬合接触の強さの変化が歯と支持骨に及ぼす力学的な影響を, 解析モデルにより明らかにすることを目的とした.
    方法: 上下顎の第一大臼歯, もしくはどちらかをインプラントで置き換え, 周囲の骨を加えた二次元有限要素モデルを製作した. モデル各部は均質な弾性体とし, 歯根膜には非線形特性を付与した. 上顎骨上面を固定し, 下顎骨下部を上方に最大0.24mm移動させた. 咬合面には接触要素を付与し, 機能咬頭内斜面同士が最初に接触するよう設定した. 咬合面と骨に生じる最大相当応力をそれぞれ咬合面応力と骨応力として算出した.
    結果: 最大咬合力による咬合接触を基準として咬頭嵌合位での咬合調整を行うと, 上顎がインプラントの場合は0.10mm, 下顎がインプラントの場合は0.11mmだけ高さを調整する必要性が認められた. これにより, 装着後最大咬合力下でも両応力は天然歯の場合と同等に抑えられる一方, それぞれ最大咬合力の13.0%と15.8%以下では対合歯と咬合接触しないことが予測された.
    結論: 咬合調整時に大きな咬合力を発揮させ, これを基準としてインプラントを支台としたクラウンの咬合接触の強さが天然歯と同等となるよう咬合面の高さを設定すれば, 咬合面や支持骨に発生する応力集中が抑えられる. しかしこの場合, 軽度の咬合力下では同クラウンは咬合接触しない問題が示唆された.
  • 羽田 詩子
    2007 年 51 巻 3 号 p. 592-595
    発行日: 2007/07/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    症例の概要: 上顎左側中切歯の不良補綴物による審美障害を主訴に来院した. 上顎両側中切歯をEmpress (Staining technique) により修復した症例.
    考察: オールセラミッククラウンの製作にあたり, 天然歯の形態と色調の再現が重要である. 審美的, 機能的, 生物学的適合性に満足を得るためには, 診断用ワックスアップ, プロビジョナルレストレーション, 支台歯形成, 歯肉圧排などが重要なファクターであると考えられる。
    結論: 症例によっては前歯クラウンにStaining techniqueを用いることは有効である. 歯槽骨長からコンタクトポイント最下点までの距離が5mm以下であれば, 歯間乳頭が下部鼓形空隙を埋める形態となり, 審美的に満足のいく結果が得られる.
  • 櫻井 健
    2007 年 51 巻 3 号 p. 596-599
    発行日: 2007/07/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    症例の概要: 患者は, エナメル上皮腫摘出により左側下顎臼歯部が欠損した22歳の女性で, 咬合不安定感および咀嚼障害を主訴に来院した. 腫瘍摘出手術から4年以上経過しており, 再発の徴候がなく, 骨の状態も良好であったため, 同部に対してインプラント治療を行った. 上部構造には, 初期歯牙接触時に残存歯と同時接触する咬合を付与した.
    考察: 定期診査から, インプラントは良好な骨結合および歯周状態が維持されていると評価された. また, 最大随意咬みしめ時の咬合力を感圧フィルムを用いて解析した結果, 総咬合力および左右の咬合力バランスは, 健常有歯顎者とほぼ同等であった.
    結論: 腫瘍摘出部位へのインプラント補綴の応用は, 機能回復の有用な一手段と考えられる.
  • 藤野 陽子
    2007 年 51 巻 3 号 p. 600-603
    発行日: 2007/07/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    症例の概要: 抜歯および観血的処置はしたくないという患者の治療に対する要望があったため, 当初は上下部分床義歯で対応していたが限界を感じ, 患者に対しインフォームドコンセントを行いインプラントで対処することとなった.
    考察: インプラントと義歯を併用する場合, 粘膜, 天然歯, インプラントの被圧変位量の相違などにより問題を起こす可能性があることから長期的にメインテナンスを行う必要があると考えられる.
    結論: 本症例では, インプラントを適用することにより, しっかりとした咬合支持が獲得でき, 良好な予後が期待できるものと考える.
  • 小竹 雅人
    2007 年 51 巻 3 号 p. 604-607
    発行日: 2007/07/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    症例の概要: 患者は, 上下顎義歯製作を希望して来院した初診時60歳の女性である. 問診時に, 全身の発疹, 特に手足に重篤な発疹と, 薬物アレルギーと皮膚接触性の金属アレルギーの既往が確認された. これにより歯科用合金による金属アレルギーを疑い, パッチテストを行った. それによると, 多くの歯科用合金の成分元素に対し陽性あるいは擬陽性反応を示した, 口腔内の補綴物を除去し, CPチタン (以下, チタン) により補綴処置を行った結果, 全身のアレルギー症状が改善された.
    考察: チタンによる補綴処置後, 良好な予後を得ていることから本症例ではチタンの選択は適切と考えられた. 今後も定期検診を通じて全身の症状と口腔内状況の経過観察が重要と思われる.
    結論: 本症例では歯科用合金が全身的なアレルギー症状の要因のひとつと考えられ, チタンによる処置が有効であった.
  • 南 弘之
    2007 年 51 巻 3 号 p. 608-611
    発行日: 2007/07/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    症例の概要: 重度歯周病患者の上顎両側側切歯欠損に, 硬質レジン人工歯をポンティックとし, 金属スプリントで接着補強した補綴処置を行った.
    考察: 術後7年の間にポンティックやスプリントの剥離・脱落は認められなかった. 本法の利点は, 欠損部の審美的回復が即日可能なことである. また, 固定して動揺を改善したうえでスプリントを製作するため, 適合精度の高いスプリントを装着できることも長所である. さらに, 各接着界面に最適な表面処理を施したことも, 良好な術後成績に有効に作用していると思われた.
    結論: 本治療法により, 接着ブリッジや, 被覆冠を支台装置とするブリッジに匹敵する, 長期に渡って安定した術後の経過が得られた.
  • 村守 樹理
    2007 年 51 巻 3 号 p. 612-615
    発行日: 2007/07/10
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    症例の概要: 患者は37歳男性. 多数歯欠損による審美および咀嚼障害を主訴に来院した. 強い嘔吐反射を有するため, 処置に応じて静脈内および笑気吸入鎮静法を使い分けることにより, 全顎的な補綴処置が可能となった.
    考察: 鎮静法により歯科恐怖症と嘔吐反射を制御し, ブロックごとに補綴することにより, 患者固有の咬合関係を維持しつつ, 咀嚼機能の回復と審美障害の改善を固定性補綴装置のみで図ることができたと考える.
    結論: 治療後, 嘔吐反射の軽減を認めたことから, 嘔吐反射は心因性による影響が大きく, 医療従事者が嘔吐反射の要因を作らないように注意を払いながら治療を行う必要性を認めた.
feedback
Top