蘇生
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23 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 松本 恵理子, 松本 晶平, 室園 美智博, 渡邉 泰雄, 一色 淳
    2004 年 23 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2004/02/20
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
    PKCとCaMKIIは, 脳虚血による神経細胞内シグナル伝達において重要な役割を果たしている。PKC γとCaMKII-αは虚血により, 細胞質から細胞膜にトランスロケーションする。マウス断頭2分虚血モデルで, イソフルレン吸入群 (1, 2MAC) では, CaMKII-αのトランスロケーションは有意に抑制されたが, PKG-γには有意な影響を及ぼさなかった。このことから, イソフルレンは, CaMKIIのThr286のリン酸化を抑制すると考えられる。本研究結果から, イソフルレンはCaMKIIシグナルカスケードを介して脳保護作用を発現することが示唆された。
  • 木内 淳子, 阪上 学, 安部 剛志, 岡本 恭典, 野坂 修一
    2004 年 23 巻 1 号 p. 8-13
    発行日: 2004/02/20
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
    平成元年から12年までに法律雑誌に掲載された救急・蘇生領域の医療訴訟35判例を検討した。35判例は内因性疾患と外因性疾患に分類できた。内因性疾患では喘息の急性増悪の症例が最も多く, どの原因疾患においても半数が24時間以内に死亡していた。外因性疾患では交通事故を原因とする症例が多かった。内因性疾患では疾患の種類が限定されており, 処置の不備に関する訴えが多く, 半数が認容*されていた。外因性疾患では, 診断・診察の不備に関する訴えが最も多く半数が認容されていた。医療側に過失がある場合には, 死亡などの結果との間に蓋然性**が認められない時でも慰謝料が認められ, 医療側敗訴となっている症例があった。救急医療では, 病院の体制を含めて医療体制が医療訴訟の要因となると考えられた。
    *認容原告つまり患者側の請求が認められること。法令用語ではないが, 判決文でよく使用されている言葉。
    **蓋然性法律用語ではないが医療訴訟でよく使用される言葉。昭和50年最高裁判例のなかで, 医療訴訟における因果関係の立証についての説明で使用されている。蓋然性があるかないかで因果関係があるかないかを裁判では判断される。
  • 清水 敬樹, 杉田 学, 横手 龍, 関井 肇, 三宅 康史, 坂本 哲也, 清田 和也
    2004 年 23 巻 1 号 p. 14-17
    発行日: 2004/02/20
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
    2年間の縊頚44例を対象とし年齢, 性別, 精神科受診歴, 縊頚形態, ICU入室率, 転帰などを検討した。
    縊頚44例中, 来院時心肺停止 (CPAOA) は36例で4例 (11%) が心拍再開したが2週間以内に全例死亡した。精神科通院歴があるのは17例 (47%) で, 13例がうつ病であった。非CPAOA8例は全例が入院, 7例が社会復帰した。
    心拍再開した4例は全例死亡しておりそのうち3例は脳死に陥っており, 縊頚CPAOAは予後不良と考えられた。通常の蘇生後脳症との差は, 発見までの時間の長い点, もう一つは椎骨脳底動脈領域も完全閉塞し, 低酸素に強い脳幹もdamageが大きいことが関係している可能性がある。非CPAOAは8例中7例が, 社会復帰しており, 早期発見, 及び地域精神衛生活動が予後を向上させると思われる。
  • 下田 元, 佐藤 実, 城戸 幹太, 猪狩 俊郎, 岩月 尚文
    2004 年 23 巻 1 号 p. 18-21
    発行日: 2004/02/20
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
    術前の内科的心循環器系機能評価で特に異常を認めない患者の顎口腔再建術中に, 発作性に心室性頻拍が発生し心室細動に移行した。胸骨圧迫心マッサージを継続しながら電気的除細動を繰り返したが奏功しなかった。リドカイン, エピネフリン, アトロピンなどの薬剤併用にも反応せず蘇生し得なかった。病理解剖学的診断の結果, 特に右室に著明な菲薄化・拡張を認め拡張型心筋症の病態を呈していた。潜在していた心筋障害が, 薬剤・DCショックに反応性を示さなかった致死性不整脈発生の原因と考えられた。
    潜在性の病的心筋に対する内科的評価の限界を痛感させられ、無症候性症例の術前のリスク評価方法が当面する課題であると思われた。
  • 土屋 正彦, 浅田 章
    2004 年 23 巻 1 号 p. 22-26
    発行日: 2004/02/20
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
    長時間 (約15時間) の腹臥位の脊椎手術終了後, 仰臥位へ体位変換をした直後に心停止となった症例を経験した。自己心拍再開までに約80分間の閉胸式心マッサージを必要としたが, 後遺症もなく回復した。術後の肺シンチグラム検査で肺塞栓症による心停止であったことが判明した。長時間の腹臥位手術後の体位変換は, 肺塞栓症発症の誘因となり得る。肺塞栓症の術中の診断は容易ではないことから, 術中の突然の循環不全に対しては, まずその病態を疑うことが重要な治療戦略になる。
  • 五十嵐 孝, 平林 由広, 斉藤 和彦, 鈴木 英雄, 瀬尾 憲正
    2004 年 23 巻 1 号 p. 27-31
    発行日: 2004/02/20
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は65歳男性で, 腹痛と下痢を主訴に受診し, 急性膵炎の診断で入院した。翌朝までに腹痛は改善したが肝逸脱酵素値の上昇と, 低酸素血症と代謝性アシドーシスの進行を認めた。病歴の再度聴取で自宅のトイレで一過性に意識を消失して転倒していたことが判明し, 肺血栓塞栓症を疑い, 超音波検査と肺動脈造影で診断を確定した。血栓摘除術を行い, 良好な経過を得た。肺血栓塞栓症の診断では疾患を疑うことの重要性を再認識した。広範囲肺血栓塞栓症に対し血栓摘除術は有効な治療手段の一つである。
  • 浦松 可奈子, 三好 宏, 趙 成三, 郭 環, 吉富 修, 原 哲也, 澄川 耕二
    2004 年 23 巻 1 号 p. 32-34
    発行日: 2004/02/20
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
    血管造影室での心筋生検中に心室穿孔を生じ, 全身麻酔下緊急開胸止血術となった症例を経験した。本症例は, 経皮的心肺補助 (PCPS) を用いた全身麻酔下での緊急開胸止血術, および術後の持続血液ろ過透析 (CHDF) 等による集中治療で救命しえた。心室穿孔は, 心筋生検中の合併症として不整脈に次いで多く, 心嚢穿刺によって循環動態の改善しない症例は死亡する可能性もあるため, 補助循環下での開胸止血術を考慮することが必要である。
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