蘇生
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30 巻, 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
総説
  • 平出 敦, 石見 拓, 北村 哲久, 西山 知佳, 酒井 智彦, 林田 純人, 梶野 健太郎, 西内 辰也
    2011 年 30 巻 2 号 p. 72-76
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/13
    ジャーナル フリー
     病院外心停止の記録集計のプロジェクトは世界各地で実施されているが,規模の大きなprospective popula-tion-based studyの重要性が広く認識される。このようなプロジェクトは,エピストリーと呼ばれ,その知見は救急蘇生のガイドラインにも大きな影響力をもっている。従来の報告を検証したところ人口100万人以上のpopulation-based studyは,30あまり認められたが,最近,我が国から発信した国全体にわたるウツタイン統計は,特筆すべき報告である。今後,こうした病院外心停止の記録集計から価値の高い蘇生科学へのアプローチが展開することが期待される。
特別寄稿
  • 近藤 豊, 出口 宝, 乗井 達守, 本間 洋輔, 合志 清隆, 久木田 一郎
    2011 年 30 巻 2 号 p. 77-81
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/13
    ジャーナル フリー
     災害医療は災害の発生とともに発展してきた。大規模災害時に医療機関の対応能力を上回る医療が‘災害医療’の特徴であり,さらにトリアージなどの災害医療独自の考え方が存在する。わが国の災害医療は,発生する災害の種類と対応,災害対策チームから災害シミュレーション教育まで幅広く展開している。そして2011年3月11日,東北地方太平洋沖にてマグニチュード9.0の大地震・大津波が発生した。日本全土が震撼し,多くの医療機関が医療支援を行った。また福島原子力発電所から放射能が漏出し,その対応に現在も追われている。様々な問題があるものの,東日本大震災の教訓を生かし,今後わが国の災害医療体制がさらに発展していくことを望む。
原著
  • 岩下 義明, 林田 昌子, 下村 慶子, 杉浦 明日美, 緑川 新一, 伊関 憲
    2011 年 30 巻 2 号 p. 82-88
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/13
    ジャーナル フリー
     近年,来院時心肺停止症例の死因検索のため,死後画像診断の有用性が報告されている。しかし死後画像診断は未だ一般的ではなく,血液検査によって死因の診断を行っている施設も多い。今回われわれは,死後画像診断を用いてトロポニンI値(TnI)の測定意義を検討した。
     来院時心肺停止患者でトロポニン陽性となった患者35例のうち,少なくとも8例(22.9%)が急性心筋梗塞以外の疾患が原因で死亡しており,TnI陽性を持って急性心筋梗塞と診断することはできない。しかし,死後画像診断やカットオフを高値に設定することにより,トロポニンによる急性心筋梗塞の診断の特異度が上昇する可能性が示唆された。
  • 中嶋 裕, 原田 昌範, 村上 順一, 岡村 宏, 若松 弘也
    2011 年 30 巻 2 号 p. 89-93
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/13
    ジャーナル フリー
     目的 : 高齢者が心肺蘇生法講習会(以下,講習会)に参加した時の負担と知識の習得状況を調査した。
     方法 : 対象2010年1月~7月,山口県の離島在住20歳以上で講習会参加者である。調査方法は,自己記入式質問紙票を用いた。疲労と体の痛み,心肺蘇生の知識を講習会直後と1カ月後に,65歳以上と65歳未満で比較調査した。
     結果 : 講習会直後の疲労と身体的痛み(p=0.26,p=0.058),“胸骨圧迫の位置”“救急現場でまずすること”(p=0.34,p=0.77)について65歳以上と65歳未満で有意差はなかった。1カ月後の“救急現場でまずすること”は,65歳以上で有意に正解率が高く(p=0.002),“胸骨圧迫の場所”は有意な差はなかった(p=0.21)。
     結論 : 高齢者でも非高齢者と同様に講習会に参加でき,基礎知識も十分に獲得できる。
症例
  • 2011 年 30 巻 2 号 p. 94-97
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/13
    ジャーナル フリー
     A型急性大動脈解離を発症した49歳の男性において,急速に進行する高乳酸血症を経験した。周術期は平均動脈圧60 mmHg以上を維持し,体外循環中も2.2 l/min/m2以上の流量が得られていたにもかかわらず,代謝性アシドーシスが進行しpH 7.127,血中乳酸値は26 mmol/lまで悪化した。炭酸水素ナトリウム静注や急速輸血を行ったが,術後まもなくショックから心停止となり,蘇生処置に反応しなかった。腹部大動脈の解離によって起こった肝,腎虚血が高乳酸血症の原因と考えられた。肉眼的には腹部臓器に異常は発見できなかったが,術中心機能評価のため挿入していた経食道心エコーを用いて,大動脈分枝の血流を観察できていれば,循環障害を早期に診断できた可能性がある。
  • 角田 博, 出原 郁, 安本 和正
    2011 年 30 巻 2 号 p. 98-101
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/13
    ジャーナル フリー
     転倒により口にくわえた箸が喉に突き刺さり,一部折れて遺残し,先端が延髄下部の硬膜まで到達した症例を経験した。
     箸による小児の事故例のほとんどは軽症で済むが,稀に中枢神経系,血管系,呼吸器系等の損傷により,致命的な病態に陥る。なお,中枢神経系の損傷については,解剖学的な構造により,延髄,上位頚髄,小脳等の損傷が生じ得るため,慎重配慮が必要である。
     このような事故が起こり得るという認識は重要であり,事故防止について市民への啓蒙活動を進めるとともに,事故が生じた際の医療行為や医療体制についても,様々な角度からの検討が望まれる。
  • 八木下 健
    2011 年 30 巻 2 号 p. 102-105
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/13
    ジャーナル フリー
     ペースメーカ挿入患者に対する全身麻酔下手術中に,難治性の低血圧を経験した。患者は60歳代の男性で,右側歯性上顎洞炎にて上顎洞根治術が全身麻酔下に予定された。既往歴として高血圧,労作性狭心症,高脂血症,前立腺肥大,完全左脚ブロックがあり,さらにIII度房室ブロックに対してディマンド型の永久ペースメーカが挿入されており,DDDのモードで管理されていた。前投薬としてミダゾラムを静脈内投与し,電気メスを使用する可能性があったため,術前にペースメーカモードDDDからVOOの固定レート70回/分に変更した。麻酔導入はミダゾラム,レミフェンタニル,プロポフォール,ロクロニウムの静脈内投与で行い,経口挿管後,レミフェンタニル,プロポフォールで維持した。静脈麻酔中に収縮期血圧60~70 mmHgの低血圧が持続したため,メトキサミンにて対処したが,思うような昇圧は得られず,ドパミン持続投与により手術終盤で血圧は徐々に回復した。手術時間67分,麻酔時間107分で終了し,手術室退室時にペースメーカモードVOOからDDDに変更し帰室した。
     ペースメーカ患者においては電気メスの電磁干渉を避けるためVOOやDOOのペースメーカモードが推奨されているが,VOOはレミフェンタニルによる低血圧を助長する可能性があるため注意を要する。また,ペースメーカ挿入患者では周術期の心機能評価や,術前のペースメーカモード変更テストが有用であると思われた。
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