筆者はジャーナリストの立場から,心肺蘇生を含めた終末期医療について言及する。DNAR(Do not attempt resuscitation)という言葉は医療現場に浸透しているが,一般国民の間で自身や家族の心肺蘇生も含めた終末期医療について語ることはいまだにタブーとして敬遠される雰囲気がある。医療機関内では事前指示書を作成しようという雰囲気が高まり,国民の間では“終活”ブームにともない「エンディングノート」などのツールも出回るようになったが,どちらにしても,本人の死に向かう心身の過程や意思決定のプロセスがなおざりにされている印象を受ける。患者にとって最も重要な死生観や人生観などの「価値観」を意識化した上で,終末期医療について考え,家族や医療者と共有し,満足いく意思決定支援を行うにはどうすればいいか。1990年代後半にアメリカで始まった「Advance Care Planning」をヒントに考える。