敗血症治療は,バンドルを用いた標準化による患者の生命予後を改善する取り組みに加え,質の向上(早期覚知,antimicrobial stewardshipや薬物動態/薬力学を考慮し薬剤の特徴に基づいた抗菌薬治療,輸液反応性をモニタリングしながら行う輸液蘇生等)についても診療ガイドライン1) 2)にて扱われるようになった。近年,敗血症性心筋症,血液浄化が有効な患者背景や非挿管による呼吸管理等について新たな知見も得られている。本邦では敗血症の治療は集中治療室で行われることが多いので呼吸・循環補助や血液浄化療法等,高度な治療を提供し新たな知見についても対応し患者予後が改善される可能性がある。
自動体外式除細動器(AED)は心電図解析から電気ショックまでの間(胸骨圧迫非適応期間),胸骨圧迫を中断することを指示するが,救助者がこの指示に従っているかは不明である。目的:救助者が胸骨圧迫非適応期間に胸骨圧迫を中断しているかを明らかにすること。方法:AED内部記録情報から電気ショック施行事象を抽出し,胸骨圧迫中断について検証した。結果:心電図解析中の胸骨圧迫は888事象のうち20事象で認められ,そのうち1事象では電気ショック時にも胸骨圧迫が行われていた。結論:AEDの指示通りに胸骨圧迫を中断していない事象が2.3%存在した。心肺蘇生教育やAED機能の改善が望まれる。
直腸潰瘍は多量の下血を来すことがあり出血に難渋する症例も散見される。症例は70歳代,男性。侵襲性肺炎球菌に起因した肺炎・敗血症性ショックに対し入院加療中であった。第21病日に多量の新鮮血下血を来した。急性出血性直腸潰瘍と診断し,内視鏡的止血を行った。第28病日に再出血した。内視鏡的止血に難渋し外科的止血を行った。第38病日よりPantoea septicaによる菌血症状態となった。第47病日と第53病日に再出血を認め,その都度内視鏡的止血を施行した。第56病日に止血及び便汚染回避のため人工肛門を造設した。以降再出血なく菌血症から離脱し全身状態は改善した。人工肛門を造設したことで出血・感染症治療に対して良好な転帰を得た症例を経験した。
気管切開術は上気道狭窄,気道浮腫等による抜管困難症例,呼吸不全症例等に施行される外科的気道確保である。術者と気道管理を共有するという面においては麻酔科医の術中の存在意義は大きいと思われる。
今回,挿管管理されており,抜管困難と判断された症例に対する気管切開術の麻酔管理において術中換気困難に陥り,最終的には気切カニューレによる気管後壁穿孔という,比較的まれな合併症により,救命出来なかった症例を経験した。
このような症例に遭遇した時は,術者,麻酔科医とも疑いの眼を持ち,適切に対処することが重要であると痛感させられた。
参加したICLSアシスタントインストラクターが,自分の現場で行動変容を起こすきっかけになることを目的に,新たなコースデザインを用いてICLS指導者養成ワークショップを開催した。新たなデザインとして,シナリオ作成,α/βテスト,ビデオ・デブリーフィングのセッションを取り入れた。WS参加者はシナリオ完成までの過程における自らの行動につき新たな気づきを自覚した。その後,WSに参加した4名が,新たにICLS認定インストラクターとなり,院内スタッフ対象のICLSコースにインストラクターとして,そのインストラクション手法にWS参加の経験を活用する兆しを見せた。今後もWSデザインを考案,実践し続けることがICLSコースの維持発展にも寄与するものと考える。