日本鼻科学会会誌
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51 巻 , 4 号
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原著
  • 小林 正佳, 三輪 高喜, 黒野 祐一, 丹生 健一, 松根 彰志, 内田 淳, 都築 建三, 近藤 健二, 志賀 英明, 藤尾 久美, 松 ...
    2012 年 51 巻 4 号 p. 445-449
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/27
    ジャーナル フリー
    アリナミン注射液®を用いた静脈性嗅覚検査の問題点として,血管痛とアリナミン臭の嗅感消失後に再びその嗅感が出現することが指摘されている。この対策として,アリナミン原液2mlを生理食塩水10mlに希釈し,全体で12mlの液を40秒かけて注射する方法が良いという報告がある。本研究はこの新しい方法(希釈法)を多施設において施行し,現行の静脈性嗅覚検査(原法)よりも普遍的に有用であるかどうかを検証する目的で施行した。対象は15施設で募集した嗅覚正常者143人で,これを従来通りの原法と希釈法の2群に振り分けて静脈性嗅覚検査を施行し,潜時と持続時間,検査中の血管痛の有無,アリナミン臭の嗅感消失後嗅感再出現の頻度を比較検討した。その結果,各検討項目において原法と希釈法との間に統計学的有意差を認めなかった。以上より,希釈法は原法の短所を有意に改善した方法とは言えないので,静脈性嗅覚検査の現行方法を希釈法に置き換える必要はないと考えられる。
  • 野々田 岳夫, 細田 泰男, 大谷 真喜子
    2012 年 51 巻 4 号 p. 450-454
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/27
    ジャーナル フリー
    鼻腔の重要な機能に加温・加湿機能があるが,日常診療で簡便に検査できる方法はない。一般に冷たい外気を鼻で吸入しても,上咽頭では温度30°C前後,湿度90%前後に加温加湿され,潤いある空気が下気道に入る。一方,口には鼻腔ほどの加温・加湿機能はないため,冷たい乾燥した空気が直接下気道に入りやすく,気管を痛める原因となる。鼻腔の加温・加湿機能を評価するためには,狭い鼻腔内にセンサーを挿入する必要があるが容易ではない。そこで我々は,呼気に着目した。呼気で肺から鼻や口で呼出されるまでに,どれくらいの呼気中の水分が粘膜に回収されたかを水分回収率と定義した。この呼気の水分回収率が高いほど次の吸気の加湿に有利ではと考えた。(対象と方法)今回,我々は鼻腔所見が正常な18人(男性8人,女性10人)を対象に,鼻と口の水分回収率,鼻へ血管収縮薬噴霧後の鼻の水分回収率を測定し比較した。(結果)鼻の水分回収率は,口より有意に高くなった(p<0.001)。また,鼻に血管収縮薬を噴霧すると,鼻の水分回収率は噴霧前に比べて有意に低下することがわかった(p<0.01)。(まとめ)このことは,通常鼻呼吸のみでは鼻が乾いた感覚は出現ないのに対し,口呼吸や鼻へ血管収縮薬を噴霧すると,口や鼻が乾きやすくなることと矛盾しない。呼気の水分回収率は,次の吸気で利用できる水分を反映するため,鼻腔での加温・加湿機能評価の一助になると考えた。
  • 竹内 裕美, 加瀬 康弘, 内藤 健晴, 堀部 晴司, 大木 幹文, 岡本 牧人, 竹内 万彦, 千葉 伸太郎, 中島 逸男, 片田 彰博
    2012 年 51 巻 4 号 p. 455-461
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/27
    ジャーナル フリー
    鼻閉は副鼻腔炎の主症状の1つであり,内視鏡下副鼻腔手術による鼻閉の改善度の客観的評価は手術技能の重要な指標の1つになると推察される。本研究では,鼻副鼻腔手術前後の鼻腔通気性の変化を鼻腔通気度検査法と音響鼻腔計測検査法を用いて測定し,これらの検査が内視鏡下副鼻腔手術の技能評価の客観的な指標となるか検討した。
    鼻中隔矯正術・鼻甲介切除術,内視鏡下鼻副鼻腔手術I~IV型を行った212例(男性158例,女性54例,平均年齢48.9歳)を対象として,手術前後に鼻腔通気度検査(211例)と音響鼻腔計測検査(102例)を行い,鼻腔抵抗,最小鼻腔断面積(MCA),0-5cm鼻腔容積の変化について検討した。症例数の内訳は,鼻中隔矯正術・鼻甲介切除術40例,内視鏡下鼻副鼻腔手術I型11例,II型11例,III型68例,IV型84例であった。
    鼻中隔矯正術・鼻甲介切除術,両側手術(III型,IV型),片側手術での統計学的解析では,両側IV型手術におけるMCAを除き全ての術式で手術前にくらべて鼻腔抵抗の低下,MCAおよび0-5cm鼻腔容積の増加を認めた。副鼻腔手術単独施行例と鼻中隔矯正術・鼻甲介切除術などを併施した症例を比較したが,単独施行例でも有意な変化を認めた。
    以上の結果より,内視鏡下鼻副鼻腔手術によって鼻腔抵抗が低下し,MCAと0-5cm鼻腔容積が増加することが確認できた。簡便で非侵襲的な鼻腔通気度検査と音響鼻腔計測検査は,内視鏡下鼻副鼻腔手術技能の客観的評価法の指標の1つとして有用である。
  • 南 和彦, 土師 知行
    2012 年 51 巻 4 号 p. 462-467
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/27
    ジャーナル フリー
    頭頸部領域の血管腫は口唇,舌などの顔面軟組織に多く認められるが,鼻副鼻腔からの発生はまれで,本邦におけるまとまった報告は少ない。当科で経験した鼻腔血管腫例について検討し,本邦における過去の報告と併せて若干の文献的考察を加えて報告する。
    2007年11月~2011年10月までの4年間に倉敷中央病院,耳鼻咽喉科・頭頸部外科で治療し,病理学的に血管腫と診断された16例について検討した。毛細管性血管腫(capillary hemangioma)7例,化膿性肉芽腫(pyogenic granuloma)9例であった。下鼻甲介(7例)や鼻中隔(4例)からの発生が多かった。平均年齢47.6歳(16~71歳)で,50~60歳代に多かったが,性差はなかった。主な症状は鼻出血と鼻閉で疼痛を訴えた症例はなかった。すべての症例で鼻内アプローチでの切除術を施行し,再発は認めていない。1例で術前の選択的塞栓術を施行し,術中の出血を制御できた。
    我々が文献的に渉猟し得た範囲で1980年以降に本邦で報告されている組織学的に鼻副鼻腔血管腫と診断された症例は65例あった。これらの症例と今回我々が経験した16例について組織学的分類や臨床的特徴について検討した。血管腫の分類はいまだに確立されておらず,分類と用語に混乱があるため,統一を図ることが望まれる。
  • 福入 隆史, 竹野 幸夫, 河野 崇志, 上田 勉, 立川 隆治, 有廣 光司, 平川 勝洋
    2012 年 51 巻 4 号 p. 468-473
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/27
    ジャーナル フリー
    小細胞型未分化癌は頭頸部領域において非常にまれな疾患である。食道領域などでは早期から広範囲に転移を来しやすく予後も極めて不良であり,現在まで確立された標準治療はない。今回,極めてまれな蝶形骨洞原発の小細胞型未分化癌の一症例を経験したので報告する。症例は71歳,女性。持続する鼻閉と繰り返す鼻出血のため近医を受診した。鼻咽腔ファイバーとCT画像にて鼻腔から蝶形骨洞に広がる腫瘍性病変を指摘され当科紹介となった。
    経鼻的な内視鏡下腫瘍摘出術および頸部リンパ節郭清術を施行した。病理組織学的検査では瀰漫性に浸潤増殖する腫瘍組織を認め,免疫染色ではS-100,CD56,AE1/AE3が一部陽性であり小細胞型未分化癌の診断に至った。術後に化学療法(CPT-11+CDDP)と放射線療法を施行した。退院後に縦隔と腹腔内転移が発症したが,現在まで外来にて緩和治療主体とした医療を継続中である。今回経験した副鼻腔原発の一例を報告すると同時に,若干の文献的考察を加えた。
  • 中川 隆之, 児玉 悟, 小林 正佳, 荻野 枝里子, 坂本 達則, 伊藤 壽一
    2012 年 51 巻 4 号 p. 474-480
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/27
    ジャーナル フリー
    近年,嗅神経芽細胞腫に対する内視鏡下経鼻手術の有効性が数多く報告されているが,有効性検証を目的とした前向き臨床試験の報告はない。本研究では,将来的な前向き臨床試験の基準とする術式確立を目的として,内視鏡下経鼻手術を行った嗅神経芽細胞腫5例を対象とした後ろ向き研究を行った。対象は女性1例,男性4例であり,臨床病期はDulguerovの病期分類でT1,2例(Kadish A,1例,B,1例),T2,3例(Kadish C,3例)であった。内視鏡下経鼻手術では,篩骨洞天蓋,上,中鼻甲介,篩板,嗅糸の切除を原則とし,詳細な切除範囲は術中病理検査にて決定し,全例術後放射線治療を行った。病理組織学的な断端における腫瘍浸潤の有無,再発の有無,嗅覚温存,合併症について解析した。結果,12-51ヶ月の観察期間中再発は認められず,3例で嗅覚が温存され,術後合併症は認めなかった。病理組織学的には,篩板浸潤が疑われるT2,1例で嗅糸周辺硬膜にて腫瘍細胞が認められた。以上の結果から,篩板浸潤が疑われるT2症例では,より厳密な嗅糸を含めた硬膜の術中病理診断を行い,切除範囲を決定すべき事が示唆された。
  • 西川 仁, 日高 浩史, 工藤 貴之, 小林 俊光
    2012 年 51 巻 4 号 p. 481-488
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/27
    ジャーナル フリー
    2003年から2011年の9年間に入院加療を要した鼻出血症例203例の検討を行った。男女比は2:1で,50~70歳代に多く,また冬季から春季に多く,夏季に少ない傾向であった。出血部位は,部位不明47%,キーゼルバッハ24%,下鼻道および中鼻道が各々8%であった。初回時の止血方法は,ガーゼタンポン55%,電気焼灼29%,バルーンタンポン8%であった。再出血症例は46%に認められ,再出血なしの症例と比較して,キーゼルバッハ例や電気焼灼例の割合が有意に低く,出血部位不明例やガーゼタンポン例の割合が有意に高かった。基礎疾患および出血素因となる薬剤の服用は,再出血症例との関連がなかった。入院理由は,止血困難な絶対的入院適応が13%のみで,他は反復性のため24%,処置時意識障害22%,不安等の入院希望13%と経過観察目的の入院が多かった。平均入院期間は7.8日であり,再出血症例で10.4日,再出血なしの症例で5.8日であった。経過観察目的入院の症例でも再出血例が多く,また,再出血症例の全てが4日以内の再出血であり,入院経過観察期間として4日間(5日目の退院)が妥当と考えた。出血部位不明症例の初回治療はガーゼタンポン67%(再出血率74%),バルーンタンポン15%(再出血率50%)であったが,54%に入院中出血部位が判明できた。迅速に対応し出血部位を同定できることが入院加療の利点と考えた。
  • 阿部 郁, 岡野 光博, 橘 智靖, 濱田 浩司, 西﨑 和則
    2012 年 51 巻 4 号 p. 489-494
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/27
    ジャーナル フリー
    【はじめに】線維性骨異形成症(Fibrous dysplasia:FD)は,線維性結合組織の増殖と未熟な骨梁の新生を特徴とする非腫瘍性の進行性骨疾患である。我々は,内視鏡下に減量手術を施行し著明な鼻閉の改善が得られた鼻副鼻腔FD症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。
    【症例】36歳男性。主訴は右鼻閉と鼻漏。4年前に右鼻閉の増悪があり近医耳鼻咽喉科を受診。FDの可能性を指摘されたが,手術では視神経損傷の危険性があるとの説明を受け経過観察を選択した。3年前に別医療機関にてセカンドオピニオンを求めるも,同様の判断であった。2カ月前より右鼻閉が更に増悪したため,精査加療目的に岡山大学病院耳鼻咽喉科を紹介受診となる。CTおよびMRIにて,右鼻腔内に右眼窩壁および頭蓋底を圧排する骨硬化性病変を認めた。患者の希望が鼻閉の改善であること,また完全切除には合併症のリスクが高いため,内視鏡下にFDの部分切除を施行した。減量手術にて病変の内部成分を減量した後,外殻成分を周囲から剥離し切除した。術後は合併症を認めず鼻腔は開存し,鼻閉の改善における患者満足度も十分に得られた。
    【考察とまとめ】頭蓋顎顔面FDの治療法は,病変の部位,手術に伴う侵襲性,および治療の目的などを考慮して選択する必要がある(Chen YRら,Plast Reconstr Surg 1990)。減量手術は鼻副鼻腔FDの部分切除を施行するにあたって,有効かつ安全な方法と思われた。
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