日本鼻科学会会誌
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52 巻, 2 号
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原著
  • 平位 知久, 福島 典之, 宮原 伸之, 中下 陽介
    2013 年 52 巻 2 号 p. 137-142
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/01
    ジャーナル フリー
    原発性線毛運動不全症(primary ciliry dyskinesia;PCD)は,常染色体劣性遺伝による先天的な線毛の機能異常を病因とする。今回,内視鏡下鼻内手術後に病態が判明したPCDを2例経験した。
    症例1は,26歳女性。慢性副鼻腔炎と左慢性中耳炎に対して,内視鏡下鼻内手術と左鼓室形成術を施行した。症例2は,19歳男性。慢性副鼻腔炎,鼻中隔弯曲症に対して,内視鏡下鼻内手術を施行した。いずれの症例も,PCDと診断であることを診断しえたのは,術後も粘性鼻漏が継続するなどの経過不良であったため,術後にあらためて,下鼻甲介粘膜の生検を行ってからであった。両症例とも術前からみられた粘性鼻漏が,術後も変化なく継続し,術前診断の重要性を認識させられた。PCDの診断にあたっては,詳細な病歴聴取(幼小児期発症の肺炎罹患の既往),胸部X線所見で肺浸潤影,無気肺などの存在,副鼻腔CT所見で前頭洞および蝶形骨洞の発育不全または低形成,鼻症状(粘稠な鼻漏を大量持続性に認める),中耳炎の合併等があげられる。PCDであった場合,内視鏡下鼻内手術後も粘調な持続性鼻漏は改善されない可能性があり,術前に十分な説明が必要となる。
慢性副鼻腔炎に対する内視鏡下副鼻腔手術―新たな手術分類とその評価―
  • 春名 眞一, 友田 幸一, 黒野 祐一, 平川 勝洋, 三輪 高喜, 松根 彰志, 鴻 信義, 朝子 幹也, 竹内 裕美, 竹中 洋, 岡本 ...
    2013 年 52 巻 2 号 p. 143-157
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/01
    ジャーナル フリー
    目的:現在の慢性副鼻腔炎に対する鼻副鼻腔手術名を見直し,定型的な内視鏡下手術の術式分類を作成し,標準化をめざすことにある。さらにそれに基づいた治療効果の客観的評価法(自他覚症状・所見,画像検査,嗅覚機能検査,鼻腔通気度検査)を確立する。
    方法:内視鏡下(鏡視下)手術をI型(副鼻腔自然口開窓術),II型(副鼻腔単洞手術),III型(選択的(複数洞)副鼻腔手術),IV型(汎副鼻腔手術),V型(拡大副鼻腔手術)に分類した。新分類に対して日本耳鼻咽喉科学会専門医制度認可687施設に対してアンケート調査と各型の術前後の自他覚的機能評価を施行した。
    結果:アンケート調査の結果では約8割の施設がI~V型に分類するのは妥当と回答した。一方,手術分類と手術技術度との関係については,約3割の施設から異議が寄せられた。術後の自覚症状(嗅覚障害を除く)および内視鏡所見はすべての手術型で有意に改善した。CT画像でもII~IV型で有意な改善が認められた。嗅覚機能検査では,各型とも60%前後の改善率を示したが,術式によって有意な差は認められなかった。鼻腔通気度検査ではIV型のみ有意な改善が認められた。
    結論:新手術分類は,実際に施行されている内視鏡手術の術式分類として十分対応出来,術前後の自他覚症状の評価に有用であった。
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