遺伝性出血性末梢血管拡張症(Hereditary Hemorrhagic Telangiectasia, HHT)は,全身の粘膜,皮膚,内臓,中枢神経などの血管奇形病態を呈する疾患である。HHTは反復性の重篤な鼻出血をきたす。
鼻出血の程度は様々であるが,頻回の治療にも関わらず止血が困難であり,鼻出血を繰り返す症例も少なくない。今回,我々は,HHTの鼻出血に対し,放射線外照射が有効であった一例を経験したので,報告する。
症例は81歳男性で,幼少のころから長期にわたり鼻出血を繰り返しており,当院受診以前にも,アルゴンプラズマ凝固装置による焼灼術を受けるなど,鼻出血に対して頻回の治療を施行されたが,止血が困難であった症例である。我々は本症例に対して,放射線外照射による加療を行うこととした。放射線外照射は1回2Gy,1週間に5日,5週間で計50Gyを途中中断することなく継続した。最終照射の2週間後には,鼻内のタンポンガーゼをフリーにしても鼻出血は起こらず,鼻粘膜の異常血管も消失していた。照射終了8カ月後の現在も鼻出血は見られていない。重篤な鼻出血をきたすHTTの症例に対して,放射線外照射は有効な治療法と思われた。
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