日本鼻科学会会誌
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54 巻, 1 号
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原著
  • 野垣 岳稔, 古田 厚子, 小林 一女, 門倉 義幸, 洲崎 春海
    2015 年 54 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/05/27
    ジャーナル フリー
    【はじめに】感冒後嗅覚障害,特に重症例では改善率は悪いといわれている。中には治療により改善する例もあるが,詳しい検討は報告されていない。今回われわれは感冒後の嗅覚障害症例を対象とし,嗅覚脱失例を中心にその治療効果を検討したので報告する。【対象,方法】2002年1月から2009年12月までに昭和大学病院耳鼻咽喉科嗅覚外来を初診した患者を対象とした。感冒後の嗅覚脱失症例は171例であった。治療はステロイド薬の点鼻または漢方薬の内服を行い,ATP製剤,ビタミンB12製剤,亜鉛製剤の内服を併用した。【結果】改善率は治癒7例,軽快34例,不変130例であった。静脈性嗅覚検査の結果で分類すると,反応ありの場合のほうが改善率は高かったが,有意差はみられなかった。基準嗅力検査検知域値の結果でも有意差はみられなかった。ステロイド薬点鼻療法を170例に行い,5例治癒,22例軽快,143例不変であった。ステロイド薬点鼻療法が無効で漢方薬を内服した症例は68例あり,2例治癒,12例軽快,54例不変であった。【考察】今回の検討において,感冒後嗅覚障害で嗅覚脱失の場合でも治療により改善する症例があることが分かり,ステロイド薬点鼻が無効の場合でも漢方薬で改善する可能性があることが分かった。耳鼻咽喉科医は「嗅覚障害=ステロイド薬の点鼻」という固定観念をなくし,少しでも多くの患者により良い治療をできるよう努めなければならない。
  • 奥村 仁, 石岡 孝二郎, 上田 裕子, 野村 智幸
    2015 年 54 巻 1 号 p. 7-12
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/05/27
    ジャーナル フリー
    2003年4月から2011年3月までの8年間に当科を受診し,厚生省難治性血管炎に関する調査研究班による診断基準に基づき,多発血管炎性肉芽腫症(GPA)と診断された10例(疑い例2例を含む)を検討した。年齢は21~74歳(平均58.4歳)であり,性別は男性6例,女性4例であった。上気道,肺,腎のすべての主要症状がそろった全身型は3例であり,限局型は7例であった。主に鼻副鼻腔CT所見,鼻粘膜生検結果について解析した。鼻副鼻腔CT所見では10例中8例で副鼻腔に陰影があり,通常の副鼻腔炎では認められることの少ない腫瘤形成や骨破壊像,骨肥厚像を5例で確認した。鼻副鼻腔CT所見のみでは確定診断には至らないが典型的な副鼻腔炎とは異なる所見であり,GPAと診断するために有用であると考えられた。鼻腔より生検を施行した症例は6例あり,このうち4例にGPAに矛盾しない所見を得た。これらの症例の中で視診上は鼻粘膜に異常所見を認めなかったが,盲目的生検を行った症例が2例あり,ともにGPAと診断できた。この2例は内科より生検依頼にて受診し,全身的な合併症が多数あるため,低侵襲で止血も比較的容易な盲目的鼻粘膜生検を選択した。生検の際には,CTにて副鼻腔陰影を認めた近傍の鼻腔粘膜より生検を行った。視診上は鼻内に明らかな異常所見がなくとも鼻粘膜生検が診断の一助となり得ると考えられた。
  • 近藤 律男, 吉冨 愛, 阿部 和也
    2015 年 54 巻 1 号 p. 13-17
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/05/27
    ジャーナル フリー
    比較的まれなティッシュペーパーを核とした鼻石症を報告する。鼻内異物については,小児患者の救急疾患としてしばしば遭遇する疾患であるが,本症例は幼少時の鼻内へのティッシュペーパー挿入のエピソードから20年以上経過し,ティッシュペーパーが核となり鼻石となったと考えられる。主訴は鼻が臭う,鼻汁,頭部の不快感であった。治療については,鼻石が大きく固かったため外来での摘出は不可能であり,全身麻酔下でハイマン鋭匙鉗子を用いて,砕きながら分割して摘出した。摘出した鼻石はティッシュペーパーと思われる繊維状物を核として,放線菌と思われる菌塊が被覆し石灰化していた。摘出のみで症状は軽快し,放線菌感染症には至っていなかったため,抗菌薬による治療は行わなかった。
  • 寳地 信介, 武永 芙美子, 髙橋 里沙, 橋田 光一, 高橋 麻由, 鈴木 秀明
    2015 年 54 巻 1 号 p. 18-24
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/05/27
    ジャーナル フリー
    脳瘤は先天的/後天的な頭蓋骨の欠損孔から頭蓋内容が頭蓋外に脱出して嚢瘤を形成した疾患で,脳瘤の内容が髄膜と髄液のみであれば髄膜瘤(meningocele),内部に逸脱した脳組織が含まれる場合を髄膜脳瘤(meningoencephalocele)と呼ぶ。今回,前頭蓋底から鼻腔へと脱出した髄膜脳瘤症例に対して,経鼻内視鏡下切除術を施行し,良好な経過を得ることが出来たので報告する。症例は1歳幼児。中耳炎にて受診した耳鼻咽喉科にて,右鼻腔内の腫瘤性病変を指摘され紹介受診となった。右鼻腔前方に赤色腫瘤性病変を認め,CT,MRIにて前頭蓋底前端部の骨欠損と,右鼻腔内に脳実質と連続性のある嚢胞構造を認め髄膜脳瘤と判断した。当院脳外科と共同で経鼻内視鏡下に髄膜脳瘤切除術,頭蓋底再建術を行った。2.7mmの細径の内視鏡にて鼻腔内を観察し,エンドループ®を右鼻腔前上方の脳瘤の茎部に誘導して結紮し,バイポーラにて焼灼しながら切離し,頭蓋底骨の欠損部を確認し最終的に基部で切離結紮した。鼻中隔粘膜を剥離翻転し頭蓋底を修復し手術を終了した。術後,髄膜炎・髄液漏や再発もなく経過良好である。鼻腔内に脱出する脳瘤のうち,本症例のように頭蓋欠損が小さな症例では,低侵襲で良好な視野が得られ,術後合併症のリスクの少ない経鼻内視鏡手術の良い適応であると考えられた。本症例の手術で使用したエンドループ®による結紮法は,低侵襲・安全性の面から非常に有用であった。
  • 北村 嘉章, 三好 仁美, 松岡 百百世, 藤井 達也, 松田 和徳, 武田 憲昭
    2015 年 54 巻 1 号 p. 25-30
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/05/27
    ジャーナル フリー
    鼻涙管下鼻甲介スイング法を用いて内視鏡下に摘出した上顎洞血瘤腫例を経験したので報告する。症例は63歳女性で主訴は右鼻出血。CTでは右上顎洞内に膨張性の発育を示す軟部組織陰影が充満し,上顎洞自然口付近から腫瘤中心部にかけて不均一な造影効果を認めた。MRIではT1強調画像で等信号域,T2強調画像で辺縁が低信号域,内部が低信号域と高信号域が混在した腫瘤を認めた。画像所見から血瘤腫を疑い血管造影で栄養血管を確認し,手術前日に塞栓術を施行した。内視鏡下副鼻腔手術により,腫瘤を一塊に切除する目的で鼻涙管下鼻甲介スイング法を用いて摘出術を行った。まず粘膜下下鼻甲介骨切除術を行った後,下鼻道側壁粘膜を剥離し,鼻涙管と下鼻甲介粘膜を一塊として温存した。次に鼻涙管と下鼻甲介を内側・外側へスウィングさせながら上顎洞内側壁を広く切除し,上顎洞を大きく開放した。鼻涙管と下鼻甲介を内側へスウィングさせることで,鼻涙管の前方を経由して上顎洞へアプローチし,上顎洞内の大部分を直視鏡下に弯曲の少ない手術器具を用いて処理でき,血瘤腫を一塊に上顎洞粘膜から切除した。鼻涙管下鼻甲介スイング法は,鼻涙管や下鼻甲介粘膜機能を温存して上顎洞内の処理を広い術野で直視鏡下に行うことが可能であり,血瘤腫などの上顎洞を主座とする腫瘤性病変に広く有用であると考えられた。
  • 牧原 靖一郎, 石原 久司, 宮武 智実, 津村 宗近, 野田 洋平, 檜垣 貴哉, 假谷 伸, 岡野 光博, 西﨑 和則
    2015 年 54 巻 1 号 p. 31-37
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/05/27
    ジャーナル フリー
    急性浸潤型副鼻腔真菌症は眼窩や脳内に進展し極めて難治性で予後不良な疾患である。今回,急性リンパ性白血病の寛解導入療法中に発症し,不幸な転機となった鼻脳型ムーコル症の一例を経験したため,文献的考察を加えて報告する。症例は74歳,女性。当院血液内科で急性リンパ性白血病と診断され,入院2日目より寛解導入療法を開始した。治療開始後から徐々に左視力低下,軽い左眼周囲の痛みを感じ,入院21日目より左眼瞼腫脹,複視を認めるようになり,25日目に眼科受診。左眼球運動の全方向への障害,左眼圧の上昇,左視力低下を認め,CTで副鼻腔炎からの左眼窩蜂窩織炎の疑いにて同日当科紹介受診した。両側鼻内,特に左鼻副鼻腔粘膜は大部分が黒色で壊死性変化をきたしており,病理検査でムーコル症の診断となった。診断後からリポソーマルアムホテリシンBの全身投与を開始した。左眼球摘出も含めたデブリードマンを勧めるも,患者とその家族が拒否したため,入院32日目に鼻副鼻腔内の病変部位を内視鏡下鼻副鼻腔手術にて可及的に除去した。左眼窩内への操作は行わなかった。術後からアムホテリシンBによる鼻腔内洗浄を開始した。入院33日目には左眼光覚消失,37日目より口蓋の穿孔,鞍鼻が生じた。入院96日目に急性細菌性肺炎生じ,98日目に永眠された。拡大手術を行い,薬物治療を併用したとしても根治する保証はない非常に予後の悪い疾患のため,できるだけの早期診断と治療開始が必要と考えられた。
  • 江川 峻哉, 北田 良裕, 石橋 淳, 高橋 郷, 寺崎 雅子, 嶋根 俊和
    2015 年 54 巻 1 号 p. 38-42
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/05/27
    ジャーナル フリー
    線維性骨病変は,骨形成性線維腫,線維性異形成症,セメント質骨異形成症に分類される。骨形成性線維腫はさらにjuvenile psammomatoid ossifying fibroma(JPOF)やjuvenile trabecular ossifying fibroma(JTOF)に分類され,JPOFは組織学的に良性の腫瘤であるが,局所侵襲性のある非常に稀な疾患である。今回我々は左篩骨洞に発生した腫瘤を内視鏡下に摘出術を施行しJPOFと診断した稀な症例を経験したので報告する。症例は7歳5か月の男児。2か月前より出現した左眼球突出のため当院眼科を紹介された。眼窩MRI撮影したところ左篩骨洞に充実性腫瘤を認めたため当科を紹介受診となった。腫瘤は38×24mmでMRI所見はT2強調画像で高信号,T1強調画像で軽度高信号であった。単純CTでは腫瘤内部は比較的高吸収値で周囲骨の膨隆性変化と左眼窩内側壁の圧排と一部壁の消失を認めた。視野欠損や視力障害などは認めなかったが,診断と治療目的で全身麻酔下に内視鏡下鼻内副鼻腔手術を施行した。腫瘤は弾性硬で周囲に骨性隔壁構造を有しており,内部は易出血性であった。眼窩内側壁が一部欠損し,出血も多かったため手術は診断目的を優先し眼窩側の骨性隔壁物は残して総中鼻道側の隔壁を除去し手術を終了とした。病理組織学検査でJPOFと診断した。
臨床ノート
第53回日本鼻科学会総会ならびに学術講演会
第21回日本鼻科学会賞受賞講演
  • 志賀 英明, 三輪 高喜
    2015 年 54 巻 1 号 p. 47-51
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/05/27
    ジャーナル フリー
    高解像度のMRI画像においても嗅上皮から嗅球にいたる嗅神経の傷害を十分に観察することは困難である。これまで我々はタリウム-201の経鼻的な嗅神経移行を動物実験で明らかとしてきた。タリウム-201は経静脈投与による臨床核医学検査での使用が認められており,一般的に安全性が高いトレーサーと考えられている。動物実験の後,SPECT及びMRIとタリウム-201経鼻投与によるSMTオルファクトシンチグラフィによって健常者において末梢嗅神経を画像化した。さらに我々は臨床試験において外傷性嗅覚障害,感冒後および慢性副鼻腔炎による嗅覚障害患者におけるタリウム-201の経鼻的嗅神経移行の低下を明らかとしてきた。また動物実験でインスリン様成長因子-1(IGF-1)経鼻的脳内輸送が嗅球除去により阻害されることを明らかとしアイソトープ付加IGF-1の経鼻投与による嗅神経の画像化の可能性を示した。
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