日本鼻科学会会誌
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54 巻, 2 号
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原著
  • 津田 武, 端山 昌樹, 吉波 和隆, 川島 貴之, 識名 崇
    2015 年 54 巻 2 号 p. 111-116
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/31
    ジャーナル フリー
    背景:上顎洞病変に対しての治療は低侵襲性の観点からESSを行う症例が増加しているが部位により操作や観察が困難という面もある。一方で従来のESSと比較しEndoscopic medial maxillectomy(EMM)といった術式は洞内の観察や操作を容易にする。この場合下鼻甲介を含む上顎洞内側壁を切除することから後遺症を引き起こす可能性がある。これらの問題を解決するため鼻涙管と下鼻甲介を温存しつつ上顎洞にアプローチする方法としてEndoscopic modified medial maxillectomy(EMMM)が報告され,そのアプローチを用いた手術の症例数も増加傾向にある。
    対象:2012年9月より2014年3月までに八尾市立病院耳鼻咽喉科を受診しEMMMを施行した患者11例を対象とした。
    結果:11例の疾患内分けは副鼻腔嚢胞5例,含歯性嚢胞2例,副鼻腔内反性乳頭腫4例であった。1例に術後出血を認めたが,鼻涙管の閉塞症状や頬部違和感・疼痛,鼻腔乾燥感,鼻閉といった後遺症は1例も認められなかった。全例術後の病変再発は認められなかった。
    結論:EMMMは広いワーキングスペースのもと大部分の上顎洞内操作を行うことが可能であり,術後の後遺症も非常に少なくメリットの多い術式と考えられた。
  • 雜賀 太郎, 兵 行義, 宇野 雅子, 森田 倫正, 原田 保
    2015 年 54 巻 2 号 p. 117-123
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/31
    ジャーナル フリー
    多発血管炎性肉芽腫症granulomatosis with polyangiitis(以下GPA)は,以前はWegener肉芽腫といわれた疾患であり,全身の小血管の壊死性血管炎,諸臓器に壊死性肉芽腫性病変を来たす全身性血管炎症候群である。本疾患は腎臓に病変を認める全身型と,認めない限局型に分類される。初発症状は上気道症状を来たすものが多く,様々な症状を主訴に当科を受診する。今回我々は頬部痛を主訴に受診し,急速に進行する副鼻腔病変を来たし,診断に難渋した限局型GPAの1例を経験したので報告する。症例は57歳,男性。右頬部痛を主訴としてX年8月に近医を受診し,急性副鼻腔炎として抗菌薬にて加療されるも改善せず9月当科紹介となった。同診断のもとX+1年1月内視鏡下副鼻腔手術を施行した。上顎洞内は膿汁を認め,慢性副鼻腔炎の所見であり術後経過は良好であった。しかし,その後症状の再燃を認め,抗菌薬で加療するも改善せず,術後1か月の副鼻腔CTにて上顎洞上壁に骨破壊を認めたため,精査目的に再手術を施行した。前回とは異なり,上顎洞粘膜は壊死を伴う白色の易出血性粘膜病変であり,術後病理では悪性所見は認めず炎症のみであった。術後精査した結果,GPAの診断に至った。鼻症状を呈さず副鼻腔に限局するGPAのため診断に難渋したが,全身麻酔下組織生検により確定診断に至り,比較的早期に治療開始でき,良好な治療経過が得られた。
報告
  • 神田 晃, 意元 義政, 小林 良樹, 岡崎 はるか, 川内 秀之, 友田 幸一
    2015 年 54 巻 2 号 p. 124-131
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/31
    ジャーナル フリー
    近年,本邦における臨床医の基礎研究力の低下が指摘されており,大学などの研究機関に所属する研究医の減少がその成因に寄与すると考えられている。そこで,日本鼻科学会学術講演会で,基礎研究に対するモチベーションの向上を目指して基礎ハンズオンセミナーを開催し,参加者にアンケート調査をおこなった。結果,97%が「今後もこのようなセミナーを積極的におこなっていくべきである」と回答した。また,研究をおこなっていくための問題点に関しては,研究時間,人員数,研究費などの環境要因が不足していることが明らかになった。さらに,本学術講演会の一般演題(口演やポスター)で発表された総数に対する基礎的な演題数の割合に関して検討をおこなったところ,2000年では28%であったが,その後漸減し2014年では10%まで落ち込んでいた。このことから,本学会の基礎的研究の演題数が減少していることが明らかになった。このように様々な環境要因で研究を遂行することが困難となっているため,学会が中心となってサポートしていく必要があると考えられた。学会が中心となってこのようなハンズオンセミナーを継続することによって,各個人の基礎的研究力の維持と向上が図られるだけでなく,各大学の横の繋がりも強化されることが期待された。
第2回嗅覚冬のセミナー記録集
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