鼻副鼻腔領域において,血管奇形は遺伝性出血性毛細血管拡張症(Hereditary hemorrhagic telangiectasia: HHT)を除いて比較的稀である。一般的に頭頸部の血管病変はリスクが低いケースも多く,手術による切除が選択されることが多い。我々は眼窩内及び副鼻腔内の血管奇形病変に対して血管内治療を施行した症例を経験したのでこれを報告する。
症例は26歳男性。右眼霧視,右眼球突出,右眼球結膜充血が出現したため当院紹介受診となった。CT,MRI,MRAを施行し,眼窩内病変は眼窩内動静脈瘻(arteriovenous fistula: AVF)と考えられたが,副鼻腔内病変との連続性の有無の判断は困難であった。
診断目的で血管造影を施行し,眼窩内AVFと眼窩内から篩骨洞に及ぶ動静脈奇形(arteriovenous malformation: AVM)と診断した。当院脳外科医にて血管内治療(Interventional Radiology: IVR)を施行し,両病変を塞栓した。
本症例では,眼窩内AVFと眼窩内から篩骨洞に及ぶAVMの合併例であった。過去に,眼窩内AVFの報告は数例見られるが,副鼻腔AVMの報告は我々が渉猟しえた限りでは過去に報告が一報のみであり,非常に稀と考えられた。
血管奇形病変についてはIVR専門医等と連携し,個々に治療方針を計画するべきである。大阪大学医学部附属病院ではOUVAC(Osaka University Vascular Anomaly Conference)という関連診療科(放射線科・形成外科・整形外科・小児外科・耳鼻咽喉科・脳神経外科・病理診断科など)での症例検討会があり,症例毎に治療方針を検討している。本症例でも脳外科医,IVR専門医との連携が不可欠であった。
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