日本鼻科学会会誌
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61 巻, 4 号
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報告
  • 原稿種別: 報告
    2022 年 61 巻 4 号 p. 599-600
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/23
    ジャーナル フリー
  • 戸嶋 一郎, 桑田 文彦, 細矢 慶, 鈴木 正宣, 中薗 彬, 清水 志乃, 意元 義政, 尹 泰貴, 清水 猛史, 原渕 保明
    原稿種別: 報告
    2022 年 61 巻 4 号 p. 601-606
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/23
    ジャーナル フリー

    日本鼻科学会では,鼻科学会会員を対象とした『鼻科基礎ハンズオンセミナー』を2014年より開催している。鼻科基礎ハンズオンセミナーは,研究技術の向上や研究に対するモチベーションの向上,そして各施設間の研究を通じた横断的連携を図る目的で企画された。本セミナーは,基礎研究を行っている全国の各施設の医師より構成されている。今回で8回目となる本セミナーを第60回日本鼻科学会総会・学術講演会,第20回Asian Research Symposium in Rhinology(大津)において企画した。今年度は,①ヒト気道上皮細胞・線維芽細胞の培養法~ヒト鼻粘膜を用いた基礎実験に繋げる~,②蛍光免疫染色法による鼻腔組織評価の実践,③非脱灰硬組織凍結切片作製法の手技の基本とポイント,④鼻腔組織からのRNA抽出およびquantitative PCR解析,をテーマとし,①②は例年どおり会場で直接手技を実演,指導する形式で行ったが,COVID-19の蔓延により,③④は事前に収録した動画を放映した。参加者に対するセミナー後のアンケート調査において,「本セミナーに満足した」,「今後の継続を望む」という意見を得ている。本セミナーは本邦から発信する基礎鼻科学の新知見に直結する有意義なセミナーと考えられた。

原著
  • 臼倉 典宏, 松根 彰志, 春名 良洋, 若山 望, 大久保 公裕
    原稿種別: 原著
    2022 年 61 巻 4 号 p. 607-615
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/23
    ジャーナル フリー

    【背景】難治性の鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎(chronic rhinosinusitis with nasal polyps; CRSwNP)に対する従来の治療は,内視鏡下鼻副鼻腔手術や全身性ステロイド薬の使用が基本であった。しかし,2020年3月から手術及びステロイド治療で制御不十分なCRSwNPに対して,生物学的製剤である抗IL-4/13受容体抗体のdupilumab(デュピクセント®)が本邦においても保険適用となり,治療体系に大きな影響を与えつつある。今回,当科におけるdupilumabの治療効果に関して比較検討を行った。

    【方法】2020年8月から12月の期間で,当科にてdupilumabの使用を開始した好酸球性副鼻腔炎の診断基準を満たすCRSwNP症例11例(中央値56歳,範囲35–74歳)に対して,前向き観察研究を施行した。評価指標はSNOT-22,鼻茸スコア,prednisolone使用量,末梢血中の総IgE(IU/mL),好酸球比率(%),vascular endothelial growth factor(VEGF),periostin,IL-4,IL-13,IL-33である。

    【結果】SNOT-22の総スコアは投与後22 or 24週時点で有意な改善を認めた(p<0.01)。鼻茸スコアは投与後2週時点で有意な改善を認めた(p<0.01)。dupilumab投与後,prednisoloneの内服は全例で中止できた。投与後平均13.3週時点で,末梢血総IgEは有意な低下を認めた(p<0.01)が,末梢血好酸球比率は全例で有意な上昇を認めた(p<0.01)。また,末梢血VEGFは,投与後有意な低下を認めた(n=9, p<0.05)。一方で,末梢血periostinとIL-4は,投与後有意な変化を認めなかった(periostin; n=10, p>0.1, IL-4; n=11, p>0.1)。IL-13,IL-33は測定感度以下で検出されなかった。

    【結語】dupilumab投与後,比較的早期の段階から臨床成績の改善を認めた。また,末梢血中の総IgEや好酸球比率,VEGFは開始時と比べて投与後有意な変化を認めた。

  • 佐藤 有記, 御厨 剛史, 田中 成幸, 武富 弘敬, 倉富 勇一郎
    原稿種別: 原著
    2022 年 61 巻 4 号 p. 616-621
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/23
    ジャーナル フリー
    電子付録

    アルギン酸ナトリウム粉末製剤(アルト原末®)は,限局した局所の止血に有用とされており,アルギン酸カルシウム同様,創傷治癒促進にも有用とされている。今回,内視鏡下鼻副鼻腔手術の術後のドレッシングとしてアルギン酸ナトリウム粉末製剤を塗布し,従来パッキングとして用いていたアルギネート創傷被覆材(ソーブサン®)との比較を行った。

    対象症例はアルト原末群が39例,ソーブサン群が47例であった。術中出血量,手術時間には有意差は認めず,術後通院回数はアルト原末群で4±0.8回,ソーブサン群で5±1.5回と,アルト原末群で有意に減少した(P=0.0004)。また,術後翌日からルーティンとしている副鼻腔の自己洗浄以外に,ミクリッツ上顎洞洗浄管での副鼻腔洗浄を必要とした症例が,アルト原末群では0例(0.0%),ソーブサン群では6例(12.8%)であり,有意差を認めた(P=0.021)。

    以上より,アルト原末®はソーブサン®に劣る結果は認めず,処置回数,通院回数に関しては有意な減少を認め,ソーブサン®にとって代わる有用なドレッシング剤であると考えられた。

  • 奥野 未佳, 川島 佳代子, 花田 有紀子, 河辺 隆誠, 山本 雅司, 田中 晶平, 髙岡 有理, 吉田 之範, 亀田 誠
    原稿種別: 原著
    2022 年 61 巻 4 号 p. 622-631
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/23
    ジャーナル フリー

    【背景】スギ花粉症に対する舌下免疫療法は本邦において2014年に保険適用となり,2018年には年齢制限が撤廃された。小児例について治療開始4年が経過した。今回2018年から2020年にスギ舌下免疫療法を導入した小児の患者を対象に,症状,QOLについて検討した。

    【対象と方法】2018年から2020年に大阪はびきの医療センターでスギ花粉症と診断し,舌下免疫療法を導入した15歳以下の小児患者を対象にスギ花粉飛散期に症状,QOLについて調査した。同時期に2021年スギ花粉飛散期より1週間以上前から抗ヒスタミン薬や点鼻薬を使用している患者を調査し比較検討を行った。

    【結果】大阪府におけるスギ花粉の飛散数について,2021年は例年よりやや多かった。2021年のスギ花粉飛散期に薬物治療群と比較し舌下免疫療法群では,症状スコア,QOLスコア,JRQLQ鼻症状薬物スコアは低値であった。

    【結語】スギ舌下免疫療法患者の2018年開始群,2019年開始群のJRQLQ鼻症状薬物スコアは薬物治療群よりも有意に低下していた。症状スコアでの鼻症状は有意差を認めなかったが,薬物治療群と比較しFaceスケールは2018年開始群と2019年開始群で,VASにおいては2018,2019,2020開始群で,それぞれ有意なスコアの低下を認めた。今後,長期の有効性についても継続的に観察する必要性があると考えられた。

  • 大國 毅, 山本 圭佑, 高野 賢一
    原稿種別: 原著
    2022 年 61 巻 4 号 p. 632-639
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/23
    ジャーナル フリー

    鼻中隔前弯に対する鼻中隔矯正術においては,鼻中隔尾側端からの手術操作を要し,hemitransfixion切開やopen septorhinoplatyアプローチによる手術の適応となる。軟骨性鼻中隔と骨性鼻中隔の発育不均衡,L-strutが接する前鼻棘の偏位,大きな上顎骨鼻稜,またこれらが複合要因となり構造上脆弱な鼻中隔軟骨尾側部に歪み,つまり前弯が生じるとされる。外鼻変形のない前弯は鼻中隔矯正術(鼻内法)の適応と考えられている。その際,余剰となる鼻中隔軟骨を適切な大きさにトリミングするため,鼻中隔尾側部と前鼻棘の接合を一旦離断,トリミング後に再固定するanchor sutureが必要となる。鼻内法ではワーキングスペースが狭く,縫合操作に難渋することが多い。

    今回われわれは,鼻中隔前弯に対する鼻中隔矯正術(鼻内法)の鼻中隔軟骨-前鼻棘再固定として,これまで報告されてきた8の字縫合法と新規縫合法であるDual Knot Fixation法を比較検討した。いずれの縫合方法でも,自覚的,他覚的に術後改善を認めた。anchor sutureに要する時間はDual Knot Fixation法のほうがより短時間であり,術者にとってストレスの少ない有用な手法と思われた。

症例報告
  • 山﨑 一樹, 花澤 豊行, 栗田 惇也, 三田 恭義, 新井 智之, 飯沼 智久, 大塚 雄一郎, 米倉 修二
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 61 巻 4 号 p. 640-647
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/23
    ジャーナル フリー

    内視鏡下に鼻副鼻腔腫瘍を切除するにあたって,重要な点の一つにワーキングスペースの確保と明視下に腫瘍基部を同定することが挙げられる。鼻中隔の開窓による両側鼻腔アプローチは非常に有用な方法であり,大きなワーキングスペースを得ることができるが,術後に大きな鼻中隔穿孔を生じるリスクがある。今回,頭側後方茎の鼻中隔粘膜弁挙上による鼻中隔の開窓により,内視鏡下に切除可能であった鼻腔粘膜悪性黒色腫を経験した。症例は70歳台の男性であり,右下鼻甲介から発生したと考えられる悪性黒色腫が前鼻孔から上咽頭まで充満していた。手術は全過程を内視鏡下に行った。頭側後方茎の鼻中隔粘膜弁挙上による鼻中隔開窓とmedial maxillectomyを行うことで,内視鏡と手術器具を操作でき,更には腫瘍を外側に移動させ得るワーキングスペースを確保した。これにより,腫瘍基部を下鼻甲介の後方内側粘膜と同定し,下鼻甲介ごと一塊切除を行うことができた。鼻中隔の開窓時に患側鼻中隔粘膜は切除したが,鼻中隔粘膜弁の切開ラインを工夫したことで術後の鼻中隔穿孔は軽微にとどめられた。

    頭側後方茎の鼻中隔粘膜弁挙上による鼻中隔開窓は鼻腔悪性腫瘍の切除において有効な手法と考えられた。

  • 川勝 大河, 安田 誠, 酒井 恵里香, 岡本 翔太, 冨井 美奈子, 平野 滋
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 61 巻 4 号 p. 648-655
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/23
    ジャーナル フリー

    滑膜肉腫は比較的まれな悪性軟部腫瘍である。好発部位は四肢関節近傍であり,頭頸部領域の発生はまれである。今回我々は鼻腔内に発生した滑膜肉腫の1例を経験した。症例は69歳,女性,左鼻出血を主訴に来院した。局所所見や画像所見から血管原生腫瘍を考え,生検は施行せず,内視鏡下腫瘍切除術を施行した。摘出した腫瘍の病理組織学的所見からは滑膜肉腫が疑われ,FISH法を追加で施行したところ,滑膜肉腫に特異的なSYT融合遺伝子の存在を示唆するsplit signalが検出されたため診断に至った。滑膜肉腫には特異的な画像所見はないとされ,また血管造影検査や細胞診での確定診断は困難とされる。滑膜肉腫の確定診断には病理組織診断や遺伝子学的診断が有用とされる。また,本疾患の治療の第一選択は外科的切除であり,十分な安全域をとって切除することが重要である。しかしながら,頭頸部領域では必ずしも十分な安全域を確保できるとは限らず,化学療法や放射線治療を組み合わせた集学的治療が選択される場合が多い。本症例では結果的にclose to marginとなったため局所制御目的に術後照射を施行した。術後2年4か月の現在,明らかな再発なく経過している。今後は定期的な画像検査を行い厳重に経過観察を行っていく方針である。

  • 辻村 慶, 端山 昌樹, 北村 公二, 永田 明弘, 前田 陽平, 河辺 隆誠, 花田 有紀子, 川島 佳代子, 猪原 秀典
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 61 巻 4 号 p. 656-662
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/23
    ジャーナル フリー

    多形腺腫は主に大唾液腺(耳下腺,顎下腺,舌下腺)から発生し,鼻腔原発の多形腺腫は稀である。頭頸部領域だけでなく鼻科診療においても多形腺腫の術前検査では臨床所見・画像所見と組織学的所見が一致せず,診断に難渋することがある。今回我々は鼻中隔を基部とした鼻腔多形腺腫を2例経験した。

    今回の報告でも,症例1では術前の生検にて扁平上皮癌と診断されたため,鼻外法にて摘出手術を行った。術後の病理検査の結果,多形腺腫と診断が確定された。症例2においては,生検1回目では乳頭腫が疑われ,臨床所見や画像所見と合致しないため,再生検を行ったところ多形腺腫との診断が得られた。内視鏡下に摘出手術を行い,摘出標本でも多形腺腫と確認された。診断に苦慮した鼻腔多形腺腫例の術前診断,特に生検方法と画像検査について文献的考察を含め報告する。

  • 大塚 雄一郎, 根本 俊光, 晝間 清, 山崎 一樹, 花澤 豊行
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 61 巻 4 号 p. 663-669
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/23
    ジャーナル フリー

    Kallmann症候群は低ゴナドトロピン性の性腺機能低下症を主症候に,先天性嗅覚障害などを副症候とするまれな先天性疾患である。症例は56歳男性。大腿骨骨折を契機に著しい骨粗鬆症が認められた。女性様顔貌や高い音声から性腺機能低下症を疑われた。変声期がなく思春期を経過,女性化乳房,陰毛が少ない,腋毛がないこと,さらに陰茎と睾丸の発育抑制が認められた。先天性嗅覚障害で静脈性嗅覚検査は無反応であった。MRIで嗅球が欠損し嗅溝の短縮を認めた。LH-RH試験でのゴナドトロピンの反応低値とテストステロンの分泌障害を認め,Kallmann症候群と診断された。嗅覚障害に対するステロイド点鼻薬は無効であった。骨粗鬆症に対してテストステロンの補充を行ったところ骨密度が正常化した。先天性嗅覚障害は生来嗅覚の経験がないため,患者に嗅覚の概念がないことを念頭に病歴を聴取することが重要である。Kallmann症候群の嗅覚障害には有効な治療法がない一方で,性腺機能低下症は治療が可能で,早期治療により生殖機能が獲得できる可能性もある。本症例は壮年期を過ぎて診断され,テストステロン補充により骨粗鬆症は著明に改善したが生殖機能の獲得は不可能であった。Kallmann症候群は早期診断と治療が患者のQOLを大きく左右するため,先天性嗅覚障害の診療における耳鼻咽喉科の役割が重要である。

  • 山崎 開, 戸嶋 一郎, 中村 圭吾, 大江 祐一郎, 清水 猛史
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 61 巻 4 号 p. 670-675
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/23
    ジャーナル フリー

    先天性梨状口狭窄症は鼻腔が著しく狭く鼻閉による呼吸困難を生じる。新生児は鼻呼吸に依存するため,鼻呼吸が障害されると容易に呼吸困難や哺乳不良をきたす。両側鼻腔に挿管チューブを留置することで治療し得た,先天性梨状口狭窄症例を経験した。

    症例は日齢53女児。他院にて出生直後より鼻閉と哺乳不良があり,体重増加不良が持続した。生後35日に陥没呼吸を認め,終日高流量鼻カニュラ酸素療法での管理が必要になった。鼻副鼻腔CT検査で両側梨状口最小幅が5.0 mmと高度の狭窄を認め,加療目的に生後53日に当院当科に転院した。鼻腔内視鏡検査で両側鼻腔入口部の狭窄を認め,先天性梨状口狭窄症と診断した。両側鼻腔に上咽頭まで鼻腔管を留置して成長に伴い鼻腔が拡大するのを待つ方針とした。生後59日にコーケン®経鼻エアウェイ(内径3.5 mm,外径5.0 mm)を両側鼻腔に挿入したが,経鼻エアウェイは圧排されて閉塞し鼻呼吸困難となった。そこで,Portex®気管内チューブ(右内径3.0 mm,左内径2.5 mm)に変更したところ呼吸状態は安定した。段階的に鼻腔管を太くしたのち,生後89日に両側鼻腔管を抜去し生後98日に退院した。両側の下鼻甲介と鼻中隔の部分癒着と鼻中隔穿孔を認めたが,生後1歳5カ月現在まで呼吸状態,経口摂取とも良好に経過している。

    高度の先天性梨状口狭窄症に対しては,両側鼻腔への硬度のある挿管チューブ留置が有効な治療法となりうる。

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