日本農村医学会雑誌
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35 巻, 2 号
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  • 河合 正計, 吉田 政雄, 古山 公英, 金子 芳洋
    1986 年 35 巻 2 号 p. 101-110
    発行日: 1986/07/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    りんご園において動力噴霧機によりフェニトロチオン(MEP)水和剤1,000倍液を散布した時の散布者の被ぼく量とその影響について検討したo散布者は不織布性防除衣, スミトモ3Mマスク, ゴム手袋などを着用した。推定全身被ばく量は散布時のノズル竿の長さにより異なり, 短い方(平均217mg)が長い方(平均44mg)より多かった。散布時の推定皮膚接触量は1.2-23.9mgで, MEPのラットにおける急性経皮毒性より考えても, また,散布者の口元付近の気中MEP濃度から考えても今回の散布条件は安全であると考えられた。
    散布直後の血液中では全員にMEPが検出(0.0004-0.0222ppm)され, 1日後では9名中4名に0.0004-0.0009ppm検出されたが, 3目および7日後には全員検出されなかった。
    体内に吸収されたMEP量を知るために, 尿中MEP代謝物のすべてをNMCとして測定した結果, 散布後24時間内では全員に0.19-1.43mg排泄されたが, 3日後のスポット尿では9名中1名(0.19ppm)のみ, 7目後では全員に検出されなかった。これらのことからMEPは迅速に代謝, 排泄されるが,散布により体内にごく微量ではあるが吸収されるので, 連日散布はできるだけさけるべきである。
    今回の散布条件においては今回の防護装備で, 安全に散布しうると考えられるが, できるだけ吸収農薬量を少なくするため, 散布後できるだけ早く, うがいや身体の洗浄をすることが望ましい。
  • 西山 邦隆
    1986 年 35 巻 2 号 p. 111-114
    発行日: 1986/07/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    農薬散布従事者が作業の際, 散布農薬の気道内への侵入など, 呼吸器曝露の程度を推定するなどの基礎資料とするため, 散布時に吸入する液剤農薬の微水滴粒子の粒度分布の測定を行なった。実施したMgO板(MgO粒子を微水滴粒子捕集剤とした測定板)とimpinger-人-呼吸量計システムムによる測定法は吸入液剤農薬の粒度分布測定法として, 一応, 満足すべき結果が得られた。吸入農薬の粒度分布は, 粒径1μ-66μ の幅に分布するが, 20μ 以下が全体の90%を占め, 主勢力は5μ-15μ で全分布の70%であった。
  • 平井 和光, 坪井 敬文, 鳥居 本美
    1986 年 35 巻 2 号 p. 115-122
    発行日: 1986/07/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    1頭あたり4mgのProthiofosまたはCyanofenphos, 1mgのChlorpyrifosの有機燐農薬を7日間隔で11回経口投与されたそれぞれのラット群を最終投与後1日目と2日目に屠殺した。血清脂質, 全血および血清ChE活性, 血清インスリン, 脂肪組織・肝臓・腎臓のChE活性およびリパーゼ活性そして肝臓AcylCoASynthetase活性を測定した。これらの有機燐農薬は血清ChE活性を抑制したほどに組織ChE活性の抑制は顕著ではなかった。組織リパーゼ活性に対しては, 肝臓リパーゼ活性をProthiofosが, 腎臓リパーゼ活性をCyanofenphosが抑制した。そして対照群, Prothiofos, Cyanofenphos投与群において脂肪組織のChE活性とリパーゼ活性の問に正相関を認めた。また, 腎臓においては, 対照群を含む実験群のすべてのラットでChE活性とリパーゼ活性の間に正相関を認めた。脂肪合成酵素である肝臓AcylCoASynthetase活性をCyanofenphosが抑制した。そしてProthiofos投与群においては肝臓ChE活性と本酵素間に正相関が認められた。血清脂質に対してはCyanofenphos, Chlorpyrifosがβ-リボ蛋白濃度を低下させたが, Prothiofosは影響を与えなかった。そしてこれらの農薬は血清インスリン濃度に影響を与えなかったのでリパーゼ, AcylCoASynthetase活性への作用はインスリンを介しての影響ではないことが示唆された。
  • 三原 修一, 上村 妙子, 小柳 敦子, 小山 和作
    1986 年 35 巻 2 号 p. 123-128
    発行日: 1986/07/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    近年パラコート中毒症例が増加しており, 清涼飲料水などに混入するような悪質な犯罪も出現し, 社会的問題となっている。
    熊本赤十字病院では, 過去4年間に59例のパラコート中毒症例を経験し, 39例が死亡している。服毒原因の過半数が自殺目的, 次いで誤飲であった。昭和57年9月より治療法を改善し, 救命率も7.1%から42.2%となり, 著明な効果がみられるようになったが, 他の農薬中毒に比して, いぜん高い致命率を示している。
    昭和59年に行なった地域住民に対するアンケート調査では, パラコート剤使用経験者は使用未経験者に比して, その毒性や事故に対する認織は高かったが, 満足するまでの結果には至らなかった。しかも本剤は, 簡単に購入できるばかりか, 購入時に取り扱い方の説明をほとんど受けておらず, また保管・管理方法にも問題があり, これらが事故発生を助長していると思われた。
    パラコート中毒は国民に募らせる不安も大きく, 今後強力な規制なしにパラコート剤を販売・使用することはきわめて危険であると考えられ, 本剤の取り扱いについて早急な行政対策が望まれる。
  • 白倉 外茂夫, 越知 富夫, 寺島 英一, 石橋 敏光, 中村 喜世子, 丸山 陽子
    1986 年 35 巻 2 号 p. 129-133
    発行日: 1986/07/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    人口約8,000人の当地域では, 1971年に県成人病予防-協会による胃集検が行なわれ, 以後保健センターによる人間ドック形式の-般検診・総合検診, 視触診による乳甲検診, 超音波診断装置を用いての肝胆膵検診などが行なわれ, 14年間に延べ38593名が受診した。
    これら検診をきっかけとして発見され, 手術を受けた疾患は90例92病変におよび, 悪性疾患は9疾患40例42病変, 良性疾患は11疾患50例である。その多くは, ことに悪性疾患は1978年以後の後半7年間に発見され, 予後は良好である。
    今回, これら検診の現状, 手術例の発見経路などについて検討し, 今後の方針についても述べた。
  • 末永 隆次郎, 前田 勝義, 山田 統子, 沖 真理子, 照屋 博行, 高松 誠
    1986 年 35 巻 2 号 p. 134-146
    発行日: 1986/07/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    過去のいちごハウス栽培者の健康調査成績から, いちご栽培作業では、腰部等への負担の大きいことが推測された。そこで、年間を通してのいちご栽培者の生活時間構造を明らかにするとともに、収穫i期における収穫作業と選果・箱詰作業について、腰部を中心とした労働負担の調査を実施した。作業姿勢の面からみると, 収穫作業においてはいちごの生物学的制約から中腰姿勢を強いられ, 選果・箱詰作業では畳の上などでの坐位姿勢が中心であった。そして, いちご栽培者の腰部等への負担を明らかにするために, なす栽培者を対照として自覚症状および疲労部位調査を実施するとともに, 脊柱の柔軟性の測定を行なった。その結果, いちご栽培者は腰部に関する疲労症状の有訴率が高く, 脊柱の柔軟性も劣ることが明らかとなった。次に, いちごの収穫時と選果・箱詰時の代表的.な作業姿勢を実験室内で再現し, 表面筋電図を用いて筋負担の程度を検討した。また, 収穫時に無意識にとられていた “肘一膝” 中腰姿勢については, 腰部等への負担軽減姿勢と考えられたが, 筋電図による解析結果と生体力学的解析結果とから判断して, この姿勢は筋負担の軽減よりも, むしろ腰仙関節にかかる力のモーメントの軽減, すなわち骨, 関節, 靱帯などに対する負担の軽減によるものと推測された。最後に, いちご栽培者の腰部を中心とする慢性局所疲労の軽減策について考察を加えた。
  • 樋口 郁夫, 杉本 光郎, 及川 幹夫
    1986 年 35 巻 2 号 p. 147-151
    発行日: 1986/07/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    私達は農協婦人部の健康管理活動の一環として, 農協婦人部の協力で, 過去10か月間に福島県会津地方の1市10町6村の甲状腺検診を施行した。今回, ある程度の成績が得られたので, 主な日本各地の甲状腺検診の成績と比較した。検診対象は, 女性2,025名, 男性456名, 合計2,481名であったが, 甲状腺腫を触れた人は女性204名 (10.1%), 男性4名 (0.9%), 合計208名 (8.4%) で, 釜石より甲状腺腫は少なく, 甲府および千葉より多かった。152名の二次検診の成績では単純性甲状腺腫35名 (23.0%), 亜急性甲状腺炎1名 (0.7%), 慢性甲状腺炎44名 (28.9%), バセドウ病8名 (5.3%), 結節性甲状腺腫64名 (42.1%) で, 慢性甲状腺炎と結節性甲状腺腫が71.0%を占めていた。他の地方でも, 二次検診の成績は私達と同様に, 慢性甲状腺炎と結節性甲状腺腫が多数を占めていた。慢性甲状腺炎では釜石が一番多く, 次いで会津, 甲府, 千葉の順であった。結節性甲状腺腫のうち, 腺腫および腺腫様甲状腺腫では会津は釜石とほぼ同率で, 甲府および千葉より多かった。また甲状腺癌では会津は釜石および甲府より少なかったが、千葉とほぼ同率であった。バセドウ病では会津は甲府および千葉より多かった。以上の成績から、会津地方の特異性は必ずしも認められなかった。
  • 柳沢 昭吾, 池田 昌伸, 松島 松翠
    1986 年 35 巻 2 号 p. 152-156
    発行日: 1986/07/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    集団検診のさいに, 血液の一部を利用して腫瘍マーカーを測定して癌の第一次スクリーニングができるのではないかと期待されているが, はたして実用上有効なマーカーはあるだろうか。それには, まず現行の腫瘍マーカーの正常値, 基準値を検討し, それに加えて各疾患の臨床値を測定して比較検討する必要があると考えた。とりあげた5項目の腫瘍マーカー, CEA, AFP, フェリチン, SCC, CA19-9は, いずれも当院で臨床検査実施中のもので, その結果は, 各マーカーには特有の傾向があり, CEAは大腸進行癌, AFPは肝癌, フェリチンは肝・肺癌, SCCは扁平上皮癌, CA19-9は膵癌の診断に役立つことがわかった。しかし癌特異性は必ずしも高くなく, 癌スクリーニングに用いる場合は慎重を要すると思われた。今後は, 原発性肝細胞癌の診断にAFPとフェリチンのコンビネーションアッセイが有用であったように, 各マーカーの組み合わせや, 他の血液・尿一般検査の結果とマーカー測定値とを組み合わせるなどして, 集団的癌スクリーニングの道をひらく方向があると考えられた。
  • 真田 勝弘, 加藤 奨一, 鴻野 雅司, 岡部 聡, 中島 和美, 平沼 進, 柴田 光一, 岡本 浩平, 登内 真
    1986 年 35 巻 2 号 p. 157-164
    発行日: 1986/07/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    昭和44年4月から昭和59年12月までの間に, 土浦協同病院外科に入院した1169例の胃癌患者のうち, 病歴を参照することのできた1142例について入院までの経路を検討した。発症から入院までの期間すなわち病間期, 当院受診以前の他院受診歴, 当外科への患者供給源, 病間期を遷延させる遅滞因子を患者側因子と医師側因子とに, また胃癌の進行度を早期癌と進行癌に分け, 進行癌からとくに切除不能症例をとり上げ比較検討した。病間期は平均4.53か月, 当院受診前に平均0.72か所のほかの施設を受診しており, 患者供給源としては当院内科からの紹介が60.5%, 他院からの紹介が20.2%と紹介されて来た患者が80.7%を占めた。遅滞因子では, 患者側因子 (+) が早期胃癌症例の20.5%, 進行癌症例の30.5%であり, 医師側因子 (+) は早期胃癌の11.0%, 進行癌の22.6%であった。遅滞因子 (-) の632例中にも143例 (22.6%) と, 遅滞因子 (+) 群と差のない切除不能症例があった。これらの症例に対する対策としては無症状のうちに検診を施行する必要がある。
  • Community-based school health の課題
    阿部 顕治, 福島 哲仁, 中川 昭生, 吉田 暢夫, 田川 智子, 山根 洋右
    1986 年 35 巻 2 号 p. 165-171
    発行日: 1986/07/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    島根県における学校保健活動をプライマリ・ヘルスケアの観点から分析し, その課題を明らかにするため, 養護教諭に対し調査を行なった。変貌著しい農村の学校保健を発展させるため, 養護教諭の専門性の確立, 研究・調査活動体制の整備, 体系的卒後教育の確立, 学校保健や地域保健を結ぶCommunity-based school healthの展開が緊要な課題であることを明らかにした。
  • 1986 年 35 巻 2 号 p. 172-174
    発行日: 1986/07/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
  • 1986 年 35 巻 2 号 p. 175-180
    発行日: 1986/07/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
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