われわれは, 1982年, 通常の散布作業に従事していた農婦がくり返す皮膚への付着と, それによる皮膚炎を契機に, 最終暴露後わずか3週間で死亡したことを報告した。
1983年には, 宮城県北3地区において, 肺機能を中心として男女111名の検診を行ない, フローボリュームで末梢気道障害を示唆するという指標での異常を認め, これも報告した。
今回われわれは, 農協の5つの婦人部と協力し40, 50代の非喫煙女子を対象にした疫学調査を行なった。パラコート散布者92名, 非散布者65名で, ともに無作意的に選出した。
健診内容は, 問診, 診察, 肺機能, 動脈血ガス, 胸部X線, 血液検査, 尿検査であった。
結果は, 今回も, フローボリュームで末梢気道障害を示すといわれるV25値で, 希釈法がずさんで, 年4回以上散布しているか, 今までの総量が10本 (5000ml) 以上の群において, 有意の低下を示した。
両群ともに, フローボリュームでV
50, V
25値が諸家の示す「標準値」より有意に低下していたが, パラコート以外の数種の農薬の複合的影響も考えられた。
2年に渡る疫学調査の結果は, 同様に末梢気道障害を明らかに示しており, これはパラコート散布による健康障害といえる。
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