日本農村医学会雑誌
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36 巻, 2 号
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  • 中川 昭生, 阿部 顕治, 福島 哲仁, 尾崎 米厚, 山根 洋右
    1987 年 36 巻 2 号 p. 61-68
    発行日: 1987/07/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    近年, 山陰農村地帯における工場勤務兼業農民の健康管理は, 産業保健および地域保健共通の緊要な課題となっている。
    今回, 島根県下370事業所の労働環境条件調査を実施したところ, 零細事業所が大半を占めており, 労働力人口の高令化, 長時間労働, 休憩時間の不足, 有害業務, 夜間労働など, 多くの課題をかかえていた。
    また, 総合保健活動を追求し, 全町的健康管理活動を展開している佐田町でも町内の各事業所の健康管理はきわめて不充分であり, 定期健康診断すらなされていない事業所もあった。
    われわれは, 町, 出雲保健所, 島根労働基準監督署, 町内の事業所など関係諸機関と協議し,「佐田町産業保健連絡協議会」を設置し, 産業保健活動と地域保健活動の統一的展開を追求している。
  • 森本 哲雄, 村田 欣也, 斉藤 満, 田尻 三昭, 水田 実
    1987 年 36 巻 2 号 p. 69-70
    発行日: 1987/07/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    当院内科へ入院した慢性肝炎, 肝硬変, 肝細胞癌患者を集計し, 各群間の比較検討を行なった。また対照として, 肝機能がすべて正常な消化性潰瘍患者をとりあげた。各群間の平均年令を比較すると, 慢性肝炎と肝硬変の間には8.4年の差があるが, 肝硬変と肝細胞癌の間には3.0年の差しかなかった。HBs抗原陽性率を比較すると, 慢性肝炎と肝硬変ではほぼ同値であるが, 肝細胞癌では約2倍に増加していた。アルコール歴を有する症例は, 慢性肝炎, 肝硬変, 肝細胞癌の順に低下しており, アルコールが発癌に及ぼす影響は小さいと思われた。HBs抗体陽性率は慢性肝炎, 肝硬変, 肝細胞癌の間でほとんど差がなかった。
  • 松尾 弘文, 杉村 巌, 小西 行夫, 種田 光明
    1987 年 36 巻 2 号 p. 71-78
    発行日: 1987/07/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    北海道鷹栖町は, 旭川市に隣接する農業 (主に水田) を主な産業基盤とする人口約7,500の農村地区である。同町では無床の開業医療機関が一か所あるのみである。住民のヘルスニーズに応えるべく, 昭和50年より住民総合健診を実施してきた。疾病の早期発見, 予防につとめ発症後も早期にまた効率よく一次医療機関および二次医療機関に受診できるように, 健診を中心としてのプライマリ・ヘルスケア (以下PHC) の確立をめざしてきた。
    今回の調査では健診開始10年目を迎え, 健診がPHCの確立にいかに寄与したかを調査し検討した。結果として, 疾病の有症者数の改善, 医療費上昇の抑制, 病診間の連携, 保健意識の向上などが認められた。以上のように, 健診を中心としたPHCの確立は, 医療機関の乏しい農村地区においては有効であると考える。
  • 菅谷 彪, 林 雅人, 大久保 俊治, 斉藤 公男, 細谷 賢一, 松岡 富男, 小棚木 章, 佐藤 孝, 滝沢 健吉, 石成 誠子
    1987 年 36 巻 2 号 p. 79-84
    発行日: 1987/07/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    秋田県の農山村・山村においては, 過疎化, 高令化が進み, 加えて出稼ぎ, 自然環境の諸条件によって, 地域保健医療サービスは積極的に実施せざるを得ない情況にある。この調査では, 山村として平鹿郡山内村, 平地農村として平鹿郡大雄村の2地区において, 保健医療活動の面から比較検討した。年令構成では, 65才以上の比率は, 山内村では15.4%, 大雄村では14.4%で, 秋田県の平均12.5%(全国10.2%) よりも, いずれも高い。死因については両村とも心疾患が第1位を占めた。脳血管疾患による死亡は山内村で164.9 (人口10万対), 大雄村で121.8, 秋田県で169.2 (全国117.2) であるから, かつて多発地帯といわれた両村でも変化があらわれている。自殺例も第5位にみられた。保健活動に対する自治体の支出には若干の差があった。各種検診受診率は比較的高い率を占めた。
  • 内田 昭夫, 岩崎 二郎
    1987 年 36 巻 2 号 p. 85-95
    発行日: 1987/07/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    静岡県2山村 (人口約8,600人, 約5,400人) と千葉県2農漁村 (人口約12,700人, 約7,100人) を対象に, プライマリー・ヘルスケア (PHC) に関する調査を行なった。
    調査4町は, 老年人口比率17%以上で粗死亡率は高く, 人口自然増加率はマイナスである。乳児死亡率や死産率は低い。死因としては悪性新生物, 脳血管疾患, 心疾患が高く, 肺炎, 不慮の事故, 自殺の死亡率も全国平均を上回る。国民健康保険の歳入・歳出は全国平均より低く, 入院では精神疾患, 循環器疾患, 外来では循環器疾患が圧倒的に多い。町内医療機関は不十分で, 町外医療の利用が多く, 入院では75%以上と高い。一山村では一般予算からの病院繰入れがきわめて多額で, 町財政の問題となっている。健康教育, 保健組織活動としては, 栄養指導や高血圧教室の開催がある。健康診断受診率は結核・乳幼児健診受診率はきわめて高いが, 癌・循環器健診は20%前後であった。
    かかりつけ医師は中高年層では多いが, 若年層では低く, 家庭医としての機能すなわち, 全人的医療, 日常の健康管理・相談, 専門医への紹介, 往診等の機能は低い。しかし, 病気の説明は, かかりつけ医が高く, 医師と患者の信頼関係がみられ, PHCの確立にはかかせぬ存在といえる。
    また, 高令化社会である農村では, 健康教育, 家庭訪問, 家庭看護等保健婦の役割りはますます増大する。ヘルスマンパワーの充足が望まれる。
  • とくに組織的な取組み態勢について
    松島 松翠, 横山 孝子, 朝田 捷, 飯島 郁夫, 佐々木 徳子, 黒沢 和雄, 宮沢 昭一, 岡村 吾郎
    1987 年 36 巻 2 号 p. 96-105
    発行日: 1987/07/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    長野県下の農協 (117農協) と市町村 (121市町村) を対象とし, アンケートおよびインタビュー調査により, 健康管理活動における組織的な取組み態勢について調査を行なった。結果は以下のごとくである。
    1. 健康管理活動にこおける農協と市町村との連携は徐々に進んでおり, 49.6%が検診を共同企画・共同運営で取組んでいる。共同企画で行なう効果は, 検診受診率に現われ, 全県の平均受診率22%に対し, 共同企画のところの受診率は48.8%と高い。また両者の連携は, 検診後の事後指導や検診以外の健康生活面での活動推進定も大いに役立っている。
    2. 地域の健康管理担当者の連携状況については, 何らかの連携があるところは87.2%にみられたが, 1~3か月に1回定期的に担当者連絡会を開いて協議しているところは, 24.8%であった。担当者連絡会の定期的取組みにより, 地域の関係機関の相互の連携がよくなり、検診受診率の向上や地域の健康生活上の取組み態勢の進展がみられた。
    3. 地域の健康管理組織における住民参加の状況については, まず農協健康管理推進協議会には, 婦人部, 青年部, 生産部会の代表が参加しているが, このうち婦人部がもっとも多く参加率55.4%であった。他方, 市町村健康づくり推進協議会に農協の代表が参加しているところは67.8%にみられた。協議会を真にご住民のものにこしていくためには, もっと組合員代表や住民代表がこの中に加わらなくてはならない。
  • 世代間栄養摂取特性と食生活改善運動の課題
    山根 洋右, 吉田 暢夫, 中川 昭生, 阿部 顕治, 福島 哲仁, 尾崎 米厚
    1987 年 36 巻 2 号 p. 106-115
    発行日: 1987/07/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    島根県一農村を対象に若年層, 中年層, 高年層の世代間特性に関する栄養調査を行なった。高年層では, 栄養摂取状況が所要量に満たず, 食品群別にみても不足している食品が多い。若年層も含めて各世代とも, 日本型食生活パターンの特徴を示した。世代別の食生活改善指導が今後, 重要と考えられる。
    長期臥床者とその介護者の食生活はきわめて劣悪な状態にあり, 社会的対策の確立が高令者のプライマリ・ヘルスケア充実とともにいそがれる。
    農村婦人は食生活改善について多様かつ積極的ニーズをもっており, 地域の生活実態と住民のニーズに合った新しいcommunity nutritionの推進が重要となっている。
  • 健康意識, 受療行動, 健康状態及び国保医療費についての調査
    江崎 廣次, 仲吉 則雄, 百瀬 義人, 畝 博, 馬郡 良英
    1987 年 36 巻 2 号 p. 116-125
    発行日: 1987/07/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    われわれは, 昭和57年から福岡県夜須町住民の健康管理の一端をにない, 保健活動を実施してきた。今回は, 農村におけるプライマリ・ヘルスケアを確立させるための基礎的調査を実施した。
    はじめに, 地域住民の健康意識, 受療行動などを知るために, 20才から74才まで1,259名について, 留置法によるアンケート調査を実施して, 住民のヘルス・ニーズを分析した。
    次に三並校区の一般住民 (20才以上) 498名について, 全員に心電図, 眼底検査を含む循環器検診を実施して, その健康状態を把握した。
    第3には, 傷病状況, 特に医療費の実態を知る目的で, 全町の国民健康保健診療明細を全部調査した (昭和57年26,103件, 昭和58年27,437件)。かくて老人保健法前後の医療費の変化ならびに家族構成, 配偶者有無と医療費の関係などを社会医学的に分析した。
    以上3調査により, 農村におけるプライマリ・ヘルスケアの施策を進めるうえで役に立つ基礎資料を提供することができた。
  • 末綱 純一, 黒田 芳信, 大塚 英一, 原田 頼続, 坪井 峰男, 明石 光伸, 飛田 公博
    1987 年 36 巻 2 号 p. 126-130
    発行日: 1987/07/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    今回われわれは本邦39例目の先天性膵体尾部欠損症の1例を報告した。症例は72才男性。全身倦怠感を主訴としており, 糖尿病の合併が認められた。ERPにおいて約4.5cmの短小膵管が認められ, US・CT像では体尾部の欠損がみられた。腹腔動脈造影でも脾動脈から分枝する体尾部への支配血管が認められず, 本症と確認した。PFDは正常で外分泌能は保たれていた。胆石症を合併していたため手術施行し膵体尾部を探すと, そこには脂肪組織のみがみられ, 一部を生検したが, ラ氏島や膵組織は認められなかった。
  • 1987 年 36 巻 2 号 p. 131-137
    発行日: 1987/07/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
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