日本農村医学会雑誌
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38 巻, 5 号
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  • 二塚 信, 稲岡 司, 北野 隆雄, 宮北 隆志, 井本 岳秋
    1990 年 38 巻 5 号 p. 1001-1007
    発行日: 1990/01/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    著しく機械化が進行し, かつての労働態様とは一変したとされる今日の林業の労働負担について, 全面的に機械化されている民間林業と振動障害予防の観点から一部手工具による作業が行なわれている国有林で調査を行なった。その結果, 全面的に機械化されていない国有林労働の主な作業別のエネルギー消費量では伐木の際の斧による受口切り, 斧による枝払い, 機械化されている民間林業では, 集材の際の玉かけが5-7kcal/分と比較的大きく, とくに時間配分 (150-200分) や安全性を考慮すれば斧による枝払いは早急に改善する必要があると思われた。作業前後の血清sarcoplasmicenzymeや尿中カテコールアミンの変動をみると, 民間, 国有林のいずれの場合も, 先山作業で血清CPK, LDHが有意に増加し, 今日でもなお林業労働ではglycogenesisの変動をもたらす要因のあることが示唆された。
    また, 先山作業, 盤台作業ともに尿中VMA, ノルアドレナリンの著明な変動がみられ, 危険でストレスの多い林業労働の本質は残っていること, これらの林業労働の特質についてさらに労働生理学的研究が必要であることを報告した。
  • リンゴ栽培労働への適用
    臼谷 三郎, 木田 和幸, 西山 邦隆, 松田 明広, 眞鍋 麻美, 飯沼 俊信
    1990 年 38 巻 5 号 p. 1008-1015
    発行日: 1990/01/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    エネルギー消費量の算定法としては従来, RMR法が用いられてきたが, 近年, 携帯用24時間心拍数記憶装置が開発されたことにより, 心拍数を用いるエネルギー消費量算定方法が試みられている。その一方法としてHR-VO2法がある。そこでリンゴ栽培従事者を対象とし, 勢定, 摘花, 摘果, 袋かけおよび収穫に従事した1労働日の24時間心拍数記録をもとに, エネルギー消費量をHR-VO2法で推定し, 一部についてはRMR法と比較してHR-VO2法の有用性を検討した。
    24時間心拍記録からみた作業中の心拍数水準は, 摘花, 摘果, 袋かけ等では90~100拍, 収穫でも110拍前後にとどまっており, Rodahlの作業強度分類では“moderate work”のレベルに該当した。
    また, 同じ作業でも, 午前に比べて午後の心拍水準が低下する傾向を示し, 心拍数の日周期リズムとは異なる挙動を示した。
    HR-VO2法で算定した各労働日のエネルギー消費量は, RMR法による報告値と比べほぼ妥当な値と思われた。
    収穫作業日の一例について, HR-VO2法とRMR法による消費エネルギー量を比較すると, 前者は2,654kcalで後者より376kcal (16.5%) 高かった。作業動作別エネルギー消費量について, 両者の相関関係をみるとr=0.987 (p<0.001) の高い相関がみられた。
    生活活動指数からみた1労働日の生活活動強度は収穫>袋かけ≒摘花>摘果>剪定の順序であった。収穫は日本人の栄養所要量で示された生活活動強度IV (重い) に該当し, 春季農繁期の管理作業日は同じ強度III (やや高い) に該当した。
    したがって, HR-VO2法によるエネルギー消費量推定法は, 若干の問題点はあるものの, 生体の代謝水準を比較的正確に反映する方法であり, その簡便性と相まって, 今後, RMR法に代わって導入されることが望ましいと考えられる。
  • 臼谷 三郎, 木田 和幸
    1990 年 38 巻 5 号 p. 1016-1022
    発行日: 1990/01/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    リンゴ園で行なわれる選果台の至適台高を, モデル実験によってエネルギー代謝学的に研究するとともに, 選果台の実態調査を行なって次の結論を得た。
    1. 選果作業によって増加した1分あたりの02消費量を7種の台高について, 台高を身長+履物高で除した値をx, 作業によって増加した労作1分間あたりの02消費量をyとすると両者間には
    y=0.226x2-20.91x+677.1
    の2次式が得られ, 至適台高は履物を含む身長比46%と判断された。2. リンゴ農業で使用されている選果台高は, 身長比の30-40%に分布し, 低すぎる傾向がある。これは, リンゴ箱を選果台に利用するような選果への安易な取り組みや習慣に原因している。3. 選果作業従事者の腰痛や疲労軽減対策として人間工学的視点にたった選果台の改良, 普及が必要であろう。
  • 中田 実, 渡部 真也
    1990 年 38 巻 5 号 p. 1023-1029
    発行日: 1990/01/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    1983年, 滋賀県草津市内で水田作業を行なった農民のなかから, 作業後の手や足に今まで経験したことのない痒みの強い皮疹の発症する者が多発した。皮疹の症状, 発症の経過などから鳥類住血吸虫性セルカリア皮膚炎が強く疑われたので, 草津市内の全農家の1,621名および近江八幡・能登川地区の農民174名を対象としてアンケート調査を実施した。
    裸足あるいは短靴で水田作業を行なった農民のうち, 192名の四肢に水田作業後, 皮疹発症がみられ, その皮疹の症状, 発症の経過などから108名(58.1%)の皮疹は鳥類住血吸虫によるセルカリア皮膚炎が疑われた。このうち草津市内の発症者に対して電話による聴き取り調査を行ない詳細に確認したところ, 電話で回答した83名中の約90%はほぼセルカリア皮膚炎に間違いないものと考えられた。またこれらのセルカリア皮膚炎と考えられた者のうち6名について間接蛍光抗体法による血中抗体価測定を行なった結果, いずれもセルカリア皮膚炎と診断された。問題になった水田に棲息する貝類の99.3%はカモ類住血吸虫の中間宿主になりうるヒメモノアラガイで, 貝類からはセルカリアは検出されなかったが, この地区の水田にはカモの飛来が確認されている。
    以上より今回草津市の水田作業者に多発した皮疹はカモ類住血吸虫によるセルカリア皮膚炎であろうと考えられた。
  • 森本 哲雄, 村田 欣也, 田尻 三昭, 岡崎 幸紀, 水田 実
    1990 年 38 巻 5 号 p. 1030-1033
    発行日: 1990/01/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    柳井市周辺の年令が40才以上, 79才以下の男性246例を対象として, 飲酒習慣の疫学調査を行なった。これを次のような6群に分類して, 比較検討した。第1群: 1日飲酒量1合未満, 喫煙量10本未満群 (56例), 第2群: 1日飲酒量1合, 喫煙量10本未満群 (39例), 第3群: 1日飲酒量2合以上, 喫煙量10本未満群 (36例), 第4群: 1日飲酒量1合未満, 喫煙量10本以上群 (36例), 第5群: 1日飲酒量1合, 喫煙量10本以上群 (23例), 第6群: 1日飲酒量2合以上, 喫煙量10本以上群 (56例)。
    第1群を対照群として第4, 5, 6群との比較検討を行なった。その結果, 肥満度と血清総蛋白濃度が第5群と第6群で有意に低下していた。しかし, 第4群では有意差のある項目は皆無であった。このように飲酒と喫煙の同時習慣は, 全身的な栄養状態を抑制する方向に作用する。
  • 今木 雅英, 三好 保, 村井 吉博, 高橋 仁, 棚田 成紀
    1990 年 38 巻 5 号 p. 1034-1036
    発行日: 1990/01/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    近年, 農村地区住民を対象とした集団健診が実施され, そのシステムが整備されつつある。このなかでも肝機能検査は重要な検査項目の一つである。著者らは, 予防医学の立場からこれらの検査結果が, たんに疾患のスクリーニングだけにとどまるのではなくて, 健常者群の保健指導の指標としてできれば非常に有益であると考える。本研究においては、肝胆道疾患の病態を特異的に反映する血清OCT活性値と摂取栄養パターンの関係について多変量解析の手法を用いて検討した。重回帰分析の結果, 熱量, 脂質, ビタミンCと有意な相関を認めた。さらに因子分析の結果より食物摂取パターンとの関連性を求めると「魚介類対肉類」因子に若干の関連性を認めた。すなわち, 血清OCT活性値は肝胆疾患等の診断に有力な酵素活性を示すものであるが, 健常人の栄養素摂取量との関連性も認めた。
  • 1990 年 38 巻 5 号 p. 1037-1048
    発行日: 1990/01/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
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