エネルギー消費量の算定法としては従来, RMR法が用いられてきたが, 近年, 携帯用24時間心拍数記憶装置が開発されたことにより, 心拍数を用いるエネルギー消費量算定方法が試みられている。その一方法としてHR-VO
2法がある。そこでリンゴ栽培従事者を対象とし, 勢定, 摘花, 摘果, 袋かけおよび収穫に従事した1労働日の24時間心拍数記録をもとに, エネルギー消費量をHR-VO
2法で推定し, 一部についてはRMR法と比較してHR-VO
2法の有用性を検討した。
24時間心拍記録からみた作業中の心拍数水準は, 摘花, 摘果, 袋かけ等では90~100拍, 収穫でも110拍前後にとどまっており, Rodahlの作業強度分類では“moderate work”のレベルに該当した。
また, 同じ作業でも, 午前に比べて午後の心拍水準が低下する傾向を示し, 心拍数の日周期リズムとは異なる挙動を示した。
HR-VO
2法で算定した各労働日のエネルギー消費量は, RMR法による報告値と比べほぼ妥当な値と思われた。
収穫作業日の一例について, HR-VO
2法とRMR法による消費エネルギー量を比較すると, 前者は2,654kcalで後者より376kcal (16.5%) 高かった。作業動作別エネルギー消費量について, 両者の相関関係をみるとr=0.987 (p<0.001) の高い相関がみられた。
生活活動指数からみた1労働日の生活活動強度は収穫>袋かけ≒摘花>摘果>剪定の順序であった。収穫は日本人の栄養所要量で示された生活活動強度IV (重い) に該当し, 春季農繁期の管理作業日は同じ強度III (やや高い) に該当した。
したがって, HR-VO
2法によるエネルギー消費量推定法は, 若干の問題点はあるものの, 生体の代謝水準を比較的正確に反映する方法であり, その簡便性と相まって, 今後, RMR法に代わって導入されることが望ましいと考えられる。
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