paraquat中毒による死亡率は高く, その毒性はとくに肺障害に代表される。
急性paraquat中毒者10症例について, 血中, 尿中および臓器内paraquat濃度を測定し, その体内動態および肺濃度と肺障害の関係について検討した。
血中濃度は24時間以内に急速に低下し, 血中半減期は服毒2時間後 (症例3) で約0.5hr, 5時間後 (症例5) で約1hr, 10時間後 (症例6) で約2hrであり, 24時間後 (症例6) では26hr以上であった。したがって時間の経過とともに延長されることが示唆された。腎機能低下は服毒後5時間以内に出現することが推察された。
各臓器にparaquatの集積がみられ, 服毒後24時間以内は肺がもっとも多量であり, 271時間後は骨格筋がもっとも多量であった。肺内paraquat濃度は全症例を通じて死亡時の血中濃度よりも高値であった。
肺内paraquatの排泄はきわめて遅いが, DHP, HDの施行により速くなる。しかし骨格筋からの排泄はきわめて緩徐である。腎を除く他臓器は血中濃度と比例し, ほぼ一率であると考える。
肺病理所見は6症例とも, うっ血水腫で, 時間の経過したものほど高度であり, 長期生存例のみ, 一部に肺線維化が認められた。
不可逆的な変化として起こる肺障害の原因は排泄されてもなお小量の血中濃度を上回る肺内残存paraquatの影響によると考える。
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