九州北部に住む農村住民 (20-74才) の男女639名の健康診査データを用いて, 血清総コレステロール (TC) およびHDLコレステロール (HDL) のレベルと年次的変動, 生活習慣との関係を, 農業従事者 (農)・非農業従事者 (非農) に分けて検討した。
1982年には, 農に多量飲酒者および多量喫煙者がやや多く, 運動しない人は非農にやや多い傾向がみられた。肥満はやや特異な結果を示し, 農・非農ともに女より男の方が肥満者が多かった。
TC, HDLレベルおよび生活習慣は全国レベルと大差なく, 農・非農別の比較では, TCは非農が, HDLは逆に農がやや高値を示した。
4年後の変化では, TCは明らかな上昇 (P<0.01) を認めたが, HDLレベルの上昇はわずかだった。肥満傾向はかなり増大したが, 他の飲酒, 喫煙, 運動習慣は僅かな変化がみられたにすぎない。
生活習慣の変化とTC, HDLの変化との関係を多変量解析により検討した結果, 肥満は男女, 農・非農を通じてTCと正の関連を示したが, その他の生活習慣は一定の関連を示さなかった。HDLとの関連は, 飲酒と正の相関, 喫煙および肥満と負の相関の傾向がほぼ認められたが, 運動習慣では明確な傾向はみられなかった。
以上のことから, 農業従事者・非農業従事者間における生活習慣と血清脂質との関係は大差なく, その生活態様には本質的な差はなくなってきたことを示していると考えられる。
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