全国でもっとも老年人口割合の高い島根県において, 農山村及び都市近郊農村の地域特性別に農山村 (佐田町) と都市近郊農村 (湖陵町) を対象として, 独居老人の生活実態を調査し, コミュニティ・ヘルスの課題を検討した。
1.佐田町では, 1戸当りの耕地面積が比較的広く, 農業経営基盤が維持されている。家族形態では, 3世代世帯が多く, 1世帯当りの世帯員数も多く, 独居老人は少なく家庭基盤は安定している。
これに対し湖陵町では, 耕地面積が狭く, 農業経営基盤は脆弱である。家族形態は単一世帯が多く, 独居老人, とくに女性の高齢者が多く, 家庭基盤は弱い。
高齢者が独居になった原因は, 両町とも配偶者の死亡と子供の都会流出によるものが多い。子供を持つ独居老人は, 佐田町81.1%, 湖陵町83.2%とほぼ同率であるが, 佐田町では養子の割合が高率であった。両町とも子供の40%以上は県外で生活し, 日常的な接触は少ない。
将来子供が帰郷して同居する予定のあるものは, 佐田町は27.0%と少なく, 湖陵町は43.4%とやや多く, 帰郷予定時期は子供の定年時が多かった。
2.独田町で41.2%, 湖陵町で31.6%を占め, 深刻な問題となっている。給食サービスや福祉サービスの費用負担, 通院や買い物などの交通費負担の軽減など経済的サポートが必要とされている。
抄録全体を表示