日本農村医学会雑誌
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44 巻 , 2 号
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  • 松島 松翠
    1995 年 44 巻 2 号 p. 65-73
    発行日: 1995/07/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    農薬による慢性中毒 (障害) のうち, 肺・気管支障害, 肝障害, 胃腸障害, 血液・造血器障害, 高血圧・血管障害, 代謝異常, 免疫異常について, 臨床的・疫学的な面から考察した。
    肺・気管支については, 肺炎像を示すものと慢性進行性肺繊維症を呈するものが主であるが, その他, 喘息, 慢性気管支炎, 肺機能低下等が見られた。肝障害は, 農薬暴露者に多く, 有機塩素剤, TCDDによるものが多く見られた。ワインに残留した砒素の連続摂取で肝硬変を起こした例もある。胃腸障害については, 有機燐剤への持続的暴露によるものや野菜からの連続的摂取によるものがあった。血液・造血器障害については, PCPによる再生不良性貧血やその他の血液疾患が多く見られた。血管障害では, paraquatによる動脈硬化性変化, 代謝異常としてはHCBによるポルフィリン症, 有機塩素剤による高脂血が見られた。また有機塩素剤, 有機燐剤, カーバメイト剤で免疫異常が認められている。
    農薬にはそれ自身の毒性の他に, 皮膚粘膜刺激性やアレルギー性を有するものも多く, 人体に対する障害は, それらの複合的影響を考える必要がある。
  • 小泉 雄一郎
    1995 年 44 巻 2 号 p. 74-79
    発行日: 1995/07/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    膀胱異物のうち, 自慰目的のもののみを取り上げると, それは20代に多く, かつ青年, 子女に関する限りそれは農村部居住者に多いと考えていた。1994年の第43回日本農村医学会総会にその実態を発表しようと資料を纏めていた所, その裏付けがとれたので日本農村医学会総会に発表し, かつ本誌に記述した。
    期間は1978年よりの16年間で, 年齢は自験最少の13歳より一応25歳までとした。この間の膀胱異物総数は56例。うち自慰目的と考えられたものが34例。さらにこの年代に該当するものが14例であった。このうち都市部居住者が4例, 残り10例が農家在住を主とした農村部居住者であった。年齢を25歳までに区切ったのは独身者として観察したいと考えたからである。男子6, 女子4であるが, セクハラや, いじめ的なもの, 更には正確には膀胱尿道異物例も含んでいる。
    物品は模型用リード線, 体温計, スピン及びピストル弾丸, ビニールチューブ, 結石のついたヘアピン, クリップ, ポリエチレン管, 台所用サランラップ, 部品としてのポリエチレン管, 鉛筆であり, 異物膀胱鏡を中心とした治療で別出した。
    農村部の負の生活部分の一層の陽性化が必要と考えたが最近本症はややへり気味である。
    なおポリエチレン管の男子例ではオリーブ油と水を膀胱へ計300cc, 注入した所, 自然排出をみたのでおりがあったら, 追試して頂きたい。文献的にも考察して述べた。
  • 桂 敏樹, 野尻 雅美, 中野 正孝, 新井 宏朋
    1995 年 44 巻 2 号 p. 80-88
    発行日: 1995/07/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    静岡県西伊豆町および賀茂村で1964年から1966年に循環器検診を受診した30歳以上59歳以下の住民2,112人を1985年まで予後を追跡した。その間に脳血管疾患で死亡した者は93人, 心疾患で死亡した者は64人であった。この死亡者1人に対して死亡者が受診した最終年度に同様に循環器検診を受診した者の中から, 性・年齢 (±2歳以内)・地区をマッチさせた生存者2人をコホート内から無作為に選択し対照者としてコホート内症例対照 (死亡者) を行なった。
    特に死亡者が受診した最終年度の検診所見と対照者の同年度の各種眼底所見 (Scheie分類) とを比較検討するとともに, 死亡者の最終受診年の5±1年前から最終受診年までの各種眼底所見の2時点間の変化と対照者の同様の変化についてもコホート内症例対照研究を行ない比較した。
    多変量解析の結果, 以下のことが明らかになった。
    1.最終受診年での循環器疾患死亡者と対照者との眼底所見を比較すると脳血管疾患では細動脈狭細, 細動脈反射の相対危険が有意に高かった。心疾患では交叉現象 (沈下), 細動脈反射の相対危険が有意に高かった。
    2.循環器疾患死亡者と対照者との眼底所見の経年変化を比較すると脳血管疾患では細動脈狭細, 細動脈反射の進行の相対危険が有意に高かった。一方, 心疾患では細動脈反射の進行の相対危険が有意に高かった。
    以上の結果より断面的な眼底所見 (異常所見) だけでなく, その変化 (進行) が循環器疾患死亡の予知に有効であることが明らかになり, 住民の保健指導における各種眼底所見の時系列データが有用であることが示唆された。
  • 渡邊 好明, 小川 雅弘, 吉田 憲生, 田中 斉, 金山 均, 佐野 博, 加藤 活大
    1995 年 44 巻 2 号 p. 89-92
    発行日: 1995/07/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    当院において平成4年4月より導入した大型スペーサーを用いたプロピオン酸ベクロメタゾン (BDP) 吸入療法について, 導入前後の気管支喘息患者の救急受診状況を中心に検討した。救急受診した16歳以上の気管支喘息患者は, BDP吸入療法の導入前1年間では内科救急受診患者の月平均10.4±3.0%であったが, 導入1年目には5.3±1.4%, 導入2年目には3.7±1.4%と有意な (P<0.05) 減少が続いた。BDP吸入療法導入前後3年間定期的に通院したコンプライアンス良好な気管支喘息患者21例での検討では, BDP吸入療法導入前1年, 後1年目, 後2年目では救急受診回数は8.1±15.0回/年から1.5±2.0回/年, 1.2±2.0回/年, 点滴施行日数は32.4±27.1日/年から8.1±11.0日/年, 6.7±8.6日/年と両者とも著明な減少を認めた。この21症例にBDP吸入療法導入後約2年目に吸入テクニックの再チェックを施行し, 吸入テクニックの良否と救急受診頻度, 点滴施行頻度について比較検討を施行したが有意差は認められなかった。大型スペーサーを用いたBDP吸入療法は吸入テクニックの良否にあまり左右されずに気管支喘息患者の急性増悪の減少に有効であると考えられる。
  • 小松 利佳子, 三浦 昭子, 佐藤 栄子, 佐々木 幸子, 安保 まり子, 佐藤 涼子, 小松 和男, 岡村 敏弘, 高野 一彦
    1995 年 44 巻 2 号 p. 93-98
    発行日: 1995/07/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    煙草の害について関心が高まり, 喫煙環境が小児の健康にも影響を及ぼすという報告がされてきていることから, 乳幼児をもつ母親を対象に, 喫煙に関するアンケート調査を実施した。
    その結果, 小児の受動喫煙に関する母親及び家族の, 認識が低い傾向がみられた。また, 小児の受動喫煙の有無と気道感染のり患状況をみると,「気道感染なし」の割合が受動喫煙の環境にある小児に有意に低率であった。喫煙妊婦と非喫煙妊婦の小児の平均出生時体重を比較すると, 喫煙妊婦の小児の平均出生時体重が少ない傾向がみられた。
    このことから, 母親及び家庭の喫煙が, 小児の出生時低体重や気道感染に影響を及ぼすことが示唆された。
  • 田谷 利光, 川田 健一, 南 正信, 越河 六郎, 野村 茂, 藤原 秀臣
    1995 年 44 巻 2 号 p. 99-107
    発行日: 1995/07/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    われわれは, レンコン生産農業者の労働負担と健康管理に関する研究として, 平成4年度はJA土浦組合員の集団健診成績を作目別に比較検討した。また, レンコン生産の特異性に着目し, その農事暦と収穫期のタイムスタディを調査した。その結果, レンコン生産者288人, 非生産者546人の健診成績では有病者は非生産者にむしろ高率であった。収穫期のタイムスタディをみると, 掘りとり作業は8時間と長く, 疲労感, 肩こり, 腰痛を訴える者が多く, 女子では血尿が多くみられた。省力化したい作業として19%の者が掘りとり作業をあげており, 改善が望まれる。
    平成5年度はレンコン生産者に対し, 生産行動調査を実施した。その結果をみると, 男女とも冬期に4時間以上も吹きさらし, 水中で作業する者が80~88%に及び, しかも体が不調であるにも拘らず無理して作業する者が女子71%, 男子56%と多かった。一方, 生活行動調査の結果をみると, 食習慣では塩辛いものが好きな者が半数であり, 冷え, 腰痛, 肩こりなど健康に不安を訴える者がレンコン生産者に多く, これはレンコン生産に伴う苛酷な農作業に起因するものと考えられる。
    さらに平成6年度は「農業従事者用蓄積的疲労徴候インデックス」(CFSI-A) 調査をレンコン生産者197人を対象に行い, 労働負担評価についての妥当性を検討した上で健康管理の指標とした。その結果をみると, 男女ともに一般的疲労感が相対的に高い値を示している。身体症状として目の症状, 腰痛, 肩こりなどの訴えが多いことから収穫作業との関連が推測された。レソコン生産者197人を対象とした農作業改善に関するアンケート調査の結果をみると, 収穫時の無理な作業姿勢, 作業場の不良, 過載重量など改善すべきことが多い反面, 収穫作業に便利な器具を使用したり, 作業着についても寒冷対策がとられていることが分かった。
    生産者の高齢化, 後継者難, 農業経済などの社会的問題もあるが, 他の地域におけるレンコン栽培の実態ならびに農業者の健康状態を比較検討し, 生産者のくらしと健康を守るために健康管理を推進してゆきたいと考えている。
  • 田中 美津子, 藤田 幸代, 富所 隆, 杉山 一教
    1995 年 44 巻 2 号 p. 108-112
    発行日: 1995/07/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    当院では毎年退院患者統計を作成している。1968年から1992年の退院患者統計から死亡退院患者の年齢, 性別, 主病名につき検討した。25年間の総退院患者数は174,632名であり, うち6,265名 (3.6%) が死亡退院であった。25年間で退院患者数は1.9倍, 死亡患者数は2.6倍に増加していた。年齢別死亡数は若い年齢層では低下し, 60歳以上の年齢層が増加していた。悪性新生物による死亡が全体の62.2%を占め, 特に肺癌による死亡が急な勢いで増加していた。今後も統計による分析を続けていきたいと考える。
  • 腰前 妙子
    1995 年 44 巻 2 号 p. 113-116
    発行日: 1995/07/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    全国的な胃癌死亡現象傾向の中にあって印南町ではむしろ増加傾向にあり, 胃癌の標準化死亡比が低下するには至っていない。そこで過去10年間の胃集団検診の問題点等を調査し, 今後のあり方について検討した。
    70歳以上の検診受診率は順調に増加しているものの, 40~69歳の受診率は横バイ状態である。しかも初回受診率は年々低下し, 受診者の固定化が考えられる。一方国保レセプト情報や死亡者等の観察では胃癌患者や胃癌死亡者は検診未受診者や何年か前に一度受けただけという者がほとんどであった。また過去10年間に検診により18例の胃癌が発見されており, そのうち9例が早期癌であった。一方精検受診率は毎年80~90%で約2割の未受診者が出ており, 未受診者の中から2人の胃癌発生があった。当町の発見胃癌の半数が進行癌であったことや, 精検受診率が85%程度で改善がみられないことが当町の問題点であり, 経年的には大きなSMR改善が得られていない理由となろう。
    今後若年者層および過去の検診未受診者に対して重点的に受診勧奨を行うとともに, 経年受診を促す働きかけも重要である。またハイリスク群に対しては医療機関での個別検診を勧めていきたいと考えている。さらに精検の重要性を徹底し, 精検まで受診してこそ胃集検の意義があることを強力に啓発し, 検診から精検に至る一連の早期発見システムを定着させていきたい。
  • 大野 康彦
    1995 年 44 巻 2 号 p. 117-122
    発行日: 1995/07/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    多発性骨髄腫と重複癌の3症例を報告した。症例/は胃癌 (Stage IIの腺癌) 発見時に, MGUSを認め, 胃切除後3年目に骨髄腫と診断した。末梢血のCD4/CD8比は0.7と低値で, 胃癌の再発もなく, 多剤併用化学療法中に膀胱癌 (三重癌) を発症し, 敗血症で死亡した。症例2は結腸癌 (Stage IIの腺癌) の診断時に, MGUSを伴い, 結腸癌手術後4年目に骨髄腫と診断し得た。CD4/CD8比は0.3で, 結腸癌の再発はなく, MP療法を継続中である。症例3は腎癌 (Stage I) と骨髄腫で, CD4/CD8比は0.4を示し, 左腎摘出術後, INF-α と多剤併用化学療法中であるが胃癌の再発はない。
    B細胞の腫瘍である骨髄腫は癌の合併頻度が高率である。重複癌の症例はT細胞機能の指標であるCD4/CD8比の低下が著しく, B細胞のみならずT細胞の機能障害を認め, 両細胞の機能破綻が癌発生の要因として, 主要な役割を演じていると考えられる。
  • 桑原 祥浩, 上田 成子
    1995 年 44 巻 2 号 p. 123-128
    発行日: 1995/07/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    30aのリンゴ園にスピードスプレイヤーによりDDVP乳剤を有効成分として500g散布した時の散布作業者の農薬曝露状況を知るとともに, 散布後の圃場内への立入り者の農薬曝露状況を検討した。散布作業者の農薬被曝は頭部と上肢に多く認められ, 推定全身被曝量は散布量の0.0009%に相当する4.4mg (56μg/kg) であり, 適切な防除衣を着用して作業すればほとんど健康影響はないものと思われた。さらに, 散布終了1時間, 6時間, 1日, 2日および4日後に2名がこの圃場内に30分間立入り巡回した。その結果, 散布1時間後の再入園にさいしては全身的に若干の農薬曝露が認められ, それらの推定全身暴露量は105~120μg (1.8~2.3μg/kg) であった。しかし, 6時間以降の立入りにさいしては身体への曝露は認められなかった。再入園時の気中DDVP濃度は1時間後には平均13.9μg/m3であったが, 6時間後には9分の1程度に減少し, 1日後には検出されなかった。また, 葉面DDVP残留量は1時間後で331ng/cm2であったが, その減衰は速く, 6時間後には7分の1に減少し, 2日後には検出されなかった。これらのことから1時間後の再入園にさいしては, 若干の呼吸器曝露も示唆されるが, 主に葉との接触による曝露が重視される。DDVPは揮発しやすく, 分解されやすいことから, 6時間以降には接触によるDDVPの作業者への曝露は認められず, また呼吸器曝露もほとんどなくなるものと考えられた。以上のことから, DDVPに関しては散布1日後の圃場へ再入園してもほとんど安全上の問題はないものと考えられた。
  • 三廻部 眞己, 米山 桂八, 佐々木 真爾
    1995 年 44 巻 2 号 p. 129-136
    発行日: 1995/07/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    農業に係わる労災保険財政の収入・支出の収支率が逆転して, 131.5%となり, 保険料収入では農業労災の補償が不可能になっている。
    これは農作業の高度機械化と就農者の高齢化がすすみ, 重篤な災害が頻発していることを実証するものである。農水省の平成4年の調査によると, 農作業上の死亡災害は401件あり, このうち, 60歳以上の死亡災害は256件, 63.8%を占めて, 悲惨な死亡災害は高齢者に年々集中してきた。
    また, 神奈川県下での8年間に生じた農機災害446件の1件平均の休業日数は39日間であった。しかも, この災害発生年千人率の平均は14.4を示し, 他産業の平均5.2に比較し約3倍の発生率であった。いっぽう, 全国の労災保険加入者の同千人率を検討しても平成5年度の農業は28.0であり, 建設業16.5, 全産業の平均13.8の約2倍で農業は明らかに「構造危険業種」とも言える体質に変化していることを認識すべきである。
    したがって, 農業に係わる労災保険の収支率を改善することは火急の問題となっている。この対策は,(1) 農業労災を防ぐ安全対策を推進し, 補償金の支出を喰い止めること,(2) 労災保険加入者数を増加させ, 保険料収入の増大をはかること,(3) 保険料収入の算定基礎となる給付基礎日額の増額をはかること,(4) JAの労災事務局体制を強化すること,(5) 安全行政を確立すること等を提起したい。
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