日本農村医学会雑誌
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50 巻 , 4 号
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  • 三好 久視, 清水 久, 井上 喜美雄, 川口 義明
    2001 年 50 巻 4 号 p. 555-564
    発行日: 2001/11/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    農協の生命共済は昭和27年発足以来49年の歴史を持っている。設立後急速に事業は伸張し, 平成11年度末の保有契約高は養老生命1,335万件, 終身424万件, 一件あたりの平均死亡保障額は, それぞれ1,200万円, 2,100万円となり, 特に終身共済において高額な保障を行っている。
    我々は今回農協生命共済統計を用いて昭和55年以降の20年間を観察期間として死因別死亡率について分析を行った。脳卒中, 事故死亡等が国民の努力の結果もあって大きく改善されつつあるのに反し, 悪性新生物死亡率は年々増加の傾向にある。ただし胃ガンは近年死亡率を実質的に下げつつあるのに対しその他のガン, 特に肺ガン, 肝ガンの死亡率は急速に上昇している。
    このような状況のもとに, 地方別に16県を選び上記3種のガンについて, 時系列的データの分析を行った。
  • 松島 松翠
    2001 年 50 巻 4 号 p. 565-579
    発行日: 2001/11/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    検診活動及び健康増進, 生活改善を含む健康教育活動を実施することによって, それが疾病予防及び医療費の軽減にどの程度役立つかを明らかにするために, 平成10~12年度の3年間にわたって研究を行った。その結果は以下のとおりである。
    1.県の全市町村における医療費の分析
    一つの県の全市町村について, 老人保健事業を含む健康教育活動と国保医療費, 老人医療費との相関関係について分析した。分析結果では, 保健婦数および老人保健事業による基本健康診査受診率について, 療養諸費と歯科を除く全ての診療費 (入院・入院外・計) に負の相関を認めた。
    2.健康増進活動が充実している町村における医療費の分析
    検診活動及び健康増進活動が充実している町村とそれが低くとどまっている町村を選び, 健康増進活動と一般医療費, 老人医療費との関係について調査分析した。その結果, 検診活動および健康教育活動が, とくに老人医療費を低下させており, 費用効果の点から見ても効果が大きいことが明らかとなった。
    3.医療費に格差がみられる町村における要因の分析
    医療費に格差がみられる二つの町村を比較してその要因について分析したが, 医療費が低い町村ほど, 老人入院医療費が低く, 健診受診率, 地元医療機関受診率, 在宅死亡率が高く, また健康知識・意識が高く, 健康づくり運動に熱心で, 心の健康状態もよいことが分かった。
    4.国保レセプトによる検診継続受診者の医療費の分析
    国保レセプトによる分析では, 検診を継続的に受診している者, あるいは健康づくり活動に積極的に参加している者は, そうでない者と比較して, 一人当たりの年間国保医療費が低いという結果が得られた。両者の差額は, 費用としての検診受診料をはるかに上回るものであり, 費用効果は十分あると考えられた。
    5.検診継続受診者における有病率及び日常生活状況の分析
    検診継続受診者とそうでない者について, 各疾病の有病率および生活習慣についてその改善効果を比較検討したが, とくに食生活, 運動・体操実施状況について, 検診連続受診者にその改善がみられた。
    6.がん検診に関する費用効果の分析
    各種がん検診における一発見数当たりの事業経費は, 腸がん検診が最も低く, 乳がん検診, 胃がん検診, 子宮がん検診の順に高くなり, 腸がん検診が最も費用効果が良好であった。また胃検診 (胃X線集団検診, 胃内視鏡検査) による胃がん発見者は, 非受診による胃がん発見者にくらべて, 胃がんによる死亡率が低く, 入院医療費が低かった。また逸失利益等を比較した結果, 受診者に利益が多いことが分かった。
    7.介護保険導入による費用・効果の分析
    介護保険制度導入によって, 被保険者の保険料と介護サービス利用の一部負担金が費用増加となるが, 一方では在宅介護サービスの強化, 特別養護老人ホームの開設, 短期入所の設置, デイサービスの開設など, 要介護者にとってサービスの拡大が図られ, 内容が充実した。
  • 林 雅人
    2001 年 50 巻 4 号 p. 580-590
    発行日: 2001/11/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    農村部の都市化傾向は徐々に進行している。しかし, 現在でも都市近郊農村から山間農村まで差がなくなっているわけではない。その差をみる目的で, 都市近郊農村として広島市及びその周辺, 農村性の強い秋田県平鹿郡, 長野県佐久市および南佐久郡, その中間の島根県出雲市及びその周辺を対象として, 平成9年度, 11年度の集団健診成績から地域差の抽出を試みた。12年度は平成7年度と平成12年度の2回の健診時成績の平均値から5年間の経年変動を地域別に比較した。一方生活習慣が健康指標に及ぼす影響について, 秋田, 長野, 島根, 広島の4地域で健診受診時に食習慣と生活習慣 (排便回数) についてアンケート調査を実施し, 健診データとの関連をまとめた。また運動習慣が健康指標に及ぼす影響について, 秋田, 長野, 島根, 広島の4地域で1日8,000歩以上の運動前後の平均値を比較した。その結果3か月間という短期間でもHDLコレステロールは各地域毎でも全体として有意に上昇した。また, 非運動群のコントロールのとれた地域では体脂肪率の増加を運動が制御していることが裏づけられた。生活習慣病の運動療法とQOLに関する研究は茨城で行った。その結果, 心筋梗塞における運動療法とQOLとの問には明らかな関連はみられなかったが, 心機能が良好な症例においてはQOLスコアが上昇する傾向がみられた。また糖尿病における運動療法は糖尿病の耐糖能の改善のみならず, QOLを向上させることが示唆された。一方高血圧患者の運動療法は血圧の下降効果が認めたのみならず, QOLを向上させることが示唆された。QOLからみて心身の安定性, 食事への注意などの改善がみられ, 特に運動良好群では塩分摂取, 肉油脂の摂取の改善が明らかであった。この他, 分担研究者が各地域毎に主題にそった研究を行ってきた。すなわち秋田: 1・年齢別健診結果と生活習慣からみた生存率の検討, 2.食習慣が健康指標に及ぼす影響の検討, 長野: 生活習慣の一次予防対策の研究, 島根: 1.生活習慣と健康度についての断面調査からの検討, 2.農村におけるMultiple Risk Factor Syndromeの臨床疫学的研究, 広島: 継続健診受診しているhigh risk者の教育・指導効果について検討した。
  • 藤原 秀臣
    2001 年 50 巻 4 号 p. 591-604
    発行日: 2001/11/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    生活習慣病の増加や高齢化の進行は従来の検診活動における早期発見, 早期治療の概念を変化させつつある。厚生連は全国に広く関連施設を有しており, 各地方の特色に基づいて全国レベルで住民と直結した保健・医療・福祉活動を展開しているが, 地域住民の健康を守り, より良い医療を提供するためには厚生連病院として市町村と連携し情報を共有し, 住民へ還元していくことが今後の課題である。そのためには情報の統一化と普遍性, 情報の集積, 情報の解析と活用の手法を確立する必要がある。平成11年度の本研究では4施設での検診データを収集し, 延べ44,817件が登録され, 膨大な資料を一括して統一データベースとして保存し解析することが可能となった。今年度は各施設における2000年4月から2000年10月の問の均質な検診データを収集し, 29,425件の新たなデータベースを作成した。今回はデータの解析にあたっては, 生活習慣病関連測定項目の異常値の設定を行い, 年齢区分を若年者, 高齢者に分けて地域毎に比較検討した。その結果, 検診受診者は各施設ともやはり女性の比率が約60%と高かった。島根では高齢者が多い傾向がみられ, 70歳以上が52%を占めていた。一方, 土浦では70歳以上が7%と最も低く, 平鹿, 旭川は20%であった。測定項目についてはそれぞれの解析を行ったが, そのひとつである総コレステロール値は各施設とも女性が高く, 特に島根では男性185.2mg/dlに対して女性は207.6mg/dlと男女差が顕著であった。全体では女性は207.7mg/dlと男性190.8mg/dlに対して高値であったが, 男性は高齢になると下降するのに対して, 女性は高齢になると上昇する傾向がみられた。また240mg/dl以上の高コレステロール血症の頻度は, 各施設とも女性で高く, 特に高齢者女性での頻度は高く, 男女差が顕著であった。他の測定項目についても同様の解析を試みたが, 地域特性, 年齢, 性差などの解析が容易であった。さらに今回は生活習慣病の疫学調査の基本となる生活習慣調査票も統一したものを作成し調査を開始したが, 食生活の詳細や治療の有無の調査も加える必要があると考えられる。今後の課題は, 生活習慣病ハイリスク者を抽出して重点的に生活指導していくこと, データの収集を他の厚生連病院や関連市町村に拡大し, 全国レベルで長期に亘って生活習慣病予防に活用していくことなどである。
  • 渡辺 玲子, 西山 勉, 小林 里子, 金沢 さおり, 照沼 正博
    2001 年 50 巻 4 号 p. 605-612
    発行日: 2001/11/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    [緒言] 排尿困難を訴えて受診した男性患者には国際前立腺症状スコア (IPSS) を用いて, 症状をスコア化している。また, 最近, 身体症状を訴えて受診した患者の不安と抑鬱状態を評価するために不安と抑鬱尺度 (HAD尺度) が利用されている。我々は排尿困難を主訴に受診した男性患者に対して, IPSSとHAD尺度を用いて, 排尿状態と不安と抑鬱状態を, 初診時と6か月後の2回調査し, 改善度を比較検討した。
    [対象・方法] 患者は平成10年11月から平成12年1月までに排尿困難を主訴に当院泌尿器科を初診し, 6か月以上通院し, 本調査を2回行った男性患者44名である。
    [結果] 初診時のIPSSの症状判定では, 軽症が2人, 中等症が25人, 重症が17人であった。HAD尺度では「不安抑鬱なし」が20人,「不安抑鬱疑い」が7人,「不安抑鬱状態」が17人であった。IPSS症状スコアとHAD尺度, QOLスコアとHAD尺度との間には明らかな相関は認めなかった。6か月以上経過した2回目調査時点では, IPSS症状スコアとQOLスコア, IPSS症状スコアとHAD尺度, QOLスコアとHAD尺度の間に比較的良好な相関を認めた。初診時調査と2回目調査を比較すると, IPSSでは「改善」が27名,「悪化」が5名,「不変」が12名であった。HAD尺度では「改善」が17名,「悪化」が11名,「不変」が16名であった。IPSS症状スコアが改善するとQOLスコア, HAD尺度も改善する傾向があった。しかし, 症状スコアが改善してもHAD尺度の悪化する症例も見られた。
    [結論] 患者の不安と抑鬱の状態はIPSSの改善とともに改善傾向を示すが, 患者の精神状態には, 排尿症状ばかりでなく, 他の要素が複雑に影響しているものと思われた。
  • 田中 敏博
    2001 年 50 巻 4 号 p. 613-620
    発行日: 2001/11/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    2000年から2001年にかけてのシーズンの, 当院におけるインフルエンザに対する取り組みを振り返った。予防面ではワクチン接種が効果を発揮していた。診断面ではA型を判定する迅速診断キットが治療と連動して有用であった。治療面ではアマンタジンが服用性と効果の両面で実用的であった。今後, 特に診断・治療の分野でさらなる技術革新が期待される。しかし, 疾病予防の原則から, ワクチン接種率を向上させることが肝要であり, そのための社会に対する啓蒙と行政の後押しが不可欠である。
  • 水草 貴久, 細川 嘉彦, 中川 宗大, 大野 泰良, 川崎 浩伸, 高橋 日出美, 右納 隆, 塚本 達夫, 日江井 邦彦
    2001 年 50 巻 4 号 p. 621-624
    発行日: 2001/11/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    中国人労働者によるオオシロカラカサタケの集団毒キノコ中毒の症例をもとに, 猛毒といわれるアマニタトキシン群の毒キノコとの相違や, 今後いかにして毒キノコ中毒の発生を減少させるかなどについて検討した。本症例のオオシロカラカサタケは急性胃腸炎様の消化器症状を呈するのみで致死例は報告されていないが, 摂食したキノコを直ちに特定することは一般的に非常に困難である。従って致死率の高い, いわゆる猛毒キノコを摂取した可能性を考慮し, 医療機関は対応に難渋させられることが多い。オオシロカラカサタケは外見上, 最も毒性が高いといわれているアマニタトキシン群のキノコ (シロタマゴテングダケやドクツルタケ) と似ているが, 発症までの潜伏期間が根本的に異なる。また, 毒キノコ中毒による被害者の数が減少しない原因として, 一つには毒キノコの判別法として古くからの「言い伝え」的鑑別方法が未だに存在しており, 明確で判りやすい鑑別方法が社会的に確立されていないことがあげられる。
  • 和泉 宏明, 柳井 一郎
    2001 年 50 巻 4 号 p. 625-631
    発行日: 2001/11/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    JA広島総合病院 (以下, 当院と省略) はベッド数578床のいわゆる「総合病院」である。当院に1994年9月, 精神科 (以下, 当科と省略) が開設された。現在, 精神科医2名が診療にあたっているが, 精神科病棟のない「無床」の総合病院精神科である。当院に1999年6月, 集中治療室 (以下ICUと省略) が新設された。ICU新設後1年間の当科紹介患者について調査, 検討した。依頼理由は「自殺企図・希死念慮」が, 身体疾患分類では「急性薬物中毒」が最多であり, 精神科診断は「適応障害」が, 転帰は「直接退院」が最多であった。精神科病棟を持つ総合病院精神科の類似の報告と比較し, 当科にみられる傾向として, 依頼理由では「合併精神疾患の治療」が少なかった。精神科診断では「分裂病圏」が少なく,「適応障害」が多かった。転帰では「精神科転科」が少なく「他科転科」が多かった。自殺企図患者や重症精神障害患者の身体合併症治療を一般病棟で行うには, 精神科医の絶対数不足やリスクマネージメントの問題もあり, 現状では困難なことが多い。無床総合病院精神科の役割として,「精神科治療への導入」と,「精神科トリアージュ機能」が重要であり, その役割が十分に発揮されるために地域の他の精神科医療施設とのネットワーク作りが必要と思われた。
  • 2001 年 50 巻 4 号 p. 632-659
    発行日: 2001/11/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
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