日本農村医学会雑誌
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53 巻 , 5 号
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綜説
  • 岡田 晴恵, 田代 眞人
    2005 年 53 巻 5 号 p. 775-782
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/04/05
    ジャーナル フリー
     2004年1, 2月には山口県や京都府などの養鶏場を高病原性鳥インフルエンザの流行が襲い, 夥しい鶏が死に, また周囲の多くの鳥が殺処分された。感染の拡大を防止するために, 感染死した鳥や感染の疑いのある鳥を殺処分し, 半径30キロメートル以内でのニワトリや卵の移動禁止措置がひかれた。白い作業着にゴーグル, マスク, 長靴, 手袋を装着した作業員が, 大きな穴に多くの鶏を埋め立て, 養鶏場を徹底的に消毒する姿は未だに印象に強く残っていることであろう。この鳥インフルエンザ問題はとかくマスコミ等では, 食の安全という観点から取り上げられる傾向にあった。もちろん, 食生活において, 鶏卵や鶏肉の需要は大きく, 日本の食文化や食生活を担う上でも非常に重要である。また, 通年の人のインフルエンザワクチンも鶏卵を使って, 種ウイルスを増殖させて製造される。インフルエンザワクチンの安定的供給を得るためにも, 鳥インフルエンザの流行は是が非にもくい止めなければならない。
     しかしながら鳥インフルエンザの問題の核心的部分は, 鳥インフルエンザウイルスが遺伝子変異や遺伝子交雑を起こして, 人のインフルエンザウイルスに変身して, 人の世界で流行する新しいインフルエンザウイルスとなって大流行を起こすことにある。
     過去における, スペインかぜやアジアかぜ, 香港かぜ等の新型インフルエンザウイルスは, このように鳥インフルエンザウイルスが基となり, 遺伝子交雑や変異を起こして人の新型ウイルスとなって人の世界に侵入してきたのである。このため, 多くの人々が犠牲となり, 社会に大きな影響を与えてきたのだ。これらの新型インフルエンザはいままで平均して27年の周期で起こり, 世界的流行を起こしてきた。前回の新型インフルエンザ出現は1968年の香港かぜにさかのぼる。
     さらに現在では火種となる鳥インフルエンザが, 東南アジアではすでに蔓延の様相を見せている。昨年の春以来, 一旦は流行の終息宣言が出されたタイやベトナムでも, 今年に入って鳥インフルエンザの再流行の報告がなされ, 人への感染も報告されている。しかも人に感染すれば7割にもおよぶ高い致死率を示している。さらに悪いことに, 現在流行中の鳥インフルエンザは鶏に全身感染を起こし, 1, 2日で死に到らしめる高病原性鳥インフルエンザとされる強毒型のウイルスである。このH5N1という高病原性鳥インフルエンザウイルスが, 人の世界に入ってくる可能性は高く, さらに時間の問題であると多くのインフルエンザウイルスの専門家は心配している。
     このような背景の中で, 今回の鳥インフルエンザウイルス問題の本質は, なんであろうか, 新型インフルエンザはどうやって鳥インフルエンザウイルスから誕生するのであろうか, 新型インフルエンザウイルスが発生した場合にはどのようなことが想定されるのであろうか, という内容を解説したい。新型インフルエンザを正しく理解することによって, 過去に猖獗を極め, 多くの被害を残した新型インフルエンザの事例を教訓とし, 被害を最小限度に抑えることを目的としたい。
原著
  • 秋田 浩子, 大林 浩幸, 西尾 政則, 山瀬 裕彦
    2005 年 53 巻 5 号 p. 783-788
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/04/05
    ジャーナル フリー
     不特定多数の瑞浪市民が利用する, 瑞浪市公共施設27施設, 学校14施設, 保育園等15施設, 郵便局10施設の計66施設を対象に, 職員と施設の禁煙・分煙状況を把握する目的で, 施設名記名式のアンケート調査を実施した。
     アンケート回収率は100%であった。全職員(936名)の20.0%が喫煙者であった。
     施設の禁煙化状況は, 普段職員が使用する事務室や休憩室では約8割の施設が全面禁煙となっていたが, 市民が利用する公共スペースでは3割程度しか禁煙化が進んでいない実態が明らかとなった。保育園等では施設全面禁煙の割合が高い一方で, 学校では教職員の利用する休憩室での禁煙率が低い。郵便局は, 他施設と比較して, 喫煙自由の施設が最も多かった。今回の調査で健康増進法25条の内容を十分認識していた施設は全体の半数未満であった。
     今後, これらの結果を踏まえて, 地域住民が利用する公共施設等に, 積極的な禁煙推進・啓蒙活動を続けていく必要がある。
  • 竹野 香織, 益元 智子, 岡田 明子, 宇根 はずき
    2005 年 53 巻 5 号 p. 789-795
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/04/05
    ジャーナル フリー
     今回私達は, 泌尿器科術後のオープンドレーンとクローズドレーン使用患者に対して, 感染の発生頻度と術後回復に関しての比較検討を行なった。検定方法はMann-WhitneyのU検定を用いた。
     対象はオープンドレーン群(A群)=2001年5月~10月までの14名(平均年齢:66.3歳), クローズドレーン群(B群)=2001年12月~2002年5月までの14名(平均年齢:64.9歳)とした(NS)。
     A群では14名中6名(42.8%)の患者より, ガーゼあるいはドレーンの細菌培養から表皮ブドウ球菌・腸球菌・MRSAが検出されたが, B群では全員細菌陰性で有意差が認められた(p<0.01)。抗生剤投与期間については, A群では7~42日(平均:24.5日)使用していたのに対し, B群では4~11日(平均:6.1日)と短縮し, ドレーン抜去日についてもA群では5~28日目(平均:14.4日)で抜去しているのに対し, B群では2~8日目(平均:5.5日)で抜去していた(p<0.01)。またガーゼ交換日数もA群では10~31日(平均:19.1日)施行していたのに対し, B群では3~10日(平均:7.9日)で有意差が認められた(p<0.01)。このように, 各調査内容に関してもオープンドレーン群に比べクローズドレーン群の方がより短期間であった。
     食事・睡眠・排泄・活動についても感染の発生によってオープンドレーン群の方に諸々の障害を認めた。泌尿器科開腹術後のドレナージ方法をオープン式からクローズ式に変更したことにより, 術後感染が減少し, 患者の術後回復にも良好な結果を得ることが出来た。
特別研究班報告
  • 佐々木 眞爾, 臼田 誠, 広澤 三和子, 夏川 周介, 大谷津 恭之, 堀 明洋, 武山 直治, 石突 正文
    2005 年 53 巻 5 号 p. 796-804
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/04/05
    ジャーナル フリー
     日本における農作業に伴う災害死亡数は, 毎年400名前後で推移し一向に減る気配がない。しかも, こうした死亡事故の背景となる農作業事故の実態把握さえなされていないのが現状である。そこで, 日本農村医学会の「農作業災害予防研究」特別研究班が設置された。
     本研究班では, 実態把握のための臨床例収集として, 本学会関連3医療機関に農業機械および農具による災害例の調査票を送付し, 平成14年10月~16年3月の間の症例収集を行ない, その結果141例が収集された。さらに, 農業機械による死亡事例の内で, 地域消防署の救急車が出動した5例についてケーススタディ調査を実施した。
     収集された臨床症例では, 草刈機, ハーベスタ, 乗用・歩行用トラクタ, カッターによる事故が多く, その原因は草刈機ではエンジン音で近くの人の存在に気づかなかったり, ハーベスタやカッターでは巻き込まれによるもの, トラクタでは横転による下敷きなどであった。死亡事故のケーススタディからは, 安全フレームやシートベルトの装着がトラクタでは不可欠であり, スピードスプレアでは万一の場合にキャビンが威力を発揮することが分かった。
     農業機械による事故を予防するためには, 基本的な使用方法,注意事項や応急手当などを具体的に啓蒙する講習会を頻繁に設けることが重要である。
報告
  • 倉益 直子, 山本 順子, 福原 歌子, 横井 由美子, 小林 君枝, 塩川 友美子, 井坂 彰一, 富永 勉
    2005 年 53 巻 5 号 p. 805-810
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/04/05
    ジャーナル フリー
     当院では全科型栄養サポートチーム (以下NST) が稼働している。
     2年前より「入院患者への適切な栄養管理」を目的に, 医師・看護師・管理栄養士・薬剤師・言語聴覚士などが職種の壁を越えて活動を開始した。時間の確保などの困難もあったが, 現在, 1週間ごとに低栄養患者の抽出と, 栄養アセスメント・プランニング, さらにコンサルテーションを実施している。特に「コンサルテーション」は, 直接主治医や担当看護師からの依頼により「栄養アセスメント」と「プランニング」を行ない, 対象患者の栄養状態改善を目指すことが目的である。文字通りNSTの知恵と力を結集し, 結果を出すことが求められる。ここでは,「コンサルテーション」事例を中心に, 当院の栄養評価と栄養介入の活動について報告する。
看護研究報告
  • 小関 由美子, 森 和子, 池田 博子
    2005 年 53 巻 5 号 p. 811-816
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/04/05
    ジャーナル フリー
     今日の多様な価値観や情報化社会の中で, 患者のニーズに適した質の高い看護サービスを提供するには, 看護師の臨床実践能力を高め, 豊かな感性を引き出して質の高い看護師を育成するための教育システムの構築が必要である。
     平成14年度, 三重県看護職員継続教育研修整備体制事業への参画を機に, 従来から用いていた階層別の必修研修を大幅に改め, 三重県厚生連で検討中の能力考課制度と連動させ, 職能資格フレームに看護実践能力を連携させた継続教育ガイドライン, 手引書, 等級別評価表を作成した。等級ごとに看護師に求められる能力を5領域, すなわち「看護実践」「教育・研究」「人間関係構築」「マネジメント」「リスク管理」で評価するものである。
     先ず初年の平成15年度は, 新しい研修プログラムを作成し, このプログラムを用いて看護能力評価を行ない, 評価基準, 方法の妥当性を検証した。
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