日本農村医学会雑誌
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54 巻, 2 号
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綜説
  • ――自験例を中心として――
    中野 誠, 高橋 俊明, 伏見 悦子, 竹内 雅治, 関口 展代, 木村 啓二, 林 雅人
    2005 年 54 巻 2 号 p. 91-96
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/08/12
    ジャーナル フリー
     2001年から2003年までの2年間,当院で経験したたこつぼ型心筋障害9例の臨床的特徴とその病態について検討し,壁運動異常の機序について概説する。症例は全例が女性で,平均年齢は73歳であった。発症は身体的,精神的なストレスと関連があり,術後,家族の急病,口論などがきっかけであった。心エコーでは約半数にS字状中隔を認めた。予後については,1例で心不全を続発したが,改善し,死亡例はなかった。左室壁運動異常は1例を除き,2週間後には改善していた。自験例,文献的考察より,発症に循環障害や心筋炎の関与は否定的と考えられる。高齢女性はS字状中隔や左室壁の菲薄化を伴いやすい。この状態に身体的,精神的なストレスによりカテコラミンが放出されると,左室が過収縮し,左室内に圧較差が生じて,心尖部側が虚脱し,本症のような特異な壁運動異常を呈する可能性があると考えられる。
原著
  • 百瀬 義人, 末永 隆次郎, 畝 博
    2005 年 54 巻 2 号 p. 97-106
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/08/12
    ジャーナル フリー
     新しい栽培方法による労働態様の変化,並びにいちご栽培従事者の高齢化が進行している。それに伴い,中高年のいちご栽培従事者に対する新たな疲労対策を講じる必要性が高くなった。本研究では,いちご栽培作業による身体的疲労部位を明らかにし,改善すべき作業要因を見出すことを目的とした自記式質問紙調査を実施した。解析対象者は40~69歳までのいちご栽培従事者1,113名(男性681名,女性432名)とした。身体的疲労部位の訴えでは,腰が最も多かった(男性74.0%,女性73.8%)。次いで,肩(男性49.6%,女性60.4%),目(男性45.2%,女性50.9%)の順だった。これらの疲労部位と作業要因との関連を検討するため,ロジスティック回帰分析法を用いた。年齢,作業時間,及び睡眠時間で調整後のオッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を求めた結果,腰の疲労と最も強い有意な関連を示した作業は,男性では農薬散布(OR2.0; CI1.4~2.8)だったが,女性では関連がみられなかった。肩の疲労との関連では,男性は葉かき作業(OR1.5; CI1.1~2.2),女性は農薬散布(OR1.6; CI1.1~2.4)が最も強かった。目の疲労との関連では,男性では選別・調整作業(OR2.7; CI: 1.9~3.8),女性は収穫作業(OR3.2; CI2.0~5.1)が強かった。主な身体的疲労部位は男女同様だったが,強い関連を示す作業要因は男女で異なり,性差を考慮した疲労対策が必要と考えられた。
  • 西垣 良夫, 松島 松翠, 永美 大志, 大浦 栄次, 矢島 伸樹, 浅沼 信治, 臼田 誠
    2005 年 54 巻 2 号 p. 107-117
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/08/12
    ジャーナル フリー
     日本における農薬中毒(障害)の概況を把握し,その予防対策等を明らかにするために,農薬による健康障害を惹起して日本農村医学会会員の医療機関等を訪れた症例について,調査を行なった。
     2001~03年度に農業用化学物質に起因する農薬中毒(障害)の症例が,36機関から194例報告された。農薬中毒(障害)発症に関わる農薬曝露の事情は,自殺が74%を占め,散布中(14%),誤飲・誤食(7%)などが続いていた。
     自殺を原因とする症例では,男性がやや多く(52%),年齢構成では中高年が多かった。臨床症状の型は,ほとんどが急性・亜急性中毒(98%)であり,原因農薬は,有機リン系殺虫剤(39%)が最も多く,ビピリジリウム系除草剤(23%)などが続いていた。その転帰は,パラコート含有除草剤による中毒が極端に悪く,80%以上が死亡していた。
     散布中,準備・片付け中などの曝露条件による農薬中毒(障害)についてみると,男性が70%を占め,年齢構成では,中高年が多かった。診断名では,急性・亜急性中毒(39%)が半数以下となり,急性皮膚炎(33%),化学熱傷(14%),眼障害(11%)の比率が大きくなった。曝露された農薬としては,有機リン系殺虫剤(21%)がやや多かったものの,多様な農薬が関与していた。曝露の要因と考えられる事項は,防備不十分(44%),慣れ(19%),知識不足(14%),本人の不注意(12%)などであった。
報告
  • 野村 賢一, 鈴木 靖子, 金子 晴香, 平井 幸枝, 岩瀬 定利
    2005 年 54 巻 2 号 p. 118-124
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/08/12
    ジャーナル フリー
     渥美病院の供給センターは,医薬品,医療材料,帳票類,文具日常雑貨,再滅菌物,洗濯物,リネン,洗浄ベッドなどを取り扱う,物資を中心とするインフラ整備を施した組織である。院内物流の効率化を図るとともに,物資の一元管理を行なっている。平成15年1月より,院内に設置してあった4台のコピー関連機器のうち,コピー機1台,リソグラフ1台をセンター内に移設,コピー代行業務を行なった。供給センター内でのコピー代行業務が,時間,職員満足,経費節減にどのような効果をもたらしたか,TQM活動を通じて検討した。
     時間捻出に関しては,コピー予約制を開始した平成15年6月から平成16年1月の平均予約率が38.3%であった。職員満足に関しては,アンケート結果より多くの職員から時間の有効利用が出来たという回答が得られた。経費削減に関しては,コピー機リース料がコピー機,リソグラフの使い分けをセンタースタッフが行なうことにより,月間約5.7万円の経営効果を生み出した。
  • 清水 久美子, 小山 茂子, 坂口 ひろみ
    2005 年 54 巻 2 号 p. 125-130
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/08/12
    ジャーナル フリー
     昭和48年,JA女性部の組織活動を病院が受け入れる形で院内ボランティア活動は始まった。当初は役員中心の活動であったが,継続的な活動を希望する人が現われ,院内ボランティアの会「アスパラの会」が発足した。ボランティアの活動は直接患者に関わる仕事から,材料作りまでと幅が広い。ボランティア参加者が病院の様子を地域に伝えることが,病院と地域を結ぶ架橋となり地域連携に大きな役割を果たした。当病院の活動のひとつに,地域における各種の介護教室,健康教室,助け合いの会等の運営,協力がある。そこに医師を始め多くの病院スタッフがボランティア講師として登録し講演活動を行なっている。これまでの活動を更に充実させ,病院とJAが連携協力して,地域における「保健・医療・福祉」の担い手の中心となり,一体的,総合的,効率的な活動をしていく事で,お互いに支えあえる社会を育てる,息の長い活動につなげたい。
短報
  • 貝沼 修吉, 山口 由男, 宮島 透, 高木 秋夫
    2005 年 54 巻 2 号 p. 131-136
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/08/12
    ジャーナル フリー
     本来は病院の体制として画像診断医師の常勤が理想であるが,著しく不足している昨今,その充足は極めて難しい。当院では従来,宅配便で最寄りの医療機関へCTフィルムを送り診断を依頼していたが,平成15年5月より遠隔画像診断システム(SECOM HOSPI-NET)を導入した。診断依頼書とCT画像をISDN回線で送信し,翌日に診断結果を同回線で受信する。このシステムの導入により画像診断医師不在施設でも,よりタイムリーな画像診断情報を得ることが可能となった。ここではシステムの使用経験を通して,送受信の方法などの概要と診断報告書の信頼度,また,従来の宅配法と比較しての迅速性,経済性,作業効率などに利便性があったので報告する。
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