日本農村医学会雑誌
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54 巻 , 5 号
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綜説
  • 内海 眞
    2006 年 54 巻 5 号 p. 723-733
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/03/28
    ジャーナル フリー
     我が国のHIV感染症患者の累計は,2005年7月3日現在11,664人となったが,実際はこの数倍の感染症患者が存在すると推定されている。新規HIV感染症患者数も年々増加し,2004年1年間には過去最高の1,165人が報告された。日本のHIV感染は拡大している現状にある。以前,感染は首都圏中心であったが,現在は地方にも波及している。感染経路別では,全報告総数においては異性間性的接触によるものが最も多いが,近年は男性同性間の感染が多くなっている。世界のHIV感染の歴史を見ると感染の拡大は急速であることから,感染拡大の要因がいくつか存在する日本においても有効な感染予防対策の実施が急務である。しかし,我が国においては未だHIV感染症/エイズに関する正確な情報が人々の間に行き渡ってはおらず,予防対策を有効に進める上でも我々医療者は情報提供に努めなければならない。HIV感染症はエイズになる前の比較的早期に診断されれば,抗HIV薬により十分コントロールできる慢性疾患の一つに変貌した。従って,HIV検査による早期診断の価値は以前にも増して高くなった。検査を受けやすくする体制作りは治療の観点のみならず,予防の観点からも重要である。なぜなら,HIV感染を知ることによってセクシャルライフの改善が期待されるからである。HIVの感染拡大を阻止するために,我々医療者に課せられた課題は多い。
原著
  • 服部 光治, 望月 奈穂子, 小澁 敬治, 湊 志仁, 椎貝 達夫
    2006 年 54 巻 5 号 p. 734-739
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/03/28
    ジャーナル フリー
     今回,われわれは脂肪肝の診断におけるレプチン測定の有用性につき検討した。対象は,腹部超音波検査で脂肪肝が認められた22症例を脂肪肝症例とし,腹部超音波検査で脂肪肝を認めない7例をコントロールとした。脂肪肝症例とコントロールとの比較では,体脂肪率,BMI,P III Pおよび血中レプチン値は脂肪肝症例で有意に高値を示した。また,血中レプチン値は男女ともに体脂肪率およびBMIと有意な相関を示したが,L/K比とは男性においてのみ有意な相関を示した。さらに,脂肪肝症例をGPTの異常の有無により2群に分類したところ,GPT異常群では体脂肪率,m-GOTおよびP III Pと並んで血中レプチン値がGPT正常群よりも有意に高かった。
     以上より,血中レプチン値はとくに男性において脂肪肝の一つの指標になりうるとともに,GPT異常や血中レプチン値高値を呈する脂肪肝には慢性炎症を伴う例も含まれている可能性があり,慎重な経過観察が必要と考えられた。
  • 近藤 武, 渡辺 俊一, 松島 松翆, 浅沼 信治, 櫻井 四郎, 田村 憲治, 安藤 満
    2006 年 54 巻 5 号 p. 740-748
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/03/28
    ジャーナル フリー
     石炭燃焼に由来するフッ素中毒発生地区の家屋は,排煙用の煙突がないため,煤煙は屋内に停滞し,屋根裏に保存・貯蔵してある農作物に接触・汚染しながら,屋根裏の隙間から外気に排出している。この煤煙中には使用する石炭・土壌中のフッ素が高濃度に含まれていることから,煤煙に暴露された農作物を摂取することが中毒の原因となっている。
     1995年秋,中国四川省培陵地区苗族土家族自治県小廠郷(現在重慶市に所属)にて収穫し,室内で石炭煤煙に暴露し乾燥した,とうもろこし5種類,トウガラシ4種類を入手した。これらの試料をフッ素高温気化装置 (大和電子製I型) を用いて有機質分解 (灰化) を行ない,フッ素電極 (Orion社製96-09) を用いて測定を行なった。比較試料として日本国内産を用いた。
     四川省小廠郷のとうもろこし,トウガラシのフッ素濃度は戸別により差はあるがとうもろこしは20~30ppm,トウガラシでは1~2%の高濃度であった。国内産と比較して,とうもろこしでは約30~50倍,トウガラシでは10,000~20,000倍の大差であった。これらのフッ素はいずれも水溶性である割合は90%と高く,結合性 (非解離性) フッ素の占める割合は10%であった。このような高濃度の汚染ため,この地区においては,生徒の99.5%が歯牙フッ素症に罹患していた。
報告
  • 大林 浩幸, 原田 武典, 平井 房夫, 松下 次用, 古田 悟, 佐々木 明, 野坂 博行, 山瀬 裕彦
    2006 年 54 巻 5 号 p. 749-755
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/03/28
    ジャーナル フリー
     今回,インフルエンザワクチン予防接種とインフルエンザ発生状況を調査し,高齢者を中心に,実際に予防接種の効果があったかを検討した。
     平成14年度,15年度,16年度の3年にわたり,当院にて(1)インフルエンザ予防接種を実施した全患者,(2)鼻腔スワブ法の迅速検査を実施した全患者,(3)インフルエンザと診断された全患者,の各々をレトロスペクティブに調査した。
     平成14年,15年,16年度と,年ごとに予防接種者数は増え,65歳以上がその70%以上を占めた。インフルエンザ発症患者の平均年齢は,平成14年度,15年度,16年度で各々42.9±21.3歳,34.9±20.4歳,45.4±20.2歳であり,高齢患者層と比較し,若・中年齢層のワクチン未接種者の発症を多く認めた。一方,高齢患者層では,ワクチン既接種にかかわらず発症した患者があった。
     ワクチン接種率の高い高年齢者層では,インフルエンザ発症が少なく,その予防効果を認めた。一方,高齢患者において,ワクチン既接種にもかかわらず発症する例があり,注意すべきである。
  • 服部 哲男, 大林 浩幸, 西尾 政則, 山瀬 裕彦
    2006 年 54 巻 5 号 p. 756-761
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/03/28
    ジャーナル フリー
     われわれは,2004年度,瑞浪市内の公共施設・学校・保育園・郵便局に対し,禁煙アンケート調査を実施し,その禁煙状況を把握し報告した。今回,その1年後の追跡調査を行ない,同施設群での1年間の禁煙進捗状況を検討した。
     岐阜県瑞浪市の公共施設・学校・保育園・郵便局64施設に対し,2004年度と同じアンケートを用い,施設内の禁煙・分煙状況及び,職員の喫煙状況を調査した。
     アンケート回収率は59施設(92.2%)であった。前回調査と比較し,公共施設・学校内の公共スペース,事務所,休憩室の全面禁煙率が増加した。また,郵便局では喫煙自由の場所が無くなり,分煙・禁煙化が大きく進んだ。調査対象施設の全職員喫煙率は,20%から17%へ減少した。
     1年後の追跡調査にて,同市内の公共施設・学校・保育園・郵便局で,禁煙化が効果的に推進されている状況が把握できた。
  • 尾崎 恭子, 河合 靖子, 小久保 真弓
    2006 年 54 巻 5 号 p. 762-766
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/03/28
    ジャーナル フリー
     高齢者においては不眠が体調不良,精神的不安定の引き金になりやすく,その結果薬に頼る傾向が見られる。しかし薬に頼るのではなく,看護,介護スタッフの努力,工夫により安全・安楽な日常生活を送れるようにすることが重要である。今回私達は朝日に着目し研究に取り組み,睡眠リズムの改善に繋がる結果を得たので報告する。
看護研究報告
  • 宮下 光子, 酒井 真理子, 飯塚 弘美, 町田 玲子, 中村 光江, 横井 由美子, 新谷 周三, 椎貝 達夫, 戸村 成男
    2006 年 54 巻 5 号 p. 767-773
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/03/28
    ジャーナル フリー
     介護保険制度創設のねらいとして「介護の社会化」が掲げられているが,重度要介護者の在宅介護においては,今なお,家族介護者の果たす役割は大きく,家族介護者の献身的な役割意識に支えられていると考える。今回私達は,在宅家族介護の実態と,介護負担感に関連するQuality of Life(QOL)要因を明らかにするため,当居宅支援事業所利用者の主介護者に対し,調査を行なった。これまで,介護負担感に関する研究は多くあるが,介護負担感に関連するQOL要因をQOLの領域別に分析した報告はなかった。調査項目は,主介護者の基本情報,要介護者の基本情報,WHO/QOL-26調査票,介護負担感調査票とした。調査の結果,介護期間6か月未満と5年以上の介護者が負担感を強く感じていた,また,要介護者の認知症が重度になると介護負担感が強くなる傾向であった。介護負担感に関連するQOL要因は,痛みや不快,睡眠と休養,活力と疲労感などの身体的QOL要因であることが明らかとなった。また,介護に関する新しい情報や技術の習得,住宅環境などの環境的QOL要因は,身体的QOLを高める関連要因であることが明らかになった。心理・社会的QOL要因は,介護負担感と有意な関連性がみられなかったが,これは,調査対象者の居住地域が,農村部を含む地方都市であり,主介護者に対する親族の支援が比較的得られていたこと,調査対象者の多くが高齢の女性であり,介護に対する役割意識・義務感とこれらに関連する地域の特性が心理・社会的QOL要因に影響したことによると推測する。以上の結果は,在宅家族介護者を支援するために有用な示唆であると考える。
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