日本農村医学会雑誌
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56 巻 , 5 号
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原著
  • 李 麗梅, 王 莉, 山崎 雅之, 岩本 麻実子, 池西 瑠美, 米山 敏美, 塩飽 邦憲
    2008 年 56 巻 5 号 p. 703-713
    発行日: 2008/01/30
    公開日: 2008/03/07
    ジャーナル フリー
     農村地域において内臓肥満やメタボリックシンドローム (MS) が増加しつつあるため,日本内科学会等による日本人向け診断基準と厚生労働省による選定基準により中山間地域における有病率とその特徴を解析した。島根県雲南市掛合町において,2006年に20歳以上の住民および労働者を対象に健康調査を実施した。対象者数3,207人中970人 (男性419人,女性551人) が受診したが,絶食状態で全ての検査を受診した男性393人,女性526人の計919人を解析した。日本内科学会等による日本人向け診断基準によるMS有病率は男性14%,女性6%であったが,糖尿病 (糖尿病薬物治療中または空腹時血糖126mg/dl以上) 診断を優先させると,糖尿病とMSの有病率はそれぞれ男性で10%と10%,女性で8%と4%であった。MSは糖尿病の前段階に位置づけられることから,MSの診断は糖尿病を除外して行なうことが必要と考えられる。中山間地域でも高齢者を中心に糖尿病有病率が多く,働き盛りの男性では内臓肥満およびMSが多かった。また,厚生労働省による選定基準によって得られた掛合町での割合から推定すると,2012年には全国では積極的支援レベル対象者は347万人,動機づけ支援レベル対象者は395万人と考えられる。このため,職域ではMSへの予防対策の樹立,高齢者の多い地域社会では糖尿病管理の改善が重要と考える。
報告
  • 酒井 智彦, 水野 伸一, 笹本 彰紀, 吉川 智宏, 玉内 登志雄
    2008 年 56 巻 5 号 p. 714-718
    発行日: 2008/01/30
    公開日: 2008/03/07
    ジャーナル フリー
     当科では1997年から経皮内視鏡下胃瘻造設術 (Percutaneous Endoscopic Gastrostomy,以下PEG) を施行しているが,近年では施設病院間連携,療養病棟の併設により経管栄養の適応患者が増加し,PEG施行症例が増加してきている。また,在宅介護を希望する家族の意向によりPEG造設目的に入院されるケースも増えてきている。PEGは様々な原因から摂食障害・嚥下障害を生じた患者に食物のアクセスルートとして胃瘻を作る際の標準的な手技となっている。PEGは簡易な手技ではあるが,対象者の身体予備能力が低下していることから合併症の発生率の報告は5.7~33.3%1)と少なくない。1997年3月から2005年12月までに当科でPEGを施行した115症例を対象とし,その合併症を検討した。合併症の合計は11例で,全体の9.6%に合併症が生じていた。今回は,造設時の合併症である誤穿刺に注目し,その予防策を検討した。結腸誤穿刺の危険がある症例に対して結腸のガストログラフィン造影が有用であったので具体的な症例を示す。
  • 直井 秀樹, 大林 浩幸, 松本 恭子, 重山 昌志, 永木 寛之, 山田 学, 伊藤 美智子, 服部 哲男, 大塚 守紀, 西尾 政則
    2008 年 56 巻 5 号 p. 719-724
    発行日: 2008/01/30
    公開日: 2008/03/07
    ジャーナル フリー
    〔目的〕アレルギー性鼻炎治療で用いる抗ヒスタミン薬には,眠気の副作用を生じるものが多いが,患者自身がこの副作用を承知で内服しているか重要である。今回,眠気に対する患者認識度調査を行なった。
    〔方法〕平成19年2月~3月末に,アレルギー性鼻炎で当院外来受診し,抗ヒスタミン薬が処方された患者全員257名を対象に,本人同意取得後に薬局窓口にて,抗ヒスタミン薬によって生じる眠気に対するアンケート調査を行なった。
    〔結果〕232名 (平均年齢53.5±17.5歳,男85名,女147名) より有効回答を得た (有効回答率90.3%)。この内45名 (19.9%) が,抗ヒスタミン薬一般に眠気の副作用があることを知らなかった。さらに,この45名中24名は実際に眠気を有する抗ヒスタミン薬が処方され,21名は主治医から副作用の説明を受けていなく,眠気の副作用を知っていれば内服しなかったと答えた。また,この21名中10名はすでに内服後に,眠気を感じながら自動車運転を行なっていた。
    〔結論〕抗ヒスタミン薬による眠気の副作用が軽視されている現状が明らかとなった。患者への適切な服薬指導と副作用のチェック機能を果たす薬局機能の重要性が再認識された。
症例報告
  • 三浦 弘, 藤原 誠, 土谷 龍彦, 大賀 正俊, 鈴木 浩司, 財前 博文
    2008 年 56 巻 5 号 p. 725-729
    発行日: 2008/01/30
    公開日: 2008/03/07
    ジャーナル フリー
     1972年,英国のハンスフィールドにより開発されたX線CT装置は,今日までその進展を止めることなく変遷を遂げており,マルチスライスCT装置 (MSCT) の開発と更なる多列化により飛躍的にスキャン時間が短縮され,画質が向上してきた。これにより病態の把握や手術支援,患者への説明におけるボリュームレンダリング (VR) や最大値投影法 (MIP),Multi Planar Reformation (MPR),Curved Planar Reconstruction (CPR) 等の有用性は今まで以上に大きくなったといえる。
看護研究報告
  • 戸谷 ゆかり, 山本 直人
    2008 年 56 巻 5 号 p. 730-732
    発行日: 2008/01/30
    公開日: 2008/03/07
    ジャーナル フリー
     医療者と患者が目標を共有し,患者が積極的に医療に参加することが,安全な環境づくりの第一歩であると考え,平成18年4月に「医療安全組織文化づくり宣言」のパンフレットを作成し配布した。
     「医療安全組織文化づくり宣言」の内容が浸透し,実践できているか配布2か月後に看護師に,配布5か月後に入院患者にアンケート調査を行ない評価,検討した。
     結果は医療者・入院患者ともに約90%の人が「宣言内容」が実施できているとの回答であった。しかし,一部の職員が実施できていないという声もあり,今後も教育の必要性を感じた。また医療者と患者の不安に対する認識に違いがあり,医療者側は「注射の内容を間違えるのでは?」という不安を持っているが,患者側は「痛みに対する不安」が強いことがわかった。
     医療者も常に緊張と不安の中で医療に取り組んでいる。しかし「確認したつもり」「説明したつもり」では患者に理解されず苦情や紛争に発展してしまうケースも少なくない。
     今後も患者の意見を反映した安全対策に取り組んでいく。
地方会
論説
  • 三廻部 眞己, 玄 義松, 安藤 満
    2008 年 56 巻 5 号 p. 770-782
    発行日: 2008/01/30
    公開日: 2008/03/07
    ジャーナル フリー
     農作業の機械化によって人身事故が頻発してきた。農水省が事故統計を開始した昭和46年から平成15年までの33年間で13,090人が農作業の犠牲になっている。年平均397人である。平成15年の農作業事故死は前年比14人増の398人である。
     本論文の事故分析で明らかになった重大な問題点は,(1)農作業事故死が,他産業の労災事故死が急ピッチで減少しているのに増加傾向にあること,(2)事故の発生年千人率が建設業8.5に対し,農業は13.5で危険業種に陥っていること,(3)事故要因が就農者の高齢化や農作業現場の不安全状態など農業構造から惹起されていること,しかもこの構造改善は不可能であり,農作業事故の頻発が社会問題になってくると考えられる。
     そこで,農作業事故はなぜ,どうして起こるのか。事故発生メカニズムを検討した。その結果,農作業安全は個人任せになっているが,これを改め,JAが組織的に地域農業の安全管理活動を発展させていけば農作業事故は喰い止めることができることを提言したい。その際,日本農村医学会がイニシアチブをとって産学官の連携路線を確立し,農作業事故防止と事故補償を行なうモデルとなるJAを設定し,現場からこの対策を全JAに発信することが重要である。また,農業のリスクマネジメントに関するニュールック政策の提言を行なっていけば農作業事故は急速に減少し,農業に役立つJAの活性化が達成できると考える。
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